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一章 門番との出会い
3話 二人目の門番
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寝起きは最悪だった。
鬼石さんに送ってもらった後、一人で考えていたが僕がなんでこんなことに巻き込まれているのか……。
これがなんか凄い大事な鍵だとして、なんで爺ちゃんが持っていたんだろう。
大事なそこの話は聞けていなかった。
「秋良、そろそろ学校の時間じゃないのか?」
頭を抱えている所に、婆ちゃんが僕を起こしに来てくれた。
「婆ちゃんはさ、爺ちゃんが何してたか知ってる?」
「結婚前の事はよくは知らないね。生まれた国も違う、育った環境も違うからね」
「それなら、このネックレスの事は聞いてない?」
「それについては作り話をしてくれた記憶しかないね」
「それってどんな話?」
「今日帰ってきたら教えてあげるよ。秋良は学校に行かないといけないだろ?」
作り話か、そう思ったってことは、やっぱり爺ちゃんはこの鍵について知っていたってことだよな。
婆ちゃんの話を聞けば何かわかるかもしれない。
今日は確か父さん達は遅いし、邪魔されないでゆっくり聞けるかもしれない。
「よ、迎えに来たぞ」
「鬼石さん?」
玄関を開けると鬼石さんが立っていた。
「秋良と契約した以上、あたしには秋良を守る義務がある。その義務を果たすためにはどうしたらいいかあたしなりに考えたんだ」
「それでどういう結論になったんですか?」
「恋人になればいいんじゃないか?」
開いた口が塞がらなかった。
「学校でたまに付き合ってる連中が常に一緒にいるだろ? あいつらと同じであたしと秋良が付き合えばいつも一緒でも不自然じゃないだろ」
これが赤鬼と恐れられていた鬼石焔なのか……。
「失礼を承知で言いますけど――」
「もっと砕けた言い方がいいぞ。お互い同学年だし、あたしと秋良は恋人なんだから、あたしのことは焔と呼べ。その方が恋人っぽいだろ?」
いえ、明らかにいじめ加害者と被害者です。
「それじゃあ、焔さん。僕とだと恋人には見えないと思う。いじめられっ子でクラスカーストも低い僕と、誰もが一目置く強さと美人の焔さんじゃつり合いが取れてないでしょ」
「つり合いか、あたしは気にしないが、秋良が気になるなら私を倒したことにすればいい」
「それ一発でバレる」
僕の運動能力がどうこうじゃなく、焔さんが高すぎる。
僕には人を殴って遠くに飛ばす力なんてないし、刀で地面を切るような技術もない。
「そんなに言うなら、理由はおいおいでいいか。とりあえず授業中以外はあたしが守ってやる」
「じゃあ、お願いします」
この人思った以上に考えなしで動いてる……。
†
問一、焔さんと一緒に登校し、親し気に話をする僕がどうなるかのか答えよ。
焔さん以外は想像すればわかるはずだ。
答え、焔さんに好意を寄せていた男子に呼び出される。
「鬼石さんがなんでお前みたいのと付き合ってんだ?」
校則なんて気にもしてないような出で立ちの不良が、胸倉を掴みにらみつけている。
「まさかお前が鬼石さんに喧嘩で勝ったなんて言わないよな?」
焔さんもだけど、不良の世界では喧嘩で勝てばモテるジンクスでもあるんだろうか。
「それについては僕もよくわからないんです」
「ふざけたこと抜かすなよ? 理由もわからず付き合うかよ」
実際付き合ってるわけじゃないですから。
「ここにいたのか。秋良、探したぞ」
「丁度いいな、ここで真実を暴いてやるよ。鬼石さんはこいつと付き合ってるのか?」
「ああ、恋人同士だな。それがどうかしたのか?」
名前も知らない不良が固まった。
「なんで、鬼石さんみたいな強くて綺麗な人が、こんな奴と付き合ってるんだ?」
「付き合うのに理由がいるのか?」
これはヤバい、顔つきが変わった。
今すぐに焔さんに噛みつきそうなほどに前のめりになった不良は、僕をにらみつける。
「俺が告白した時はよ、弱いやつには興味ないって言ったよな? それなのになんでこんな奴なんだよ」
「少なくとも秋良はお前みたいに弱いやつを睨んだりしないぞ」
「ああ、そうかよ。ならわからせてやるよ!」
不良は僕見ていると思わせながら焔さんに殴りかかる。
たぶんその一撃が焔さんに届くことはなかったはずだ。
昨日みたいな怪物を倒せる焔さんなら、この程度の不良は歯牙にもかけない。
でも、僕の体は反射的に動き、不良の拳が僕の顔を殴りつけた。
痛みが脳に伝わる前に僕の意識は絶たれた。
†
目を覚ますと薄暗い保健室にいた。
痛む頬を抑えながら体を起こすと、夕日に照らされた焔さんがいた。
でもどこか違う?
