コール様の仰せのままに ・名作RPGの超天才黒幕ボスに転生したゲーマーの末路

歌川博士

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第二章[悪女の生きる道]

三十九話、学校いってりゃ色々ある

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「ローズマリー様、お昼をご一緒しませんか?」
「……私は一人で食べるのが好きなの。遠慮して」

 軍学校二日目、午前は病気を理由にほぼサボりました。これからもサボります。いつも一人でいるローズマリーを誘うため、押し寄せるクラスメイト達に断ってから窓側一番後ろの席へ。
 だが素気無く断られてしまう。以前のコールが初対面時にローズマリーへ欲望剥き出しで接したからだ。未だに、とても避けられている。

「……断られてしまいましたか」

 ローズマリーの去る背を見送り、想定外の難敵に内心で舌打ちをかます。

「気落ちしないでください。コール様がお嫌いなのではないんですよ? ローズマリー様はお一人が好きなようなんです」
「代わりに私達と行きませんかっ?」

 ヴィヴィアンとクラスメイト達が改めて誘うので、本日の昼はこいつらと食堂で食べよう。
 けどこいつら、俺の大切なローズマリーに悪態吐くから斬り殺したくなるんだよな。

「コール様の気遣いをあんな風に言うなんて……!」
「私達も初めはお誘いしていたんですけどね。それどころじゃないとばかりに断るものだから……」
「なんか住む世界が違うのよって感じでね。同じ人間なのに、成績に至っては私達のが上なのに。ねぇ、コール様っ」

 悪女なのはそうだろうが、ローズマリーは利用価値がある。お前らと違ってな。

「僕は何も言えません。成績で言うなら、僕が最下位ですから」

 ていうか、お前らも最下位の兵士ソルジャークラスだろ。ルーラーでさえあの弱さなのに、何言ってんの? 悪魔の差し入れすんぞ、コラ。

「す、すみませんっ、そんなつもりじゃないんです!」
「勿論、分かっていますよ。ただ成績だけでは見えないものもあると思います。サラさんの魔法も対人に限定すれば、とても使えるものです」
「見てくれてたんですかっ?」
「見ていたというより、目を引くものでしたので。あれは成績にはなかなか反映されませんよね」

 リップサービスを口から垂れ流しながら、ラジオ代わりに聞いてもらいつつ階段を降りて一階へ。

「そ、そうでした、成績で人を見るのはやめますっ!」
「それは、私達への当て付けか?」

 渡り廊下を行き、別館食堂前で声をかけられる。振り返って目を向けたなら、そこには徒党を組む雑魚がいた。どの面もさして見ていて楽しいわけでは……嘘、ちょっと楽しかった。他人を怒らせるの大好き。

「……何の話でしょう」
「実力が正当に評価されるわけではないと、そう言っていただろう。私達、将位ジェネラルクラスに対する難癖としか思えない」
「道中、ずっと後ろから聞き耳を立てていたんですか……?」

 気配はもちろん察していたし、聞いていたのも知ってはいたが、まさか堂々と話しかけられるとは思わなかった。盗み聞きしていたのに、恥ずかしくないのかな。

「うぐっ……!?」
「それに誤解です。中には評価され難い項目に秀でている者もいるというだけで、皆さんが優秀であることもその努力も否定しているわけではありません」

 勝負こい、喧嘩売ってこい……俺はひたすらに請い願いながら、真摯な説得を試みる。

「……背後の奴等はそう思ってないみたいだぜ?」
「え……?」

 ビクビクと怯えていた女三人を見れば、俺に隠れて鋭い眼差しをくれている。ナ~イス、今日から贔屓にしてやるよ。

「つ、強さをかざして他人を脅すなんて駄目ですっ!」
「いっつも偉そうにして! 見下してるからじゃん!」
「コール様はルーラーの方々より強いんだからっ。痛い目を見るのはそっちよ……!」

 口々に日頃の不満をぶつける。そう言えばベディビエールを倒した俺に突っかかる度胸があるとは、将位ジェネラルクラスなのにえらく珍妙な話である。
 おまけにこいつら、俺を目当てに背後から付けていたのがまた気になる。

