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一章
第二十三話「エネルギー充填200%」
しおりを挟む水しぶきが豪雨のように降り注ぎ、滝のようなどしゃぶりがしばらく続く。
水しぶきで、これだ。
その水量が、その存在の圧倒的な質量を物語っていた。
――ブシューッ!!
人型のロボットに見える、それのいたる所から蒸気が吹き出している。
さらに、いたる所で巨大な歯車が回転していた。
隙間にある筒状のなにかが、ピストン運動を激しく繰り返し、巨大なソレを生き物のように感じさせる。
――巨大
一言で言うとそれなのだが、その言葉が指し示す質量は曖昧だ。
目の前のものを表現するには、納得がいかなかった。
原寸大、機動ロボット?
奈良の大仏?
ブラジルにあるキリスト像?
そんなのは大きいが、あの宮殿にあった中庭の巨像ぐらいの大きさだ。
大きいが見たことがある。大仏は高校生の時、修学旅行で見た。
――超巨大
そう、それだ。
一文字しか追加してないが、それがたぶんあってる。
しょうもない俺の語彙力では、そのぐらいしかでてこない。
元の世界でも二次元でしか見たことがない、想像を絶する超巨大な人型ロボット。
それが海にブッ刺さっていた。
この橋は、瀬戸内海にかかる橋や山中の高速道路のように、橋から下を見ると高いなと感じるくらいの高さで少し怖い。
今居る場所から海面は、そのぐらいの高さなのだ。
なのに、なのにだ。
さらに俺たちより上、見上げて首が痛いぐらいの位置に頭があるんだぜ。
俺たちの位置は、丁度やつの胸当たり。
そのぐらいにいる。
そりゃ、口も開けて見ちゃうだろ。
『危ない!! 攻撃がきますッ!!!』
ロボの体中いたる所にある歯車が高速回転を始める。
工場見学で見たことあるやつ。
製紙工場の紙を撒いたローラーを思い出す。
大きな機械が動くさまは、それに挟まれ潰されるのではないかという恐怖を呼び起こさせた。
超巨大ロボが、腕を振り挙げる。
それは大きさの都合で、遅くはないのにゆっくり動いているようにみえた。
腕が発光する。
同時に振り降ろした腕が、テロで崩れる貿易センタービルのスピードを彷彿させる速度で落ちてきた。
凄まじい轟音とともに、俺たちの逃げていた方向。
陸地へ向けての橋が切断される。
「うわああああああああぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」
「きゃあああああああああぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」
今日、何度目になるのだろうか。その悲鳴をあげてた。
橋が傾いている。
その傾斜は今振り下ろされた腕の方に下がり、俺たちはガリガリと音をたて斜面を滑る。
咄嗟にギャルを掴み、抱き寄せた。
柱に縛り付けてあるワイヤーに力がこもる。
「ヤバいって、ヤバいってーっ! あわわわゎゎ」
腕の中でギャルが震え上がっている。
無理も無い、俺だって少しちびっているし。
俺たちが落ち着く間もなく、やつはもう片方の腕を挙げていた。
雪崩落ちる発光した腕。
鳴り響く轟音。
さっきとは、逆の方向が切断される。
金属と金属がぶつかる音。
メキメキとも違う。
ズシリと重いものがぶつかり合う音、高い金属音が混じった重低音が響くたびに足元は揺れる。
今度は傾斜が逆につき、先ほどまでできていた傾斜が元の角度ぐらいに戻った。
「きゃあああああああああぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」
ギャルの悲鳴が止まらない。
ロマンティックどころの騒ぎじゃない。
――ブシューッ!!
超巨大ロボの駆動音も、止まらない。
その超巨大な体をかがめ、顔と思われるパーツを俺たちの立っている橋にヌッと近づけてきた。
――ず、頭突きじゃないよな。
そのスピードとデカさ、迫力で、威圧感が半端無い。
たぶん攻撃ではないのだろうが、また少しちびってしまう。
さっきの分とあわせれば、もう完璧ちびってるといっていいだろう。
近づいてきた顔、その中央にあるモノアイが俺たちを捜し左右に動いた。
俺たちの方向に、その目を向け止まる。
そして、大気が振るえた。
「ガルニア帝国に仇なす、異世界人よ!!
