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汗と鉛の球技大会と、気付かされた想い
球技大会 午前の部
しおりを挟むそして3日後の朝。
日課のランニングを終えてアパートに帰った茜。
「ハァ…ハァ…、ごめんっ 起こした?」
「…ふゎ…あ、いいわよぉ…」
彼女がリビングに入ったところで寝室の障子が開いて母が起きてきた。
まだ眠い母はあくびが止まらない。冷蔵庫の横で水を飲む娘の姿を重たい瞼で見る。
「疲れないの?」
「てっとり早く目を覚ますには外に出るのが一番だから」
「でも目覚まし代わりに毎朝10キロのランニングなんて、朝に弱いのか強いのかわからないわ…」
「10キロも走ってないよ」
このランニング、娘が中学のころから続けているものだ。
10キロも走っていないと茜は言うけれど…
「たぶん9キロちょっと」
……ほらね?
わが娘ながら関心するわぁ
「女の子なんだから…ほどほどにね」
「──?」
茜はシャワーを浴びに風呂場に向かった。
キッチンで手を洗った母はやかんに湯を沸かし、茜のぶんも食パンをトースターに入れた。
「…ふん♪ふんふんふ~ん♪、♪~」
眠い自分をごまかすように鼻唄を始める母。
「それにもまして今日は早起きよねぇ…。
──あっ、今日は球技大会の日だったかしら」
確か、ついひと月ほど前に体育祭があったばかりだというのに、それとは別に2、3学年で球技だけの大会があるとのこと。
先日、学校から帰った茜がテーブルに置いた手紙の中身をこっそり見ちゃった母は、知っているのだ。
(球技大会でのご活躍、楽しみにしてます!っだなんて……あんなラブレター、母さんだって後輩からもらいたかったわ~)
「ふぅ、でも…今日も体育祭も、親なのに見に行ってやれないのが可哀想ね…」
ジュ~ ジュー
茜がシャワーを終えて戻ってくると、ちょうど目玉焼きを作った母がそれを皿に盛り付けていた。トースターから出てきたカリカリのパンの横におさまっている。
「ありがとう」
「いいのよ♪たぁんとお食べなさい」
茜は母のパンにだけマーガリンを塗り、食卓についた。
「母さん食べないの?」
「うん…!こっちも作ってから食べるわぁ」
母はもうひとつの卵を取り出し、フライパンに油をひきなおした。
「茜はどうせ、今日もあのバクダン鶏肉弁当を作って行く気なんでしょう?」
「どうせって(汗)」
「球技大会の日のお弁当くらい、玉子焼きを入れてあげようと思ってね!…ほら、お母さん料理苦手だけど頑張るわよ…!」
景気付けに腕によりをかける。
母の料理スキルを知っている茜は少し不安になったけれど、その気持ちが嬉しかったので、今日だけは頼むことにした。
──…
「頑張ってー!茜さんー!」
「久藤さーん!!」
「ちょっ…お前3年だろ!?ちゃんと3年を応援しろよ!」
「だってぇー」
午前中の競技はバレーボールとバスケットボール。女子がバレーで男子がバスケだ。
それぞれのクラス代表メンバーで構成されたチームが2、3年合同のトーナメントでやり合う。
そんなの3年が有利…と思うかもしれないが、この時期の高3は勉強が忙しく、2年チームが有利なのが毎年の傾向だった。
この試合にしても…
▽▽▽▽▽▽▽▽
2-4 : 10点
3-5 : 2点
△△△△△△△△
早くも点差が開いてきている。
まぁそれは、ひとえに彼女の実力ゆえでもあるのだが。
「──…」
スウ──ッ
サービスゾーンに立つ茜がボールを低く構えると、周囲の私語がやみ沈黙の一瞬ができあがる。
そしてボールがゆっくりと放り投げられ、落ちてくるタイミングで彼女のサーブが炸裂する。
「…くる!──…ッ、…!!」
アタック並みの速さで相手コートの地をとらえる茜のサーブ──。誰もまともに反応できない。得点の笛が鳴り、周りの歓声がどっと盛り上がりを増した。
「すごい!格好いい//」
「これで連続5点じゃない!?茜さま~!」
「いいぞ番犬っ…じゃなくて久藤!そのままやったれー!」
声援を送る生徒の中には、女子だけでなく男も混ざっていた。
体育祭の時もそうだったが、スポーツの大会となると男達の熱さは尋常でなく…番犬だろうが誰だろうが全力で応援するのだ。
5回連続でサーブをした茜は別の子と交代する。茜は自分のポジションであるフロントゾーンに移った。
「行けー久藤!次はアタックだ」
「うおおおー!」
4組男子の野太い声援…
「──…む」
それは別のコートでバスケをしていたこの男にも届いていた。
ドリブルで敵コートに攻めていた零が、ふと立ち止まる。
「男にまで応援されてる…?」
彼は茜の姿を探すのだが、間の人だかりが邪魔で女子のバレーはそこから見ることができなかった。
「よそ見するなっ!!」
「あ、ごめん」
何故か立ち止まった零。彼のボールをとろうとした相手だったけれど、零は華麗にターンを決めてそれをかわす。
そして別のプレーヤーが詰め寄ってくる前に、3ポイントラインからボールを放った。
放物線を描いたそれは布のすれる音をたててゴールへと吸い込まれる──
「きゃああー!!」
「まただわ篠田くん♡」
「上手すぎ~♡カッコいいー///」
悲鳴をあげる者
うっとりする者
写真を撮るのに夢中な者
その場にいる女子は全員、零の姿に釘付けだ。
▽▽▽▽▽▽▽▽
2-1 : 36点
2-2 : 10点
△△△△△△△△
「……っ」
そして…零への歓声が、相手のサーブを待つ茜の耳にも運ばれてきた。
(篠田もプレー中か……)
「篠田くんすごぉーい♡」
「きゃあああ!!」
「──…。…(イラ)」
茜も悲鳴の方向に目を向けるが、同じく人だかりで何も見えない。
「茜さんっ、──ごめんそれた!」
「‥‥‥‥」
セッターの4組のバレー部女子が、レシーブしたボールを茜におくる。
しかし彼女の位置より後ろにそれてしまったようだ。
タタタッ
茜はボールの軌道を瞬時に判断すると前のめりだった姿勢を後ろに反らし、小さく後退する──。
そして斜め後ろに飛び上がった。
ドッッガアアアーーーン!!!
「・・・・」
次の瞬間、茜が繰り出したアタックは
あんな感じの効果音がピッタリなくらいの…破壊力抜群のものだった。
「‥‥!!(ガタガタガタガタ)」
茜はけっしてアタックを女に当てないが、すぐ横をボールがかすめた3年の女子は、恐怖すら感じているようですくみあがっている。
「な、なぁ…久藤なんだが機嫌悪くねえか?」
「…!いや(汗)気迫だろ、気迫!」
同じようにすくみあがる周りの男子達は、一時だけ応援を忘れて、普段の番犬の恐ろしさを思い出していた。
ドガアーーーン!
「…あ…茜さん、さすが…//」
女子の目は変わらずハートマークだが。
「きっ…気迫か…(汗)」
「俺、あの目付きから殺意のようなものを感じるんだが」
「…ゴクリ」
このあと、茜のチームは鬼の強さでトーナメントを勝ち上がっていくことになった──。
ピピーー!
「試合終了!勝者は2年4組」
「女子バレー優勝は、2年4組ー!」
──そして優勝
パチパチ パチパチ……
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