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3.職質ですわ!
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お掃除を終えた凛音は、ホクホク顔で縁側に腰掛けていた。
膝の上には、ケルベロスから回収した「Aランク魔石」。
そして片手には、配信を繋ぎっぱなしのスマホ。
「皆様、見てくださいまし!この魔石、夕闇に透かすととっても綺麗ですの。これを台所に置けば、暗い夜道……いえ、暗いキッチンでも足元が安心ですわね。最高ですわ~~!!」
『マッスル課金:いや足元灯にするには高価すぎるだろw』
『考察班A:数十億の照明とか、石油王でも震えるぞ』
『ケーキ大好き:お嬢様、落ち着いて。庭の向こうに黒塗りの車が止まってる』
その時、静かな住宅街に不釣り合いな急ブレーキの音が響いた。
降りてきたのは防弾ベストを着込んだ「ダンジョン管理局」の面々。手に持った魔力探知機が、家庭用火災報知器のようなけたたましい警告音を鳴らしている。
「動くな!動くなあああ!!」
生垣をなぎ倒さんばかりの勢いで突入してきたのは、管理局の佐藤課長だ。彼は血走った目で周囲を見渡し、凛音に詰め寄る。
「おい君!ここか!?ダンジョンはどこだ!どこに開口したんだ!?」
「あら?お客様かしら。ダンジョン……あぁ、あの裏庭の『穴っぽこ』のことかしら?ちょうど今、お掃除を終えてフタ(物置の戸)を閉めてきたところですわ。お疲れ様ですわね」
「掃除!?フタ!?何を言っているんだ君は!ダンジョン入管ライセンスを見せろ!無許可の立ち入りは国家安全保障法違反だぞ!」
「ライセンス……?恐れ入りますが、わたくし昨日会社を辞めたばかりで、今は『離職票』なら持っておりますけれど。それで代用できませんかしら?」
『マッスル課金:離職票でダンジョン入るなwww』
『考察班A:お嬢様、会話が1ミリも噛み合ってないぞ』
『ケーキ大好き:佐藤課長、過呼吸になりそう。かわいそうに……』
「離職票で入れるわけがあるかあああ!!ランクだ!管理局の測定ではここはEランクのはずだが、この魔力波形は何だ!ランクを言え!内部の危険度はどうなっている!」
佐藤課長が探知機を凛音に突きつける。凛音は小首を傾げ、少し考え込んでから答えた。
「ランク……。左様ですわね、昨日のネズミさんに比べれば、今日のワンちゃんたちは少しだけ手強かったですわ。わたくしの体感ですと……『残業代が出ない土曜出勤』くらいのランクかしら。とっても不愉快(ハード)でしたわ」
「労働環境の話をしてるんじゃないんだよ!モンスターのランクだよ!あーもう!なんかしらんがここら辺からAランク級の反応が出てるんだよ!」
「A……。あら、あのアスパラガスの等級のようなものですかしら?でしたら、あのワンちゃんたちは身が詰まっていて『特選(Aランク)』と言っても差し支えないかもしれませんわね。……あ、もしかして、そちらの魔石が気になるのかしら?」
凛音は、膝の上の魔石を一つ、佐藤課長に差し出した。
「これ、すごく重たいんですの。文鎮にでもいかが?あ、お湯を沸かす間、ちょっと持っててくださる?」
「ぶ、文鎮……!?これ、国家予算クラスの魔石Aランク魔石だろぉこれぇ……!?待て、持たせるな!やだ怖い!怖いんだよ!計測値の数値が振り切れてるんだよおおお!!」
震える手で魔石を受け取った佐藤課長は、その重みと数値の暴力に、ついにその場に膝をついた。一方で凛音は、スマホのカメラを佐藤に向けながら、至ってマイペースに配信を続ける。
「皆様、見てくださいまし。公務員の方々も、わたくしの手腕に感動して、地面に膝をついてくださっていますわ!わたくしのニート生活、幸先が良いですわね。最高ですわ~~!!」
『マッスル課金:いや、それ絶望してるだけだからw』
『考察班A:登録者数、さらに伸びて7万人突破したぞ!』
『ケーキ大好き:佐藤課長、今日が厄日すぎるだろ……』
「佐藤様、お顔色が優れませんわね。やはり、お茶にしますわ。お茶請けは昨日買った安売りのバームクーヘンしかございませんけれど……あ、皆様、今日はこれにて配信を終了いたしますわ!公務員の方に『お掃除のコツ』でも伝授して参りますわね。それでは皆様、ごきげんよう!」