神罰により、追いつめられた気分はどうだッ!!」
拡声器でも付いてるのだろうか、どこかで聞いたことある声が大気を振るわせ響き渡る。
『魔力により、音声を拡声していますね』
イノリさんが、聞いてもいない俺の疑問に答えてくれる。
『フリーデリケです。皇女であり軍人の――
あの巨像の前で話した人物ですね』
「ああ、あの宝塚の男役みたいな……」
イノリさんのピンバッチを帽子につけた、白い軍服姿を思い出す。
美人だが、何というか、気の強そうな顔だった。この様子だと実際強いのだろうけど。
「ガルニア帝国の守護神、水のケルビムまで投入させるとは敵ながら見事ッ!!」
……これって、俺たちに向けて言ってんだよな。
即、攻撃を仕掛けず、話しかけてくるということは話し合いでなんとか解決できるかもしれないな。
少し希望が顔をのぞかせた。
「先代勇者が討伐せし、海神ケートスの妖魔結晶石を核に作られた水のケルビム!!
この守護神は大帝湾内の海水を、自在に操ることが可能であるッ!!
これ以上逃げ回ることはできぬと、覚悟せよッ!!」
……こりゃ、ダメかもしれない。
少し出かけていた希望が、すぐさま顔を引っ込める。
「当然お前も知ってるんだよな」的に色々言ってくるが、こーいう話し方をするヤツが人の話を聞いた試しがない。
ソースは昔読んでいたライトノベル。
「あ、あれって、なにいってんの……??」
そういえばギャルちゃん。
言葉わかんなくなってたんだよな。
腕の中でビビってたギャルが、怯えた声で聞いてくる。
むむ、しかし「なんていってるの?」って、そう言われましても――
ねえ。
そうこうしている間にも、俺たちが聞いてないことなどおかまいなしに、口上を述べている皇女さま。
ね、答えなんか求めてないでしょ。
つーか、なんだか長々と勇者の英雄譚、偉大さを語り始めた。
少し涙声を交え、自分の言葉に酔っている節がある。
「お前たち、逃がさんぞ――
的な感じ? かなぁ」
たぶんそうだと思う。
いや、そうだよな。
「もっと長いじゃん……喋ってるの……」
これを全部訳すとか、勘弁してくれ。
『今のスキに、逃げるのはどうでしょうか?』
なるほど、イノリさん。天才か。
「わっ、莉奈も、それに一票」
「異論は無い。俺も一票」
『全会一致ですね、バイクに乗ってください』
なるべく派手な動きはせず、柱にくくり付けたワイヤーを解き、バイクに乗る。
『分断された橋は――少し距離が遠いですね。
今居る橋の、端から端までを助走に使っても届くかどうか……』
ジャンプ台とかあれば違うかもしれないが……見た感じ、それにできそうなものは無い。
重量を軽くするかな――
でも、いらないものは……。
俺は後ろにしがみついている、ギャルを見た。
「ななな、なによ! 降りないわよッ!?
莉奈そんなに重くないし。
おじさんの、このお腹のせいじゃん!!」
こら、俺の腹を摘むな。上下に揺するな。
『問題は重量だけではありません。
出力を十分に活かせるだけの、距離がありませんので……
Xanthosを使った、体当たり系の技があります。
その勢いを出力にプラスし、飛距離を稼ぎましょう』
「そんなのがあるんだ――了解、イノリさんに任せるよ」
『しかし一つ問題が。
ケルビムによる大津波の際に使用したシールドによって、エネルギーが不足しています。
今から太陽光エネルギーと超小型高β核融合炉を使いエネルギーを補充しますので3分間。
いえ、2分間時間を稼いでください――』
「了解。なんか、さらっと怖いワード入れてきたけど、とにかく今は聞かなかったことにするよ。
ところでイノリさん、充電前に悪いけど……
俺の声、拡声器みたいに大きくできる?
