1 / 12
1にゃす「白いもふもふが訪ねてきたんだけど」
しおりを挟む
ある休日の昼下がり。お日様はすっかり高く、昼食後のまったりタイムを昼寝でもして過ごそうと、日の当たる窓辺のソファーに腰掛けた。
入眠導入として、溜めていた雑誌を手に取り無造作にページを開く。通勤・着回しコーデOneWeek。そんな恋愛も仕事も楽しそうなOLを演じているモデルが羨ましい。通勤なんてスニーカーで行けたら幸せなのに、と思っていたら
ピッ ピンポーン
玄関のチャイムが鳴った。
ネット通販の配達も頼んでないし、こんな昼下がりに誰だろう、何かの勧誘だったら困るなと考えていたらもう一度チャイムが鳴った。渋々ソファーから根が生えそうになっていた体を起こし、玄関に向かう。OL一人暮らしのリビングから玄関なんて数歩だが、それが億劫でしかたがなかった。
恐る恐るドアスコープを覗いて見ると、誰もいない。
「新手の悪戯?」
呟いた瞬間、またチャイムが静かに鳴った。怪奇現象?子どもの悪戯?なんか怖い。
向こうは気配を感じているのか、チャイムは一定間隔で鳴るのをやめないが、半押しで上手くならない場合もある。
鳴り止まない。どうしたもんかと考えて、左手に携帯電話を持ち、思い切って出て見ることにした。いざとなったら電話をかける、なんなら大声をあげるのも手段のうちの一つだ。敢えて平気なそぶりをして声を出しながら玄関を開けた。
ガチャガチャ
「はいはい、いますよー」
目の前の光景に少し驚いた。
それは晴れ澄んだ昼下がりの空と、隣の家の玄関ドアだった。
つまり、誰もいない。やはり怪奇現象か?
「うにゃうにゃ、にゃすにゃす」
何か猫のような鳴き声が聞こえた。もう一度呟いた、今度は聞き取れる。
「ハンコ、、、にゃすにゃす」
下方から発せられた音に反応して目線をぐっと下げると、開け放った玄関ドアの影にもふもふが覗き込むようにいた。私の顔を確認するとささっと、突っ掛けサンダルを履いた足元のすぐそばに来て、包み紙をがざっと地面に置き、二足で立ち振る舞った。
もふもふは、わたしの太ももより少し下、ひさ上ぐらいの背丈で、白くて尻尾が生えている。二足歩行の猫なのかもしれない。だが、顔がなんかふざけてる。全体像は猫に近いのだが、SNSでみるブサカワとか愛嬌ある猫とも違う、パーツが少しづつ異なっていて腑抜け感を醸しだしていた。
「ハンコ、、、にゃすにゃす!」
驚きと観察で固まっていたら、沈黙を打破し強要してきた。とはいえ、遠慮がちにその小さな両前足、もとい両手には
にゃすにゃすQ便 受領ハンコ台帳
と、タイトルが手書きされたポイントカードぐらいの大きさの紙が名刺交換のように差し出され、下部には十五の四角いマス目が並んでいた。どうやらここに印を押せば荷物が受け取れるらしい。
「にゃす、ハンコおにゃす」
じっと見つめてくる。
頭の中は混乱してる。
兎に角、今の状況を進展させるには怪しいその紙袋を受け取る方法しか見つからず、決断をしてカードを受け取った。手にじんわりと汗をかいていた。
「ちょ、ちょっと待ってて、ハンコ押してくるね」
「にゃす、おまちするにゃ」
あの腑抜けた顔がもっと柔和になったと思ったら、四足になって自分の背中を舐め始めた。その仕草にこちらもほんのり気が緩んだ。
ま、とにかく可笑しなことに遭遇していることは確かだ。
でも、警察に言っても信じてもらえる案件ではないし、もしかしたら夢かもしれない。そう思いながら部屋に戻り、引き出しの一番上に入ってる簡易的なネーム印を手に取り、カードに印を押してもう一度玄関を開けた。
二足でそわそわと待っていた様子だ。
「はいどうぞ」
かかとを浮かせて屈み、カードをその小さな手に戻すと、印を眺めた。なんだか嬉しそうだ。よく漫画とかにあるぽあぽあした効果のような物が見える。見えた、気がする。
「たみこから、おとどけものにゃす」
やっと目的を言ってくれたようで、地面に置いた包み紙を手渡してくれた。包み紙は角が二箇所ぐらい凹んでいて、全体的に薄汚れいていたが、それより、小さなもふもふの手がとっても可愛くて、それどころではなかった。
その軽い包み紙を受け取ると、もふもふはくるっと回り二足でとてとてと少し歩いた後、風の如く四足で駆け出していった。
立ち上がろうとした瞬間、骨に響くほどの尻餅を搗ついてしまった。
ああ、今日もいい天気だ。
入眠導入として、溜めていた雑誌を手に取り無造作にページを開く。通勤・着回しコーデOneWeek。そんな恋愛も仕事も楽しそうなOLを演じているモデルが羨ましい。通勤なんてスニーカーで行けたら幸せなのに、と思っていたら
ピッ ピンポーン
玄関のチャイムが鳴った。
ネット通販の配達も頼んでないし、こんな昼下がりに誰だろう、何かの勧誘だったら困るなと考えていたらもう一度チャイムが鳴った。渋々ソファーから根が生えそうになっていた体を起こし、玄関に向かう。OL一人暮らしのリビングから玄関なんて数歩だが、それが億劫でしかたがなかった。
恐る恐るドアスコープを覗いて見ると、誰もいない。
「新手の悪戯?」
呟いた瞬間、またチャイムが静かに鳴った。怪奇現象?子どもの悪戯?なんか怖い。
向こうは気配を感じているのか、チャイムは一定間隔で鳴るのをやめないが、半押しで上手くならない場合もある。
鳴り止まない。どうしたもんかと考えて、左手に携帯電話を持ち、思い切って出て見ることにした。いざとなったら電話をかける、なんなら大声をあげるのも手段のうちの一つだ。敢えて平気なそぶりをして声を出しながら玄関を開けた。
ガチャガチャ
「はいはい、いますよー」
目の前の光景に少し驚いた。
それは晴れ澄んだ昼下がりの空と、隣の家の玄関ドアだった。
つまり、誰もいない。やはり怪奇現象か?
