爺ちゃんの形見は世界の鍵でした。

柚木

文字の大きさ
44 / 52
四章 十纏との決戦 前編

44話 信頼

しおりを挟む
 さっき一瞬光が空に伸びて行ったけど、あれはお姉ちゃんだよね。
 ってことは、お姉ちゃんも今こっちでお姉ちゃん対策をしてる相手と戦ってるはず。
 相手を交換できれば勝てる見込みはある。

「隠れても無駄だってわかってるよね」

「もしかしたら無駄じゃないかもしれないわよ」

「諦めない気持ちってのも僕が持ってない奴だ」

 氷美湖が逃げても、エイデンは氷美湖と同じ身体能力に糸が縮む速度も加わり、速度では勝ち目がない。
 同様に力も守りも糸の差分氷美湖が負けている。

 この糸をあいつが操っている限り私が不利、それなら誰も操れないようにしてあげる!

「鬼石流氷術 氷壁!」

 天に届くほどの大きな氷の壁が、糸を巻き込み二人の間に立ちふさがる。

「なるほど、僕がこれにぶつかるようにしようとしたのか。でも、これくらいで止まらないのはお前も知ってるよね」

「当然でしょ。この壁は合図だもの。私は今ここに居るってね」

 エイデンはその言葉の意味を考えるが、負け惜しみとしか思えなかった。
 今は糸が氷で捕らわれてしまい自在に操作はできないが、この氷壁を壊せばそれも終わり。
 後はこの糸を縮めればそこで氷美湖は殺せる。そう考えた。
 後ろから灼熱の斬撃が迫っているのを知らずに。



 輪廻との戦いから離脱した焔は学校を目指し全力で走っていた。
 わき目も振らず、輪廻の仕掛ける敵を倒しきらずあしらいながら進んでいるが、焔には少しだけ不安もあった。
 氷美湖がいまだに学校にいるかがわからないことだ。
 学校以外で襲われている可能性もあるし、学校で戦いを始めたが、すでに移動している可能性も十分に考えられる。
 それでもそこに向かうのは学校の方に一瞬だけ氷が見えた気がしたからだった。

「いい加減止まれ!」

 輪廻が出したのは生きる爆弾兵。
 それが五体一列に並び、爆発の準備をしている。

 これが相手なら流石に止まるはず。
 爆破の衝撃はあいつも防げていなかったし、少なくとも足を止めて迂回する。
 そこで捕獲して――

 輪廻の作戦を余所に、焔は足に炎を集め踏み込んだ。
 低い位置で滑空するように爆弾兵に近づき躊躇いなく切り伏せる。
 爆破するよりも早く通り抜けた焔は爆風を追い風に更に加速し先に進む。

 そして目指している先に氷壁があるのを見た。

「そうか、やっぱりそこにいるんだな」

 地面を削りながら止まり、槐の柄を握る。

「このくらいの距離なら本気でいいよな。鬼石流居合術 火燕竜爪」

 一瞬で炎王を纏い、その増幅した火力を一刀に込める。
 コンクリートを気化させながら抜かれた一太刀が、真直ぐに氷壁を目指し飛んでいく。

「やっと止まったのね。これからあんたをってまた逃げるんじゃないわよ!」

 追いついた輪廻を無視しまた焔は走り出した。



 エイデンが焔の斬撃に気がついた時にはすでにそれは背後まで迫っていた。
 避けないと死ぬ。直感でそう感じる程に強大な一撃に、エイデンはその場から逃げる。
 その大きな燕を模る炎は、天に届く氷壁を飲み込み全てを燃やす。

「今のは僕を狙わせたのか。流石にビックリしたけど、次は――、え、なんで?」

 エイデンは自分の姿に戻ったことに驚いた。
 糸は繋がっている相手には絶対に切れないはずなのに……。
 そうか、さっきの炎か。
 僕を倒す為じゃなく、最初からこの糸を切るのが目的か!

