悪役令嬢に転生したけど、知らぬ間にバッドエンド回避してました

神村結美

文字の大きさ
1 / 14

1

しおりを挟む
ここ、レスタンクール王国の第一王子であるマクシミリアンが10歳となり、婚約者選定のお茶会が王城の庭園で催され、伯爵家以上の婚約者のいない令嬢が招待された。


金髪碧眼で見目も良く、王子様らしい堂々としたマクシミリアン殿下が庭園に登場すると、着飾った令嬢達はこぞって彼のもとに駆け寄った。

そんな中、一人の令嬢は席から立たず、給仕の使用人を呼び、会場に用意されたお菓子を次々とテーブルに運ばせた。王子に一切見向きもせず、幸せそうにお菓子を頬張っている。


そんなお菓子に夢中なアルトー公爵家のご令嬢、クローデットは、大のお菓子好きで、毎日たくさんのお菓子を食べていた。その結果、彼女の体型は丸々と太っているが、本人はお菓子を食べることにしか興味がなく、太っていることを気にしていない。本日も公爵令嬢であるがゆえにお茶会には参加させられているが、彼女の目的は王城で出されるお菓子である。


マクシミリアン殿下は令嬢達を誘導しながら、一人一人と言葉を交わすことを心がけた。そして、一人だけ席についている令嬢に気がついた。義務として、話しかけるべきだと近づいたところ、若干顔が引きつってしまった。

「や、やぁ……」

話しかけられたクローデットは、話しかけてきた人物がマクシミリアン殿下だと気づき、すぐに席を立ち、カーテシーをとった。

「はじめまして。マクシミリアン・レスタンクール殿下。アルトー公爵が長女、クローデットと申しますわ。以後お見知りおきを」

「あ、あぁ」

マクシミリアン殿下は、あまりにも他の令嬢と違うクローデットに面食らった。まずは身につけているドレス。普通このような場では明るい色でフリルやリボンが多いドレスを着用している中、彼女が身につけているのは、地味な濃紺色のドレスでリボンは腰回りに大きく一つ付いているだけ。豪華な宝石等もほとんど身につけていない。

挨拶とカーテシーは良かったが、1番目を引いたのは彼女の体型である。まるで豚の様に丸々としており、自分の2倍くらいの横幅はあるのではないかと思う。頬もパンパンに膨らみ、目は周りの肉に圧迫され、瞳の色すらハッキリとはわからない気がする。肌には吹き出物も見える。他の令嬢達が着飾っているため、彼女だけが異様に見えた。


マクシミリアン殿下の反応に、周りの令嬢はクローデットは婚約者候補ライバルにもならないと判断し、尚且つその見た目に嘲笑の目を向けている。しかし、流石に公爵家の令嬢である上、王子の目の前ということもあって、蔑むような発言を口にするものは誰一人としていない。

マクシミリアン殿下は彼女が座っていた席のテーブルの上に様々なお菓子が並べられている事に気づき、その場から立ち去る口実を思いついた。

「……お菓子が気に入ってくれたようだな。引き続き楽しんでくれ」

「ありがとうございます」

言葉を残した王子は、クローデットの元を去っていった。最低限の挨拶も交わしたため、クローデットは気兼ねなくお茶会の終了時刻まで紅茶を飲みながら、お菓子を楽しんだ。



マクシミリアン殿下は、その日の晩餐で王妃からお茶会について聞かれた。気に入った子がいれば優先される。

王妃からの問いかけに一人の令嬢が頭をよぎった。
醜いと思ってしまったあの令嬢だった。

マクシミリアンは、今まであの様な令嬢には会った事がなかった。自分の婚約者選定の場に居たのだ。もしも他の令嬢達の様に彼女に迫られていたらと考えると、たまったものではなかった。さらに、国の代表となる王妃があの様な見た目の者では、貴族達は受け入れないだろうと考えた。

公爵令嬢であることから無下にもできない上、万が一、彼女が望んだら婚約者に確定してしまう可能性もあった。本日のお茶会に参加した公爵家の令嬢は2人だけであり、もう一人は従姉妹のため婚約者にする気は最初からなかった。

とても幸運な事にアルトー公爵家の令嬢は王子に見向きもせず、お菓子ばかり食べていた。その事実に心から安堵したが、強烈に印象に残っていた。

王妃からの質問には、気に入った令嬢はいなかったが、候補にするならと、令嬢達の中でも自分に何とか釣り合いそうな令嬢の名前を数人挙げておいた。


婚約者選定の際には、公爵令嬢2人は候補から外され、マナーや会話の質、家格や美貌等を総合的に判断して、オデット・ロンサール侯爵令嬢が婚約者に選ばれた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の物語は始まりません。なぜならわたくしがヒロインを排除するからです。