向こうに聞こえるように」
――フォン
目の前に拡声器のアイコン。
その下にあるメータが上がっていく。
気がつくと先ほどまで選挙演説よろしく、何かを語り続けていた声はすっかり鳴りを潜め、周囲は風の音が聞こえるのみとなっていた。
「ひっ!」
ギャルが短く悲鳴を。
静かになった超巨大ロボの目が、じっとコチラを見つめていることに恐怖を覚えたようだ。
表情などないのに、こころなしか怒っている様に思える。
やましいことがあると、そうじゃないのにそう思えることはあるが――
うん、やっぱ、怒ってるね。
「偉大なる帝国の皇女、フリーデリケ様。
貴方のお話、大変興味深く、拝聴させて頂きました……」
とりあえず時間を稼ぐため、話しかける。
「うるさっ!」
ギャルが、非難の声をあげる。
俺の声が拡声され、周囲に響き渡ったからだ。
たしかにうるさい。
でも、これなら相手にも聞こえるだろう。我慢してくれ。
「フリーデリケ様の知略により追いつめられた我々は、ただアナタに感服するより仕方ありません」
メカの目。レンズが少し揺らいだ気がする。
「コレより捕われる我々に、少しばかり情けをかけて頂けるのなら、参考までにお聞きしたいことがあります」
たいしたことは言ってないが、わざとらしく男装女子をアゲ倒す内容を盛り込んでいるのがわかるだろうか。
自己顕示欲の強い、姫様のソレを刺激してみる。
「そのケルビムのような力を持った帝国が、何故勇者の力を必要とし、召還したのでしょうかお聞かせください!」
しばしの沈黙が漂う。
俺たちは静寂を長く感じるが、ヤツを刺激しないよう、こちらからは動かないようにしていた。
そして、それが功を奏したのか――
「よかろうッ!!
どのみちココでお前たちの命も潰える。
大人しくここで討伐されるのなら、最後にその質問に答えてやろうッ!!」
乗ってきた。
やっぱり話したいんじゃんね。
男装女子が勇者様アゲなのは、さっきからの口上で十分わかっている。
勇者関連の話を聞けば、乗ってくるのはわかっていた。
「たしかに我が帝国はすでに強大な力を持ち、この守護神により守られているッ!
しかし、この水のケルビムはその強大な力、海水を操る力により、要塞都市ブランブルクを海より浮揚、制御する要も果たしているのだッ!!
ゆえに帝都より、長距離、離れるわけにはゆかぬッ!!」
どうだ、参ったか感をたっぷり含ませ、彼女は言いきった。
その情報、非常に助かります。
どのくらいの距離、離れれば追ってこれないのだろう。
他国に進行できないぐらいだ、おそらく活動範囲はこの湾内のみの気がする。
「あの巨大な街を浮揚させてるなんて、なんて力だッ!」
とりあえず、なんだってーっ的な反応を返しておく。
よいしょ、よいしょ。
「その核に使用されている、妖魔を倒すなんて勇者はなんて凄いんだッ!」
勇者アゲを「なんて日だッ!」的な言い方で。
「そう、我が曽祖父、勇者ハルト カトゥーは偉大な英雄だッ!
それを、それなのにお父様はッ!!」
うっわ、勇者の名前を聞いて確信する。やっぱり日本人じゃねーか、それも相当、俺と同じ部類の。
なんせイノリさんのピンバッジもってるんだからな。
だが、俺の買ったやつには、あのピンバッジはついてない。おっぱい型マウスパットだ。
と、するとあれは――
思い出した!
コンシュマー版、ドキドキぱらだいす 私立 魔導聖女学園の初回特典のものだったのか。
「しかし、やっと私は帝国の悲願、勇者召還を果たした!
これから帝国は私の手によって復活する!
崇高なる我が行い、英雄譚は、時代は移り変わりても繰り返し、舞台で演ぜられることになるであろうッ!」
「フリーデリケ様ッ! お聞きくださいッ!
私も、勇者と同じ世界から来た彼らの同胞ですッ!
勇者の力はありませんがどうか、その矛をお納めくださいッ!」
しばしの沈黙。
俺の言葉に、フリーデリケが反応している。
話を聞く気ができたのだろうか。
「その証拠に私の乗って来た、あの船内をご覧ください!
おそらく、その帽子に付けている女神の写し絵は、勇者から受け継がれたものではないのですか?
