私が預言者?いいえ、ただのインチキ占い師です!

香樹 詩

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第4話 豪華すぎる神殿と、成金神官長の秘密

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「カレンさん、ここってベルサイユ宮殿だったんだね!」

「あら、真希ちゃん、ベルサイユ宮殿行ったことないじゃない?」

「モノの例えだよ。宮殿なんてテレビとか映画とかでしか見たことないし」

「確かに、そんな例えがしたくなるくらい豪華絢爛ね。
私の一張羅のドレスが似合いそうよ」

「あの中世ヨーロッパ的なドレス? あれどこで着るの?」

「もちろん、お店のイベントよ! 着飾った私って評判なんだから」

「カレンさんは、ドレスじゃなくても美人さんだよ。
私の自慢のカレンさんだもん」

私の言葉に、カレンさんが頭を撫でてくれた。
嬉しくて、ついつい笑顔になる。

「豪華なんだけど、なんだか品がないよね?」

「あら、真希ちゃんもそう思う?」

「だって見るからに金色の壺とか、装飾多めな額縁に、絵だって統一感ゼロだよ。
こういうのって成金趣味って言うの?
なんだか、この区画の主の人となりがわかってきそうだよ」

カレンさんが、「全くだわ」と言いたげな顔をしている。
あの暗くジメジメした北側とは比べものにならないくらい、
豪華な西の区画にため息が溢れた。



「おや? どちら様かな?」

背後から男性の声がした。
あぁ、出た。主様登場ですか。
さぁ、どう切り出そうかな。

ちょっと身構えた私の肩を、カレンさんがポンポンと叩いた。
――ほら、大丈夫。肩の力抜いて、って言ってるみたいに。

作り笑顔を浮かべて振り返る私。カレンさんも同時に振り返った。

「こんにちは、ここでお世話になってます。山中真希です。
ちょっとだけ探検のつもりで歩いていたら、迷いました」

「おやおや、それは大変ですな。よかったら、この私が案内して差し上げましょうか?」

獲物を見つけた時のような、薄気味悪い笑み。
なんだろう……誰かに似てる気がする。

白い生地に銀糸の刺繍がびっしり。
指には金の指輪、首には見せつけるような金のネックレス。
神官って、質素倹約じゃないの?
すでに見かけが悪者感満載なんだけど。



「さっきは北側で迷いました。
あそこ、今にも幽霊が出そうなくらい暗くてジメジメしてて、嫌な感じの場所でした」

わざと肩をすくめて怖がってみせると、男の口角が上がった。

うわぁ、気持ち悪い。
この感じ、やっぱり誰かと被るんだよね。

「それはそれは。不快な思いをさせましたな。
ここは明るくて快適ですぞ。よかったら私と一緒に昼食でも?」

伸ばした男の手が、私の肩に届きそうになった瞬間――
背中を包む温かい腕。
あぁ、もう大丈夫。
不安が一気に消えてなくなった。

「うちの娘に、触れないでいただきたい」

堂々として、威圧感たっぷりの声。
おおっ、ヨシオさん降臨。
思わず「かっこいい!」って言いたくなった。



「はて、あなた様には初めてお会いしますかな?」

頓珍漢な返答。
あぁ、そうか。初日はウィッグとメイクしてたもんね。
ジャージ&ちょんまげの私もいたし、そりゃ気づかないよね。

ふっとカレンさんが口角を上げ、神官長を見下ろした。

「あら、神官長さん。初日にお会いしたじゃない?」

一気に声のトーンと口調を変えるカレンさん。
その姿に、神官長は目を見開いた。
明らかに動揺している。……ふん、ざまぁ。



「ねぇカレンさん、神官の長って王子様より偉いんだね。
私たちの世界とは常識が違うんだね」

「いやいや、お嬢さん、何を言うのかね。
ここの国も王族が一番地位が高いよ」

「えっ? でもさっき会った王子様は、北側のカビ臭い暗い部屋にいたよ。
ね? カレンさん?」

「そうだったわねぇ」

わざとらしいやり取りに、神官長のこめかみがピクピクしてる。