「あら、私の考えに気がついたみたいね」

「なんで、対象者以外なら糸を切れるって知ってるんだよ! そうか、レイラが教えたのか」

「違うわ、あんたみたいな能力を持った奴と一対一に誘い込まれたからよ。今まで神流を襲って来たのに今回は私が狙われた。それって個別で私達と戦うつもりか、神流を襲っている間の時間稼ぎでしょ? 時間稼ぎが目的なら二対二で監視する方がいい。そうしないのは、その糸の周りに誰かいると不都合がある。ここまで考えればもう答えよね? その糸はコピーの対象者以外になら切れる」

「正解だよ正解! ならもう一度お前をコピーしてやるよ!」

「それは無理よ。私の時間稼ぎは終わったから」

 次の瞬間、爆発音と共に焔がエイデンに切りかかる。

「糸使いよコピーされる」
「玩具使いだ実体化するぞ」

 二人は要点だけを伝え、対戦相手を変える。
 焔の一撃を紙一重で避けたエイデンは焔の体に手を触れ糸を取り付けた。

「早速お前の能力はコピーしたぞ。折角忠告されたのに……はっ?」

「鬼石流居合術 裂空・波紋。やっぱり自分が相手だと手加減してしまうな」

 焔は戸惑うこともせずすぐに攻撃をした。
 エイデンは辛うじて反応し偽装槐で防いだが、右腕を一本切り落とされた。

「お前、自分の体が傷つくとは思わないのか?」

「思わないな。氷美湖がそれを言わなかっただろ」

 言わなかったから? もし言い忘れだったら自分の腕も落ちていたんだぞ?
 なんで、そこまで信用できるんだよ……。

 相手の姿を真似て混乱を誘って来たエイデンは逆に混乱させられ、完全に主導権を奪われていた。

 落ち着け、まだ戦える。
 腕一本は痛いけど、能力が同じならまだ戦いようはあるんだ。
 相手の攻撃もちゃんと防げてるし、ここから逆転できる。

 落ち着きを取り戻したエイデンへの攻撃が止まった。
 槐を握り腰を下ろす。
 明らかな抜刀の構えにエイデンは勝利を確信する。

 この構えはわかる。さっきと同じ裂空・波紋だ。
 それなら僕もカウンターを返せる。
 横薙ぎの居合、この刀で受けて反撃をしてやるよ。

「鬼石流居合術 裂空・波紋」

 焔が刀を鞘から抜き、エイデンは偽装槐で防ぐ。
 同じ刀、同じ能力なら防ぎ切られる。そう確信を持っていたエイデンは偽装槐と共に切り伏せられた。

「同じ槐なら防げると思ったのか? 技の無い刀はただの棒だ。もう聞こえてないだろうけどな」

 エイデンと繋がる糸はエイデンの絶命と共に黒い靄に変わり消滅した。



 焔とエイデンの戦いから少し遅れ、輪廻も学校に到着した。

「もう一人の門番だね?」

「あんたも十纏よね?」

 輪廻がポーチに手を入れ、爆弾をいくつか取り出した。

「鬼石流氷術 氷雨」

 しかしその爆弾は、冷気で作った氷の礫に全て打ち抜いた。

「まだ手はあるも――!」

 ポーチから他のフィギュアを取り出そうとしたが、すでにポーチの紐は切れ地面で凍っていた。

「何かあるならどうぞ。年上のお姉ちゃんとしてお人形遊びに付き合ってあげるわよ」

「舐めるな!! 輪廻はお前みたいな奴を何人も屈服させ続けてきたんだぞ!」

 懐から取り出したのは死神の人形。
 鎌が触れればその人物の命を確実に奪うゲームに出てくるほぼ無敵のモンスター。
 焔に使わなかったのは、移動速度が遅く、このモンスターを退ける唯一の方法が炎だから。
 こんな状況になってしまった時のための護身用の一体だ。
 しかしその切り札は命を与える前に氷美湖に破壊される。

「なんで……?」

「服の中にある人形は全部壊したわよ。服の膨らみを隠すためにそんな服着てるみたいだけど、それって逆に隠してるって宣伝してるような物よ」

 輪廻は隠していた全てが破壊されている気がつき崩れるように膝をついた。

「所詮考えが子供止まりなのよ」

 氷美湖は抵抗を止めた輪廻を氷に閉じ込めそれを砕いた。

「数の力はお姉ちゃんには有効だけど、私には意味ないわよ」

 砕けた破片は黒い靄に変わった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

レオナルド先生創世記

ポルネス・フリューゲル
ファンタジー
ビッグバーンを皮切りに宇宙が誕生し、やがて展開された宇宙の背景をユーモアたっぷりにとてもこっけいなジャック・レオナルド氏のサプライズの幕開け、幕開け!