荷物の中に、フリーデリケ様の胸に付いているそれと同じ女神を描いたものが見つけられると思います!!」
必死に語りかける。
俺のバックの中には。ゲームそのものが入っている。
あれを見てもらうことで、この人の祖先の勇者と同じ世界の者だとわかってもらえるはずだ。
――スッ
頭上の太陽が遮られ、影が落ちる。
――ドンッ
一拍のちに大きな揺れが、重低音とともに俺たちを襲う。
「きゃあああああああああぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」
おなじみの、ギャルの悲鳴。
超巨大ロボの両拳が、俺たちの立っている橋を打ち据えたのだ。
今度は発光している腕ではなかったので、橋を切断した時ほどの破壊力はない。
だからといって、被害は軽くすんでいるわけではないが……。
打ち付けられた腕の巨大さから、質量は半端ではないのがわかった。
いまだ、轟音とまき散らされた破片、それらと同時に足元から伝わる大きな揺れが俺たちを襲っている。
不安定な足元の揺れ。
それを踏ん張っているのでその場から動くことができない。
破片と風圧は、容赦なく俺たちを組み伏せようとした。
衝撃が橋を揺らしきると、俺は地面に膝をついていた。
ギャルなど結局その力にあがらえずに突っ伏してしまっている。
「いたた。何がおこったのよ……」
バイクは倒れ……
――よかったギャルは挟まれてはいない。
俺は、すぐに体勢を立て直すためバイクを起こした。
「……そうだ。
貴様の乗っていたあの船の中から出てきたもの――
我を……、我が祖先を愚弄するにもほどがあるッッッ!!」
怒りのあまり震えているのだろう、彼女の声。
フリーデリケ様、なぜか激おこプンプンまるのようだ。
「ああ……。
代々、我が家系に伝わりし女神……、彼女のあのような姿……。
思い出すたび恥辱を呼び起こされ、この体が焼かれるようだ……」
――あっ。
ゲームのパッケージを思い出す。
確か、魔法少女たちが学校の階段で集合している――
いやいや、表じゃない。あれだ、裏か――
思い出すのは魔法少女たちの、あられもない姿。
――やばいね、やばいよね。絶対それだよね。
激おこプンプンまるの原因って。
あー、自分たちが女神って信じてたものの、あんな絵って、しかも、おっぱいマウスパッドとか入ってたし。
やばい、やばいじゃん。
「もはや貴様には、地獄すら生温いッ!!
その命をもってすら償えない罪、我が鉄槌にて天誅をくだすッッ!!」
ロボの顔。
モノアイの前に無数の光ができた。
光がギュギュッと圧縮され、限界まで達すると弾かれる。
無数の光の矢が、雨あられと俺たちに降り注いだ。
「ぐはあああああぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」
「いやあああああぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」
俺たちは膝をつく。
体中を痛みが巡り、体が悲鳴をあげた。
貫通はされてないが、ここまでで受けてきた、どの機銃の雨よりも当たりがきつい。
一度に沢山受けるのは絶対危険だ。
さっき五~六発受けてしまったが、痛みの感じは、ダメージを危なく通しそうな勢いだった。
プロテクションが、効いてないからというのもあるかもしれないが、まともに全て受けるのはヤバいのがわかった。
ギャルは倒れて気を失っている。
また、無数の光が浮かび上がっていた。追撃か。
ギャルに駆け寄り、ヘルメットの上からだが頬をはった。
「う、うぅ……ワタシ……なに――」
目は覚めたようだ。が、意識は朦朧としてるよう。
やばいな。
光が圧縮され緊張感が高まる。
光の矢の第二波が到来するのは、時間の問題だった。
こうなったら。
「ぬおおおおおぉぉぉぉぉっっっっ!!!!」
色々な破壊により、壊れた橋からむき出している、足元の鉄板。
それに手をかけひっぺがす。
お、重い。
引きはがした鉄板は、想像以上に大きかった。
重い、重い、重い、重い、重い、重い、重い、重い、重い、重い、重い、重い、重い、重い、重い。
だが、文句たれてる暇はない。
足と腰の力を使い、伸び上がるように鉄板を立てる。
そして動かないよう、両手と背中で押さえた。
キーンと金属がはじける音。
再度、降り注ぐ光の矢が、地面や立ち上げた鉄板を削る。
――ギャン
――ガンッ
――ガンッ
跳ね上がる、周囲にある鉄板やレール。
強い力が加わり、それらが変形していく様は、否が応でも恐怖を呼び起こさせる。
――ギャン
――ガンッ
――ガガガガガガンッ
――ガガガガンッ
――ガガガンッ
顔の横――
背にある鉄板が、衝撃とともに盛り上がる。
光の矢が当たった所が、こちらに飛び出たのだろう。
それに続けて、いたる所が盛り上がった。
一度、この威力を受けたんだよな。
良く大丈夫だったな……。
背筋に冷たいものが走る。
――ギャン
――ギャン
――ガンッ
――ギャン
――ガンッ
決して、直進だけでない、光の矢は横からも飛来する。
警戒の薄い方向からくるものに、体の反応が追いつかない。
思わぬ方向から、力が加わり、抑えていた鉄板が弾き飛ばされた。
――バギャンッ
鉄板の盾は、足元へ。
むき出しの俺たちに、まだ止まない光の矢が降り注いだ。
――ヤバい。
そう思った矢先。
自身とギャルを淡い光が包み、矢の力を僅かに削いだ。
割れるような音がし、プロテクションがはがれるが、威力の弱まったダメージは、かろうじてそれらを耐えることが可能で、その場を凌ぎきる。
「よかった……使えた……」
両手を前に突き出したギャルが、つぶやいた。
そうだ、こいつも全身タイツで魔法が使えたんだ。
「ナイス、ギャルっ!」
心の声があふれる。この際、気にしてられるか。
「イ、イノリさん充電はどう!?」
腕を引っ張り上げ、ギャルを立ち上げた。
「ギャルって言った!