霜月零
恋愛
 わたくし、シュティリア・ホールオブ公爵令嬢は前世の記憶を持っています。  流行り病で生死の境を彷徨った時に思い出したのです。  この世界は、前世で遊んでいた乙女ゲームに酷似していると。  最愛のディアム王子をヒロインに奪われてはなりません。  そうと決めたら、行動しましょう。  ヒロインを排除する為に。  ※小説家になろう様等、他サイト様にも掲載です。

ヒロインだけど出番なし⭐︎

ちよこ
恋愛
地味OLから異世界に転生し、ヒロイン枠をゲットしたはずのアリエル。 だが、現実は甘くない。 天才悪役令嬢セシフィリーネに全ルートをかっさらわれ、攻略対象たちは全員そっちに夢中。 出番のないヒロインとして静かに学園生活を過ごすが、卒業後はまさかの42歳子爵の後妻に!?  逃げた先の隣国で、まさかの展開が待っていた——

悪役令嬢だったので、身の振り方を考えたい。

しぎ
恋愛
カーティア・メラーニはある日、自分が悪役令嬢であることに気づいた。 断罪イベントまではあと数ヶ月、ヒロインへのざまぁ返しを計画…せずに、カーティアは大好きな読書を楽しみながら、修道院のパンフレットを取り寄せるのだった。悪役令嬢としての日々をカーティアがのんびり過ごしていると、不仲だったはずの婚約者との距離がだんだんおかしくなってきて…。

悪役令嬢に転生したようですが、前世の記憶が戻り意識がはっきりしたのでセオリー通りに行こうと思います

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢に転生したのでとりあえずセオリー通り悪役ルートは回避する方向で。あとはなるようになれ、なお話。 ご都合主義の書きたいところだけ書き殴ったやつ。 小説家になろう様にも投稿しています。

【コミカライズ企画進行中】ヒロインのシスコンお兄様は、悪役令嬢を溺愛してはいけません!

あきのみどり
恋愛
【ヒロイン溺愛のシスコンお兄様(予定)×悪役令嬢(予定)】 小説の悪役令嬢に転生した令嬢グステルは、自分がいずれヒロインを陥れ、失敗し、獄死する運命であることを知っていた。 その運命から逃れるべく、九つの時に家出を決行。平穏に生きていたが…。 ある日彼女のもとへ、その運命に引き戻そうとする青年がやってきた。 その青年が、ヒロインを溺愛する彼女の兄、自分の天敵たる男だと知りグステルは怯えるが、彼はなぜかグステルにぜんぜん冷たくない。それどころか彼女のもとへ日参し、大事なはずの妹も蔑ろにしはじめて──。 優しいはずのヒロインにもひがまれ、さらに実家にはグステルの偽者も現れて物語は次第に思ってもみなかった方向へ。 運命を変えようとした悪役令嬢予定者グステルと、そんな彼女にうっかりシスコンの運命を変えられてしまった次期侯爵の想定外ラブコメ。 ※コミカライズ企画進行中 なろうさんにも同作品を投稿中です。

【長編版】悪役令嬢は乙女ゲームの強制力から逃れたい

椰子ふみの
恋愛
 ヴィオラは『聖女は愛に囚われる』という乙女ゲームの世界に転生した。よりによって悪役令嬢だ。断罪を避けるため、色々、頑張ってきたけど、とうとうゲームの舞台、ハーモニー学園に入学することになった。  ヒロインや攻略対象者には近づかないぞ!  そう思うヴィオラだったが、ヒロインは見当たらない。攻略対象者との距離はどんどん近くなる。  ゲームの強制力?  何だか、変な方向に進んでいる気がするんだけど。

醜いと蔑まれている令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます

ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。 そして前世の私は… ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。 とある侯爵家で出会った令嬢は、まるで前世のとあるホラー映画に出てくる貞◯のような風貌だった。 髪で顔を全て隠し、ゆらりと立つ姿は… 悲鳴を上げないと、逆に失礼では?というほどのホラーっぷり。 そしてこの髪の奥のお顔は…。。。 さぁ、お嬢様。 私のゴットハンドで世界を変えますよ? ********************** 『おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』の続編です。 続編ですが、これだけでも楽しんでいただけます。 前作も読んでいただけるともっと嬉しいです! 転生侍女シリーズ第二弾です。 短編全4話で、投稿予約済みです。 よろしくお願いします。

悪役令嬢に転生したので、推しキャラの婚約者の立場を思う存分楽しみます

下菊みこと
恋愛
タイトルまんま。 悪役令嬢に転生した女の子が推しキャラに猛烈にアタックするけど聖女候補であるヒロインが出てきて余計なことをしてくれるお話。 悪役令嬢は諦めも早かった。 ちらっとヒロインへのざまぁがありますが、そんなにそこに触れない。 ご都合主義のハッピーエンド。 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...