「あら、お目覚めみたいね」
「焔さん、じゃないですよね?」
姿は似ているけど、動きや行動が焔さんとは全然違う。
そこまで考えればおのずと答えが出てきた。
「鬼石氷美湖さんですか?」
僕と同じクラスで焔さんの双子の妹だ。
「ええ、今日はあなたに一つ聞きたいことがあるの。あなた、私の姉と付き合っていると言うのは本当?」
「そう言うことになってますね。鍵を守るためにですけど」
一瞬言っていいのかと思ったけど、焔さんの妹だし、言っても問題はないよな。
「それなら、その鍵を渡しなさい」
「えっ?」
「人間がそれを持っていても危険なだけ。だから門番である私が貰ってあげる。それであなたは普通の生活に戻る」
これを渡せば、昨日みたいなことには巻き込まれない。
その方が安全だとわかっているのに、手は胸元にある鍵を握りしめ離さない。
「あなたはいじめられていたのよね。それなら私が口利きしてあげる。鍵を渡せばあなたはいじめられなくなるし、カルマに襲われることも無くなる。悪い話じゃないでしょ?」
いいことづくめのはずなのに、渡しちゃダメだと思うのはなんでだ?
「あなたは本当に焔さんの妹ですか?」
こうまで体が拒否するってことは、もしかしてこの人は偽物のカルマなんじゃないか?
「そうなる訳ね。それなら本当のことを言ってあげる」
やっぱりこの人は偽物。
ここからどうやって焔さんを呼べばいい?
「あなたがお姉ちゃんと付き合ってるっていうのが許せないからその指輪を私に渡して二度とお姉ちゃんに近づかないで」
ん? この人は何を言い始めたんだ?
「わかったなら早くその鍵を寄こしなさい。これからは私がお姉ちゃんにその鍵と一緒に守ってもらうから。さあ、早く」
「少し待ってもらえますか?」
「何よ、本気でお姉ちゃんが好きなの? 諦めなさい、お姉ちゃんとあなたじゃ一切のつり合いが取れてないわ。お姉ちゃんの隣にいるべきは私以外にはありえないから」
「そうじゃなくて、その、どこから突っ込んでいいかわからないんですけど、シスコンですか?」
「浅はかな考えね。私とお姉ちゃんは一卵性の双子なの。本来一つであるはずの私達姉妹が二つに分かれた理由があなたにわかる? わかるはずないわよね、それは神々が私とお姉ちゃんを伴侶にしようと考えたためよ」
どうしよう……、この人が頭のおかしいシスコンだということ以外わからない……。
「そんな私達との間に入ろうなんて神々が許さないわよ」
同じ神が出てきているはずなのに、昨日の話とこんなにスケールに差ができるんだな……。
「さあ、私達姉妹のことがわかったのならその鍵を……、神流くん、隠れてなさい」
突然どうしたんだろう。
あれ、部活の声が急に聞こえなくなった?
これって昨日と同じ?
それに気がつき、すぐにベッドの影に身を隠す。
「おい、神流を知らないか?」
「あなたは確か揖斐川くんだったかしら、謝りに来たなら遅かったわね。私も彼に用が合ったけど、もう帰ったみたいよ」
この声は昼の不良か?
僕は不良に目を付けられたんだな。
「嘘はダメだぜ、会長」
何かが壊れる音がし、次の瞬間にドアが窓を突き破った。
まさか、ドアを引っぺがして投げたのか?