今、莉奈のことギャルっていったよねッ!
気にしてるのに、ひっどーーい!!」
知るか。
『充電完了。急いでXanthosに乗ってください。
すぐに、発進準備を始めます』
俺は急いでバイクにまたがる。
ギャルも慌ててそれに続いた。
「これで終わると、思ったかッ!」
フリーデリケの声が大気を震わせる。
その声と同時に、派手な駆動音を鳴らし、超巨大ロボットが片手を振り上げた。
「しぶとい貴様たちも、これで終わりだッ!!
この鉄槌から、逃れることあたわずッ!!」
俺は超巨大ロボットのとったこのポーズを、元の世界で見たことがある。
あれだ、空手の技。
大山倍達、瓶切り――
昔見た漫画に、こんな感じのポーズした大山倍達を見た覚えがある。
本人じゃなく、似たようなキャラだったかもしれないが。
やつはそのポーズ。
手のひらを伸ばし、手刀を作る。
そして、引き絞る弓のように肩を引き、その手刀を水平に繰り出す力をためていた。
予想はできる。
水平に繰り出された手刀が、どうくるか。
横なぎチョップが、今乗ってる橋の端から端までを薙ぐのだろう。
わかってるさ。
そりゃー逃げるとこないわな。
しかも、その手刀に光が集まっている。
ああ、あれでしょ威力あげてるんだ。
シュイン、シュインと、なんかためてる音が聞こえてるし。
よくゲームとかで見る、ため攻撃がこんなんだよな。
『ドラゴンスレイヤー起動――』
イノリさんの声が聞こえる。
その声が、やけになりそうな俺の頭を冷静にさせた。
バイクの脇がスライドし、何か出てきた。
ジャキンと音をたて出てきたそれから、長い取っ手が顔を出す。
『コウゾウ。それを引き出してください』
彼女の言う通り取っ手を引っ張り、両手でそれを引き出す。
どこに隠れていたのか。
けっこうな長さの――
なんだこりゃ? ランス? が顔を見せた。
『片手で、そのランスを持ち、姿勢を整えてください』
ヘルメットの中、ランスの持ち方が映像で説明される。
指示を出してもらい、俺はその通りの姿勢になった。
『ACHILLES、頭部シールド遮光モードへ。
一瞬暗くなりますが気にしないでください』
ヘルメットのシールドが、一瞬暗くなる。
が、すぐに元にもどる。
サングラスみたいになったのだろうが、視界はそれほど暗くない。
『ランスを基点に、プラズマフィールドを展開します。
射出時の衝撃にそなえてください』
背を丸め、姿勢を低くする。
片手はランス、もう片方はハンドル。
両方をしっかりと握った。
背後のギャルも、俺にしっかりとしがみついている。
――バチッ
――バチッバチッバチッ
――バリバリバリバリバリッ
ものすごい放電と共に、光につつまれる。
遮光モードのお陰か、光ってるのはわかるが目に負担があるほどキツくない。
『電力充填150%。
これより、電磁誘導によってXanthosを加速し、緊急発進します』
「敵の攻撃がくるみたいだけど、大丈夫?」
このままじゃ、やつの水平チョップと正面衝突するんじゃないかと心配だ。
『電力充填160%。
大丈夫です。安心してください。
プラズマフィールドに同化した私たちを、傷つけることはできません』
「いや、だから攻撃がくるよといってんのに――
ええっ!? もしかして、当たること前提でってこと!?」
超巨大ロボットの溜めは終わったようだ。
止めていた堰は決壊し、放流されたダムの水のごとく、手刀が迫ってくる。
「きてる、きてる、きてるって!!!」
『電力充填170%。
落ち着いてくださいコウゾウ』
手刀は上空から橋まで到達。
ここから、橋の上を薙ぐのだろう。
――シュバッ
――シュババババッッッッッ
バイクの前方。手刀へ向け地面へ2本――
電気のラインが、火花を散らし走った。
「このまま行くと、あれにぶつかるって!!!」
『電力充填180%。想定の範囲内です』
周囲にあふれ出した電力が、放電しバチバチと音をならす。
