コール様の仰せのままに ・名作RPGの超天才黒幕ボスに転生したゲーマーの末路

歌川博士

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第一章[超天才の生き様]

第十二話、世界の裏側を観測する者

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 二足歩行で近寄る木の化け物。本質的に邪悪で、本能的に生命を疎む大地の怨念である。

『ムンガぁ!』
「ムンガぁー!」

 邪霊に分類されるムンガだが、火や斧による攻撃に特効性が付加される。しかしそれではスキルが手に入らないので、刀でバッキバッキと割っていく。

「こ、コール君っ、まだぁ!?」
「終わったよぉ。じゃ、一セット目を終わらせよっかぁ」

 ムンガとムンガムンガが沸かなくなるまで、ざっと一時間。思っていたより遥かに効率が悪い。

「こんな化け物とホントに戦うの……?」
「【赤雷せきらい】」

 胸前に生み出した赤い稲妻。軽く放った小石へ発射されると、感電した瞬間に爆発的に加速して樹の幹を貫通する。
 ムンガムンガソンへと走った赤い線により、内から破裂して木っ端微塵となった。大親友ムンガムンガソンを一回、輪廻へ送っておく。

「……」
「早めの昼食でもいただきますか。さて、どのくらいで生えて来るかな」

 赤雷の彗星が生み出した突風に髪を乱すレイチェルは、顎が外れそうなくらいに驚いている。
 この魔法自体が強力無比だし、応用技なんて目にする機会などあろう筈もないから無理もない。ムンガムンガソンでは自慢にもならないから嬉しくないけど。

「……えっ!?」
「どした? 紫パンツでも汚したんか?」
「そうじゃなくて! れ、レベルがすごく上がってる気がするんだ……」

 それはそうだろう。だって君、物凄く雑魚だもん。

「れ、レベルが、四も上がった……」

 常識として、レベルは一ずつ上がっていく。二でも破格なのだから、レイチェルが腰を抜かしているのも分かる。
 早く育っておくれ。女や仲間として使えるならそれでよし。悪党となるなら俺の経験値に早変わり。一石二鳥のレイチェル育成計画だ。実は人もそれなりに経験値うまうまなので、なんとも期待してしまうところ。

「まぁ、その投げナイフは銀製で邪霊に有効だし、予想外にダメージが通ってたんだね。良かったじゃん」
「……そ、そうだね」

 さてさて、どのくらいで特性スキル【破魔の剣】が獲得できるかな?


 ~手に入れる、その当日~


 もはや眠気を覚えながらムンガを斬ると、唐突に【破魔の剣】を使えるような気分になる。

「……一年かかったんだけど」

 あの日から一年、もちろん毎日ではないが、レイチェルを誘ってムンガムンガソンに通い詰めてやっと手に入れた。方法が間違いであると何度も疑った。本当は入手できないのではないかと、幾度となく不安になった。
 継続は力になるよ、みんな。
 俺は涙した。報われて初めて、かけた時間と労力は努力に昇華される。昨日も泣いたが、今日も泣く。

「コール君、まだ戦闘中だよ!」

 何とも気の抜ける優しい声がかけられる。今やレベル五十を超えたレイチェルは、見慣れたムンガムンガソンと一人で戦えるまでに成長していた。というかレベルよりも、容姿と体付きが急成長していた。

「……! ふ……!」

 俺が美容関係を教えて顔面含め見た目は覚醒、体は勝手に育ってグラマラス一直線だ。それにムンガムンガソンが落とすレアドロップを売って金銭にも余裕が生まれ、服や飾りっ気にも金をかけられるようになった。その瞬間からコールに並ぶ美人になっちゃった。

「……もう倒していいよぉ。欲しいものがやっと手に入ったからぁ」
「本当かい? 日々の努力が身を結んだね、おめでとう」

 俺が育てたと言っては過言過ぎるが、レベルの方は俺が育てた。
 それにしても、やっと手に入ったか。欲しいスキル取得はレベル上げよりも優先されるだけあって、信じて倒し続けて良かった。ひょっとしたら、レベル差がありすぎて邪霊を斬るという経験が身に付き難かったのかも。
 【破魔の剣】、これは実態を伴わないものを斬るスキルだ。攻撃でも魔物でもそうだが、仮にゴースト系だと火魔法も効かないので必須スキルであった。

「では倒そうか……【投擲弾バレッタ】」

 指先を弾いて弾丸の速度でナイフを投げる。俺の【飛刀ひとう】よりも速くムンガムンガソンを貫通。

「――!」

 初日のフォームがドブにも思える華麗さで、次々と投げナイフを放つ。連射銃の速さでナイフが突き抜けていく。

『ムンガムンガソンーっ!?』

 最後のムンガムンガソンが、蜂の巣にされて儚く散った。レイチェルも強くなったものだ。短剣や投擲戦技を操り、今や国からも一目置かれる魔戦士となった。

「明日からはどうする? もうこの魔物に用は無いんだろう?」
「欲しい戦技があるんだけど、違法だからレイチェルは魔戦士業でもしたら?」
「付いていくよ、何処までも。君が言うなら悪事も辞さない。私は、君の飼い犬だからね」

