凡人高校生

ゆるだら公

文字の大きさ
22 / 24
凡人高校生

22話

しおりを挟む
__体育館

「コーチ。満先輩が居ないんですけど、どうしたんですか?」

綺麗に整列していたバスケ部は、満が居ないことに気づき疑問を抱いていた。何せ今まで1度も部活を休んでいないのだから。

「ん?聞いてないぞ。おい、誰か知ってる奴いるか」

「あ、はいコーチ」

小さく手を挙げ返事をしたのは、バスケ部のエース蓮見だった。

「満くんなら、大事な人が大変なんだって大声出しながら走っていきましたよ」

蓮見が発言すると、その場に居た部員たちがヒソヒソと小声で話し始めた。

「満先輩の大事な人?…誰、彼女?」

「それで部活休むのか…」

聞こえてくるのは、満の大事な人予想だったり、彼に対しての悪口だったり色々だ。そんな部員たちを見てコーチもため息をついた。

「いいかお前ら。満のことは毎日来てたから特別に許してやる。たった1日休むくらい誰にでもあるしな。じゃ、準備運動はじめるぞ」

部員たちの話し合いを静めさせ、コーチが指示を出すと共に、みな部活動に取り組み始めた。

(……うるさコイツら)

蓮見は内心で満のことを話している部員を罵り、嫌悪した。



_____✻✻_____



__空き教室

「ねぇ聞きました?朝霧先輩」

「話しかけんな1年」

「凛音先生から聞いたんですけど~」

朝霧に話しかけると同じ答えしか返ってこないので、彼言葉を無視し姫野は口を開いた。

「大先輩、風邪ひいたらしいですよ」

「は?」

大の話だとは思わず、朝霧は目を丸くした。空き教室に居ないのは、てっきりただ遅れているだけと思っていたが、そうではなかったらしい。

「大丈夫でしょうか、大先輩。体弱すぎて途中でポックリいっちゃわないでしょうか」

「過言しすぎだ。ま、確かに体弱そうだな。でもアイツのことだから、どうせ夜中ずっとゲームしてたんだろ」

大のことを的確に当ててくる朝霧は、物凄く勘がいいらしい。

「心配です…。部活終わったら一緒にお見舞い行きましょ!」

「いつから俺様が行くと言った…」

乗り気ではない朝霧も、何だかんだ全否定はしなかった。やはり知り合いのことはそれなりに心配するのだろう。
創造部は、部長の大のことを頭の片隅に置きながら、作業を進めた。



_____✻✻_____



__3年2組

「……なぁ凛音…」

「…なんだ?いつにも増して元気がないように見えるが」

今日も変わらず羽橋の補習に付き合っている凛音。面倒くさくて敬語もやめた。というか羽橋に敬語やめろと言われたらしい。

「よくわかったな…」

「まぁ、そりゃあペンすら持たないでぐだっとしてたらなぁ。早く問題解けよ」

渋々ペンを握った羽橋だが、話さないと文字も書けないらしく、仕方がないので凛音は会話を許した。

「…大がさ、早退したんだよ……」

「…あー。羽橋の初恋ね」

「はぁ!?は、初恋じゃねぇし!!!まず恋じゃねぇし!」

初恋という単語にしか耳が行かず、羽橋はその言葉を慌てて全否定した。凛音は逆に落ち着いた様子で羽橋を眺めた。

「へぇ、…そっか。それで、その大さんがどうかしたのか?」

「…お前教師なのになんも知らねぇのな」

「まぁ俺は、自分の担当のクラスと国語関連で行くクラスの子しか覚えないからなぁ。大さんはそれのどれでもない。だから忘れる」

「…お前最低だな」

「仕事熱心と言ってほしいな」

必要最低限、しかも国語関連の子だけ覚えるという、なんともわかりやすいほどの国語好きだった。

「ちなみに好きな四字熟語は風林火山ふうりんかざん。意味は戦いにおける4つの心構え。風のように素早く林のように静かに、火のような激しい勢いと山のようなどっしりと構えて動かない意。かっこい~!」