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

花鳥見聞録

木野もくば
ファンタジー
花の妖精のルイは、メジロのモクの背中に乗って旅をしています。ルイは記憶喪失でした。自分が花の妖精だったことしか思い出せません。失くした記憶を探すため、さまざまな世界を冒険します。 記憶を取り戻して真実を知った時、ルイとモクの選ぶ道は?

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

モブ高校生と愉快なカード達〜主人公は無自覚脱モブ&チート持ちだった!カードから美少女を召喚します!強いカード程1癖2癖もあり一筋縄ではない〜

KeyBow
ファンタジー
 1999年世界各地に隕石が落ち、その数年後に隕石が落ちた場所がラビリンス(迷宮)となり魔物が町に湧き出した。  各国の軍隊、日本も自衛隊によりラビリンスより外に出た魔物を駆逐した。  ラビリンスの中で魔物を倒すと稀にその個体の姿が写ったカードが落ちた。  その後、そのカードに血を掛けるとその魔物が召喚され使役できる事が判明した。  彼らは通称カーヴァント。  カーヴァントを使役する者は探索者と呼ばれた。  カーヴァントには1から10までのランクがあり、1は最弱、6で強者、7や8は最大戦力で鬼神とも呼ばれる強さだ。  しかし9と10は報告された事がない伝説級だ。  また、カードのランクはそのカードにいるカーヴァントを召喚するのに必要なコストに比例する。  探索者は各自そのラビリンスが持っているカーヴァントの召喚コスト内分しか召喚出来ない。  つまり沢山のカーヴァントを召喚したくてもコスト制限があり、強力なカーヴァントはコストが高い為に少数精鋭となる。  数を選ぶか質を選ぶかになるのだ。  月日が流れ、最初にラビリンスに入った者達の子供達が高校生〜大学生に。  彼らは二世と呼ばれ、例外なく特別な力を持っていた。  そんな中、ラビリンスに入った自衛隊員の息子である斗枡も高校生になり探索者となる。  勿論二世だ。  斗枡が持っている最大の能力はカード合成。  それは例えばゴブリンを10体合成すると10体分の力になるもカードのランクとコストは共に変わらない。  彼はその程度の認識だった。  実際は合成結果は最大でランク10の強さになるのだ。  単純な話ではないが、経験を積むとそのカーヴァントはより強力になるが、特筆すべきは合成元の生き残るカーヴァントのコストがそのままになる事だ。  つまりランク1(コスト1)の最弱扱いにも関わらず、実は伝説級であるランク10の強力な実力を持つカーヴァントを作れるチートだった。  また、探索者ギルドよりアドバイザーとして姉のような女性があてがわれる。  斗枡は平凡な容姿の為に己をモブだと思うも、周りはそうは見ず、クラスの底辺だと思っていたらトップとして周りを巻き込む事になる?  女子が自然と彼の取り巻きに!  彼はモブとしてモブではない高校生として生活を始める所から物語はスタートする。

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編6が完結しました!(2025.11.25)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

クラスで一番人気者の女子が構ってくるのだが、そろそろ僕がコミュ障だとわかってもらいたい

みずがめ
恋愛
学生にとって、席替えはいつだって大イベントである。 それはカースト最下位のぼっちである鈴本克巳も同じことであった。せめて穏やかな学生生活をを求める克巳は陽キャグループに囲まれないようにと願っていた。 願いが届いたのか、克巳は窓際の後ろから二番目の席を獲得する。しかし喜んでいたのも束の間、彼の後ろの席にはクラスで一番の人気者の女子、篠原渚が座っていた。 スクールカーストでの格差がありすぎる二人。席が近いとはいえ、関わることはあまりないのだろうと思われていたのだが、渚の方から克巳にしょっちゅう話しかけてくるのであった。 ぼっち男子×のほほん女子のほのぼのラブコメです。 ※あっきコタロウさんのフリーイラストを使用しています。

処理中です...