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第6章 プレ・デビュタント開催
勇者パーティ結成式 -10-
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「取り敢えず、捨てていいんだってことと、じゃあ捨てるにはどうすればいいんだっていう方法として今の話しは覚えといてくれ。負の感情を向けられたり抱いたりするのは、言ってみれば横半分に切り分けた柑橘類をスクイーザーに全力で押し付ける行為に似ている。自分がその半分になった柑橘類だと考えれば、どれだけの負担が自分にかかってるのかは、ある程度、想像出来る筈だ」
自分で料理をすることのない貴族達でも新鮮なジュースを子供に飲ませたり、カクテルとして供された時に目の前で絞られる果物の様子は知っていることでしょう。
あれと自分が同じ目に遭っているのだと言うことは、苦痛でしかなかっただろう今回の勇者覚醒時リスクを共有させられたことで、より理解しやすかったのではないかと思われます。
「皆。僕はこれからこの国を、この世界を守る為の勇者として成長していけるように頑張るよ」
まだ、身体から放たれる光が完全には収まっていない状況のまま、エンディ兄様が話し始めました。
「だから皆も自分と自分の大切な人を守る為に、これまでとは違った形で過ごしていけるように、意識を変えて行ってほしいんだ」
お辛いのでしょう。
ポタポタと額や髪、顎先から汗が滴り落ちるのに気付いてお姉様が傍寄り、お話しの邪魔にならないよう気をつけられながら、ハンカチを軽く当てることで汗を吸って取り払われます。
「まずは、僕が今日から関わることになる場所から民の生活環境自体を変えていくことで、参考になる事例を作っていけるよう努力する。最善は尽くすが、失敗することもあるかもしれない。だが、それを教訓として、これまで当たり前だとされてきた物を少しずつでもより良い方へ、進める指針としてもらいたい。誰の為でもない。自分と自分の大切な人の為に」
[利己的になることを、わたくしは悪とは断じません。ですが、それは己を守る為に必要な場合だけです。わたくしの世界であるこの世界に存在する神は、確かにわたくしだけですが、それでも]
そこで言葉を切られたサーシャエール様は、優美且つ晴れやかな笑顔で仰います。
[この世にもあの世にも、きちんと地獄は存在していますわよ? どちらかの世で、悪は必ず裁かれます。それを肝に銘じてこの世の悪事は行いなさいね]
「人の世で絶対悪と思われてようと、必要悪と思われてようと地獄にしてみりゃ、分け隔てなく悪は悪だからなぁ」
[ああ、そうだわ。それで思い出した。エルドレッド。貴方、気に入らない人、よく肥溜めに転移させるでしょ?]
「……おおう。もしかしてあれ、俺の悪カウント?」
[いいえ。貴方を裁けるのは “上” に居るあの御3方だけだし、貴方がこの世界の天界や地獄にそういう意味で行くことは絶対ないから、そこはいいのだけれど。あれをやられた人が、あの世に行って魂が裁かれる時にね? 自業自得扱いで、減刑対象になっちゃうみたいなんだけど、そこはいいのかしらって?]
「お待ちください、サーシャエール様っ! つまり、小僧……あ、いや、魔導王めの行っている悪魔の所業で、罪が軽くなっている者が居ると?」
[そうなの。この世で悪因悪化の因果応報にキチンとその場で遭ってるって判断されて、しかもその因果発生時間が本来より物凄く短いのもあるでしょ? だから通例では追加刑が30年くらいある筈の罪でも、半分くらいになっちゃってる事例があるみたいなのよね]
サーシャエール様が、国王陛下の質問に答える形で困ったように仰ったことへ、特に事情を知る王城勤めの方々が「Dead or Death」を迫られたような顔をし、子供達もキョトン顔で周囲を見回しています。
「15年あったら、生まれたばかりの赤児が学院に通って2年生くらいなれる程度の長さはありますからね。師匠に肥溜めへ落とされるだけで、地獄の責苦がその長さレベルで短くなるなら安いものでしょう」
「地獄では、それをやめて欲しいと言って来てるんですか?」
マックス様が大人達の顔色ガン無視でそう断じられ、アルフレッド様がその後を受けて質問を投げかけられました。
[いいえ。報告では “いいぞ、もっとやれ!” という意見しかないみたいだわ]
「なら、いいんじゃないでしょうか。エルは、転移で肥溜めに飛ばすか、別の方法を取るか、ちゃんと選んでいるのは、見ていて分かりますし?」
[そう? いいならいいんだけれど]
