恋

埋もれた幸せ

平凡な毎日。
新しいことなんて一つもなくて、同じ電車に乗って、同じ駅で降りて、同じ建物に入り、同じ階でエレベーターを降り、同じデスクに座る。
私は変わらないし、私の周りも変わらない。
つまんないな。辞めちゃいたいな。

さて、今日も同じような仕事しますかー。

毎日同じ気合いをいれて仕事を始めると、デスクの引出しには「同じ」ではないものが入っていた。

『先輩、いつもお疲れ様です。誕生日おめでとうございます。いつものお礼です。』

私が担当した新人社員の男の子からだった。
そっか。私今日誕生日だったんだ。
平凡で退屈な日々に埋もれたささやかな幸せに気付けないのは、自分で埋めていただけだったんだ。

毎日が平凡だからこそ、特別なことを特別だと思える。
そんなことを気付かせてくれた新人社員くんが大切な恋人になるのは、もう少し先のこと。