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第1章 ウィムンド王国編 2
秘匿技術の広め方
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この世の物とは思えぬ程、美味極まりない昼食を堪能したフェリシティアは、食後の紅茶をアーウィンと共にしながら、この空間に関する事柄を順に説明された。
亜空間、という所を使って広さや高さを好きなように区切って作られた部屋。
トリマプトロンエーテルを使い、食材や飲み物、果ては家具や調度品、衣服などもこの空間の中で作り出されていること。
「あの、殿下」
「何だね?」
「聞けば聞く程、侍女やメイドの必要性を感じないのですが……?」
「そうだな。護衛の者も含めて、私はこれまで1人たりとも城外や宮外で連れ歩いたことはないな」
「では、わたくしが、ここでするべきことは、何なのでしょうか?」
一応、自分は国からアーウィン付きとして指名された侍女、という体で傍に居るので、何もすることのない、名ばかり侍女では困るのだけれど。
「うむ。そなたにはまず、トリマプトロンエーテル自体の使い方を学んで貰いたい。その上で、トリマプトロンエーテルを使った魔法行使を習得し、それを使って、これまでしていた侍女の仕事と併せ、執事や侍従のするような仕事を学んだ魔法を使って、熟してくれないだろうか? ……ここではなく、そなたの国でな?」
そう請われて、フェリシティアは少しの間、考えてしまった。
彼が、それを自分に求める目的は、何処にあるのだろうか、と。
「……御国の秘匿技術の一端を。我が国で。わたくしのような、この国出身の者でも。習得は可能だと知らしめる為、と理解してよろしいのでしょうか?」
「そうだ。不可抗力ではあったが、それを受け入れて貰えるだけの種は、私が此度のことで市井に撒きまくっている。上手くゆけば、そなた達、この件に関わって居らぬ者の中にも自分達にそれを教えて欲しいと請うてくる者が出てくるのではないかと私は踏んでいる」
そして、この国の者達に教えることが実際に可能なのだろうことも先程から見せられてはいた。
何より、他の者達に先んじて教わることの出来るアドバンテージは、計り知れない。
「殿下は、貴族や平民を問わず、お教えになるおつもりなのでしょうか?」
「それどころか、市井に於いてまず、私に教えを請うてくるのは、ジーフェンのような子達なのではないかと私は考えているし、その通りになったとしても私は、教えるつもりで居る」
確かにある程度、自分の生活基盤を持っている大人は、保守的になる面があるだろうし、その大人達に庇護されて生きる子供達も親の意向を無視して、自分の進路を自分で決められる子など一握りだろう。
であるならば、そんな制約もなく何でもいいから生きる糧が欲しい貧民街の人達が、良い意味で変わってしまったジーフェンを見て、一縷の望みや活路を見出してアーウィンを訪ねて来る可能性は捨てきれない。
(それでなくともこの方は、我が国の王族達と違って平民も貧民も見下すことなく、無償であれこれしてくださる御方であることが、王都の中では既に知れ渡っていると考えても過言ではないのだから……)
自分達は、王侯貴族と神殿の殴り込みばかりに気が行っていて、実際、王族は粉をかけまくった上に自爆して行った。
次に来るのは、貴族連中か神殿か、と思っていたけれど平民や貧民の弟子入り志願までは考えていなかった。
……自分達ですら、とっとと国を捨てて彼についていくことを決めたくらいなのだから十分に有り得ると判断出来るような話しであったと言うのに、だ。
「かしこまりました。先ずは、わたくしがこの身を以って可能性の実現を衆目に認識させてみせますわ」
最初に習得するのは、侍女として魔法でお茶を入れること? それともメイドとしてお掃除すること、どっちにしようかしら? などと考えながら、これまでこの国にはなかった魔法の使い方に胸が躍るのを感じながら、手元の紅茶を堪能したフェリシティアだった。
亜空間、という所を使って広さや高さを好きなように区切って作られた部屋。
トリマプトロンエーテルを使い、食材や飲み物、果ては家具や調度品、衣服などもこの空間の中で作り出されていること。
「あの、殿下」
「何だね?」
「聞けば聞く程、侍女やメイドの必要性を感じないのですが……?」
「そうだな。護衛の者も含めて、私はこれまで1人たりとも城外や宮外で連れ歩いたことはないな」
「では、わたくしが、ここでするべきことは、何なのでしょうか?」
一応、自分は国からアーウィン付きとして指名された侍女、という体で傍に居るので、何もすることのない、名ばかり侍女では困るのだけれど。
「うむ。そなたにはまず、トリマプトロンエーテル自体の使い方を学んで貰いたい。その上で、トリマプトロンエーテルを使った魔法行使を習得し、それを使って、これまでしていた侍女の仕事と併せ、執事や侍従のするような仕事を学んだ魔法を使って、熟してくれないだろうか? ……ここではなく、そなたの国でな?」
そう請われて、フェリシティアは少しの間、考えてしまった。
彼が、それを自分に求める目的は、何処にあるのだろうか、と。
「……御国の秘匿技術の一端を。我が国で。わたくしのような、この国出身の者でも。習得は可能だと知らしめる為、と理解してよろしいのでしょうか?」
「そうだ。不可抗力ではあったが、それを受け入れて貰えるだけの種は、私が此度のことで市井に撒きまくっている。上手くゆけば、そなた達、この件に関わって居らぬ者の中にも自分達にそれを教えて欲しいと請うてくる者が出てくるのではないかと私は踏んでいる」
そして、この国の者達に教えることが実際に可能なのだろうことも先程から見せられてはいた。
何より、他の者達に先んじて教わることの出来るアドバンテージは、計り知れない。
「殿下は、貴族や平民を問わず、お教えになるおつもりなのでしょうか?」
「それどころか、市井に於いてまず、私に教えを請うてくるのは、ジーフェンのような子達なのではないかと私は考えているし、その通りになったとしても私は、教えるつもりで居る」
確かにある程度、自分の生活基盤を持っている大人は、保守的になる面があるだろうし、その大人達に庇護されて生きる子供達も親の意向を無視して、自分の進路を自分で決められる子など一握りだろう。
であるならば、そんな制約もなく何でもいいから生きる糧が欲しい貧民街の人達が、良い意味で変わってしまったジーフェンを見て、一縷の望みや活路を見出してアーウィンを訪ねて来る可能性は捨てきれない。
(それでなくともこの方は、我が国の王族達と違って平民も貧民も見下すことなく、無償であれこれしてくださる御方であることが、王都の中では既に知れ渡っていると考えても過言ではないのだから……)
自分達は、王侯貴族と神殿の殴り込みばかりに気が行っていて、実際、王族は粉をかけまくった上に自爆して行った。
次に来るのは、貴族連中か神殿か、と思っていたけれど平民や貧民の弟子入り志願までは考えていなかった。
……自分達ですら、とっとと国を捨てて彼についていくことを決めたくらいなのだから十分に有り得ると判断出来るような話しであったと言うのに、だ。
「かしこまりました。先ずは、わたくしがこの身を以って可能性の実現を衆目に認識させてみせますわ」
最初に習得するのは、侍女として魔法でお茶を入れること? それともメイドとしてお掃除すること、どっちにしようかしら? などと考えながら、これまでこの国にはなかった魔法の使い方に胸が躍るのを感じながら、手元の紅茶を堪能したフェリシティアだった。
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