「次は当てるぜ。神流はどこにいる?」
「やるつもりなら受けて立つわ」
二人の行方に目を向けた瞬間、揖斐川と目が合った。
「やっぱりそこだよな」
「おい、出て来いよ。お前をボコれば鬼石さんも俺を見直すだろうからよ」
「その程度でお姉ちゃんが惚れると思ってるの?」
「当然だろ。メスはオスの強さに惹かれる。それが普通だ、そうかお前も俺の強さに惚れてるのか? 姉妹揃って可愛がって――」
「触らないでくれる? 勘違いの落ちこぼれ風情が」
揖斐川は伸ばした手を払われたが、怒るどころか笑みを浮かべる。
「気の強い女は好きだぜ。女は男の言うことを聞かないくらいがいい。結局ボコられれば言うこと聞くんだけどな」
大振りの攻撃は鬼石さんに避けられ、代わりにニ三発の反撃をくらっている。
「その程度で私を屈服させるつもりかしら?」
「そっちこそその程度で俺が負けると思ってんのかよ」
さっきの反撃を受けたのに、揖斐川はまた思いっきり振りかぶる。
鬼石さんはその腕が振りぬかれるよりも早く数発の攻撃を打ち込み、揖斐川の体を開かせる。
「鬼石流氷術 砕氷」
氷を纏う鬼石さんの拳が揖斐川の腹部を捕らえ、体が保健室からはじき出される。
それなのに揖斐川のいた場所には黒い巨体が残っていた。
振りかぶっているそれは、ゴオと風を拳で押しつぶしながら鬼石さん目掛け振り下ろす。
「なんだ、避けるのか?」
それの一撃は想像を絶していた。
拳は丸々地面に埋まり床を抉り取っていた。
「馬鹿力ね」
「力こそが正義だからな。強ければ何をしてもいい。弱いのをいたぶっても問題はない」
「話ができるくらい上位のカルマなのに、そんな無駄なことしてるのね」
「無駄かどうか試してみろよ」
さっきと同じく大きく振りかぶり、動こうとしない鬼石さんにその拳を振り下ろす。
そしてなぜか黒い巨体が大きく飛び壁に衝突した。
「鬼石流柔術 落葉。考え方が前時代的だと戦い方も前時代的ね。どっちも力任せで芸がないわ」
鬼石さんに送ってもらった後、一人で考えていたが僕がなんでこんなことに巻き込まれているのか……。
これがなんか凄い大事な鍵だとして、なんで爺ちゃんが持っていたんだろう。
大事なそこの話は聞けていなかった。
「秋良、そろそろ学校の時間じゃないのか?」
頭を抱えている所に、婆ちゃんが僕を起こしに来てくれた。
「婆ちゃんはさ、爺ちゃんが何してたか知ってる?」
「結婚前の事はよくは知らないね。生まれた国も違う、育った環境も違うからね」
「それなら、このネックレスの事は聞いてない?」
「それについては作り話をしてくれた記憶しかないね」
「それってどんな話?」
「今日帰ってきたら教えてあげるよ。秋良は学校に行かないといけないだろ?」
作り話か、そう思ったってことは、やっぱり爺ちゃんはこの鍵について知っていたってことだよな。
婆ちゃんの話を聞けば何かわかるかもしれない。
今日は確か父さん達は遅いし、邪魔されないでゆっくり聞けるかもしれない。
「よ、迎えに来たぞ」
「鬼石さん?」
玄関を開けると鬼石さんが立っていた。
「秋良と契約した以上、あたしには秋良を守る義務がある。その義務を果たすためにはどうしたらいいかあたしなりに考えたんだ」
「それでどういう結論になったんですか?」
「恋人になればいいんじゃないか?」
開いた口が塞がらなかった。
「学校でたまに付き合ってる連中が常に一緒にいるだろ? あいつらと同じであたしと秋良が付き合えばいつも一緒でも不自然じゃないだろ」
これが赤鬼と恐れられていた鬼石焔なのか……。
「失礼を承知で言いますけど――」
「もっと砕けた言い方がいいぞ。お互い同学年だし、あたしと秋良は恋人なんだから、あたしのことは焔と呼べ。その方が恋人っぽいだろ?」
いえ、明らかにいじめ加害者と被害者です。
