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第1章 ウィムンド王国編 1
面倒ごとの予感
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最速でネードリー平原へと到達したアーウィンは、大収納の自動収集機能を入れると早々にハーモニアエリゾンを討伐してから群れを殲滅しにかかった。
地図魔法と探知魔法で事前に調べていた通り、常より神代古龍種を相手取っているアーウィンにとっては、雑魚と称して問題ない魔物ばかりであり魔導錬金で自分専用に作り出した剣による物理攻撃と範囲攻撃魔法を数種類、幾度かブッ放すことでほぼ予告通りの時間で全ての討伐を完了し、その全てを収納し終えた。
「問題は、寧ろここからだな」
幾許かの戦闘痕を残すだけの場となった平原の上へと降り立ったアーウィンは、再び地図魔法と探知魔法を起動してここから南の山間にある魔物暴走の発生源となったであろう迷宮を表示した。
ネードリー平原自体には誘導系の魔法残滓や魔導具の類いは見当たらない。
それを目視だけでなく、探知魔法や地図魔法でも確認して、ダメな方の予測が1つ当たってしまったことに息をついた。
「直接ここまで来て、魔物共を殲滅しても状況は変わらず、さしたる変化がないということは、やはり現地まで行くしかないのだろうな」
人為的発生の根拠となる物、もしくは人物の発見。
それに付随して、発見されたものの確保と関連するであろう情報の収集。
さもなくば、自然発生したのだと決定づけられるだけの痕跡や残滓。
序でに確認出来るものならば、他の群れが存在するか否かまで。
ハッキリとそれが分かればよいのだけれど、と考えながらアーウィンは再び空へと舞い上がると山向こうの空へと消えて行った。
同じ頃。
港湾王都アティスの王城では、退治し終えたワイバーンの襲撃に関する被害と損害の状況報告と併せて、空へと度々浮かび上がっていた巨大な魔法陣に関する情報がブレスによる火事の終息報告と共に行われていた。
但し、報告者はフリュヒテンゴルド公爵ただ1人であり、またそれを受けている人物も国王アドルフィルトたった1人であった。
「流石にこの国の国王であらせられる陛下に対する隠蔽は気が引けると仰られたので、こうしてご報告に参りましたが、我々といたしましては、可能な限り宰相一派と姫殿下には、彼の存在を秘匿出来ればと考えております……陛下におかれましても、せめて、魔物暴走と竜種大行進が終わるまでは、彼の方の自由行動と各対応戦闘をお赦しいただければ、と……」
「赦すも赦さんもないわ。その第3王子とやらの身柄をそのどちらかの勢力に抑えられたら無駄でしかない時間の浪費で国が滅ぶリスクが上がりまくるであろうが」
「……残念ながら、その可能性は否定できないかと……」
サックリと答えたアドルフィルトに、些かホッとした面持ちでフリュヒテンゴルド公爵は答えた。
「もういっそ俺が国王名義で免状書くか」
「念の為にご用意いただけるのであれば、それに越したことはないかと……」
溜息混じりにアドルフィルトが切り出した台詞に、そうして貰えるのが1番の回避策となるのは確実なのもあって、フリュヒテンゴルド公爵は、賛意に類する返答を紡いだ。
「ではそうしよう。城に呼べんのなら書いた免状はそなたが届けて……あー、いや、ダメか。宰相一派に偽造だ何だと騒がれるのがオチだ。んー……仕方ない。ワイバーン騒ぎのドサクサ紛れで降りるか」
「は?」
降りる?
何処へ?
何て考えていたフリュヒテンゴルド公爵は、ふと学生時代のアドルフィルトに脱走癖があったのを思い出した。
「陛下? まさか……」
「供は騎士団長がおるし丁度いいな。よし、免状書いて謁見の間の隠し通路からとっとと城下に降りるぞ! それだけの武勇と知識を持つその第3王子とやら、俺も直接会ってみたい」
玉座から立ち上がったアドルフィルトは、これぞ名案! とばかりに言い放って拳を握った。
お忍びなんて何年振りだろう。
それだけでも心が逸るというものだ。
「いやいやいやいやいや! そんな理由で陛下をお忍びで城下になんて、お連れできる訳ないでしょう⁈ 第一、アーウィン殿下は今頃、魔物暴走の群れを殲滅しにネードリー平原でございますよ!」
「何だ。では往復で十日は帰ってこんではないか」
いえ、今日中には戻ると仰せでした。
フリュヒテンゴルド公爵は、喉まで出かかったこの言葉を寸での所で飲み込んだ。
言ったが最後、アドルフィルトは本当にここから城下へ降りてしまいそうな予感がしたのだ。
「アーウィン殿下が帰っていらしたら報告に参りますので、せめてそれまで免状をお書きになって、お待ちください」
「まぁ、仕方ないな」
そう答えつつもアドルフィルトは、フリュヒテンゴルド公爵の言葉に片眉を持ち上げた。
(アーウィン殿下か。自国の王子にすら略称を使わず王子殿下と呼ぶ此奴が……この短時間で随分と親交を深めたようだなぁ?)
その呼称が件の第3王子とやらの望みであったからなのか、それとも?