「…そんな漢字に興奮する奴初めて見た…」

「変な言い方をするな」

若干引き気味の羽橋の頭をペシっと軽く叩いた。羽橋は「いて」と無意識に声が出た。

「えっと、それで……何の話だっけ」

「大の話だ。…はぁ。アイツ風邪ひいたんだってよ…」

「あら可哀想。…だから落ち込んでるんだ」

羽橋のことをちゃんと見抜いているようで、しかも察しがいい。さすが教師といったところだろう。羽橋はコクリと小さく頷き返した。

「やる気でねぇよー…。大の元気な顔が見てぇ」

「家にでも行ってあげたらどうだ?」

1度顔を合わせた方が心も落ち着くだろうと、凛音は提案したが、それは一瞬にしてボツになってしまった。

「いや、俺アイツの家知らねぇ。わかったとしても行かねぇ」

「…え?」

あんなに大を想っているのに、羽橋には彼との距離的問題があった。
心の距離は弁当の件で少し縮まったと思えるが、大にとってはただ一緒に弁当を食べただけということになっているかもしれない。
そう思うと、いつも自然に話していかないとダメだ。家を知らないのもそれが原因だとわかる。普段話さないと、そりゃ家だってわからない。
大自身も、羽橋のことをあまり覚えていない様子だった。

「…だってさ、緊張するんだよ、俺」

「…ま、今日は行けなくてもさ。風邪治って元気になった大さんと喋ればいいじゃん」

無理やり家に突撃させようとはせず、羽橋のペースで友達になれるように、教師の凛音は応援した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

目が合っちゃった!!

瀬名
BL
楽観的で悩みなんてない俺の世界には好きなもので溢れている。 そんな俺の新しい好きは同じ学校の先輩! 顔が良すぎる先輩は眼福で毎日先輩をこっそり眺める日々。 しかし眺めるだけで幸せだったのに目が合っちゃった!! 顔が良すぎる先輩と楽観的で小動物系な後輩の高校生二人の溺愛物語です ※高校の授業の内容を覚えていないので適当です

俺は夜、社長の猫になる

衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。 ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。 言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。 タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。 けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。

落としたのは化粧じゃなく、みんなの心でした

444
BL
『醜い顔…汚らしい』 幼い頃、実母が病気によって早くに亡くなった数年後に新しい義母からそう言われたシリルは、その言葉が耳に残って16歳となった今も引きずっていた。 だが、義母のその言葉は真っ赤な嘘でシリルはとても美しかった。ただ前妻の息子であるシリルに嫉妬した結果こぼした八つ当たりの言葉であったのをシリルは知らずに、義母のいう醜い顔を隠すために化粧をする。 その結果、彼は化粧によって本当に醜い顔になってしまった。そんな彼が虐げられながらも徐々に周囲を絆す話 暴力表現があるところには※をつけております

寂しいを分け与えた

こじらせた処女
BL
 いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。  昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

【BL】ビジネスカップルなのに溺愛だなんて聞いてない

深爪夏目
BL
男性アイドルユニット「Vinbeat」(ヴィンビート)に所属 している四人組。 イケメンでダンスも上手いが刺激が欲しいとの提案で【真剣交際BLユニット】として活動するよう言われ、ビジネ スカップルを演じることとなる。 最初は恋愛対象でもないメンバーとの恋愛に嫌気が刺していたが次第にお互いの意外な一面や優しさに触れ、溺愛が止まらない…! ・BL兼コメディ小説です。 暴言などの表現がありますので苦手な方はご注意を。 話は続いておりますが、短編形式で進めていきます。

劣等アルファは最強王子から逃げられない

BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。 ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。

幼馴染がいじめるのは俺だ!

むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに... 「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」 「はっ...ぁ??」 好きな奴って俺じゃないの___!? ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子 ーーーーーー 主人公 いじめられっ子 小鳥遊洸人 タカナシ ヒロト 小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。 姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。 高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、 脳破壊。 千透星への恋心を自覚する。 幼馴染 いじめっ子 神宮寺 千透星 ジングウジ チトセ 小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。 美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている) 転校生の須藤千尋が初恋である

処理中です...