「それじゃあ、焔さん。僕とだと恋人には見えないと思う。いじめられっ子でクラスカーストも低い僕と、誰もが一目置く強さと美人の焔さんじゃつり合いが取れてないでしょ」
「つり合いか、あたしは気にしないが、秋良が気になるなら私を倒したことにすればいい」
「それ一発でバレる」
僕の運動能力がどうこうじゃなく、焔さんが高すぎる。
僕には人を殴って遠くに飛ばす力なんてないし、刀で地面を切るような技術もない。
「そんなに言うなら、理由はおいおいでいいか。とりあえず授業中以外はあたしが守ってやる」
「じゃあ、お願いします」
この人思った以上に考えなしで動いてる……。
†
問一、焔さんと一緒に登校し、親し気に話をする僕がどうなるかのか答えよ。
焔さん以外は想像すればわかるはずだ。
答え、焔さんに好意を寄せていた男子に呼び出される。
「鬼石さんがなんでお前みたいのと付き合ってんだ?」
校則なんて気にもしてないような出で立ちの不良が、胸倉を掴みにらみつけている。
「まさかお前が鬼石さんに喧嘩で勝ったなんて言わないよな?」
焔さんもだけど、不良の世界では喧嘩で勝てばモテるジンクスでもあるんだろうか。
「それについては僕もよくわからないんです」
「ふざけたこと抜かすなよ? 理由もわからず付き合うかよ」
実際付き合ってるわけじゃないですから。
「ここにいたのか。秋良、探したぞ」
「丁度いいな、ここで真実を暴いてやるよ。鬼石さんはこいつと付き合ってるのか?」
「ああ、恋人同士だな。それがどうかしたのか?」
名前も知らない不良が固まった。
「なんで、鬼石さんみたいな強くて綺麗な人が、こんな奴と付き合ってるんだ?」
「付き合うのに理由がいるのか?」
これはヤバい、顔つきが変わった。
今すぐに焔さんに噛みつきそうなほどに前のめりになった不良は、僕をにらみつける。
「俺が告白した時はよ、弱いやつには興味ないって言ったよな? それなのになんでこんな奴なんだよ」
「少なくとも秋良はお前みたいに弱いやつを睨んだりしないぞ」
「ああ、そうかよ。ならわからせてやるよ!」
不良は僕見ていると思わせながら焔さんに殴りかかる。
たぶんその一撃が焔さんに届くことはなかったはずだ。
昨日みたいな怪物を倒せる焔さんなら、この程度の不良は歯牙にもかけない。
でも、僕の体は反射的に動き、不良の拳が僕の顔を殴りつけた。
痛みが脳に伝わる前に僕の意識は絶たれた。
†
目を覚ますと薄暗い保健室にいた。
痛む頬を抑えながら体を起こすと、夕日に照らされた焔さんがいた。
でもどこか違う?
「あら、お目覚めみたいね」
「焔さん、じゃないですよね?」
姿は似ているけど、動きや行動が焔さんとは全然違う。
そこまで考えればおのずと答えが出てきた。
「鬼石氷美湖さんですか?」
僕と同じクラスで焔さんの双子の妹だ。
「ええ、今日はあなたに一つ聞きたいことがあるの。あなた、私の姉と付き合っていると言うのは本当?」
「そう言うことになってますね。鍵を守るためにですけど」
一瞬言っていいのかと思ったけど、焔さんの妹だし、言っても問題はないよな。
「それなら、その鍵を渡しなさい」
「えっ?」
「人間がそれを持っていても危険なだけ。だから門番である私が貰ってあげる。それであなたは普通の生活に戻る」
これを渡せば、昨日みたいなことには巻き込まれない。
その方が安全だとわかっているのに、手は胸元にある鍵を握りしめ離さない。
「あなたはいじめられていたのよね。それなら私が口利きしてあげる。鍵を渡せばあなたはいじめられなくなるし、カルマに襲われることも無くなる。悪い話じゃないでしょ?」
いいことづくめのはずなのに、渡しちゃダメだと思うのはなんでだ?
「あなたは本当に焔さんの妹ですか?」
こうまで体が拒否するってことは、もしかしてこの人は偽物のカルマなんじゃないか?