空気がビリビリとふるえていた。
橋上にある障害物を破壊する手刀は、雪崩のごとく周囲をまきこみコチラへ押し寄せている。
凄まじい音。
粉塵、破片、様々なものが巻きあがり、圧倒的な迫力を、手刀とともに俺たちに叩き付けていた。
『電力充填190%。
我が軍の科学力は、すうぇかいいいィいちぃぃぃ!!』
「いや! そんなのいらないって!
くそっ、そのどや顔やめてっ!」
ウインドウに映るのイノリさんの顔。
はらたつわー。
ランスの突き出た部分が割れ、ワニが口を開けるように広がる。
その中央に、凄まじい放電を起こす棒が発光していた。
『電力充填200%。
Xanthos! 発進ッ!!』
イノリさんの号令とともに、景色が変わる。
それは、俺の理解の範疇を超えたもので、説明のできるものではなかった。
俺が理解できる現象ではないのだろう。
そして俺たちは、ドラゴンすら射殺す光の槍と化し、機械巨人の手刀を刺し貫いていた。
§
〈三人称 視点〉
「くそおおおおぉぉぉぉッッッッッッッッ!!!!!」
彼女が、そのような汚い言葉を吐くのは初めてだった。
フリーデリケは操縦席のパネルに、振り上げた拳を感情のまま打ち付ける。
血がにじみ痛みが走るが、それすら気にならないほど彼女は怒りに染まっていた。
「そんな、そんなハズはないッ!
私は、なにも間違ってはなかったはずだッ!!!」
再度、拳を叩き付ける。
損害は甚大。
帝湾大鋼橋は寸断され、復旧には膨大な時間を要するであろう。
しかも復旧の要となるケルビムも、片腕を落とされ、修理を必要としていた。
なのに戦果はゼロ。
いや、標的に逃げられ損害を被っているのだから、ゼロではない、マイナスだ。
勇者の力を使い、英雄となるフリーデリケの夢は、この時点で完全にケチがついた。
ともすると、失敗の烙印も押されかねない。
この大失態。
責任をとらされるのは確実だろう。
あの女と宰相が、これを見過ごすはずがない。
皇女ということもあり、しかも、勇者の血を引き唯一ケルビムを操縦できるということで、刑を受けることはないだろう。
だが、今後の勇者運用からは外され、今まで作り上げてきた自分の部隊。それらは解散させられるハズだ。
そして自分は有力貴族の元に嫁ぎ、据え物の、お人形に成り下がることを強いられるのだ。
「そんなのは認められない、認められるはずがない……」
ブツブツとつぶやき、血のにじんだ手を気にもせず、親指の爪を噛む。
幼少の頃、散々注意された癖が顔をのぞかせていた。
あの男。
マヌケそうな顔をした、あの男だ。
たるんだ体は中年の体型そのもので、男の魅力などひとかけらもない。
あの、くたびれた犬っコロのような顔は、昔父上に内緒で飼っていた犬を思い出させられる。
兵役でも受けさせ、鍛え直してやりたいほど情けない風貌だった。
しかし、私を出し抜き、屈辱を味あわせてくれた。
情けない風体は仮面で、それに散々油断させられ、私は辛酸をなめさせられたのだ。
美しい顔が、みにくく歪む。
歪んでもなお、美しいその顔。
その瞳に鈍い光が灯った。
「絶対責任を取らせてやる。
私を、先祖を侮辱したことを――」
その瞳に灯った明かりは、憎しみの炎か何かは本人にもわからない。
だがそれは、まぬけ面の男にされた屈辱を照らしだし、それを彼女の心に刻み付けていたのだった。
§
いたる所が壊れ、歪んだ橋の上をバイクで進む。
俺が運転しているわけではない。
イノリさんの遠隔操作で、普通では通れそうもない悪路を結構なスピードで進む。
『もう大丈夫です。追っ手は退けました。
脱出ルートで、戦闘になることはないでしょう』
イノリさんがウインドウに現れ、そう告げる。
『水のケルビムの魔力は、海上都市を維持する量しか残っていないはずです。
ワタシたちを追ってくるほど、余力はないと思われます』
「離れられないとか言ってたよね、他の敵はどうだろ?
