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第六章 (レオ回想編)
我が主は怪盗です
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…窓を開ければ、林からの風が何かを運んできた。
「どうかなさいましたか、クロード様」
「──…獣の鳴き声が聞こえる」
「…?…それは」
冬の近づいた今、吹き込む風は身体に冷たい。であるのにクロードは窓辺で外を見ている。
「…鹿の鳴き声でしょうか」
「……ふん」
「狩りに出掛けますか?」
「いや」
レオの提案を聞いいたクロードは、自身のブロンドの髪をなびかせ鼻で笑う。
「そんなか弱い獣を狩ったところで、何の面白味もありません」
「……」
「狙うならもっと大物がいい。自らが攻撃を受けるなど夢にも思っていないような獣が、ね」
「ご存知でしょうかクロード様。かの国には虎という名の猛獣がいるそうですよ。貴方はいつも退屈だ退屈だと怠けているのですしせっかくですから暇つぶしにお出掛けなさい。深い森で遭難して助けも来ない絶望的な状況で猛獣に追われ泣き叫べばその子供離れした気持ちの悪い性格も少しは」
「──珍しく早口かと思えばいちいち勘にさわりますね。レオ」
「…失礼いたしました」
建物の外で花壇の手入れをしていたレオは、窓越しにクロードに話しかけながら前を横切る小さな虫を眺めていた。
自分より大きな死骸をせっせと運ぶその虫は、人間の視線に気がついたのか少し警戒した…ようにも見える。
「心配せずとも現れます。あなたを飽きさせない、あなたの心を振り回す何者かが──」
「…私を振り回す?」
「理屈ではないのですよ」
…ピタ
虫の動きが止まった。
「…そうそう、これから何をなさるのもクロード様の勝手でございますが」
「…?」
「後片付けまで美しくしてこそ紳士の行いですよ」
私があなたの尻拭いをするのは、一度きりだ。
レオの小言を聞いた小虫は、慌てて餌を捨てて逃げていった。
~レオ回想篇 完
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