コール様の仰せのままに ・名作RPGの超天才黒幕ボスに転生したゲーマーの末路

歌川博士

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第二章[悪女の生きる道]

第三十八話、ロロとポポタン狩り

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「――ポポタンっ!」
『ポポタン!』

 ダルタニアンの指輪で子供の姿に戻った俺とロロは、踊りながらグレイポポタンを集めていた。変なおっさん長官から小難しい話を受けた翌日としては、いい気晴らしである。

「ポポタンポポタン?」
『ポポタン! ポポタン?』
「ポポタぁンっ!」

 ノリノリのガキ共が平原の魔城で踊り狂っているのを、フリーの魔戦士達は目を疑いながら呆然と眺めている。
 片や天使で片やガスマスクなのだから、注目を集めて当然である。現代の地球ならば、当たり前のように蔓延まんえんしている盗撮地獄に遭うだろう。

「よし、じゃヤルか」
『うむ、ヤルとしようか』

 ロロがいきなり液体タンクを背負って装着し、レオナルド印の除草剤噴射器を用意した。
 そして手元の引き金を引き、長いノズルから霧を散布し始める。

『はぁい、シュワぁぁっと』
『ポポっ!? ぼ、ポポぉぉ……』

 ……ロロはやはり天才である。ポポタンを狩るよと言ってから僅か数日で、ポポタンが植物系の魔物である事を研究し、有効な毒薬を発明。
 まず仮死状態に陥れ、それから毒素により徐々に壊死させていく。ちなみに限界はあるだろうがこれならば、爆発もしないし何より経験値がパーフェクトな形で入る。

 俺の頭を悩ませている問題はまさにこれだ。“経験値”……これはまさに経験することで次のレベルに到達できるのだが、ゲームの時と違って現実は甘くない。
 具体的に言うと、レベル差を感じ取って逃げたり怯えたりしてしまうのだ。魔物や悪魔達が。こんなにも愛している俺から。
 初めはそれでも経験値が手に入ったのだが、すぐに貰えなくなる。逃げる背を斬っても命乞いする頭を刎ねても、何も手に入らなくなってしまった。そんなものは経験したことにはなりませんよ、とばかりに。
 つまり群れでいる魔物などの、レベル上げポイントに使える場所では、俺が殺した場面を目撃しているから最初の一体しか向かって来ない。その一体分しか経験値が得られない問題が時折起こるのが、ここ数年である。

(やはりもっと立ち入り制限された高難度のポイントに行かなければと考えていたんだけどなぁ……)

 そのような俺の悩みもロロは一日で解決してしまう。

『ポポタンっ、ポポタン!』

 可愛い腰振りダンスでポポタンを駆逐していく超天才。安らかな眠りでポポタンをぶっ殺しながら、急速にレベルを上げている。こいつが本気を出したら【光】を持っているローズマリーの次に強いんじゃないか?

「そうかぁ、そういう抜け道があったんだね……」

 でももう俺はユニークポポタンくらいでしか恩恵を受けられないから、ここはロロにあげちゃう。
 ユニークポポタンは魔物の中でもトップクラスの恵みをくれる。特殊な魔法や莫大な経験値、アイテムを落としてくれるのだ。
 ここに出現するレインボーポポタンなんかも破格。今までゲーム時代も含めて三回しか出会った事はないが、奴は今の俺でもレベルが上がっちゃうくらいの莫大な経験値をもたらしてく――

『――おっ? お前は可愛いなぁ、虹色に輝いているじゃないかぁ……』

 その声に目を向ければ、ロロがうっとりしながら除草剤を振りかけていた。虹色に輝くポポタンに。

「……いやぁぁぁぁ!?」

 音よりも速く刀を取り出し、興味本位に眺める者達の視認速度を超えて疾走した。消え行くレインボーポポタンへヘッドスライディングしながら、刀を振る――しかし、間に合わず。

「フガッフ――!?」

 不時着した戦闘機のように無様に地面を滑走していく。顔から突っ込み、地面を抉りながら土を巻き上げ滑っていく。

『うわぁ!? お、驚いたぞっ! 何をしているのだ!?』
「ぺっ! ぺっ! 泥くっちゃったっ……。ちっ、うっせぇなぁ。もしかしたら爆発するかもってフォローに入ったんだよ。ロロへの愛だよ、愛」
『嘘なのは明らかである。我が輩は万が一にポポタンが爆発しようとも防御できるだけの白衣を着て来た。それは君も知っている筈だ。何故ならばさっき教えたからだ』
「……で、レベルは?」