エンディ兄様が仰る別の方法というのは、恐らくチビ精霊を嗾けて、地味地味嫌がらせ攻撃をすることだと、言わなくても分かっておられましょうに。
けれどそちらに関しては、問題無しとご判断なされているらしいサーシャエール様のお言葉に国王陛下ですら、顔から色をなくされておいでなのが印象的でした。
自分で料理をすることのない貴族達でも新鮮なジュースを子供に飲ませたり、カクテルとして供された時に目の前で絞られる果物の様子は知っていることでしょう。
あれと自分が同じ目に遭っているのだと言うことは、苦痛でしかなかっただろう今回の勇者覚醒時リスクを共有させられたことで、より理解しやすかったのではないかと思われます。
「皆。僕はこれからこの国を、この世界を守る為の勇者として成長していけるように頑張るよ」
まだ、身体から放たれる光が完全には収まっていない状況のまま、エンディ兄様が話し始めました。
「だから皆も自分と自分の大切な人を守る為に、これまでとは違った形で過ごしていけるように、意識を変えて行ってほしいんだ」
お辛いのでしょう。
ポタポタと額や髪、顎先から汗が滴り落ちるのに気付いてお姉様が傍寄り、お話しの邪魔にならないよう気をつけられながら、ハンカチを軽く当てることで汗を吸って取り払われます。
「まずは、僕が今日から関わることになる場所から民の生活環境自体を変えていくことで、参考になる事例を作っていけるよう努力する。最善は尽くすが、失敗することもあるかもしれない。だが、それを教訓として、これまで当たり前だとされてきた物を少しずつでもより良い方へ、進める指針としてもらいたい。誰の為でもない。自分と自分の大切な人の為に」
[利己的になることを、わたくしは悪とは断じません。ですが、それは己を守る為に必要な場合だけです。わたくしの世界であるこの世界に存在する神は、確かにわたくしだけですが、それでも]
そこで言葉を切られたサーシャエール様は、優美且つ晴れやかな笑顔で仰います。
[この世にもあの世にも、きちんと地獄は存在していますわよ? どちらかの世で、悪は必ず裁かれます。それを肝に銘じてこの世の悪事は行いなさいね]
「人の世で絶対悪と思われてようと、必要悪と思われてようと地獄にしてみりゃ、分け隔てなく悪は悪だからなぁ」
[ああ、そうだわ。それで思い出した。エルドレッド。貴方、気に入らない人、よく肥溜めに転移させるでしょ?]
「……おおう。もしかしてあれ、俺の悪カウント?」
[いいえ。貴方を裁けるのは “上” に居るあの御3方だけだし、貴方がこの世界の天界や地獄にそういう意味で行くことは絶対ないから、そこはいいのだけれど。あれをやられた人が、あの世に行って魂が裁かれる時にね? 自業自得扱いで、減刑対象になっちゃうみたいなんだけど、そこはいいのかしらって?]
「お待ちください、サーシャエール様っ! つまり、小僧……あ、いや、魔導王めの行っている悪魔の所業で、罪が軽くなっている者が居ると?」
[そうなの。この世で悪因悪化の因果応報にキチンとその場で遭ってるって判断されて、しかもその因果発生時間が本来より物凄く短いのもあるでしょ? だから通例では追加刑が30年くらいある筈の罪でも、半分くらいになっちゃってる事例があるみたいなのよね]
サーシャエール様が、国王陛下の質問に答える形で困ったように仰ったことへ、特に事情を知る王城勤めの方々が「Dead or Death」を迫られたような顔をし、子供達もキョトン顔で周囲を見回しています。
「15年あったら、生まれたばかりの赤児が学院に通って2年生くらいなれる程度の長さはありますからね。師匠に肥溜めへ落とされるだけで、地獄の責苦がその長さレベルで短くなるなら安いものでしょう」
「地獄では、それをやめて欲しいと言って来てるんですか?」
マックス様が大人達の顔色ガン無視でそう断じられ、アルフレッド様がその後を受けて質問を投げかけられました。
[いいえ。報告では “いいぞ、もっとやれ!” という意見しかないみたいだわ]
「なら、いいんじゃないでしょうか。エルは、転移で肥溜めに飛ばすか、別の方法を取るか、ちゃんと選んでいるのは、見ていて分かりますし?」
[そう? いいならいいんだけれど]
エンディ兄様が仰る別の方法というのは、恐らくチビ精霊を嗾けて、地味地味嫌がらせ攻撃をすることだと、言わなくても分かっておられましょうに。
けれどそちらに関しては、問題無しとご判断なされているらしいサーシャエール様のお言葉に国王陛下ですら、顔から色をなくされておいでなのが印象的でした。
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