「コール様、きっとこの人達はベディビエールさんより強いコール様を倒して、人工精霊を手に入れたいんです」
「ああ、なるほど。ルーラーになりたいんですね?」

 第二世代の人工精霊の噂は、真偽不確かではあるが既に流れている。おそらく情報が漏れたのではなくて、憶測が的を射たのだろう。成功したのだから次をと考えるのも自然な流れでもある。

「……俺達とルーラーの違いなんて、人工精霊だけだ。レベルも人工精霊ですぐに上がる」
「認めるよ。ルーラーになりたいのだと認めた上で、先程の発言は聴き流せないとさせてもらう」

 ……なんか、物語と関係ない学校物語が始まってるんだけど。
 それに、主張は理解できるがアーサー達は潜在能力という面で、他の者達と一線を画している。当てれば勝てる人工精霊とは言え、素体として凡人であるコイツらが選ばれる事はない。

「そちらの選抜四名とこちらの四名での、団体戦を希望する」
「……る、ルールは?」

 めちゃくちゃじゃない? 将位クラス……俺等より二つ上に値するクラスの男子が四人、下位クラスの女子をボコボコにしようとしている。ルール次第だと、父親から【雷】を禁止にされていて使えないから負けるかも。

「誰か一人でも降参もしくは戦闘不能になるまでだ」
「……」

 セコい……恐ろしいまでに、セコい……実質的に兵士クラスの者を一人でも倒せば勝ちになる人格敗北者のルールに言葉を無くす。

「……すみませんが、あなた方の出世の為にクラスメイトは巻き込めません。僕一人で皆さんを相手にするのなら受けますが、今回は縁がなかったということで」

 ここまでの雑魚に負けることになれば、俺の精神は崩壊してしまうだろう。
 あばよ、狡猾なる学友達よ。

「行きましょう、おススメは何ですか?」
「コール様……」

 俺を盾に憤慨していた三人の背を軽く押して、食堂へと向かう。微笑んでやれば顔を赤くして従ってもらえるのでコール様様である。
 ああ、腹減ったぁ……。

「――娼婦の娘が軍学校によく入れたな」
「っ……」

 強張こわばって急停止したサラの身体が、細かく震え始める。背後からかけられた言葉に、心から恐怖しているのは明らかであった。

「えぇっとぉ? そうそう……キャロル・ワトソンだ。今も娼婦として痩せ細った身で働いていると」
「……」
「街の名前はニューワース、娼婦の多い例の街だ。興味のある人は行ってみるといい。運が良ければ格安で買えるらしい」

 娼婦の娘と聞き、後から来る者達が足を止めてニヤける男達の言葉に耳を傾けている。ニヤニヤとしており、俺が怒るのを待っているようだ。
 ……なんで? 別に俺がなんか言われたわけじゃないのに、何でこれで挑戦を受けると思ってんの?

「グスッ……っ……」
「さ、サラ……」

 友達であった筈のヴィヴィアンやグレースも、泣きじゃくるサラへ慰めの言葉を向けない。

 ルーラーの世代は特にそうだが、ここは基本的に貴族や金持ちが来る場所だ。稀にサラやヴィヴィアンのように、特異な魔法を持つ者は後から学費を給金から支払う事で、特別に入学できる制度となっている。
 つまり殆どは潔癖を尊び、娼婦にいい印象を持たない者ばかりということだ。

 しかし、貴族の中には女遊びや男遊びを毎晩行う輩がいる。不倫も当たり前で、隠し子もわんさかいる奴も。
 仕事としている分、娼婦の方が偉い。そんなことにも気付かないお馬鹿さん達。

「もしかしたら、そいつもお母上の真似をして小遣いを……」
「ッ、うぅぅ……!!」

 まだ正式に働いてもいないガキが、偉そうにサラを責め立てる。俺だって元会社員だ。段々とアル中魂に火が付いてムカムカして来た。
 そんな俺を知ったか知らずか、膝から崩れ落ちるサラに満足したのか、メモ帳をめくった男は次の標的に目を移す。

「……ほぅ、グレイス嬢の実家は破産寸前なのですか」
「……!」
「そちらのお父上は下らない投資の真似事で、大損を繰り返したのですねぇ」

 悔しさにスカートを握り締め、俯くグレイス。

「で、ヴィヴィアン嬢……彼女の父親は――」

 男は間を置いて、メモ帳を閉じる音を立ててから言う。

「――人殺しだ」
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