緋色ノ叉鬼

越子

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六、辰巳と平次

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 一方、晩飯を終えた山神は、満足そうに板の間にある囲炉裏の前で横になっていた。民子は土間で大人しく眠っている。

土間で後片付けをしている佳代は、そんな民子に関心を寄せていた。

「民子はめんけえども、でっけくなれば凶暴になるんだべか」

「民子はならねえべ。山神様の使いだがらな」

「あ、兄ちゃん、聞いてらったのが」

 いつの間にか佳代の背後に佐介が立ち、彼女と一緒に後片付けを手伝い始めた。

「そういえば兄ちゃん、打当集落の医者さ会えたんだが?」

「ん? あ、ああ……会えた」

「何しゃべったの?」

「……佳代、親父どご殺した熊、にぎいか?」

「当たりだべ!! にぎぐてにぎぐて堪らね!!」

「兄ちゃんもだ。だども、その熊は佳代の喋ってた『御伽話の熊』だ。親父は赤い目どこした熊さ殺されたんだ」

「え?! 兄ちゃん、そんたごと一言も喋ってねがったよ?」

「誰も信じてけねど思って言わねがっただけだ。だどもその熊は本当に居だったんだ」

 後片付けを終えると、佐介は板の間に上がり、山神の隣に腰を落した。

「山神様、親父どこ殺したのは『鬼熊』だ!」

 くつろいでいた山神は「そうか」と気の抜けた返事をした。そして彼女はそのまま眠そうな眼で佐介に鬼熊の毛色について聞いた。

「毛色? 赤茶色だったども……」

「そうか、あいつの言っていた鬼熊じゃな」

「あいつ?」

 そこで山神は欠伸をしながら、右京から聞いた話を佐介に伝えた。

「――というわけで、青森と秋田にそれぞれ違う鬼熊が居るってことじゃ。儂はこれから辰巳と鬼熊について聞きに行くとこじゃ。心当たりのあるやつが居てな」

「え? 誰さ?」

「……神に……」

 神はアンタじゃないか、と佐介が言おうとしたが、山神はそのまま眠ってしまった。

「咲希さん、寝ちまったのけ?」

 後から佳代が様子を見に来ると、山神は佐介に寄りかかる形で気持ち良さそうに寝息をたてている。

「んだ。寝だな。こいだば大和でねくても心配するべな」

 ――彼女は、無防備だ。

 佐介は溜息をつくと山神を抱き上げて寝床へ運んだ。
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