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第5章 サディウス王国編
襲撃
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フィリアから下向き三角の内容だけ見せてもらったブルーは、決闘再開に向けてコロシアムの舞台へ戻ってきてまず、9つの精霊の友を得てそのまま舞台に残っていたらしいムスキアヌスが見せた全開の笑顔を見て小さく笑った。
「聖銃士殿! 精霊と話すのは楽しいな! 知らぬことばかりだ!」
「人間とも喋れよ?」
このまま行ったらこいつ精霊しか友達作らんのじゃなかろうか、と危惧したブルーが突っ込むとスッと目線を逸らしたムスキアヌスはワザとらしく咳払いなぞかましてきた。
「そ、それは追々な」
「しょうがねぇヤツだな。まあ、この決闘が終わった後なら今よかもうちょいやりやすくはなるだろうよ」
「そんなものだろうか?」
「“人の心と山の天気は移ろいゆき、されど変わらぬ営みあり。さればこそ美しい” ってな。昔の誰かが言ってたそうだ。まぁ、それはいいとして。始めるまでまだ時間あるから、もうちょいゆっくりしてな」
「うん?」
このまま審判の合図を待つのかと思っていたムスキアヌスは、拡声の魔導具を手に舞台の中央へ向かっていく背を疑問符と共に見送った。
「さて、決闘再開前にちょっとばっかりやりてぇことがあるんで協力してくれ」
そう前置きをしたブルーにコロシアムと各地のモニター前に居た者達が静まる。
「この中に精霊の友を得られなかった者がいると思う。だが、落ち込むこたぁない。それには理由があるんだ。今からそれを解消したいと思うんで、精霊の友を得られなかったヤツは、立ち上がってから左腕をこうして上に上げてくれ」
コロシアムの貴族席に5人、一般席に3人、モニター越しの各地に計18人、全総計26人がブルーの言葉に左腕を上げる。
必死の形相をしている男、縋るような目をした女、泣いてしまっていて母親が腕を上げさせている子供もいる。
ブルーは、左手で肩につく程度まで長さが戻ってきていた自髪を掴むと皆が記録映像で見た時のようにそれを切り落として胸前に掲げた。
蒼と金の光粒となってブルーの足元へと落ちていくそれが舞台上へ描き出す魔法陣は複雑かつ難解で、この国の魔法士達は誰一人それを読み解くことが出来なかった。
舞台上に出来ていた精霊にアクセスする為の属性塊9つが、流れるようにして魔法陣を中心に所定の位置へと移動していく。
魔法陣から浮かび上がる黄色の魔導文字、精霊塊から次々と上がる決まった音階の1音…それが今回は複数あって、まるで精霊達の合唱のようだった。
構築された魔導錬金の陣形は、コンソールグラスを取って俯いたまま蒼を纏い、星の力を行使するブルーの意に従って、掲げられている人々の左腕…その手首へと金色の光輪を生じさせ、やがてそれは完全に金で出来たブレスレットへと変わった後に魔法陣と魔導文字は消えていった。
俯いたままコンソールグラスを目元へ戻したブルーが顔を上げる。
「今、手首に金の腕輪が現れた連中は、自分の魔力が強すぎて、且つ、それをしっかりコントロール出来てない所為で、精霊が近寄りたくても近寄れなかったのが精霊の友を得られなかった原因だ。良い言い方をするならテメェらは一般レベルより元の才能が有り過ぎた。そういうことだ」
敢えてそれを口にすることで焦りや不安を感じていた人々は、そういうことだったのかと安堵の息をつき、泣いていた子供も大喜びする両親や周囲の人々の声に、キョトンとしながらもようやく泣き止んでいく。
