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赤い屋根の家
しおりを挟む本当に、優しい子よねぇ、と
そう付け加えて、おばさんは家に帰っていった。
赤い屋根の家の、隣の隣の家だった。
俺は言葉を失っていた。
やたらめったら鳴く仔猫の声以外
この閑散とした住宅街は、沈黙に包まれていた。
……君がそこで流してる涙も
たぶん、誰にも届かない悲しみも
周りがこれだけ静かだと、俺には聞こえるし、俺にだけ感じられる。
君はついに耐えきれなくて、やっとたどり着いた自分の家に背を向け、走り去った。
その手から、中身の無くなったココアの缶が滑り落ちる。
カラカラと虚しく転がって、残された俺の足元で止まった。
───
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