コール様の仰せのままに ・名作RPGの超天才黒幕ボスに転生したゲーマーの末路

歌川博士

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第二章[悪女の生きる道]

第五十話、コールは悪女を手に入れたい

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 深夜にも関わらず、ホテルの部屋でぽつぽつと会話をする。戦闘の余韻から興奮が残っているのか、ローズマリーに眠気はまだない。
 悪魔殺しを趣味とする俺も夜型なので問題なし。

「レベルも大幅に上がっただろうから、ヴィヴィアンにも楽に勝てるだろうな」
「……だから焚き付けるようなことを言っていたの?」

 狂気に染まるローズマリーを見たかったというのもあるが、護身の術を与えたかった気持ちも本当。
 膝に座るローズマリーの髪を撫でて無言で肯定する。揃って月を見上げ、早く寝てくれないかなとコッソリ願う。

「……何から何までありがとう」

 やっと震えが収まって来た手でカップの紅茶を飲みながら、小さく感謝を告げて来た。
 しおらしい。

「いやいや、どういたしまして。それでローズマリー、明日の朝に――」
「それ止めてもらえるっ……?」

 苛立ちから少しだけ乱暴に紅茶のカップをテーブルに置いて言う。
 けしからん。亭主関白というか飼い主爆発案件と踏んだ俺は、尻の一つでも握り締めて躾をすることを決意する。

「……あの時は“ローズ”と呼んでくれたじゃない。何故いまはローズマリーに戻っているのかしら」
「……」

 照れ隠しなのか、俯いたまま怒り気味に告げるローズマリー……いや、ローズか。ツンツンしていて見えていなかった可愛い一面も顔を覗かせ始めている。
 誰かが心の声を聞けたなら覚えておいて欲しい。これは踏み込まなければ失礼に値する。さっき一回洗面所で身嗜み整えてたし。

「……ローズ、あの時は戻って来てくれてありがとう」
「い、いいけれど……」

 紅髪を撫で付けてからローズの細い肩を抱き寄せる。緊張に再び体を硬くするローズが面白いので、抱き込むようにして暖を取る。

「……」
「……」

 ……なんかウルウルと潤んだ瞳で見上げてくる。
 それでもって目を閉じて軽く唇を突き出してくるもので、自然と俺の中に選択肢が幾つか浮上した。
 選択肢一、キスする。
 選択肢二、キスしないでエッチする。
 選択肢三、キスしてエッチする。
 選択肢四、激しいキスをしながらエッチする。

 ま、当然だが手を出さないなんて腑抜けた俺ではないので、選択肢は四を選ぶ。

「……んんっ!?」

 顎に手を添えて逃げ場をなくし、やたらと柔らかい唇に唇を重ねる。ばたばたと控えめな抵抗もすぐになくなり、淫らな水音とくぐもって漏れる声音のみが室内に生まれる。

「……!? ひやっ……ひやぁ……」

 舌を絡めながらも嫌々と言う割に抵抗は一切なく、巨乳な美乳を揉む。カッと熱くなるローズを更に責め立て、胸が弱いのかキスの影響か、快感に体を捻って肌を赤くする彼女をベッドへ連れ込む。

「キャ!?」

 明日には激昂した代表から部隊が派遣されるだろうから、楽しむだけ楽しまなければ。

 ♤

 翌朝。ホテルのベッドに並ぶ二人。夕食も食べず、気が付けば朝日が射し込んで……今やもう昼だ。

「……国外に逃げようかな」
「このっ……! クズっ……! 巫山戯ふざけるんじゃないわよ!」
「分かった分かった」

 裸で身を寄せ合い、軽く胸筋を叩いて来るローズを宥める。薄情だの責任がどうのだの言っているが、昨日の事を想起してしまい羞恥に耐えられないのだろう。柔らかく温かい雑魚の温もりを抱き締めて囁く。

「可愛い奴め。安心しなさい、これからは表立って俺が守ってあげるから」
「……」

 丸々と引き締まる尻を揉んだら……叩く手が止まった。顔を赤くして俺の胸元に顔を隠してしまう。

「昨夜は疲れてたのに悪かったな。ローズの反応が可愛くて意地悪しちゃった。男の子ってそういうところあるから」
「……別に、いいけれど」

 コールともなれば耳元で囁けば大抵が許されるというチート付き。これが一番の反則だ。
 代表? まだ早い? 知ったことじゃねぇ。手を出すんだよ、俺は。迷わないんだよ、俺って奴は。
 だが流石にいつまでも寝ていられないと、服を着てチェックアウトの準備をしよう。二人でベッドから抜け出し、ぎこちない動きのローズを気にかけながら身支度する。