あのバイク軍団とか列車とか」
『大津波の影響で、この橋のいたる所が破損、水没しています。
このXanthosでもない限り、走行は不可能でしょう』
なんだか自慢げだ。
「莉奈たち……これからどうなるんだろ……」
脱出の目処がたち、余裕ができたのか。
ギャルは将来の不安をこぼす。
ぐぅぅぅ~~~。
背後にしがみつく、ギャルの腹の音が聞こえた。
走行中なのに、そんな音も拾うんだなと、改めてこの全身タイツの性能に感心する。
「とりあえず……腹減ったよね」
「うぅ、ついて来いって言ったの自分じゃん!
責任とってよっ!」
腹が鳴った照れ隠しも含めてか、逆切れされる。
しかしそんな、責任とってとか……。
元の世界でも言われたことないことを……。童貞なめんな。
「ついて来いっていいました?
ついて来ますか?って、聞きはしたけど……」
言いかけて、とっさにやめる。
また、突き放す言い方になってしまいそうだった。
これから旅をする仲間だ。
あんまり冷たい言い方もよくないよな。
「責任うんぬんは抜きにしても、約束はまもりますよ。
君の勇者の力が戻るまで守るし、方法も探します――」
童貞の俺にしては、優しく返せたと思う。
俺ってやっぱ大人じゃん。
俺の言葉に、しばしギャルは沈黙する。
――ガンガン
ヘルメットを後ろからぶつけてきた。
「――莉奈」
「えっ?」
「だから莉奈っ!
さっき、私のことギャルとか言ったでしょ!
莉奈、昔からそーやって言われてきたから嫌いなの!
やめてよね! バカッ!」
おいおい、俺の腹の肉を力強く握るな。上下に揺するな。
「莉奈っ!!
わかったっ!? おじさんっ!」
イノリさんがいらぬ世話をおこして、ヘルメット内のギャルの表情をウインドウに写した。
舌だしてる。
あっかんべーってやつだ。
「君だって、おじさんって……」
「莉奈っ!!
おじさんは、おじさんっ! いーっだ!」
なんか年頃の娘をもつ、お父さんの気分になる。
それとも、姪でもいたらこんな感じなのか。
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つい先ほどまで繰り広げられていた、壮絶な戦い。
それを露程も感じさせない、空と海。
こんなとこで黒の全身タイツを着て、俺はいったい何をやってるんだろうか……。
この奇妙な取り合わせには、笑いしか湧いてこない。
俺は自然とこみ上げてくる笑いを、抑えることもせず、大声で笑うことにした。
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§
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しかしこの話はそこから始まりを告げる。殺された主人公がなんと、ゴブリンに転生してしまったのだ。普通ならパニックになる所だろうがしかし切り替えが非常に早い主人公はそれでも生きていく事を決意。そして何故か持ち越してしまった能力と知識を駆使し、弱肉強食な世界で力強く生きていくのであった。
しかし彼はまだ知らない。全てはとある存在によって監視されているという事を……。
◆ ◆ ◆
今回は召喚から転生モノに挑戦。普通とはちょっと違った物語を目指します。主人公の能力は基本チート性能ですが、前作程では無いと思われます。
あと日記帳風? で気楽に書かせてもらうので、説明不足な所も多々あるでしょうが納得して下さい。
不定期更新、更新遅進です。
話数は少ないですが、その割には文量が多いので暇なら読んでやって下さい。
※ダイジェ禁止に伴いなろうでは本編を削除し、外伝を掲載しています。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
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最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
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ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
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騎士サイド追加しました。2023/05/23
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