「そうなる訳ね。それなら本当のことを言ってあげる」
やっぱりこの人は偽物。
ここからどうやって焔さんを呼べばいい?
「あなたがお姉ちゃんと付き合ってるっていうのが許せないからその指輪を私に渡して二度とお姉ちゃんに近づかないで」
ん? この人は何を言い始めたんだ?
「わかったなら早くその鍵を寄こしなさい。これからは私がお姉ちゃんにその鍵と一緒に守ってもらうから。さあ、早く」
「少し待ってもらえますか?」
「何よ、本気でお姉ちゃんが好きなの? 諦めなさい、お姉ちゃんとあなたじゃ一切のつり合いが取れてないわ。お姉ちゃんの隣にいるべきは私以外にはありえないから」
「そうじゃなくて、その、どこから突っ込んでいいかわからないんですけど、シスコンですか?」
「浅はかな考えね。私とお姉ちゃんは一卵性の双子なの。本来一つであるはずの私達姉妹が二つに分かれた理由があなたにわかる? わかるはずないわよね、それは神々が私とお姉ちゃんを伴侶にしようと考えたためよ」
どうしよう……、この人が頭のおかしいシスコンだということ以外わからない……。
「そんな私達との間に入ろうなんて神々が許さないわよ」
同じ神が出てきているはずなのに、昨日の話とこんなにスケールに差ができるんだな……。
「さあ、私達姉妹のことがわかったのならその鍵を……、神流くん、隠れてなさい」
突然どうしたんだろう。
あれ、部活の声が急に聞こえなくなった?
これって昨日と同じ?
それに気がつき、すぐにベッドの影に身を隠す。
「おい、神流を知らないか?」
「あなたは確か揖斐川くんだったかしら、謝りに来たなら遅かったわね。私も彼に用が合ったけど、もう帰ったみたいよ」
この声は昼の不良か?
僕は不良に目を付けられたんだな。
「嘘はダメだぜ、会長」
何かが壊れる音がし、次の瞬間にドアが窓を突き破った。
まさか、ドアを引っぺがして投げたのか?
「次は当てるぜ。神流はどこにいる?」
「やるつもりなら受けて立つわ」
二人の行方に目を向けた瞬間、揖斐川と目が合った。
「やっぱりそこだよな」
「おい、出て来いよ。お前をボコれば鬼石さんも俺を見直すだろうからよ」
「その程度でお姉ちゃんが惚れると思ってるの?」
「当然だろ。メスはオスの強さに惹かれる。それが普通だ、そうかお前も俺の強さに惚れてるのか? 姉妹揃って可愛がって――」
「触らないでくれる? 勘違いの落ちこぼれ風情が」
揖斐川は伸ばした手を払われたが、怒るどころか笑みを浮かべる。
「気の強い女は好きだぜ。女は男の言うことを聞かないくらいがいい。結局ボコられれば言うこと聞くんだけどな」
大振りの攻撃は鬼石さんに避けられ、代わりにニ三発の反撃をくらっている。
「その程度で私を屈服させるつもりかしら?」
「そっちこそその程度で俺が負けると思ってんのかよ」
さっきの反撃を受けたのに、揖斐川はまた思いっきり振りかぶる。
鬼石さんはその腕が振りぬかれるよりも早く数発の攻撃を打ち込み、揖斐川の体を開かせる。
「鬼石流氷術 砕氷」
氷を纏う鬼石さんの拳が揖斐川の腹部を捕らえ、体が保健室からはじき出される。
それなのに揖斐川のいた場所には黒い巨体が残っていた。
振りかぶっているそれは、ゴオと風を拳で押しつぶしながら鬼石さん目掛け振り下ろす。
「なんだ、避けるのか?」
それの一撃は想像を絶していた。
拳は丸々地面に埋まり床を抉り取っていた。
「馬鹿力ね」
「力こそが正義だからな。強ければ何をしてもいい。弱いのをいたぶっても問題はない」
「話ができるくらい上位のカルマなのに、そんな無駄なことしてるのね」
「無駄かどうか試してみろよ」
さっきと同じく大きく振りかぶり、動こうとしない鬼石さんにその拳を振り下ろす。
そしてなぜか黒い巨体が大きく飛び壁に衝突した。
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