「ところでローズ、栗鼠ラタトスク寮に入らないか?」
「……いきなり何の話なのよ。でもそこまで言うのなら行ってあげてもいいわ」
「そこまでは言ってないかもな。まだ一回だもんな」

 身嗜みを整えて洗面所から出て来たローズに提案すると、驚くほどスムーズに入寮してくれる。

「入るのは構わないわ。だけど栗鼠ラタトスク寮なのには何か意味があるのかしら……」

 鷲、山羊、蛇、栗鼠リスの四つの寮の内で、最も忌避される寮を選んだ事に疑問を抱くローズマリー。ソファの対面で紅茶を飲みつつ、どこかホラーな空気を持つ栗鼠ラタトスク寮への入寮に眉を顰めている。

 鷲を象徴とするフレースヴェルグ寮は、“大らかなる者”。
 山羊を象徴とするヘイズルーン寮は、“挑戦する者”。
 蛇を象徴とするニーズヘッグ寮は、“威厳ある者”を目指す者達の住まいである。
 しかし俺が選んだのは、栗鼠《リス》を象徴とするラタトスク寮。“小狡い者”が相応しいとされる不人気な寮だから当然だ。

「ほとんど学生もいないし……あそこはなんだか不気味でしょう……?」
「俺があの寮のハロウィンみたいな雰囲気が一番好きだからだな。馬鹿な学生達にはあそこの良さが分からないらしい」

 あの寮は“経験値が少しだけ多く入る”。入り方も緩くて、ほんの少し攻撃するだけで入ったりする。ダメージが入ろうが入らなかろうが、もらえたりする。そんな超お得な寮補正が働いてしまう。
 育てたい英雄をラタトスク寮に移して、ストレスと引き換えに急速に育てたものだ。

「んん~……あ、アレもだな」
「……先程から何を書いているのかしら。早くランチに行きましょうよ」
「デリカシー無視で訊くけど、そんなに腹が減ったのか?」
「……べ、別に」

 腹が減ったらしい。別に腹は減るものなのだから言えばいい。恥ずかしい事ではない。
 するとドタドタと廊下の方から大人数が駆けてくる足音が聴こえて来る。

「――動くな」
「ら、ランスロット……!?」

 想定していたデュエルではなくランスロット隊が踏み込んで来た。表情険しいランスロット達は、何食わぬ顔でメモを書き込む俺へ警戒心を高めている。

「ローズマリー様、その男から離れてください……」
「何故なのかしら。コールがどうしたというのよ」
「……その男は少なくない人数の人間と悪魔を殺し、あまつさえ非人道的な実験を繰り返していた疑いがあります」
「はぁ!? あ、あなたっ、自分が何を言っているかわかっているの!?」

 何か会話をしているが、そんなものはペンドラゴンだって随分と前から知っていた。適当な罪状でローズマリーを抱いた俺を罰したいだけだ。
 どうやらビアのことを本気で愛していたらしい。その娘のローズマリーは最愛と呼ぶに相応しい存在なのだろう。そうだろうなと確信しつつ抱いたんだけどね。
 それだけではない。昨夜に地震をも起こすくらいにやり過ぎたのもあって、軍にも俺への疑心が生まれたのだろう。

 つまり代表や幹部らは一度、俺を拘束して様子を伺うと決めたようだ。

「こいつの罪はそれだけではありません。そもそもローズマリー様を無断で連れ回し……事に及んだようだな」

 俺を庇うローズの様子から、事後と確信したらしい。
 しかし、お前だって不倫をしているだろう。しかも代表の妻と。

「……代表の娘に手を出すとは何と愚かな」
「あなただって不倫しているでしょう。しかも代表の妻――」
「ふぉおおおおっほぉんッッ! おっほん! おっほん!」

 爆音で咳払いをしたランスロットに構わず、思い付く限りに書き記したメモを気付かれないようにローズマリーのポケットへ忍ばせる。

(そのメモにあるようにレベル上げをすればいい。またな……)

 立ち上がる動作に紛らせ、ローズマリーへ伝える。

「どうせ俺の力は必要になる。それまでは捕まってやるさ」
「え……待ってっ、ねぇ待ちなさい!」

 小声でローズマリーへ微笑みかけて別れを告げ、ランスロット隊に捕まった俺はあれよあれよと監獄タルタロスへ。ちょっとだけ無実の罪で収監されてしまう。
 しかし数週間から数ヶ月程度ならば付き合ってやろうではないか。
 焦る気持ちはない。この物語において、コールというお助けキャラクターは必要不可欠なのだから。不可欠、だよね……?
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