タイムウェザー

秋十

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落ちてきた少女

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 俺の名前はルーイ・アグナス。22歳
 今朝の日課として海岸の朝日を拝んでいる最中だ。
 褐色の肌と真ん中の白い部分に狼の影がプリントされた黒のキャップ帽と藍色のパーカーが特徴。
 俺が普段していることは、まあほとんど遊び人のような感じだ。その日暮らしでやりたいことをやりたいだけやるような生活だ。
「?」
 空の壮観な青さに感慨深いものを覚えながら、黒い影を見つけた。
「あれは? 鳥か?」
 それにしては羽が無く足が長い。まるで人の形をしているみたいな――
(人!?)
 そう思うとまさしく人だった。なんでこんな何もない空間で落ちてくるんだ? ――てなんてことを考えらいる場合じゃない!!
 あのままだったら海に落ちる!!
 とにかく何とかしなくては!!
 しかし、どうしようもない!!
 このまま黙ってみるくらいしか俺にできることは無かった。
 俺はただの傍観者のように何も考えず、落ちてくる人を見守った。
「ん?」
 あまりにも有り得ないことだったので気が動転していたが、よく見てみればまだあんな所にいる。
(ゆっくり落ちてきてないか?)
 あの調子だったら特に落ちてきても危なくはない。ものすごく不思議なことだがなんとなく俺は安心した。
 しかし、このまま海に落としておくのもかわいそうだろう。
 俺はこの近くの砂浜に停めてあるいかだを無断で借り、落下地点まで漕いだ。
 俺が落下地点まで着いたころには、もう目と鼻の先まで落ちていた。
 真っ白なドレスに身を包む女性だった。
 俺は吸い込まれるように両腕を差し出し、受け止めようとした。
 まるで天使の羽衣を手に掴むように軽く、柔らかかった。
 俺は考えることを忘れ、腕に収まっている女性を凝視した。
 金髪で極上の絹のような肌。子供のようなあどけなくもかわいい寝顔。
(年は18くらいか)
「あら!?」
 急に腕に重さが伝わった。
 足場の悪い船上でバランスを崩し、何とか落ちないように足をじたばたさせたが、思いむなしくドボンと激しい音を立てながら二人とも海に落下した。
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