「なんで、手っ取り早くそれを制御する魔導具をつけさせてもらった。いつか自分できちんと自分の力をコントロール出来るようになったら、そいつは自然に手首から消えるようになってるんで、元々持ってる才能に見合うだけの技術や実力がついて腕輪が消えてなくなるまでは、そいつを嵌めて過ごしてくれ。それを守れるヤツはもう1度、精霊塊に魔力を投げればそれで精霊の友は応えてくれる筈だ」
ブルーの言葉に金の腕輪を嵌めた人々は、我先に魔力を精霊塊へと投げ込んで、今度は現れてくれた精霊達に、やっと笑顔を取り戻した。
「それと残念ながら1人だけこいつを使ってもまだ精霊の友を得られないだろうヤツがいる。左腕を上げてたのに腕輪が嵌ってねぇヤツが該当者だ。お前は魔導具程度じゃどうにもならん所に居る。なんで、その気があったら決闘後に俺を訪ねてきな。流石にこの状況で仲間外れってのはどうかと思うんでな。以上だ。時間もらってすまねぇな、審判。始めてくれ」
ブルーは審判へと進行権を返して拡声の魔導具を切ると収納へと仕舞い込んだ。
「はい。ではこれより第1王子ムスキアヌス殿下と勇者ブルーゼイの決闘を再開する。両者、開始位置へ!」
口上の兵士が述べた言葉で、最初にそうしたのと同じように2人が簡易的に設けられた開始線へと立つ。
違うのは、ムスキアヌスの側に九界精霊が一体ずつ浮いていることだ。
「それでは、始め!」
「先手必勝! 行くぞ皆! 我らの絆を聖銃士殿に見せるのだ!」
[オー!]
(うん。だからお前のその精霊ノせるの上手いトコは血筋か何かなのか? おい?)
まさか母方の祖母にあたる公爵夫人が水精霊になっちゃったからとか言わないよな? なんてちらっと考えながら見た観覧ボックス席では、ムスキアヌスの乳母と教育係である2人がいたが、その2人は3体くらいしか精霊を伴っていなかった。
公爵に至っては、他の精霊が一切見当たらないので本当に夫人が居ればそれで満足なのだろう。
同じく王妃も水精霊を連れているだけ、国王だけが九界精霊全てを侍らせていたが、両方の血筋を足して割った結果こうなったのだろうか?
「まぁいいか」
精霊達がムスキアヌスと協力して放ってくる魔法は休憩前と比べて威力、精度、速度の全てが段違いで初級魔法でありながら中級程度の所にまで昇華していた。
これは元々の素質や精霊との親和性が高いこともあるが何より彼と精霊の絆がこの短時間で強まっていることの証左でもあった。
「素直なヤツってのは、成長を阻害してる要素を取り除いてやると伸びるの早くてヤダねぇ……」
感心と呆れの混じった複雑な声音で言って、口元を歪める。
だが、まだまだだ、と。
とん、と軽く地を蹴って飛んできた水弾を躱し、そのまま無詠唱で飛翔魔法を展開して上空へと舞い上がる。
「この短期間でスバラシく頑張ったご褒美だ」
ムスキアヌスへとそう言い置いて、己の周囲に暗黒魔法の術式を7つ展開し、周り中から掻き集めた障気に己の魔力を足して障力を作り出し、一斉に5つ全ての魔法陣にその障力を叩きつけて発動させる。
「俺を魔王だと思って本気で来なッ!」
「っ⁈」
深い闇。
妖しく、禍々しく、不気味で、おどろおどろしい黒と紫に彩られた魔法陣が一気に5つ動き出し、1つは地にその力を落とし、ヒビ割れた舞台の石床から2本の角を持ち、堅牢な鱗鎧に身を包んだ骨製の兵士達が処刑人の剣とソードブレイカーを手に数体現れる。
別の1つは天へと伸び別れ、現れたのは小型の飛竜と妖鳥。
その造られた全ての人造有機体に3つ目の魔法陣が意識を与え、4つ目の魔法陣が守備の結界を纏わせ、5つ目の魔法陣がその身体を強化する。
決闘を通り越してイジメになりかねない圧倒的な戦力差だった。
休憩前にはこの決闘を茶番だと陰でせせら嗤っていた者達すらその光景に息を飲む。
