お金がないっ!

有馬 迅

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第3章 謎な扉のその先に

進捗待ち

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 随分と長くかかりそうな気配が、%の進み方が遅いことから察せられて、俺は一旦、背後の扉を閉めた後、奥の扉を見に行くことにした。

 ライブラリーが上にあったんだから、この扉の先は別要素ってことになるしね。

 俺が動いて場所を移動するとこれまで通り、ウインドウも追随してきたので、基本の動きは失われないようだった。

 扉を開けた先は寝室だった。

 俺の好みだからだろう、ベッドは角の端っこ派を反映して、メチャクチャでっかいベッドなのに角端にくっついて置かれていて、前世で好きだったメーカーのものに凄く近い、暖か起毛の毛布と軽くて薄いのに暖かい羽布団、夏かけ用のタオルケットも畳んで置いてあった。

 枕は、頑張って形状を再現したっぽい仰向けでも横向きでも俯せでも寝れる特殊な形をした物で、俺がブラック社畜で極度の頭痛持ちだった頃の愛用品に似ていたけれど。

【枕:表生地はユーフラウ、中綿はスライム基体】

 と表示されたので割と別物らしかった。

(つか、Ver.UP中でも仕事すんのね、ウインドウちゃん。無理せんでええのんよ? 物知らずな俺の為に有り難うね。ご苦労さん……)

 枕の所為でブラック社畜時代を思い出してしまった俺は、そっと労っておいた。

 何か、餓死した時そのままに草地でゴロ生活してた俺だけど、こうして快適安眠セットを提供されてしまったら、ここで寝よ、みたいな気持ちになるから我ながら現金だ。

 落ちるトコまで落ちたらもう這い上がれない、それが自分の当たり前に変わるだけだ、と思っていたけど、それは俺自身の問題ばっかりじゃなくて、社会とか環境とかそういう外的要因も大いに関係してるんだな、と何の見返りも俺に求めることなく、あれこれ与えてくれる万能花葉さんとウインドウちゃんに感謝しておいた。

 疲弊してるだろう皆と違って、一応、元気な俺なので、ここで寝る楽しみは夜まで取っておくことにして、ライブラリーのあった部屋まで戻る。

 まだそこまで寒くはないので、暖炉に火を入れることはしないけど、そこにしか座れる場所がないので、1人がけのソファへと腰を下ろして。

(うわわわっ! これ、座面柔らかっ! メッチャ沈み込んでビックリした!)

 勿論、ビックリしたのは俺の中身だけで、表面的には別人なんじゃなかろうかレベルで全然出ていない。

 ……うん、これも考えてみれば不思議な現象なんだけど、別に鏡見てるわけじゃないし、どっかそこらの空中から自分自身が見えてる訳でもないんだけど、そうだなって分かるんだよね。

 じゃなきゃ、今の自分の外見が金髪に3色斑ら目に190cmレベルの身長あって、しかも寡黙設定さんの所為なのか、表情殆ど動かないし感情が声にすら乗らないって、客観的に理解なんか出来ないもん。

 ウインドウさんのVer.UP終わったら、ここら辺も説明してくれるようになるのかな?

【設定変更は出来ませんが地道に改変していくことは可能です】

 ……それ、アレだよね?

 普通に性格改善とかするのと変わんないヤツなんだよね?

 まぁ、今んトコ不自由ないし、いいっちゃいいんだけどさ。

(万能花葉さん、アイスラテ、ガムシロ入りで頂戴)

 ソファで一頻り、中身の俺だけが悩ましくあれこれ考えながら息をつく。

(あ。溜息はつけた)

 どうでもいいことに変な感心を抱きつつ、万能花葉さんが出してくれたガムシロ入りのアイスラテが入ったトルコ桔梗のちょっとデカイやつ、みたいな花を収穫して、口に運ぶ。

 ガムシロの甘さとラテのほろ苦さ、ミルクの柔らかさが感じられて、こんな時でも金すら払わず飲みたい物飲める俺は、やっぱり幸せなのかもしれない、とちょっぴり思った。

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