コール様の仰せのままに ・名作RPGの超天才黒幕ボスに転生したゲーマーの末路

歌川博士

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第一章[超天才の生き様]

第十一話、ムンガムンガソン

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 翌日、俺はまたしても魔鋼列車に乗った。

「ぐっもーにん」
「モードレンド様、良い旅を」
「は~い、日帰りだけどね」

 馴染みの駅員さんと挨拶も交わし、列車に見事なステップで飛び乗った。祖父母のお陰で高価な列車も乗り放題。移動に困ることがない。
 しかし行先は『海宮魔境・エルビアン』のあるチリアではない。
 もうポポタンは飽きた。まだあと七セットほど狩り尽くさねばならないが、気分転換に序盤で手に入れたいもう一つの目標を消化しよう。

「朝練したから朝飯だけじゃ腹が減って仕方ないよぉ……」
「……」

 来るまでに買ったフライドチキンのボックスを取り出し、半分だけ食べる。残り半分はおやつだ。
 対面で落ち着かない様子のレイチェルにはやらない。だって全部自分で食べたいから。

「……その、どこに連れて行かれるのだろうか」
「知り合ったのも何かの縁。一人でやっていけるように見てやるよ」

 そんで成長した時に美人に育ってたら食ってやるよ。今は……身嗜みだしなみにあまり金をかけられないから素材勝負って感じだが、相当な逸材っぽいから気を付ければ美女になれるかも。ていうか、必ずなれる。ふぁいと。

「金策もできて、経験値もうまうまな場所に行く。でも魔城じゃないから、魔戦士とかはあんまりいない。だから昨日みたいに助けが来ると思わないでね?」
「……何者なんだろう、君は」
「モードレンドの嫡男だって言ってんじゃん。何回説明したら分かるの?」

 スパイシーなチキンに食らい付き、ジューシーな肉の旨味を噛み締める。うまうま。

「いまレベルどんくらい?」
「レベルは……十一だね」
「それでよくマーマンに挑もうと思ったな。四人がかりって言っても、不測の事態が起こったら死ぬじゃん……あぁ、だからちゃんと死にかけてたね」
「うっ……」

 レイチェル・フェリル。歳は十四、猟師であった父が脚を不自由してしまい、実家へ仕送りをするべく荷物持ち魔戦士として出稼ぎしていたらしい。
 資格を取得後すぐに役所経由でチームを結成。稀にある女をなぐさみ者にするチームではなかったが、結成から一年で昨日のような事件が起きたと。
 俺からしてみれば落ち着きのあるお姉さんだが、今でさえ色気が感じられており、将来的に期待値大だ。

「ほい、これ持っておけば?」
「これは何かな……ナイフ?」
「投げナイフな。あんた弱いから、超便利な投擲とうてきスキルは覚えておいた方がいい。それと約束してもらえる?」
「何を、かな……?」

 俺から手の平サイズの投げナイフが複数収まったベルトを手渡され、きょとんと首を傾げる。

「俺はあんたを強くする。数年も経たずに帝国の上位に位置する隊長格レベルになるだろう。ただ、このやり方は誰にも言うな」
「……わ、分かった、約束しよう」
「本当に? 代表にも親にも将来の恋人にも、生まれた息子にも娘にも、ベストフレンドだろうが命の恩人だろうが、突然に降臨した神様であっても秘密ってことだぞ?」

 はっきり言うと、そこまで秘匿とするような情報ではない。
 だが他の奴が強くなる手助けなんて冗談じゃない。どうして無償で帝国軍の発展に協力せにゃならんのか。

「……」
「はい、迷った。予定は変更して、このまま遊んで帰ろっか」
「な、悩んでない! 悩んでいないさっ、コール君の言う通りにする!」
「本当か? 絶対に命令に従うか?」
「ああ、絶対に言う通りにする」

 疑わしい。俺は疑心に満ちた眼差しをレイチェルに向ける。チキンを食い千切りながら。

「……」
「……」

 試しに一つ指示を与えてみる。

「……じゃあ、パンツ見せて」
「えっ……!?」

 ジト目を細めて、驚きに固まるレイチェルを更に疑う。ガキのパンツを見たって仕方がないが、これは忠誠心を試すのに丁度いいくらいの基準ではないだろうか。

「……き、今日のは、あまり可愛くないけど……それでもいいなら」
「うむ、よろしい。面倒を見る期間だけとは言え、俺はあんたのご主人様なんだから二度と迷うなよ。あとパンツだけ大人ぶるな」

 顔を真っ赤にしてスカートを捲し上げ、紫の大人ぶったパンツを見せてくる。通路を気にしながら気が気でない様子で、羞恥に悶える様は生意気にも色香がある。

「あっ、着いた」
「……いこうか」

 仲良く手を繋いで列車から降り、バスに乗って目的地を目指す。ガタガタと歪な道に身体を飛び跳ねさせながらジッと堪える。

「坊ちゃん、お姉ちゃんの手を離さないようにな。こんなところに何の用があるのかは知らないが、帰りは街道でバスか馬車を拾えばいいから」
「は~い」

 心配性な運転者に別れを告げ、辿り着いたのは“モーモーファーム”と呼ばれる畜産農家が経営する高原だ。

 ここの牛達は可愛らしい農家名に似合わず、何故か凶暴な魔物と化している。それは何故か。

「ムンガムンガソン! ムンガムンガソン!」

 元凶の名前を告げながら、踊って彼の地を目指す。高原の農場から更に高い位置へと、陽気に上がっていく。

「ムンガムンガソン? ムンガムンガソンっ!」
「ムンガムンガソン……?」

 レイチェルの疑問などまるで無視して、一本の大樹までやって来た。

「ムンガムンガソン!」
「これが、ムンガムンガソンなのかい?」

 大樹を指差して正体を暴くと、大樹の幹に一つの目が縦に開き、緩慢に動き始める。これがレベル五十から六十辺りまでのレベリングで大活躍のムンガムンガソン。

『……ムンガムンガソン?』
「ムンガムンガソン! ムンガムンガソン?」
『ムンガムンガソン……』

 何か言っているが、訳すと『古より来る大地の精霊なり、ムンガムンガソン。このムンガムンガソンに如何なる用か……?』『人の子如きがムンガムンガソンを名乗るなど不遜なり。穢らわしい血肉を捧げ、大地の肥やしとなれ……』となる。

「な、何か生えてくるよ……?」
「これがムンガムンガソンの子供で、ムンガって言うの。そんでちょっと大きいのがムンガムンガ。こいつらがなかなかどうして、俺達の役に立ってくれる」

 俺は経験値ではなく、あるスキルが欲しい。だから邪霊であり実体を持つムンガを狩りまくって、そのスキルを手に入れに来たのだ。

「あんたはムンガムンガソンにその投げナイフを投げててくれる? 適当にムンガを狩り尽くしたら、アイツも伐採してリセットするから」
「り、了解っ」
「近寄ったら一発でブッコロされるから、気を付けてみてもいいかも」

 ムンガムンガソン自体のレベルは六十四くらいだったと記憶している。ユニーク個体なので、マーマンのような雑魚とも訳が違う。レイチェルなど枝のビンタでポップコーンみたいに弾けちゃう。

「さぁ、やるぜ!」

 レベルで覚える戦技と違って、どのくらいで発現するかは不明だが、根気強くやっていこう。
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