すっ、と右手を上げたブルーが無駄に悪役臭を満載にしてそれを撒き散らしながら笑み、掌を上に向けて中指だけを軽く幾度か折り曲げるような仕草を見せ、無言のままムスキアヌスを挑発した。
「くっ! 皆、臆するな! 勝てぬことなど最初から織り込み済みよ! 死ぬ気になれば魔王であろうと一矢は届く! やるぞ!」
ムスキアヌスの言葉に人々は、映像記録で見た魔王にナイフを突き立てて見せた、姿が変わる前の彼の姿を思い出す。
精霊達も彼の言葉に奮い立ち、更に分け与えられた魔力を使って攻撃防御とそれぞれの得意分野に力を振り分け始めた。
とりわけ、暗黒魔法と相殺関係にある神聖魔法を生み出す為に必要な聖光を作り出すことの出来る光の精霊が、彼と共に魔法を練り上げる。
(そうだ。自分だけで魔法を使うんじゃなく、精霊だけに使わせるんでもない。一緒に1つの魔法を作んのが、協力精霊を得る本当の意味だ)
精霊達から教わったのか、はたまた初級魔法しか知らぬ己を把握しているが故に最初から助力を請うたのか。
どちらであったにせよ、この世界の人々にとってはこれまでになかった全く新しい魔法の使い方であることには間違いない。
「お前は、こうやってやらせてりゃ出来るヤツだったのにな。あーあ。ボンクラだったここまでの時間、マジ勿体ねー……」
今更言っても詮無いこと。
それは分かっているけれど、そう思わずにはいられなかったブルーは、ついつい呟いて。
造り出したもの達へ再び障力を供給すると一際、人の悪い笑みを浮かべて攻撃命令を下した。
「……………!!」
そんな時。
あまりよく聞き取れなかったものの、何処かが引っかかる言葉と「何か」が、観客席から投げつけられた。
(?)
不可思議に思うと同時にモニタールームと化している控え室の3人から同時に念話が飛んでくる。
『ブルー!』
『暗部よ!』
『爆発しますわ!』
3人いっぺんに別々のことを言ってくれたお陰で、却って状況をすぐ把握できた。
【精霊達よ、汝らの友を守れ!】
精霊語でブルーが精霊達に呼びかけたのとコロシアムの舞台中央へ投げ込まれた四角い箱が、床にぶつかった衝撃で開き、内包していた魔法陣を展開したのが重なった。
次の瞬間。
…── 全ての景色が、赤黒い光に包まれた。
「聖銃士殿! 精霊と話すのは楽しいな! 知らぬことばかりだ!」
「人間とも喋れよ?」
このまま行ったらこいつ精霊しか友達作らんのじゃなかろうか、と危惧したブルーが突っ込むとスッと目線を逸らしたムスキアヌスはワザとらしく咳払いなぞかましてきた。
「そ、それは追々な」
「しょうがねぇヤツだな。まあ、この決闘が終わった後なら今よかもうちょいやりやすくはなるだろうよ」
「そんなものだろうか?」
「“人の心と山の天気は移ろいゆき、されど変わらぬ営みあり。さればこそ美しい” ってな。昔の誰かが言ってたそうだ。まぁ、それはいいとして。始めるまでまだ時間あるから、もうちょいゆっくりしてな」
「うん?」
このまま審判の合図を待つのかと思っていたムスキアヌスは、拡声の魔導具を手に舞台の中央へ向かっていく背を疑問符と共に見送った。
「さて、決闘再開前にちょっとばっかりやりてぇことがあるんで協力してくれ」
そう前置きをしたブルーにコロシアムと各地のモニター前に居た者達が静まる。
「この中に精霊の友を得られなかった者がいると思う。だが、落ち込むこたぁない。それには理由があるんだ。今からそれを解消したいと思うんで、精霊の友を得られなかったヤツは、立ち上がってから左腕をこうして上に上げてくれ」
コロシアムの貴族席に5人、一般席に3人、モニター越しの各地に計18人、全総計26人がブルーの言葉に左腕を上げる。
必死の形相をしている男、縋るような目をした女、泣いてしまっていて母親が腕を上げさせている子供もいる。
