爺ちゃんの形見は世界の鍵でした。

柚木

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四章 十纏との決戦 前編

39話 身を守る術

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「武器ってことはこの子も戦うってことでいいのかな?」

「そうなります。秋良も力が付いてきたので武器の一つくらいはと思っています」

 僕が武器を持つ? それはいくら何でも早い気がする。
 僕も少しは力になれるかもと思ってるけど、武器を持って戦える気はしない。

「それは巌さんも同じ意見?」

「あたしの意見です」

 ピリッと体が反応した直後に、僕の目の前には一本の鎌とそれを止める焔さんの腕が現れた。

「何するんですか?」

「最初から当てるつもりはないよ、その子の実力見ただけだよ。反応はできるけど、意識して対処できるわけじゃないって感じだね」

 鎌はそのまま腕に戻り、何事もなかったように二人で話を続ける。

「はっきり言うけど、この子に武器は早い。私達がどれだけ良い武器を作っても使えないなら置物と一緒。それに武器を奪われて焔達が危険になる場合もある」

 篠雪さんの言葉に反論は誰もできない。

「でも、何か持つっていうのは必要だね。私の考えなら防具とかかな。それなら死ぬまで奪われることはないと思うよ。私は戦闘に関しては素人だから巌さんと話す必要はあるけどね」

「僕も防具は欲しいです」

 防具は確かに欲しいと思ってた。
 最近殺気に反応できるようになってきたし、それがあれば合宿の時みたいに襲われても安全性が増す。

「この子もそう言ってるけど、焔はどう思う?」

「あたしも異論はないです。防具ってのはあたしは思いつかなかったので」

「何か希望はある? 君の要望はなるべく叶えるけど」

「希望ですか? 手足を守りたいです。そこを守れれば逃げやすくなると思うので」

「じゃあ、篭手と具足ってことで話を進めとく」

 そのまま荷解きが終わり、僕達ができることも終わったのでそのまま就寝することになった。

 眠っていたはずなのに、意識が急に覚醒した。
 部屋が暗くまだ夜が明けていない時間なのに、ミシミシと誰かが歩いている音が聞こえてきた。
 強盗じゃないよな。
 誰かがトイレにでも起きたのかと思ったが、その足音は僕の泊まっている部屋の前で止まった。
 スゥッと入り口が開き、足音は僕の元に近づいてくる。
 ピリッとした感覚はないし、敵意はないと思うけど、それなら僕の部屋に何のようだ?
 焔さんなら話しかけてくるはずだし、氷美湖さんだと来る必要はない。

「秋良くん、起きてるよね?」

 この声って裃さん?

「どうかしましたか?」

 暗闇に目が慣れ始めぼんやりと小さな影が見えた。
 何かを手に持っているみたいだけど、この人が敵ってことはないよな?

「こんな時間にごめんね。服を脱いでくれる?」

「…………なんて言いました?」

「服を脱いで。下着は脱がなくていいから脱いで」

 聞き間違いかと思ったけど、聞き間違いじゃないらしい。
 蘇葉さんのお姉さんはまさかの変態だった。
 蘇葉さんもあのけしからん恰好だし、その気もあったのかもしれないけど。

「夜這いってことですか? 僕には焔さんって彼女がいるんですけど?」

「夜這い? いやいや違うよ? 私はただ秋良くんの裸を見たいだけなの!」

「変態だったか……」

「何でそうなるのさ!」

「僕の服を剥いで裸を観賞しようとしてるじゃないですか」

 中学生男子の裸が見たいってのは十分に変態だと思う。
 裃さんは見た目が子供だけど、結構年上みたいだし裁判でも勝てるはずだ。

「なんでそんな曲解するのかなぁ……」

「姉さん、秋良の寸法測った?」

 今度は篠雪さんまで現れた。
 まさかの変態姉妹――、って寸法?

「篠ちゃん、秋良くんがお姉ちゃんを変態呼ばわりするの」

 影しかわからないけど、篠雪さんに抱き付いたらしい。

「ああ、これは姉さんが悪いね。

 篠雪さんはしばらく無言だったけど、何かに気がついたらしく部屋の電気をつけはっきりと言いきった。

「ごめん、姉さんは篭手と具足を作るために手足の寸法を測りたいから服を脱いでって言ったの」

「なるほど」

 ようやく現状を理解できた。

「私もそういったじゃん!」

「言ってませんよ。暗闇で服を脱げって言われたら誰でも勘違いしますよ」

 こっちは寝起きで正常な思考なんかすぐにはできないんだし。
 夜中に裃さんが部屋にやってきただけでも驚きなのに、いきなり服を脱げと言われたら身の危険を感じるのは普通だ。

「暗闇でって言うけど、いきなり電気つけたら眩しいでしょ?」

 驚かせるつもりかと思っていたが、一応気を使っていたらしい。

「せめて寸法を測るからって言ってください」

「そうだよ。この年の男の子はすぐにそっちに思考が行くんだから」

 間違ってないだけに否定できない……。

「寸法測るんですよね。わかったので早くしてください」

 今のままやり合っても篠雪さんには勝てそうにないので、素直に服を脱いだ。
 手足だけかと思っていたが、結局全身を測られ三十分近くかかってしまった。

「完成にどのくらいかかるんですか?」

「明日にはって言いたいけど、お盆のタグもまだ足りないし三日くらいかな」

 あの量を持ってきても足りないって、どれだけの人数が帰ってくるんだよ……。

「あの、お盆って死んだ人が帰ってくるんですよね?」

「そうだよ」

「それなら僕の爺ちゃんも帰ってくるんですか?」

「帰ってくると思う。だけど、見つけられないと思うよ」

「なんで、ですか……?」

「人の形じゃないから。人魂って有名でしょ? あの姿でこっちに来るんだよ。私達でも多少判別できるくらい判断が難しい。それこそタグが無いと見分けがつかない。だからきっと見つけられない」

「そうですか……」

 もう一度会いたかったな。
 会って話を聞きたかったし、僕も話したいことがいっぱいあったけど、やっぱり無理なんだ。
 そう思ったら、少しだけヴァクダ派の気持ちがわかった気がした。
 現世と幽世が混ざればきっとこんなことはなくなる。
 ふと、そう思ってしまった。
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