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第4章 集まれ仲間達
ルルアザミの蜜珠
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それから1時間程した頃にリリエンヌが調合していたルルアザミの蜜珠は全て完成した。
全部で126個。
「さすが、リリエンヌだね。このりょうを1にちでつくりあげるとか。まりょくのざんりょう、だいじょうぶ?」
「ひゃいっ!」
返事噛んだ。
可愛い。
一息ついたとこで声かけたんだけど、タイミングがよろしくなかったのか、驚かせてしまったようだ。
「わ、わたくしは、だいじようぶです! おとうさまや、おにいさまによくたのまれていた、しょうかや、ぐんにのうにゅうする、まほうやくなんかは、これよりずっとかずがおおいので」
「ならいいけど、こかつにだけは、きをつけてね?」
「はい。ありがどうぞんじます!」
皮肉なもんだな。
デルタズマフェンの連中は、各国に散る薬師の家系や系譜を絶やして、自分達が売り捌く違法魔法薬の対抗手段を無くすことが目的だった筈なのに、クソオヤジとゴミアニキの所為で、図らずも自分達の最大の敵、それも勇者の仲間である優薬師の覚醒を間接的に手伝うことになっちまうとは。
最も本来の世界線ならば、リリエンヌの属性は火と水の2属性だったから調薬には、あまり向いてない。
連中にしてみりゃ、クソオヤジとゴミアニキ、そしてリリエンヌの謀殺は、あくまで序でとか念の為的な意味合いがあっただけで、ファーフリスタ伯爵夫人が亡くなった段階で目的は達したも同然だった。
リリエンヌが家で虐待されたり、役に立たない娘と見做されていたのは、そもそも論で言うならこれが原因だった。
ファーフリスタ伯爵家って、魔法薬の商会と繋がってたのもあって、薬師としての才能を持ってたエーデルリット子爵令嬢を娶ったんだ。
ゴミアニキやリリエンヌにその才を期待するのは、ある意味、仕方ない面もある。
だけど、アリューシャ達の話しでは、俺がエルドレッドに転生することが決まった段階で、その俺がリリエンヌ最推し男子だったことから、サーシャエール様が彼女の属性を土と水の2属性へと変え、本来ならば追加サブストで努力の末に変更される属性へと生来でなってしまった。
勇者パーティの調薬師として迎えられる未来。
それをある意味、前倒し出来る状況に俺とデルタズマフェンの連中がしてしまった、とも言える。
勿論、彼女が虐げられながらも努力や自分の才能を出し惜しみしなかったことだって、大きいのだけれど。
「リリエンヌ。このくすりをオヤジさんやアニキ、やしきのみんなにくばるのは、いったん、しろのひとたちにまかせてくれないか?」
「………」
「じぶんでわたして、ちゃんとこうかがあるのをたしかめたいきもちはわかる。でも、くすりがきいて。じょうたいがおちついて。それからかおをあわせるほうが、おたがいのためだとおもうんだ」
「エルドレッドさま……」
少しだけ、辛そうな顔をするリリエンヌに俺が傍に居りゃ守れるからって言ってやりたいけど、今回ばかりはそれじゃダメなことくらい分かる。
「ごめんね。これはきっと、おれのわがままだ。だけど、いまのファーフリスタけのにんげんを、リリエンヌにちかづけたくないんだ」
こうなったのが、デルタズマフェンの所為だけじゃなく、自分達の所為でもあるのだと気づくことが出来ない状態にある奴等は、邸に居た時よりずっと良い扱いをされていることが一目で分かるリリエンヌを見たら思う筈だ。
自分達が捕われているのは、リリエンヌが自分の安全と安寧の為に自分達を国に売ったからだ、と。
少し想像しただけで皆殺しにしたくなる光景が目の前に見えてくるようで、俺の心の奥底に仄暗いものが滲む。
ふと、下げていた視線の先に現れたのは1つの籠。
そこに、白い油紙に包まれた飴がたくさん入っていた。
顔を上げた俺の目の前には、柔らかな微笑みを浮かべて俺を見るリリエンヌの姿。
「わかりました。すべて、エルドレッドさまに、おまかせいたします。あなたさまが、そうおっしゃるということは、きっとそれが、わたくしのためなのだと、かんがえてくださったすえのことだとおもいますので。あなたさまのおかんがえになられたように、おとりはからいくださいませ。わたくしは、それにしたがいます」
家族よりも、邸の者達よりも、会って間もない俺を信じてくれた。
俺は彼女の手を籠ごと包み込むようにして、そっと握った。
「ありがとう。せめて、しょけいだけは、まぬがれるように、おれもちからをつくすから」
