とある勇者の陥落〜ヤンデレ少女が忌み子を堕とすまで〜

レッド

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深く淡く

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Side:レックス

深い森を掻き分けて、少年と少女は進んでいく。二人の荷物は多いはずだが、森の歩きにくい地形をものともせずに速度を緩めずに前進する
やがて、拓けた場所に二人は辿り着いた

「コレは凄いね」

「幻想的って、こういう場所の為にあるんだろうな」

鬱蒼と生い茂る森の奥に広がっていたのは澄んだ水で満たされた湖。奥の水底まで視認出来る程に透き通ったそれは妖精の住まうアヴァロンを彷彿とさせる程に清澄な空気で満たされていた
しばらくの間その景観を眺めていると、シャロが荷物を降ろして此方を向く。あまりにも現実離れした光景に心を奪われており、荷物を降ろすことを忘れていた。なので僕もシャロに習い荷物を降ろした

「ねぇ、レックス。泳がない?」

「いいけど……服はどうするの?」

何処かワクワクした様子で目の前の少女は問い掛けてくる。このある種の神聖さを帯びた雰囲気を壊すのはちょっと躊躇われるが、特に問題は無いはず。それに、ここに来るまでにかなり汗を掻いたからスッキリしたいし

「ふふふっ、こんなこともあろうかと水着を買っておいていたのさ」

「お、おお」

嬉しそうに荷物を漁りだすシャロを、年相応の女の子のようにはしゃぐシャロを見てなんとも言えない気分になる。勇者という前提を除けば、そこに居るのは何処にでもいる女の子なのだ。自分を棚に上げて言うのもアレだが、青春を棒に振っていると言われてもおかしくはないのでは無いだろうか
旅に出て、シャロの女の子らしい部分を前に比べて見るようになった。少女に対しての形容としてはおかしな表現だと自覚はしているが、それまでは凛と咲き誇る花のようにある種の神聖さすら感じられる佇まいだった。だが、共に旅をする事でこれまでとはまた違った側面を見る機会が多くなった。多分、こんなシャロを知っているのは僕くらいなのではないだろうか。そういった面を見せてくれるのは彼女の中で僕が日常に組み込まれたと考えていいのだろうか。良き友人・・として、彼女の助けになれればと思う

「ほら、レックス。貴方の水着よ」

「え、僕のも?用意周到だなぁ……ありがとう、シャロ」

パンツ一丁で湖に入るつもりだったので、水着があるのは嬉しく思う。でも、なんでシャロが僕の水着を買ってるのだろうか……
そこからは着替えなので一旦別れて、近くの茂みで着替える。と言っても、僕の方は服を脱ぐ時間の方が長いのだが。それ故にパパっと終わらせて、シャロの方を待つ。暖かな気候の為に冷える事はなく、このまま日光浴をするのもいいなと思ってしまう

「おまたせ~!」

「待ってないよ~」

黒のビキニを着て、彼女は登場した。淡雪のような白い肌と濡羽色の水着はお互いを引き立たせており、少女的魅力の中に妖艶さを孕んでいる。しかし、それはそれとして水着が小さいようだが……

「おやおや?胸に注目するとはいつからレックスは変態さんになったのかなぁ?」

「いや、小さくない?」

「なっ、小さいとは聞き捨てならないよ!」

顔を真っ赤にしてシャロが抗議する。でも、その水着は小さくないか……?もしかして、何か致命的な齟齬が生じてるのでは

「あぁ、水着の話だよ」

「ん?あぁ、そういうこと。少し前のサイズで買ったらこうなってね。胸に栄養が行ってるみたいで…………それで、どう?」

「こんな時に僕は何を言えばいいのか分からないから振らないでよ!?」

これ、何を言ってもセクハラになるのでは?
彼女のプロポーションは抜群、なのでビキニに窮屈そうに押し込められた胸の自己主張が凄い。目のやり場に困るとはこの事なのかと半ば現実逃避しながら、流石に何も言わないというのも彼女に失礼なのではと思い半ば絞り出すように答える

「まぁまぁ、それで感想は?」

「うん、似合ってるよ」

「むう、心が篭ってない。やり直し」

バレたか。仕方ない、それなら……

「次回はサイズを考えましょう」

「ふふっ……ちょっとなにそれ」

「だってホントのことだろ?」

そして、一緒のタイミングで吹き出してひとしきり笑った。こんな風に物凄くくだらないやりとりで笑いあう事がとても幸せに感じる

「まぁ、それは置いといて凄く似合ってるよ」

「ありがとうレックス!でも、それを先に言おうよ!」

「言ったよね!?」

やり直しを要求したのはどこの誰だか……
そんな訳で久し振りに二人きりの水遊びが始まった

─────────────────

Side:シャーロット

怪我の功名と言うべきか、レックスに意識して貰えた……はず
本当に去年のサイズが入らなくなってるとは思わなくて自分でも少々ビックリした。女性は恋をすれば美しくなるとは言うけれど、少々成長し過ぎではないだろうか。他者から見れば充分に魅力的かもしれないが、肝心のレックスに何も反応して貰えないので哀しい
アルカディアが地味に色々教えていたのでその手の知識はあるはずだ。当時は微妙な心境だったが、今となっては感謝するしかない。恐らくアルカディアが教えていなければ性知識が幼児レベルのままだっただろう。それはそれで美味しい気もするが、面倒なしがらみがこの世界には多いのでやはり今の方がまだマシだ。最善は一般男性程の性欲を持っていることなのだが……
心の中で「性」という言葉を連呼するのも悲しくなったのでレックスとの水遊びに本腰を入れる