配信が切れる寸前、視聴者が目にしたのは、「不法侵入ですよ」と佐藤課長を優雅に叱りながら、バールで庭の石を片付ける(粉砕する)凛音の後ろ姿だった。
膝の上には、ケルベロスから回収した「Aランク魔石」。
そして片手には、配信を繋ぎっぱなしのスマホ。
「皆様、見てくださいまし!この魔石、夕闇に透かすととっても綺麗ですの。これを台所に置けば、暗い夜道……いえ、暗いキッチンでも足元が安心ですわね。最高ですわ~~!!」
『マッスル課金:いや足元灯にするには高価すぎるだろw』
『考察班A:数十億の照明とか、石油王でも震えるぞ』
『ケーキ大好き:お嬢様、落ち着いて。庭の向こうに黒塗りの車が止まってる』
その時、静かな住宅街に不釣り合いな急ブレーキの音が響いた。
降りてきたのは防弾ベストを着込んだ「ダンジョン管理局」の面々。手に持った魔力探知機が、家庭用火災報知器のようなけたたましい警告音を鳴らしている。
「動くな!動くなあああ!!」
生垣をなぎ倒さんばかりの勢いで突入してきたのは、管理局の佐藤課長だ。彼は血走った目で周囲を見渡し、凛音に詰め寄る。
「おい君!ここか!?ダンジョンはどこだ!どこに開口したんだ!?」
「あら?お客様かしら。ダンジョン……あぁ、あの裏庭の『穴っぽこ』のことかしら?ちょうど今、お掃除を終えてフタ(物置の戸)を閉めてきたところですわ。お疲れ様ですわね」
「掃除!?フタ!?何を言っているんだ君は!ダンジョン入管ライセンスを見せろ!無許可の立ち入りは国家安全保障法違反だぞ!」
「ライセンス……?恐れ入りますが、わたくし昨日会社を辞めたばかりで、今は『離職票』なら持っておりますけれど。それで代用できませんかしら?」
『マッスル課金:離職票でダンジョン入るなwww』
『考察班A:お嬢様、会話が1ミリも噛み合ってないぞ』
『ケーキ大好き:佐藤課長、過呼吸になりそう。かわいそうに……』
「離職票で入れるわけがあるかあああ!!ランクだ!管理局の測定ではここはEランクのはずだが、この魔力波形は何だ!ランクを言え!内部の危険度はどうなっている!」
佐藤課長が探知機を凛音に突きつける。凛音は小首を傾げ、少し考え込んでから答えた。
「ランク……。左様ですわね、昨日のネズミさんに比べれば、今日のワンちゃんたちは少しだけ手強かったですわ。わたくしの体感ですと……『残業代が出ない土曜出勤』くらいのランクかしら。とっても不愉快(ハード)でしたわ」
「労働環境の話をしてるんじゃないんだよ!モンスターのランクだよ!あーもう!なんかしらんがここら辺からAランク級の反応が出てるんだよ!」
「A……。あら、あのアスパラガスの等級のようなものですかしら?でしたら、あのワンちゃんたちは身が詰まっていて『特選(Aランク)』と言っても差し支えないかもしれませんわね。……あ、もしかして、そちらの魔石が気になるのかしら?」
凛音は、膝の上の魔石を一つ、佐藤課長に差し出した。
「これ、すごく重たいんですの。文鎮にでもいかが?あ、お湯を沸かす間、ちょっと持っててくださる?」
「ぶ、文鎮……!?これ、国家予算クラスの魔石Aランク魔石だろぉこれぇ……!?待て、持たせるな!やだ怖い!怖いんだよ!計測値の数値が振り切れてるんだよおおお!!」
震える手で魔石を受け取った佐藤課長は、その重みと数値の暴力に、ついにその場に膝をついた。一方で凛音は、スマホのカメラを佐藤に向けながら、至ってマイペースに配信を続ける。
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「佐藤様、お顔色が優れませんわね。やはり、お茶にしますわ。お茶請けは昨日買った安売りのバームクーヘンしかございませんけれど……あ、皆様、今日はこれにて配信を終了いたしますわ!公務員の方に『お掃除のコツ』でも伝授して参りますわね。それでは皆様、ごきげんよう!」
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