 この一年でレイチェルは完全に俺を心酔してしまった。人間の裏側を見て、あまつさえ殺されかけ、直後に俺と出会って人生大逆転。すっかり俺無しではいられない体に。

「言っておくけど、邪魔するなら国の魔戦士も殺すよ?」
「構わないよ。君に命じられた時に躊躇ちゅうちょしないよう、殺人はスラム街の犯罪者で練習しておいたからね」
「えっ……何それ、勤勉」

 少しビビったが、想像よりも執着してくれているので使い易い。

「ま、そこの施設にいるのは悪党だから問題ないだろ。けど帝国の裏にいる結社関連だから巻き込まれたら危ないぞ」
「……聞くまいとは思っていたけど、どうしてコール君はそんな事まで知っているの?」

 神妙な顔付きで俺のゲームプレイとファンブックやワキぺディアから得た知識量に疑念を抱いている。
 そして手を出してはいけない裏の世界へ踏み込む事に怯えている。いや、今さらビビられても困る。この一年を思うと、彼女が話し相手になってくれていたからこそ、先の見えない作業を継続できたのだから。

「……この世界は元々、とても美しい。だけど人間と悪魔の醜い欲望により、世界までも穢されてしまっているんだ」

 なんかそれっぽい出だしから旨味をぶら下げなくては。話し相手を確保する為に。

 ♤

 コールは一年前から貪欲だった。命を救われたあの日から、彼を見続けてきた。天使のように美しく、悪魔のように強い少年。九歳にしてマーマンの群れを瞬時に壊滅。悪人を殺害する事に躊躇もなく、人間的に人格が完熟していた。
 そして何より、彼は力に飢えている。

「――この世界は元々、とても美しい。だけど人間と悪魔の醜い欲望により、世界までも穢されてしまっているんだ」

 何も持ち得なかった自分を救い、折れぬよう優しく育て、一年もの時間をかけて見守り、またこうして導きを与えてくれる。

「根っこから腐り落ちようとしている。この帝国でもね」

 両手を広げて空を仰ぎ、世界を感じながら未だに未知な少年は諭す。

「一つは“結社〈空の器〉”……帝国を裏から操っていると言っても過言じゃない。俺の得た情報だと、近々動き始める」

 面倒を見られる傍らで、コールは危険な裏の世界で情報収集なども行なっていたと知る。それも十歳の少年が、世の真理に誰よりも近付いている。

「大きなところで、もう一つ……それは《夜の王》」
「……!」
「そう。あの【影】の一つを持つ大魔王だ。アレも帝国を狙っている」

 悪魔の頂点に立つ大魔王の一角である《夜の王》。それは誰もが知る人類の天敵にして、最強の災害という認識だ。とても倒せるものではなく、交渉などで火の粉が降りかからないよう気をつけるしかない。

「この美しい世界には、そんな醜い奴等で溢れてるの」
「……」

 天使と悪魔の顔を持つ少年は力を欲する理由を明かす。

「だから俺が奪おうって話。結社の目論みも、《夜の王》の【影】も。その他の勢力が持つ旨味……経験値を吸い尽くしてやる。何故なら“悪い奴等”なんだから。世界も美しくなり、俺はより高みに至る」

 正義の心からなどと言われず、コールらしい納得のいく目的に何故か安堵していた。コールは巨悪が築いた牙城を奪い、世界を清浄化を求める。善意ではなく悪意による大掃除を企んでいた。

「……それだけの話だ。だから手伝ってくれたり、そのとき連絡先とかでも教えてくれてたら君にも旨味が――」
「私を好きなように使ってほしい」

 最愛の人と運命を共にする覚悟は決めてあった。本人から聞いていたわけではないがコールが闇深い事も知っていた。想像よりも遥かに規模は大きく、世界を相手にするに等しいがコールとならば立ち向かえる。

「ありがとう。ならこういうお手伝い的なものを頼むよ」
「私も共に戦う。コール君を助けたいんだ」
「ダメ~、危ないし俺の取り分が減るから」

 はっきりと拒絶される。一人よりも二人の方がやれる事も多く、効率的である筈なのに。
 しかし、コールに残った僅かな善意や愛情が自分に向けられている事に、言い返したくとも幸福感を感じてしまう。
 胸に込み上げる感情の熱さは、脳を焼いて気を狂わせてしまいそうな程だ。

「……分かったよ」
「それでいい。じゃ、今日は帰りがてらチキンを食べながら明日からの説明をしよう」
「そうだね、そうしよう。私はご主人様の仰せのままにだ」

 密かにある決意を秘めて、コールの腕を絡めてムンガムンガソンを後にする。
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