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第4章 集まれ仲間達

アルファードゥルークの事情

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 ルナルリア王女が置き去りにした隣国の者達を迎えに行く為に転移した俺が使った空間座標は、彼女がセンティエ城にゲートを開く為に使った座標を逆に辿った物だった。

 あの、黒い円の周りにあった魔法文字。

 あれが、地図魔法上で使われる空間座標を文字化したものだから可能な訳だ。

 転移した先にあるのは、アルファードゥルークとの国境。

 この世界の国境は、ベーターグランディアみたいな軍事国家じゃない限り、壁みたいなものは存在していないんだけど、唯一、それが存在するのが輜重部隊が荷車引いて通れるような主要街道だった。

 物としては、国境→緩衝地帯→国境、みたいな並びになっていて、その真ん中を縦に街道が突っ切る形だ。

 関所は当然のように存在しているけど、身分証の提示と入国目的を聞かれるくらいで、後は入国税を支払えば問題なく通れる。

 国境は緩い感じだが、その分、首都や領都クラスの城塞都市みたいな所に入る時は、鑑定水晶で犯罪歴見られたりする程度には厳しい。

 何が言いたいのかと言うと、その緩い筈の国境で、アルファードゥルーク一行が、何故か足止めを食らっていて、何でやねん? みたいなツッコミしか脳裏に浮かんで来なかったってことだ。

 てっきり、もうちょい国内の方へ進んでるモンだとばっかり思ってたのに。

「だから、本当なんだって! 姫様は、先にご自身の開発された魔導具で、先程、貴国の王城へ転移されてしまったのだ! 早く、我々も追いかけたいんだ。頼む! 理解してくれ!」
「んー……まぁ、貴国は、同盟国で友好国なのだし、理由が理由だから俺個人としては、信じていない訳ではないんだが、上に小心者で疑り深いのが居てなぁ。嘘だったら責任取るのは自分なんだぞって、煩くてなぁ」

 ああ、居るいる、そういうヤツ。

 嘘じゃなかったら足止めした責任取らなきゃなんないんだから、結果は変わらねぇだろ、とか思うんだけど、事勿れ主義っての?

 許可しないで起こるリスクより、許可して起こる騒動や事件の責任を被らないで済む方の選択肢を常に選ぶ輩がさ。

 やっぱ来て正解だったわ。

「やくめ、ごくろう。センティエじょうより、おうひ カトリアーヌさまのめいにより、アルファードゥルークいっこうのあんないやくをおおせつかった、アセンカザフはくしゃくけのエルドレッドだ。せきにんしゃはいるか?」
「えっ?」

 彼等にしてみれば、唐突に介入してきた子供でしかない俺が並べた口上に、その場の時が一瞬だけ止まった。

「その髪と瞳の色……そうか。貴殿が、六精霊の魔導術士様か」
「しっててくれるひとがいると、てまがはぶけてたすかるよ。このひとたちは、おれがしろまでつれていくか……」
「ダメだダメだダメだ!」

 俺の言葉を途中で遮って、ドカドカと足音を立てながら近づいて来たのは、でっぷりと肥え太ったチョビ髭のオッサンだった。

「何が六精霊の魔導術士だ! 伯爵令息を騙り、王妃様の命だなどと、虚偽であったらどう責任を取るつもりだ⁈ このような得体の知れない小僧に、越境審査の何たるかを……ぐぼぁっ⁈」

 煩ぇな、猜疑心が高いだけで与えられた情報を正確に受け取ることすら出来ねぇ愚物が、邪魔すんな。

 そう思った時には、指を鳴らしてヤツの周りから空気の三大要素を遮断していた。

「あ……これかぁ。うわあ、良かった俺、ちゃんと報告書読んでて……」

 うんうん、それ大事だぞ?

 俺のことを知ってた国境警備の係官は、転げ回る上司の様子に何が起こっているのか察したのだろう。

 厭そげな表情を浮かべてそれを眺めていた。

「せいれいにいって、アンタのまわりから、ひとがいきていくのに、だいじなせいぶんをくうきからなくしたんだけど、これでもおれが、まどうじゅつしだってしんじらんない?」
「っ⁈ …っ‼︎」
「かなしーなー。おれ、だてやすいきょうで、こんな、かみやめをしてるわけじゃないんだけどねー? がくいんでならうはずだろ? せいれいのしんあい。もうむかしのことすぎて、わすれちゃったー? いいトシだもんな、オッサン。こっきょうけいびのしごと、せきにんおもすぎてつらいみたいだし、おれから、はいちがえしんげんといてあげるね?」
「っ⁈ っ⁈ っっっ‼︎‼︎‼︎」

 驚愕の表情と共に必死で地面へと指で何か書いたチョビ髭が、そこをバンバンと掌で叩いた。

 “わかった しんじるからやめてくれ” ?

「すなおでよろしい」

 もう1度、指を鳴らして風精霊達に空気を戻してやるように指示を出す。

 ぜーひゅーぜーひゅーぜーひゅー、と荒い息をつきながら、上目遣いで俺を見るオッサンの目は、完全に怯えていた。

 別にいいけどね。

 俺のことを怖がってくれなきゃ、やる意味ねぇし?

「じゃ、そういうことで、このひとたちは、おれがつれてくからね?」

 無言のまま、こくこくこく、と頷くオッサンの首。

 肩を竦めるようにして頷き返し、国境門の方へ視線を戻すと。

 アルファードゥルークの連中が、一斉にビクッとなって身構えた。

 目の前でこんな所業を見せつけられて、武器を抜かなかっただけ理性的で、よく鍛えられた兵だとは思うよ。

 怯えちゃ意味も半減だけどな。

「はなしは、きいてた?」
「あ、ああ……いえ、はい。あの、我が国の第2王女殿下が、貴国に……」
「うん。かいぞうごのゲートまどうぐつかって、こくおうとおうひさまの、まんまえにでてきたよ?」

 俺がそう伝えた瞬間、護衛、傍付き、馬車から降りて来ていた御者と侍女が一斉に膝をついて崩れ落ちた。

「ひぃめぇさぁまぁぁぁぁぁぁぁっ‼︎」

 やりやがった、あの女! みたいな怨嗟の声が綺麗に全員でハモっていて、俺も国境警備の連中も思わず、揃って目を瞬かせてしまったのだった。

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