「はいっ」
浮かべられたリリエンヌの嬉しそうな笑みが、ほんの少しだけ、心に痛かった。
全部で126個。
「さすが、リリエンヌだね。このりょうを1にちでつくりあげるとか。まりょくのざんりょう、だいじょうぶ?」
「ひゃいっ!」
返事噛んだ。
可愛い。
一息ついたとこで声かけたんだけど、タイミングがよろしくなかったのか、驚かせてしまったようだ。
「わ、わたくしは、だいじようぶです! おとうさまや、おにいさまによくたのまれていた、しょうかや、ぐんにのうにゅうする、まほうやくなんかは、これよりずっとかずがおおいので」
「ならいいけど、こかつにだけは、きをつけてね?」
「はい。ありがどうぞんじます!」
皮肉なもんだな。
デルタズマフェンの連中は、各国に散る薬師の家系や系譜を絶やして、自分達が売り捌く違法魔法薬の対抗手段を無くすことが目的だった筈なのに、クソオヤジとゴミアニキの所為で、図らずも自分達の最大の敵、それも勇者の仲間である優薬師の覚醒を間接的に手伝うことになっちまうとは。
最も本来の世界線ならば、リリエンヌの属性は火と水の2属性だったから調薬には、あまり向いてない。
連中にしてみりゃ、クソオヤジとゴミアニキ、そしてリリエンヌの謀殺は、あくまで序でとか念の為的な意味合いがあっただけで、ファーフリスタ伯爵夫人が亡くなった段階で目的は達したも同然だった。
リリエンヌが家で虐待されたり、役に立たない娘と見做されていたのは、そもそも論で言うならこれが原因だった。
ファーフリスタ伯爵家って、魔法薬の商会と繋がってたのもあって、薬師としての才能を持ってたエーデルリット子爵令嬢を娶ったんだ。
ゴミアニキやリリエンヌにその才を期待するのは、ある意味、仕方ない面もある。
だけど、アリューシャ達の話しでは、俺がエルドレッドに転生することが決まった段階で、その俺がリリエンヌ最推し男子だったことから、サーシャエール様が彼女の属性を土と水の2属性へと変え、本来ならば追加サブストで努力の末に変更される属性へと生来でなってしまった。
勇者パーティの調薬師として迎えられる未来。
それをある意味、前倒し出来る状況に俺とデルタズマフェンの連中がしてしまった、とも言える。
勿論、彼女が虐げられながらも努力や自分の才能を出し惜しみしなかったことだって、大きいのだけれど。
「リリエンヌ。このくすりをオヤジさんやアニキ、やしきのみんなにくばるのは、いったん、しろのひとたちにまかせてくれないか?」
「………」
「じぶんでわたして、ちゃんとこうかがあるのをたしかめたいきもちはわかる。でも、くすりがきいて。じょうたいがおちついて。それからかおをあわせるほうが、おたがいのためだとおもうんだ」
「エルドレッドさま……」
少しだけ、辛そうな顔をするリリエンヌに俺が傍に居りゃ守れるからって言ってやりたいけど、今回ばかりはそれじゃダメなことくらい分かる。
「ごめんね。これはきっと、おれのわがままだ。だけど、いまのファーフリスタけのにんげんを、リリエンヌにちかづけたくないんだ」
こうなったのが、デルタズマフェンの所為だけじゃなく、自分達の所為でもあるのだと気づくことが出来ない状態にある奴等は、邸に居た時よりずっと良い扱いをされていることが一目で分かるリリエンヌを見たら思う筈だ。
自分達が捕われているのは、リリエンヌが自分の安全と安寧の為に自分達を国に売ったからだ、と。
少し想像しただけで皆殺しにしたくなる光景が目の前に見えてくるようで、俺の心の奥底に仄暗いものが滲む。
ふと、下げていた視線の先に現れたのは1つの籠。
そこに、白い油紙に包まれた飴がたくさん入っていた。
顔を上げた俺の目の前には、柔らかな微笑みを浮かべて俺を見るリリエンヌの姿。
「わかりました。すべて、エルドレッドさまに、おまかせいたします。あなたさまが、そうおっしゃるということは、きっとそれが、わたくしのためなのだと、かんがえてくださったすえのことだとおもいますので。あなたさまのおかんがえになられたように、おとりはからいくださいませ。わたくしは、それにしたがいます」
家族よりも、邸の者達よりも、会って間もない俺を信じてくれた。
俺は彼女の手を籠ごと包み込むようにして、そっと握った。
「ありがとう。せめて、しょけいだけは、まぬがれるように、おれもちからをつくすから」
「はいっ」
浮かべられたリリエンヌの嬉しそうな笑みが、ほんの少しだけ、心に痛かった。
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