「うにゃうにゃ、にゃすにゃす」
何か猫のような鳴き声が聞こえた。もう一度呟いた、今度は聞き取れる。
「ハンコ、、、にゃすにゃす」
下方から発せられた音に反応して目線をぐっと下げると、開け放った玄関ドアの影にもふもふが覗き込むようにいた。私の顔を確認するとささっと、突っ掛けサンダルを履いた足元のすぐそばに来て、包み紙をがざっと地面に置き、二足で立ち振る舞った。
もふもふは、わたしの太ももより少し下、ひさ上ぐらいの背丈で、白くて尻尾が生えている。二足歩行の猫なのかもしれない。だが、顔がなんかふざけてる。全体像は猫に近いのだが、SNSでみるブサカワとか愛嬌ある猫とも違う、パーツが少しづつ異なっていて腑抜け感を醸しだしていた。
「ハンコ、、、にゃすにゃす!」
驚きと観察で固まっていたら、沈黙を打破し強要してきた。とはいえ、遠慮がちにその小さな両前足、もとい両手には
にゃすにゃすQ便 受領ハンコ台帳
と、タイトルが手書きされたポイントカードぐらいの大きさの紙が名刺交換のように差し出され、下部には十五の四角いマス目が並んでいた。どうやらここに印を押せば荷物が受け取れるらしい。
「にゃす、ハンコおにゃす」
じっと見つめてくる。
頭の中は混乱してる。
兎に角、今の状況を進展させるには怪しいその紙袋を受け取る方法しか見つからず、決断をしてカードを受け取った。手にじんわりと汗をかいていた。
「ちょ、ちょっと待ってて、ハンコ押してくるね」
「にゃす、おまちするにゃ」
あの腑抜けた顔がもっと柔和になったと思ったら、四足になって自分の背中を舐め始めた。その仕草にこちらもほんのり気が緩んだ。
ま、とにかく可笑しなことに遭遇していることは確かだ。
でも、警察に言っても信じてもらえる案件ではないし、もしかしたら夢かもしれない。そう思いながら部屋に戻り、引き出しの一番上に入ってる簡易的なネーム印を手に取り、カードに印を押してもう一度玄関を開けた。
二足でそわそわと待っていた様子だ。
「はいどうぞ」
かかとを浮かせて屈み、カードをその小さな手に戻すと、印を眺めた。なんだか嬉しそうだ。よく漫画とかにあるぽあぽあした効果のような物が見える。見えた、気がする。
「たみこから、おとどけものにゃす」
やっと目的を言ってくれたようで、地面に置いた包み紙を手渡してくれた。包み紙は角が二箇所ぐらい凹んでいて、全体的に薄汚れいていたが、それより、小さなもふもふの手がとっても可愛くて、それどころではなかった。
その軽い包み紙を受け取ると、もふもふはくるっと回り二足でとてとてと少し歩いた後、風の如く四足で駆け出していった。
立ち上がろうとした瞬間、骨に響くほどの尻餅を搗ついてしまった。
ああ、今日もいい天気だ。
0
あなたにおすすめの小説
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
黄泉津役所
浅井 ことは
キャラ文芸
高校入学を機にアルバイトを始めようと面接に行った井筒丈史。
だが行った先は普通の役所のようで普通ではない役所。
一度はアルバイトを断るものの、結局働くことに。
ただの役所でそうではなさそうなお役所バイト。
一体何をさせられるのか……
後宮薬師は名を持たない
由香
キャラ文芸
後宮で怪異を診る薬師・玉玲は、母が禁薬により処刑された過去を持つ。
帝と皇子に迫る“鬼”の気配、母の遺した禁薬、鬼神の青年・玄曜との出会い。
救いと犠牲の狭間で、玉玲は母が選ばなかった選択を重ねていく。
後宮が燃え、名を失ってもなお――
彼女は薬師として、人として、生きる道を選ぶ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる