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閑話1 その頃のヴェルザリス
第2王子 ベールハイムの場合
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その報せを受けた時、ヴェルザリスの第2王子ベールハイムは、宰相エルダリオンと共に国の様々な決裁に関する執務を行なっている真っ最中だった。
「エルダリオン。私は陛下と王太子殿下の下へ参る。万一のことを考えて、そなたに同席を頼んでも構わぬか?」
「勿論で御座います、ベールハイム殿下。アーウィン殿下の一大事、国の宰相たる私が全容を把握しない訳には参りません」
当然と言えば当然の主張だが、国王と王太子の2人からは宰相参加の要請は来ていない。
恐らくは全員でこの件に関わり、政務が滞ることを危惧したのであろうが、そもそも論として、アーウィンが行方不明となった時点で、ありとあらゆるものがどこかのタイミングで滞る可能性の方が高いので。
そんな状態で無理矢理仕事を継続する事程、無駄なことはないと考えて頷き合った2人は、伝令と案内を兼ねた侍従と共に移動を開始した。
「ウィンは、王立古龍研究所から今回の討伐を依頼された時、いつものスキルを使ってその生態や特性を調べた筈だ。となると惑星霊介在の転移魔法はヴォルガニアレガース亜種の種族特性ではなく、その個体の特異技能と考えるのが妥当だろうと私は思う」
道すがらそう話しを切り出したベールハイムにエルダリオンも確と肯く。
「そうですな。加えて申せば、条件発動型のスキルなのではないかと」
「なるほど。そうであるならば鑑定魔法を用いても条件が揃っておらぬ時には、通常表示スキル欄にその魔法が表示されることはないからな」
「はい。事実と照らし合わせて考えるならば、惑星霊介在転移魔法の発動は、4日目の早朝にその星が現れたか、揃ったかのどちらかであろうと推察出来ましょう」
「うむ。あの子が油断していたとか、読み違えたとは思わぬが、星属性とそれに付随する魔法群は所持していること自体が稀少だからな。流石のウィンもヴォルガニアレガースが持っている可能性を考慮し切れなかったのだろうね……」
それは決して責められるような事ではなく、彼にしては珍しいことこの上ないが、所謂 “不測の事態” というカテゴリーに分類されるような話しだろう。
「ふふっ。不測の事態なんてものがウィンにも存在しているのだと思うと、ちょっと面白可愛いよね。普段、あまりそういう面を私達に見せないからさ。あの子は」
「そうですな。私のような凡庸からすれば、アーウィン殿下が齢5歳にして、当時まだ第1王子殿下であられたバルディール様の最大の後ろ盾でいらしたイシュラミシェル侯爵閣下に “兄上の派閥に僕を入れてください!” などと笑顔で申されたあの時が、1番の見所でしたがな。いやはや、侯爵閣下の脳天を直撃しただろう、超特大級爆裂魔法レベルの衝撃をあの表情から推察した当時のことを思い出すと……くふっ……未だに、笑……いやいや、これは。私ともあろう者が失言でございましたな……ぷくくくくっ」
当時のことを思い出したのだろう、堪えられずに笑いを溢したエルダリオンは、一応チック全開な謝罪を挟んで再び吹き出すように笑った。
「ふふふっ、いんじゃないかな? 私もあの時は “ホントにやりやがったコイツ” って、心の中で草通り越して芋生えたからねっ。事前に聞いてなかったら100%吹き出してた自信あるよ! 思わず便乗して “僕も僕も!” なんて追い討ちかけてみたら侯爵様、物凄い目を私に向けて来たからね。実際」
その時、イシュラミシェル侯爵が隠し切れずに面に出してしまった表情は、彼が受け止めねばならなくなった要求内容の重大さとは裏腹に背景へと大草原ならぬ、巨大芋畑の情景を周囲の者に幻視させた。
私用謁見室内に充満したその笑撃は、自動的に同席することとなってしまった使用人の間に於いても “仕事の最中で1番キツかった笑っちゃダメ強制参加イベント” として、現時点ですら王城内で1・2を争う語り草となっている。
王妃の生家でもある彼の侯爵家では真偽に関する調査と議論が、半年以上にも渡って行われたと囁かれているこの事件は、バルディールのデビュタント ── 約5年の歳月を経て ── それが真実であったことを内外にも報せることとなり、同時にまださして形にもなっていなかった第2王子派、第3王子派の自動消滅が起こった記念すべき日にもなったのだった。
余談だが、ヴェルザリスで自生、または栽培されている芋類は地下に食用部分が存在する根菜類ではなく、蕃茄や胡瓜と同じ果菜類の一種である。
因みに「草生える」とは何もない地面に突如として草が生えて来るかのように “何とも言えないニヤリ笑いが面に浮かぶ” という意味の隠語である。
「大草原」は、その上位版にあたっており、自分1人ではなく複数人が同時に同じ思いを共有するような状況を表している。
それよりも表現的には上の意味合いにあたる「芋生える」とは “堪えねばならぬような篭る笑いがそれでも漏れ出てしまう” ことを意味する隠語であり「芋畑」は同様に、その上位版に当たり、複数人共有状況を表す隠語である。
「巨大」の単語がこの「芋畑」を修飾している場合には、笑ってはいけない状況に置かれていることでただでさえ低くなっている場の沸点が崩壊寸前、または爆発寸前であることを表している。