ブルーは、左手で肩につく程度まで長さが戻ってきていた自髪を掴むと皆が記録映像で見た時のようにそれを切り落として胸前に掲げた。
蒼と金の光粒となってブルーの足元へと落ちていくそれが舞台上へ描き出す魔法陣は複雑かつ難解で、この国の魔法士達は誰一人それを読み解くことが出来なかった。
舞台上に出来ていた精霊にアクセスする為の属性塊9つが、流れるようにして魔法陣を中心に所定の位置へと移動していく。
魔法陣から浮かび上がる黄色の魔導文字、精霊塊から次々と上がる決まった音階の1音…それが今回は複数あって、まるで精霊達の合唱のようだった。
構築された魔導錬金の陣形は、コンソールグラスを取って俯いたまま蒼を纏い、星の力を行使するブルーの意に従って、掲げられている人々の左腕…その手首へと金色の光輪を生じさせ、やがてそれは完全に金で出来たブレスレットへと変わった後に魔法陣と魔導文字は消えていった。
俯いたままコンソールグラスを目元へ戻したブルーが顔を上げる。
「今、手首に金の腕輪が現れた連中は、自分の魔力が強すぎて、且つ、それをしっかりコントロール出来てない所為で、精霊が近寄りたくても近寄れなかったのが精霊の友を得られなかった原因だ。良い言い方をするならテメェらは一般レベルより元の才能が有り過ぎた。そういうことだ」
敢えてそれを口にすることで焦りや不安を感じていた人々は、そういうことだったのかと安堵の息をつき、泣いていた子供も大喜びする両親や周囲の人々の声に、キョトンとしながらもようやく泣き止んでいく。
「なんで、手っ取り早くそれを制御する魔導具をつけさせてもらった。いつか自分できちんと自分の力をコントロール出来るようになったら、そいつは自然に手首から消えるようになってるんで、元々持ってる才能に見合うだけの技術や実力がついて腕輪が消えてなくなるまでは、そいつを嵌めて過ごしてくれ。それを守れるヤツはもう1度、精霊塊に魔力を投げればそれで精霊の友は応えてくれる筈だ」
ブルーの言葉に金の腕輪を嵌めた人々は、我先に魔力を精霊塊へと投げ込んで、今度は現れてくれた精霊達に、やっと笑顔を取り戻した。
「それと残念ながら1人だけこいつを使ってもまだ精霊の友を得られないだろうヤツがいる。左腕を上げてたのに腕輪が嵌ってねぇヤツが該当者だ。お前は魔導具程度じゃどうにもならん所に居る。なんで、その気があったら決闘後に俺を訪ねてきな。流石にこの状況で仲間外れってのはどうかと思うんでな。以上だ。時間もらってすまねぇな、審判。始めてくれ」
ブルーは審判へと進行権を返して拡声の魔導具を切ると収納へと仕舞い込んだ。
「はい。ではこれより第1王子ムスキアヌス殿下と勇者ブルーゼイの決闘を再開する。両者、開始位置へ!」
口上の兵士が述べた言葉で、最初にそうしたのと同じように2人が簡易的に設けられた開始線へと立つ。
違うのは、ムスキアヌスの側に九界精霊が一体ずつ浮いていることだ。
「それでは、始め!」
「先手必勝! 行くぞ皆! 我らの絆を聖銃士殿に見せるのだ!」
[オー!]
(うん。だからお前のその精霊ノせるの上手いトコは血筋か何かなのか? おい?)
まさか母方の祖母にあたる公爵夫人が水精霊になっちゃったからとか言わないよな? なんてちらっと考えながら見た観覧ボックス席では、ムスキアヌスの乳母と教育係である2人がいたが、その2人は3体くらいしか精霊を伴っていなかった。
公爵に至っては、他の精霊が一切見当たらないので本当に夫人が居ればそれで満足なのだろう。
同じく王妃も水精霊を連れているだけ、国王だけが九界精霊全てを侍らせていたが、両方の血筋を足して割った結果こうなったのだろうか?
