ただ、笑顔が見たくて。

越子

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九、幕開け

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「人を殴ってみて、お前何か変わったか?」

 小田原遊郭街を抜け出し、夜通し歩き続けて山の麓まで辿り着くと、平次は「鬼の形相で殴っていたぞ」と、探るようにじっと辰巳を見ていた。

「特に何も……」

 自身の拳を見ながら憮然として辰巳が答えると、平次は「そうか」と肩を撫で下ろし表情を緩めた。

 拳を掌に変えると、辰巳は労わるように、ハナの肩にそっと手を置いた。

「しばらくの間、狩りをしながら山を越える生活になるが……ハナ、大丈夫か?」

 それは、辰巳が過酷な旅になることを想定し、ハナの身を案じての言葉だった。

 だが、辰巳が心配そうに言う意図がわからなかったハナは、山神様の嫉妬を心配をしているのかと思い、胸をドンと叩いて答えた。

「私は凄く醜い顔をしているから、きっと山神様は許してくれるわ!」

 化粧が剥げ落ちボロボロになって笑った彼女に、辰巳と平次は顔を見合わせて大いに笑う。

「「ハナは強くて逞しいな!!」」



 黎明に、闇色の幕が上がった。
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