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束縛
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side:シャーロット
「久し振り、元気にしてた?」
まずは外面を取り繕う。キリッとした路線は多分ギャグにしかならないので活発な笑みを浮かべて印象操作を開始する。イメージの中での行為の正当化と言い換えてもいい。普段しないようなことをするからこそ驚かれるのであって、異常を普通に書き換えれば特に何も思われないだろう
魔王の後ろに佇む黒衣の人物には。妹は例外だ、私と同じで特殊能力持ち。それも精神系の
「えぇ、それは勿論。過激派は日々勢力を減らしていますし、人間との宥和も下準備は順調に進んでいます」
旧時代のまま、人類への敵意を抱き続ける魔物はかなり少数だろう。獅子身中の虫は完全に居ないとは言えないがほぼ無害という訳だ
人類の方の陥落も恐らく遠く無い。人に変化出来る魔物なんて8割を越えているのに人間側はそれを見抜く手段を持ち合わせていない。例外はあるだろうが、それでもバレない確率の方が圧倒的に高い。つまり、人間側の情報は筒抜けという訳なので笑えてくる。当然、その事を理解しているお偉いさんは上手く魔物と付き合っている。獅子身中の虫は敵側には存在している
「さて、本題に入らせてもらうけど、本当にタダ同然で色欲殿借りてしまっていいの?確かに使用用途はアレだけど、一応凄い場所らしいし」
「えぇ、勿論。正直に言わせて頂くと、姉様とレックスさんくらいしかこの盤面をひっくり返せないので……それに、そういう話が契約には含まれていましたから」
「契約?そんなモノした覚えは……」
身に覚えのない、そして予想出来ない単語の登場に少々驚く。私がしたものじゃないなら、誰かが私の為にしたという事になる。しかし、一体誰が何の目的でそんな契約をしたというのか
「あぁ、お前じゃないさ。俺がしたんだからな」
黒衣の人物が初めて言葉を発する。元気一杯というより、豪胆や豪快というような快活さ。それは多少声変わりをしているが私達のよく知る人物の声
「おう、久し振りだなシャロ!あと寝てるレックス!」
半透明な……鍛えこまれた逞しい腕を挙げて旧友は挨拶をする。それを目にして私は────
「なんで亡霊なのにムキムキになってるの?絶対おかしいでしょ」
いや、なんでこの愛すべき馬鹿はマッチョになっているのだろう。普通は死んだ時の姿なんじゃないだろうか。そもそも、ムキムキマッチョな幽霊なんて何かこう……物凄く矛盾があるんじゃないかな?
「えっ、そこなの姉様」
妹はビックリしてるけど、私達からしたら「幽霊になりました」って言われたら「この男ならやりかねない」って認識なんだよね。昔散々そういう類の出来事に連れ回されたし
「……姉様の子供時代ってもしかして結構スプラッタでバイオレンスなのですか?」
「あぁ!楽しかったな!」
「アンタが答えない……って、まぁ否定はしないわ。あと、気軽に心を読むのはやめて」
今代の魔王 アスモデウ=ヘルヴェルミナ
その魔王としての能力は思考同調
簡単に言えば他者の心を覗き見したり、自分と同調させてしまう精神操作系の能力
サキュバスという種族の特性上、基本的に能力は精神系になりやすい。身も蓋もない言い方をすれば男を籠絡する為の能力が種族として発現しやすいからだ
「それじゃあ、もう愛欲殿借りていい?」
外面を取り繕う必要が無くなったのでズバッと単刀直入に本題を切り出す
「え、これまで何があったかとかの語らいは……」
確かにその心遣いは有難いのだが今回に限ってはその厚意を辞させてもらおう。当の私たちはと言うと……
「必要?」
「いや、全く」
この調子という訳である。会おうと思えば何時でも会えるのなら今急いで話すことなんて特に何も無いかな。どうせこの男は死んだ後もワイワイ一人でお祭り騒ぎをしていたのだろうし
「それでは、『愛欲殿』の使用者リストに追加しておきますね。姉様なら一度視たら全て理解出来ると思うのですが、念の為に基本的な概要を説明します」
「『愛欲殿』とは旧時代の魔王、【愛欲】の魔王としての権能の集大成とも言える特殊異空間。その通称です。『万魔殿』の一部でありながらその特殊性により半ば自立状態と化しています」
「物凄く残念な言い方をすれば「ヤり部屋」という表現がマッチします。性交渉に必要な全てが揃っていますので」
ほうほう、性交渉という単語を口にするだけで赤くなるとは……もしかして魔王様はかなりの乙女であらせられる?