「まぁいいか」
精霊達がムスキアヌスと協力して放ってくる魔法は休憩前と比べて威力、精度、速度の全てが段違いで初級魔法でありながら中級程度の所にまで昇華していた。
これは元々の素質や精霊との親和性が高いこともあるが何より彼と精霊の絆がこの短時間で強まっていることの証左でもあった。
「素直なヤツってのは、成長を阻害してる要素を取り除いてやると伸びるの早くてヤダねぇ……」
感心と呆れの混じった複雑な声音で言って、口元を歪める。
だが、まだまだだ、と。
とん、と軽く地を蹴って飛んできた水弾を躱し、そのまま無詠唱で飛翔魔法を展開して上空へと舞い上がる。
「この短期間でスバラシく頑張ったご褒美だ」
ムスキアヌスへとそう言い置いて、己の周囲に暗黒魔法の術式を7つ展開し、周り中から掻き集めた障気に己の魔力を足して障力を作り出し、一斉に5つ全ての魔法陣にその障力を叩きつけて発動させる。
「俺を魔王だと思って本気で来なッ!」
「っ⁈」
深い闇。
妖しく、禍々しく、不気味で、おどろおどろしい黒と紫に彩られた魔法陣が一気に5つ動き出し、1つは地にその力を落とし、ヒビ割れた舞台の石床から2本の角を持ち、堅牢な鱗鎧に身を包んだ骨製の兵士達が処刑人の剣とソードブレイカーを手に数体現れる。
別の1つは天へと伸び別れ、現れたのは小型の飛竜と妖鳥。
その造られた全ての人造有機体に3つ目の魔法陣が意識を与え、4つ目の魔法陣が守備の結界を纏わせ、5つ目の魔法陣がその身体を強化する。
決闘を通り越してイジメになりかねない圧倒的な戦力差だった。
休憩前にはこの決闘を茶番だと陰でせせら嗤っていた者達すらその光景に息を飲む。
すっ、と右手を上げたブルーが無駄に悪役臭を満載にしてそれを撒き散らしながら笑み、掌を上に向けて中指だけを軽く幾度か折り曲げるような仕草を見せ、無言のままムスキアヌスを挑発した。
「くっ! 皆、臆するな! 勝てぬことなど最初から織り込み済みよ! 死ぬ気になれば魔王であろうと一矢は届く! やるぞ!」
ムスキアヌスの言葉に人々は、映像記録で見た魔王にナイフを突き立てて見せた、姿が変わる前の彼の姿を思い出す。
精霊達も彼の言葉に奮い立ち、更に分け与えられた魔力を使って攻撃防御とそれぞれの得意分野に力を振り分け始めた。
とりわけ、暗黒魔法と相殺関係にある神聖魔法を生み出す為に必要な聖光を作り出すことの出来る光の精霊が、彼と共に魔法を練り上げる。
(そうだ。自分だけで魔法を使うんじゃなく、精霊だけに使わせるんでもない。一緒に1つの魔法を作んのが、協力精霊を得る本当の意味だ)
精霊達から教わったのか、はたまた初級魔法しか知らぬ己を把握しているが故に最初から助力を請うたのか。
どちらであったにせよ、この世界の人々にとってはこれまでになかった全く新しい魔法の使い方であることには間違いない。
「お前は、こうやってやらせてりゃ出来るヤツだったのにな。あーあ。ボンクラだったここまでの時間、マジ勿体ねー……」
今更言っても詮無いこと。
それは分かっているけれど、そう思わずにはいられなかったブルーは、ついつい呟いて。
造り出したもの達へ再び障力を供給すると一際、人の悪い笑みを浮かべて攻撃命令を下した。
「……………!!」
そんな時。
あまりよく聞き取れなかったものの、何処かが引っかかる言葉と「何か」が、観客席から投げつけられた。
(?)
不可思議に思うと同時にモニタールームと化している控え室の3人から同時に念話が飛んでくる。
『ブルー!』
『暗部よ!』
『爆発しますわ!』
3人いっぺんに別々のことを言ってくれたお陰で、却って状況をすぐ把握できた。
【精霊達よ、汝らの友を守れ!】
精霊語でブルーが精霊達に呼びかけたのとコロシアムの舞台中央へ投げ込まれた四角い箱が、床にぶつかった衝撃で開き、内包していた魔法陣を展開したのが重なった。
次の瞬間。
…── 全ての景色が、赤黒い光に包まれた。
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