自国の危機的状況は理解しつつも……いや、だからこそ。
アドルフィルトは「アーウィン・ラナ・ヴェルザリス」という他国の青年に益々の興味を抱かずにはいられなかった。
地図魔法と探知魔法で事前に調べていた通り、常より神代古龍種を相手取っているアーウィンにとっては、雑魚と称して問題ない魔物ばかりであり魔導錬金で自分専用に作り出した剣による物理攻撃と範囲攻撃魔法を数種類、幾度かブッ放すことでほぼ予告通りの時間で全ての討伐を完了し、その全てを収納し終えた。
「問題は、寧ろここからだな」
幾許かの戦闘痕を残すだけの場となった平原の上へと降り立ったアーウィンは、再び地図魔法と探知魔法を起動してここから南の山間にある魔物暴走の発生源となったであろう迷宮を表示した。
ネードリー平原自体には誘導系の魔法残滓や魔導具の類いは見当たらない。
それを目視だけでなく、探知魔法や地図魔法でも確認して、ダメな方の予測が1つ当たってしまったことに息をついた。
「直接ここまで来て、魔物共を殲滅しても状況は変わらず、さしたる変化がないということは、やはり現地まで行くしかないのだろうな」
人為的発生の根拠となる物、もしくは人物の発見。
それに付随して、発見されたものの確保と関連するであろう情報の収集。
さもなくば、自然発生したのだと決定づけられるだけの痕跡や残滓。
序でに確認出来るものならば、他の群れが存在するか否かまで。
ハッキリとそれが分かればよいのだけれど、と考えながらアーウィンは再び空へと舞い上がると山向こうの空へと消えて行った。
同じ頃。
港湾王都アティスの王城では、退治し終えたワイバーンの襲撃に関する被害と損害の状況報告と併せて、空へと度々浮かび上がっていた巨大な魔法陣に関する情報がブレスによる火事の終息報告と共に行われていた。
但し、報告者はフリュヒテンゴルド公爵ただ1人であり、またそれを受けている人物も国王アドルフィルトたった1人であった。
「流石にこの国の国王であらせられる陛下に対する隠蔽は気が引けると仰られたので、こうしてご報告に参りましたが、我々といたしましては、可能な限り宰相一派と姫殿下には、彼の存在を秘匿出来ればと考えております……陛下におかれましても、せめて、魔物暴走と竜種大行進が終わるまでは、彼の方の自由行動と各対応戦闘をお赦しいただければ、と……」
「赦すも赦さんもないわ。その第3王子とやらの身柄をそのどちらかの勢力に抑えられたら無駄でしかない時間の浪費で国が滅ぶリスクが上がりまくるであろうが」
「……残念ながら、その可能性は否定できないかと……」
サックリと答えたアドルフィルトに、些かホッとした面持ちでフリュヒテンゴルド公爵は答えた。
「もういっそ俺が国王名義で免状書くか」
「念の為にご用意いただけるのであれば、それに越したことはないかと……」
溜息混じりにアドルフィルトが切り出した台詞に、そうして貰えるのが1番の回避策となるのは確実なのもあって、フリュヒテンゴルド公爵は、賛意に類する返答を紡いだ。
「ではそうしよう。城に呼べんのなら書いた免状はそなたが届けて……あー、いや、ダメか。宰相一派に偽造だ何だと騒がれるのがオチだ。んー……仕方ない。ワイバーン騒ぎのドサクサ紛れで降りるか」
「は?」
降りる?
何処へ?
何て考えていたフリュヒテンゴルド公爵は、ふと学生時代のアドルフィルトに脱走癖があったのを思い出した。
「陛下? まさか……」
「供は騎士団長がおるし丁度いいな。よし、免状書いて謁見の間の隠し通路からとっとと城下に降りるぞ! それだけの武勇と知識を持つその第3王子とやら、俺も直接会ってみたい」
玉座から立ち上がったアドルフィルトは、これぞ名案! とばかりに言い放って拳を握った。
お忍びなんて何年振りだろう。
それだけでも心が逸るというものだ。
「いやいやいやいやいや! そんな理由で陛下をお忍びで城下になんて、お連れできる訳ないでしょう⁈ 第一、アーウィン殿下は今頃、魔物暴走の群れを殲滅しにネードリー平原でございますよ!」
「何だ。では往復で十日は帰ってこんではないか」
いえ、今日中には戻ると仰せでした。
フリュヒテンゴルド公爵は、喉まで出かかったこの言葉を寸での所で飲み込んだ。
言ったが最後、アドルフィルトは本当にここから城下へ降りてしまいそうな予感がしたのだ。
「アーウィン殿下が帰っていらしたら報告に参りますので、せめてそれまで免状をお書きになって、お待ちください」
「まぁ、仕方ないな」
そう答えつつもアドルフィルトは、フリュヒテンゴルド公爵の言葉に片眉を持ち上げた。
(アーウィン殿下か。自国の王子にすら略称を使わず王子殿下と呼ぶ此奴が……この短時間で随分と親交を深めたようだなぁ?)
その呼称が件の第3王子とやらの望みであったからなのか、それとも?
自国の危機的状況は理解しつつも……いや、だからこそ。
アドルフィルトは「アーウィン・ラナ・ヴェルザリス」という他国の青年に益々の興味を抱かずにはいられなかった。
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