……あ、怒りマーク出た。

「おやおや、あそこは王子様のご希望ですぞ。静かな所とおっしゃいましたし」

うわ、白々しい。
そんな部屋、自分から選ぶわけないじゃん。

「そうなんですね? それじゃあ、王族の方が部屋を移りたいって言えば、その通りになるの?」

「もちろんですとも」

「っだって! 聞こえた? ユーエンさん!」

神官長の背後に声を飛ばすと、彼がギョッと振り返った。

「ええ、聞こえました。では神官長、ノエルの部屋をカレンさんたちの隣へ」

堂々とした口調に、神官長の顔が引き攣る。
あぁ、悔しそう。もっと見せてその顔。

「それじゃ、ノエルの坊やを連れてこなくちゃ!
私がしっかり看病するから、安心してね」

カレンさんのウインクが神官長に刺さった。



「……いや、王族の安全を考えると、警備のしっかりした区画の方が……」

「警備も何も、あそこ、人っこひとりいなかったけど」

私の一言に、神官長が睨んだ。
スッとカレンさんが私の前に出て、その視線を遮る。
そして――手をかざす。

その手のひらに、赤い光が生まれた瞬間、空気が震えた。

「この私より強い人って、いるのかしら?」

火球がぼうっと揺らめく。
神官長の顔がみるみる青ざめていく。

「っそ、そうですな……あなた様は賢者様以来の魔法使い……。
……あ、あなた様の側が一番安心ですな」

恐怖と悔しさを隠せないその顔。
うん、見覚えある。……やっぱり誰かに似てるな。



去っていく神官長を見送って、カレンさんの腕を突いた。

「ねぇカレンさん、あの人って誰かに似てるよね?」

「そう? あんな小物感たっぷりの男なら、印象に残るはずだけどね。
それより、私の可愛い真希ちゃんをあんな目で見るなんて……。
あいつの胸ぐら掴みそうだったわ」

逞しい二の腕を見せつけるポーズと、優雅な口調のミスマッチ。
思わず吹き出してしまった。



「そういえばユーエンさん、神殿の財源って市民のお布施で合ってる?」

カレンさんとの笑いが落ち着いたところで、真面目な質問を投げた。
ユーエンさんの顔がピクリと動く。

「はい、基本はそうだと思います。国からの援助もいくらか……。
それがどうかしました?」

「ほら、あの神官長さん。身につけてる物も、他の神官たちと比べて豪華すぎるでしょ?
おかしいと思わない?」

「確かに……。お布施や援助だけでは、この豪華さは説明できませんね」

カレンさんが「よくできました」と言わんばかりに頭を撫でてくれる。



「それじゃぁ、今夜は秘密を暴きに行こうよ!」

軽いノリで言うと、カレンさんが「それも面白そうね」と返した。

真っ暗な廊下。
無音に近い空気が、少しだけ不安を呼び起こす。
小さな灯りを隠すように持ち、足音を忍ばせる私とカレンさん。
そして、なぜかユーエンさんまで同行していた。

「ユーエンさん、ここの部屋が神官長の執務室で合ってる?」

「はい」

ゆっくりと扉を開ける。
中はやっぱり、物が多い。きっと装飾品だらけなんだろう。

「真希ちゃん、何から探すの?」

「もちろん、隠し帳簿でしょ?」

「だよね」

手分けして部屋を探ると、拍子抜けするほど簡単に見つかった。
鍵もなし、隠し扉もすぐバレる。セキュリティゼロ。

「ねぇ、なんでこんなに手応えないの?
秘密ってもっと厳重に保管しない?」

帳簿をヒラヒラさせると、カレンさんが苦笑した。

「きっとここでは最高権力者だから、誰も逆らわないと思ってるのよ」



「カレンさん、真希さん? ここに何か隠してあります」

ユーエンさんが聖書のような大きな書物を手にしていた。
開いてみると、中はくり抜かれていて、手紙の束が入っている。

三人で手紙を開き、目を通す。
一枚、また一枚。
そして全員が、息を呑んだ。

そこに書かれていたのは、とある人物の名前。
――これは、荒れるなぁ。
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