 するとロロはそういえばと小さな手を握り、感覚に集中する。

『……うわっ! れ、レベルが……四十も上がってるぅ!』
「クソォォォォォォ!!」

 赤雷の爆ぜる拳を打ち付け、地鳴りと同時に地面を巻き上がらせながら悔しさを堪える。

『ポポタンっ、ポポタン! なんというっ、ポポタンは存外に素晴らしい生物ではないかっ! ふははははは!!』
『ポポタン、ポポタン!』

 爆ぜる地面と共に跳び上がりながら、ロロとポポタンは歓喜の踊りを披露する。
 こうして二時間余りで、ロロは本当にルーラーよりも強くなってしまった。

「ポポタぁぁぁん!」

 ガスマスクが外れ、満面の笑みを浮かべて空へと舞うロロは、まるで天使のようであったという。

「クソがっ! クソぉぉぉぉ!!」

 一方、大地を爆散させ続ける謎の少年は悪魔に違いないと、国軍に通報されたのだった。

 ♤

 レインボーポポタンによりロロのレベルが跳ね上がり、レベル五十一になってしまった。数十年に一度の奇跡なのではないだろうか。それが俺の目と鼻の先で発現し、目の前で奪い取られた。
 泡沫夢幻。なんと儚いことか……。

『ふっ、それでは存分に我が子の活躍を見守ろうか』
「もぐもぐ……」

 ついでに近くで実戦演習を行うルーラーの一人を見学して帰る段取りだ。
 イカ焼きの串を両手に、人工精霊【冰騎士アロンダイト】の活躍を眺める。ガラハッドもまさか生みの親であるレオナルド博士が見守る中で人工精霊を使っているとは思わないだろう。
 双眼鏡を手にがけの上へ寝そべって観察するロロは、興奮をひた隠しにして澄まし顔でその時を待つ。

「……なぁ、こういうところでパンツ脱いだら気持ちいいのかな」
『……』

 ちらりと『また何か言い始めた……』とばかりの嘲笑混じりの横目を向け、鼻で笑いながら視線を戻した。
 完全に馬鹿にしている。

「何で無視? なんだよ……まぁいいよ、実際にやってみるから」
『勝手にするがいい。君なら全裸にでも何でもなれるさ。人類の可能性を追求した上で牢屋に入って論文を纏めてくれたまえ。それが看守の塵紙として活用されたならば社会にも貢献できるだろう。まったく、くだらなギャぁぁーっ!?』

 自分でやるより前にロロのパンツを脱がして、気持ち良くなるか確認している。子供の姿だからなのか、色気は皆無だが真っ白な尻が大自然に挨拶している。こんにちは、と。

「どう? 気持ちいい?」
『そんなわけがあるかっ! 誰かに見られたらどうするつもりなのだ!』
「そっかぁ……じゃあ俺も止めとこ」
『それが通るものかっ……とりゃーっ!!』

 たかがレベル五十一の雑魚がパンツを穿きながら飛びかかって来た。なので【空踏み】で空中に上がって、キャンキャン吠える雑魚を嘲笑う。

『ぐぬぬっ……降りて来るのだ! いつもいつも一方的に巫山戯てばかりのアンバランス! 鬱屈が鬱屈を呼ぶ毎日! この私を怒らせるとどうなるか教えてやる!』
「アレ、アレ」

 右手のイカ焼きにかじり付きながら、逆の串で遥か遠方を指し示す。

『……ちっ、命拾いしたな』
「レオナルド博士、こわぁい。博士のイカ焼きも食っていい?」
『却下である……はむっ』

 双眼鏡を除くロロの隣に降り立ち、口元にイカ焼きを翳して食べさせながらガラハッドを見る。
 《虹色の魔法使い》とも呼ばれ、魔導書次第で様々な魔法を操れるガラハッドは、後にランスロットの娘の人工精霊となる【冰騎士アロンダイト】を宿している。ストーリーとして一度不適格とされて取り上げられることになっているのだ。それからアーサー達の協力もあって挽回し、最凶の人工精霊を手に入れることとなる。
 まぁ、確かに合点のいく強さだけどローズマリーに比べると微々たるものだ。ちなみにロロにはローズマリーを籠絡してヤバいものを手に入れる計画は伝えてある。内容を聞くなり嘘だろとばかりに暴れ回り、研究させてやる約束で協力を取り付けた。

『……おおよそ引き出せる上限値には程遠い。は~るかに程遠い。月とエスカルゴくらいには遠いと言えるだろう』
「あらら、ならガラハッドは不適格候補か?」
『いいや、むしろ想定以上だとも。安心したところだ。まだ一年なのだから、あんなものだろう。彼女は少なくとも当面の間は心配無用のようだな』
「……」

 ロロがそう言うなら間違いない。
 しばらくはルーラーは放っておいてもいいのかもしれない。先にローズマリーから【光】を取り出す方法を考えなければ。
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