「いやぁ、水遊びってなんでこんなに面白いんだろうね!」

「いつもと違う感覚がするからなのかな?っと、答えてる最中に水掛けないでよ!」

ちょっとした質問に真剣な顔になったレックスが可愛くてついつい水を掛けてしまった。しかし、お返しとばかりにバシャバシャと水を掛けられてしまった。そんなこんなで水の掛け合いをひとしきり楽しんだ私達は現在ぷかぷかと湖面に浮いて話している。元気一杯に遊ぶのも楽しいが、こうして静かに語らうのも楽しい。自然に包まれているかのような心地良さが精神をリラックスさせ、日頃の疲れが吹き飛ぶようだ

「平和だね~」

「そうだね~」

気の抜けた会話をダラダラとしているこの時間が愛おしく、永遠に続けばいいと願ってしまう。だけど、そんな奇跡は無いと知っている。だから幸せな生活の為の布石を打っておかねばならない

「ねぇ、レックス」

「なに?」

「魔王って悪なのかな」

魔王いもうとの所で過ごす為にはまずレックスから魔王への敵対心を消さなければならない。幸いにして、現魔王政権と呼ぶべき体制は人類に友好的だ。少しづつ魔王討伐に疑問を持たせていけばいい。一手で全てがひっくり返るとは思っていない

「どうして急に?」

「魔王が、ひいては魔族が悪と言われる理由はなんだと思う?」

「魔獣を使役し、人類の一部を支配しているからじゃないの?」

そう、魔族が悪と言われるのは魔獣がそもそもの原因だ。両者を一括りにしている為に魔獣への憎悪が魔族にもスライドしている。魔獣を支配する異能を持つ魔族は多くなく、仮に使役していても労働に使う程度のことしかしていない。そして支配というのは単純に魔族と友好的になった国を反魔族派の連中がそう呼んでいるだけだ

「今までの旅で、使役された魔獣を見たことある?」

「……無いね」

それはそうだろう。そんな暇な魔族は居ないのだから。しかし焦らない、違和感を浮き彫りにしていくことこそが今は重要なのだ

まつりごとはよく分からないけどさ、明確な敵が居たら便利なんじゃないのかな?例えば税を引き上げる時だって『魔族との交戦が増えたため~』とか言っておいたらすんなり行くでしょ?本来国に向くべき敵意を魔族に押し付けられるのなら両手を挙げて万々歳。それに、本気で倒したいのなら本格的に軍隊を派遣すればいいと思うし。流石に私でも沢山の人に襲いかかられたらひとたまりもないよ」

まぁ、最後の部分は嘘だが
軍隊を派遣しない理由は単純だ。戦力差が大き過ぎる。一騎当千とまではいかなくても、魔族は一人でもかなり強い
1の力を持った兵が100人で10の力を持った兵が10人とようやく釣り合う。魔族は極端に数が少ないということもなく、普通に軍隊を作れるほど居る。そんな負け戦にわざわざ突っ込む馬鹿は居ないだろう。要するにこの国はなさけない・・・・・のだ。負けるとわかってるから大きなちょっかいはかけず、その存在を利用して私腹を肥やしている。周辺諸国にもこの国が要ということで多大な援助を受けている

「確かに、直接魔族が侵攻してきた~って話は聞かないね」

「でしょ?だから、こうやって遊んでても多分文句言われないどころか感謝されるんじゃないの?お偉いさんからしたら国民に被害を出さず、ざまに言っても向こうは文句を言ってこない。あまり褒められたやり方じゃないけどね」

と、難しい話はここまでにしておこうかな。せっかく二人きりなんだし、もう少し楽しんでもバチは当たらないだろう

「ということでレックス!向こう岸まで競争だよ!」

「どういうこと!?」

なんていいつつもレックスはすぐさま泳ぐ体勢に入り、泳ぎ始める。休憩した為か、二人とも元気一杯にスタートを切る。フライング気味なので私の方が優勢なのだが、レックスが思ったより速く追い付かれそうだ

だが、キツい水着で激しく動いたことが悪かったのだろう。案の定というか、どうしてそうなったというか……
私の泳ぐスピードが下がり、レックスに追い抜かれた

「レ、レーックス」

「ん?」

「そのー……水着取って欲しいなーって……」

多分、今物凄く顔が真っ赤になっているだろう。波に揺られて私の水着は止まったレックスの方に流れ着く。言っておくが、流石に下は脱げていない

「え、えぇ!?」

突然の事態にビックリ仰天と言った風なレックスも、顔が赤くなっていく。水着を取り、顔を逸らしながらこちらに向かってくる
胸を手で抑えながら、ぎこちない笑みでレックスから水着を受け取り

「そのぉ……あっち向いてて欲しいな」

「ご、ごめん!!」

その後は気恥ずかしかったので、荷物の場所に戻り遅めのお昼ご飯にする事にした
とんでもないハプニングがあったが、これはこれで良かったのかも……しれない……?
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