やがて国王と王太子が待つ王家専用の執務室に到着した第2王子と宰相は、待ち侘びたように自分達を出迎えた2人と共に召集をかけられている残りの2人、末姫アキュノーラとアーウィンのただ1人の婚約者、ルクレンティア嬢の到着を待つ身となるのだった。
「エルダリオン。私は陛下と王太子殿下の下へ参る。万一のことを考えて、そなたに同席を頼んでも構わぬか?」
「勿論で御座います、ベールハイム殿下。アーウィン殿下の一大事、国の宰相たる私が全容を把握しない訳には参りません」
当然と言えば当然の主張だが、国王と王太子の2人からは宰相参加の要請は来ていない。
恐らくは全員でこの件に関わり、政務が滞ることを危惧したのであろうが、そもそも論として、アーウィンが行方不明となった時点で、ありとあらゆるものがどこかのタイミングで滞る可能性の方が高いので。
そんな状態で無理矢理仕事を継続する事程、無駄なことはないと考えて頷き合った2人は、伝令と案内を兼ねた侍従と共に移動を開始した。
「ウィンは、王立古龍研究所から今回の討伐を依頼された時、いつものスキルを使ってその生態や特性を調べた筈だ。となると惑星霊介在の転移魔法はヴォルガニアレガース亜種の種族特性ではなく、その個体の特異技能と考えるのが妥当だろうと私は思う」
道すがらそう話しを切り出したベールハイムにエルダリオンも確と肯く。
「そうですな。加えて申せば、条件発動型のスキルなのではないかと」
「なるほど。そうであるならば鑑定魔法を用いても条件が揃っておらぬ時には、通常表示スキル欄にその魔法が表示されることはないからな」
「はい。事実と照らし合わせて考えるならば、惑星霊介在転移魔法の発動は、4日目の早朝にその星が現れたか、揃ったかのどちらかであろうと推察出来ましょう」
「うむ。あの子が油断していたとか、読み違えたとは思わぬが、星属性とそれに付随する魔法群は所持していること自体が稀少だからな。流石のウィンもヴォルガニアレガースが持っている可能性を考慮し切れなかったのだろうね……」
それは決して責められるような事ではなく、彼にしては珍しいことこの上ないが、所謂 “不測の事態” というカテゴリーに分類されるような話しだろう。
「ふふっ。不測の事態なんてものがウィンにも存在しているのだと思うと、ちょっと面白可愛いよね。普段、あまりそういう面を私達に見せないからさ。あの子は」
「そうですな。私のような凡庸からすれば、アーウィン殿下が齢5歳にして、当時まだ第1王子殿下であられたバルディール様の最大の後ろ盾でいらしたイシュラミシェル侯爵閣下に “兄上の派閥に僕を入れてください!” などと笑顔で申されたあの時が、1番の見所でしたがな。いやはや、侯爵閣下の脳天を直撃しただろう、超特大級爆裂魔法レベルの衝撃をあの表情から推察した当時のことを思い出すと……くふっ……未だに、笑……いやいや、これは。私ともあろう者が失言でございましたな……ぷくくくくっ」
当時のことを思い出したのだろう、堪えられずに笑いを溢したエルダリオンは、一応チック全開な謝罪を挟んで再び吹き出すように笑った。
「ふふふっ、いんじゃないかな? 私もあの時は “ホントにやりやがったコイツ” って、心の中で草通り越して芋生えたからねっ。事前に聞いてなかったら100%吹き出してた自信あるよ! 思わず便乗して “僕も僕も!” なんて追い討ちかけてみたら侯爵様、物凄い目を私に向けて来たからね。実際」
その時、イシュラミシェル侯爵が隠し切れずに面に出してしまった表情は、彼が受け止めねばならなくなった要求内容の重大さとは裏腹に背景へと大草原ならぬ、巨大芋畑の情景を周囲の者に幻視させた。
私用謁見室内に充満したその笑撃は、自動的に同席することとなってしまった使用人の間に於いても “仕事の最中で1番キツかった笑っちゃダメ強制参加イベント” として、現時点ですら王城内で1・2を争う語り草となっている。
王妃の生家でもある彼の侯爵家では真偽に関する調査と議論が、半年以上にも渡って行われたと囁かれているこの事件は、バルディールのデビュタント ── 約5年の歳月を経て ── それが真実であったことを内外にも報せることとなり、同時にまださして形にもなっていなかった第2王子派、第3王子派の自動消滅が起こった記念すべき日にもなったのだった。
余談だが、ヴェルザリスで自生、または栽培されている芋類は地下に食用部分が存在する根菜類ではなく、蕃茄や胡瓜と同じ果菜類の一種である。
因みに「草生える」とは何もない地面に突如として草が生えて来るかのように “何とも言えないニヤリ笑いが面に浮かぶ” という意味の隠語である。
「大草原」は、その上位版にあたっており、自分1人ではなく複数人が同時に同じ思いを共有するような状況を表している。
それよりも表現的には上の意味合いにあたる「芋生える」とは “堪えねばならぬような篭る笑いがそれでも漏れ出てしまう” ことを意味する隠語であり「芋畑」は同様に、その上位版に当たり、複数人共有状況を表す隠語である。
「巨大」の単語がこの「芋畑」を修飾している場合には、笑ってはいけない状況に置かれていることでただでさえ低くなっている場の沸点が崩壊寸前、または爆発寸前であることを表している。
やがて国王と王太子が待つ王家専用の執務室に到着した第2王子と宰相は、待ち侘びたように自分達を出迎えた2人と共に召集をかけられている残りの2人、末姫アキュノーラとアーウィンのただ1人の婚約者、ルクレンティア嬢の到着を待つ身となるのだった。
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