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禁断の森
禁断の森_1
しおりを挟むそれはちょうど夕暮れ時であった。
整備のいき届いているとは言えない荒廃した一本道を、数頭の馬に乗った男達が慌ただしく駆けていく。
人の往来を感じさせないその道は、草が多く顔を出し、無造作に転がる石で馬たちの蹄の邪魔をした。
それでも馬を操る男達は速さを変えず、蹴られた礫が跳ね上がる。
周りを生い茂る木々に囲まれたこの薄暗さで、彼等の様相を識別するのは難であるが──
どうやら──
その集団にいるのは、男だけではないようだ。
「よぉし!ここまで来りゃあ大丈夫だな」
先頭を走らせていた男が、しわがれ声とともに手綱を引いて馬の足を止めた。
その男に続くのは 五、六人の、そろって気性の荒そうな男達だ。
「へへっ、そろそろ休憩してやらねぇと…」
「コイツらも疲れてきた」
馬の背を叩きながらひとりが言う。
ある者はゴキゴキと肩を回し
ある者は背後を不安そうに見渡し
「それに……へへっ」
またある者は、無精ひげをまとった口許をにたりと邪悪に歪める。
その目線は自らが抱えた大きな荷袋に向いていた。
「こいつも…な…!! 」
男はさも愉快げに、まるで蛙がしがみついているかのような醜い鼻から荒く息を吐きながら笑った。
男の声に反応して、腕に抱えられていたその荷袋が僅かに動いたように見える。
汚ならしい布でぐるぐる巻きにされた、不自然な荷袋──。布からはみ出ているのは足だ。中に巻かれているのは人で間違いないようだ。
小さめな足は、女性のものだろう……。
しかも男が片手で抱えていられるのだから、その華奢さも容易に想像することができる。
「こんなとこで窒息死されても困るからなぁ」
「ちゃんと生きてんのか?ぜんっぜん動かねぇじゃねぇか」
馬の背を離れた男達は、がやがやと荷袋に集まり出す。
そして蛙鼻の男が乱暴に地に転がすと、我先にと、固く縛った紐を解いていった。
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