「姉様!……こほん。もういいです。多分どうとでもなるでしょう。という訳で、姉様がレックスさんと結ばれてからまた会いましょう。行きましょ、アル」
赤面した魔王と悪友が去っていく
そんなにプリプリ怒らなくてもいいんじゃないかなぁ……
しかし、コレでようやくレックスと二人きりになれる。いっぱい愛し合いましょ?レックス
──────────────
side:その後
アル「なぁ、ずっとレックスの頭撫でてたのって無意識なのかな?」
魔王「なんか、あまりにも自然過ぎてツッコミ辛かったですよね……」
アル「肉食獣にエサをやってる気分だけどなんだが面白そうなのでヨシ!」
魔王「例えが意味分からないですし、多分それ何も良くないですよ!?」
アル「大丈夫、レックスはヤれば出来る子だからな」
魔王「今のイントネーションだと物凄くレックスさんに不名誉な方向になるのでは……」
アル「おう、それであってるぞ」
魔王「違って欲しかったです!」
「久し振り、元気にしてた?」
まずは外面を取り繕う。キリッとした路線は多分ギャグにしかならないので活発な笑みを浮かべて印象操作を開始する。イメージの中での行為の正当化と言い換えてもいい。普段しないようなことをするからこそ驚かれるのであって、異常を普通に書き換えれば特に何も思われないだろう
魔王の後ろに佇む黒衣の人物には。妹は例外だ、私と同じで特殊能力持ち。それも精神系の
「えぇ、それは勿論。過激派は日々勢力を減らしていますし、人間との宥和も下準備は順調に進んでいます」
旧時代のまま、人類への敵意を抱き続ける魔物はかなり少数だろう。獅子身中の虫は完全に居ないとは言えないがほぼ無害という訳だ
人類の方の陥落も恐らく遠く無い。人に変化出来る魔物なんて8割を越えているのに人間側はそれを見抜く手段を持ち合わせていない。例外はあるだろうが、それでもバレない確率の方が圧倒的に高い。つまり、人間側の情報は筒抜けという訳なので笑えてくる。当然、その事を理解しているお偉いさんは上手く魔物と付き合っている。獅子身中の虫は敵側には存在している
「さて、本題に入らせてもらうけど、本当にタダ同然で色欲殿借りてしまっていいの?確かに使用用途はアレだけど、一応凄い場所らしいし」
「えぇ、勿論。正直に言わせて頂くと、姉様とレックスさんくらいしかこの盤面をひっくり返せないので……それに、そういう話が契約には含まれていましたから」
「契約?そんなモノした覚えは……」
身に覚えのない、そして予想出来ない単語の登場に少々驚く。私がしたものじゃないなら、誰かが私の為にしたという事になる。しかし、一体誰が何の目的でそんな契約をしたというのか
「あぁ、お前じゃないさ。俺がしたんだからな」
黒衣の人物が初めて言葉を発する。元気一杯というより、豪胆や豪快というような快活さ。それは多少声変わりをしているが私達のよく知る人物の声
「おう、久し振りだなシャロ!あと寝てるレックス!」
半透明な……鍛えこまれた逞しい腕を挙げて旧友は挨拶をする。それを目にして私は────
「なんで亡霊なのにムキムキになってるの?絶対おかしいでしょ」
いや、なんでこの愛すべき馬鹿はマッチョになっているのだろう。普通は死んだ時の姿なんじゃないだろうか。そもそも、ムキムキマッチョな幽霊なんて何かこう……物凄く矛盾があるんじゃないかな?
「えっ、そこなの姉様」
妹はビックリしてるけど、私達からしたら「幽霊になりました」って言われたら「この男ならやりかねない」って認識なんだよね。昔散々そういう類の出来事に連れ回されたし
「……姉様の子供時代ってもしかして結構スプラッタでバイオレンスなのですか?」
「あぁ!楽しかったな!」
「アンタが答えない……って、まぁ否定はしないわ。あと、気軽に心を読むのはやめて」
今代の魔王 アスモデウ=ヘルヴェルミナ
その魔王としての能力は思考同調
簡単に言えば他者の心を覗き見したり、自分と同調させてしまう精神操作系の能力
サキュバスという種族の特性上、基本的に能力は精神系になりやすい。身も蓋もない言い方をすれば男を籠絡する為の能力が種族として発現しやすいからだ
「それじゃあ、もう愛欲殿借りていい?」
外面を取り繕う必要が無くなったのでズバッと単刀直入に本題を切り出す
「え、これまで何があったかとかの語らいは……」
確かにその心遣いは有難いのだが今回に限ってはその厚意を辞させてもらおう。当の私たちはと言うと……
「必要?」
「いや、全く」
この調子という訳である。会おうと思えば何時でも会えるのなら今急いで話すことなんて特に何も無いかな。どうせこの男は死んだ後もワイワイ一人でお祭り騒ぎをしていたのだろうし
「それでは、『愛欲殿』の使用者リストに追加しておきますね。姉様なら一度視たら全て理解出来ると思うのですが、念の為に基本的な概要を説明します」
「『愛欲殿』とは旧時代の魔王、【愛欲】の魔王としての権能の集大成とも言える特殊異空間。その通称です。『万魔殿』の一部でありながらその特殊性により半ば自立状態と化しています」
「物凄く残念な言い方をすれば「ヤり部屋」という表現がマッチします。性交渉に必要な全てが揃っていますので」
ほうほう、性交渉という単語を口にするだけで赤くなるとは……もしかして魔王様はかなりの乙女であらせられる?
「姉様!……こほん。もういいです。多分どうとでもなるでしょう。という訳で、姉様がレックスさんと結ばれてからまた会いましょう。行きましょ、アル」
赤面した魔王と悪友が去っていく
そんなにプリプリ怒らなくてもいいんじゃないかなぁ……
しかし、コレでようやくレックスと二人きりになれる。いっぱい愛し合いましょ?レックス
──────────────
side:その後
アル「なぁ、ずっとレックスの頭撫でてたのって無意識なのかな?」
魔王「なんか、あまりにも自然過ぎてツッコミ辛かったですよね……」
アル「肉食獣にエサをやってる気分だけどなんだが面白そうなのでヨシ!」
魔王「例えが意味分からないですし、多分それ何も良くないですよ!?」
アル「大丈夫、レックスはヤれば出来る子だからな」
魔王「今のイントネーションだと物凄くレックスさんに不名誉な方向になるのでは……」
アル「おう、それであってるぞ」
魔王「違って欲しかったです!」
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