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五章 鍵の行方
49話 鍵の力
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向こうから連絡があった十五日の夕方、僕達は指示通りに学校にやって来た。
領分に入ると五人の男女が待っていた。
「後一人足りないみたいだが、あたし達を舐めてるのか?」
焔さんが話しかけても誰も言葉を返そうとしない。
全員がヴァクダの命令で動いてるってことか。
「五対二でも全然かまわないぞ。どうせ全員倒すからな。……口も塞がれてるってわけか、わかったよ。それならこっちから行くぞ」
すでに炎王を纏う焔さんは近くにいた敵に切りかかる。
でも、その攻撃は敵に届く直前で何かに阻まれた。
「門番を抑え込め」
レイラさん以外の四人が一斉に焔さん達に襲い掛かり、二人の身動きを封じ込める。
二人に気を取られている間に、レイラさんの隣に一人の男が立っていた。
どこにでも売っている様なスーツを着た金髪碧眼の男性。
こいつは誰だ? 十纏、いや、三毒か?
「門番の二人はそのまま大人しくしてもらおうか、これから始めるショーの邪魔はしてほしくないのでね」
ショーか、この状況だと僕とレイラさんが戦うってところかな。
「陳腐でありきたりだが、思い人を殺させるってのは一度やってみたかったんだ」
「一つ教えてやる。そんなのは成功しないってのが相場だよ」
「だから、邪魔が入らないようにしてんだよ。やれ」
トンと地面をける音が聞こえた。
それを合図に上体を反らすと、体の合った部分にレイラさんの拳が通り過ぎる。
そこから上半身を捻じれば、連続で来る振り下ろしの攻撃は避けられる。
そのままニ三歩下がり、距離を取る。
前にレイラさんから教わった通り、今の動きで攻撃は避けきれた。
やっぱり戦闘を強制されているだけで、戦い方の癖は変わっていない。
頑張って隙を探れ、レイラさんを取り戻すチャンスは必ず来る。
今度はドンと爆発するような音だ。
その時は目一杯脇に跳ぶ。
その後はまた爆発音と共に横に跳ぶ。
そして、同じ場所が足場になるように移動すれば、攻撃の時に使う足場はなくなるから、そこで攻撃は終わる。
「中々やるな。こうなる前にこいつの戦い方を教えてもらったってところか。だが、息が上がってるぞ。まだ始まったばかりだぞ」
最初と同じトンの足音。
さっきみたいに上体を反らしてすぐに動け。
「一対一ならそれでよかったけどな」
「ぐっ……」
あいつが飛ばしたらしいナイフが僕の体に刺さり、バランスを崩した。
そこからレイラさんの追撃に耐えきれるはずも無く、レイラさんの拳が僕の胸を叩いた。
「がはっ……!」
ダメだ、意識を飛ばすな……!
ここで意識が飛んだら僕の負けだ……!
強烈な衝撃に全身が軋み、肺から全ての空気が漏れる。
それでもレイラさんの体に僕の手が届いた。
「まだ動けるのか人間のくせに頑丈だな」
「お前、卑怯だぞ! 秋良とレイラの一騎打ちじゃないのか!?」
「誰もそんなことは言ってないぞ。思い人を殺すためのショーだと言ったはずだ。レイラ、そいつの頭を砕け。どんな生き物も頭を潰せば死ぬ。あの爺もそうだった」
あの爺? もしかして爺ちゃん?
血が沸騰し、手に力が籠る。
その握撃にレイラさんの一撃が逸れ、僕の頭を殴る直前に倒れ込んだ。
「お前が爺ちゃんを殺したのか?」
「似ていると思っていたが、お前は門番と一緒にいた爺の血縁者か。そうだよ、俺が殺した。一度こっちに勝った男と聞いていたが、頑丈なだけだったな。寄る年波には勝てなかったんだな」
違う、爺ちゃんは鍵を僕に託していたから、鍵の力を使えなかったんだ。
「お前が父さんと母さんと殺したのか!」
「そうだって言ってるだろ。何度も言わせるなよ。お前達の両親を殺したのも俺達三毒だ。だがな、それをとやかく言われる筋合いはねぇよ。お前達も俺の仲間を何人も殺して来ただろ?」
「そうね。お父さんもお母さんも戦いに負けて死んだ。だからあんたを恨むのは間違ってるかもね」
怒りに震える僕達とは違い、氷美湖さんだけは冷静にそう返した。
「だから、あんたは門番として倒すわ。最初からそのつもりだしね」
氷美湖さんの言う通りだ。
目的は何にも変わってない。
三毒も十纏もここで全部倒してやる。
「そいつらをどうにかできたら相手してやるよ。レイラ、いい加減その人間を殺せ」
ドンとレイラさんは地面を踏み抜き、僕の顔目がけて向かってくる。
それを僕は真正面から受け止める。
「受け止めた?」
「レイラさん、僕達の元に戻ってきてください。あなたはそんな洗脳に負けるほど、弱くないですよね?」
鍵に思いを込める。
レイラさんの体に潜むヴァクダの呪縛を壊せと強く思い描く。
「なんで、人間が俺達の攻撃を止められる?」
「理想ってさ、願えば叶うものなんだよ。ね、レイラさん」
ドンと二度レイラさんの踏み込みが聞こえた。
焔さんと氷美湖さんに覆いかぶさっていた四人が吹き飛ぶ。
「でも、恋愛はそうはいかないかな。どんなに願っても秋良は私の物にならないもん」
レイラさんに表情が戻った。
うん、やっぱりレイラさんはこっちの自由な方がいいや。
「お前は何をした? ヴァクダの、いや、俺の洗脳が解けるはずはない!」
「願えば叶うって言っただろ。何度も言わせるなよ」
「糞ガキが、お前だけは俺が直接殺してやるよ。何をしたのかわからないが、洗脳を解けるなら、お前から殺せばいいんだろ」
男は青筋を浮かべながら、僕に殺意を飛ばす。
「秋良と戦いたいならあたしに勝ってからにしな」
「お前も他の奴に勝ってからだ」
パッと焔さんの姿が消えた。
そして気がつくと氷美湖さんもレイラさんもその場から消えていた。
「何をした?」
「俺は何もしてないさ。お前が何もできないように全員をバラバラにさせてもらったがな。さあ、これで一対一だ願えば叶うなら、俺と戦っても勝てるよな?」
そう言って男はいやらしく笑った。
領分に入ると五人の男女が待っていた。
「後一人足りないみたいだが、あたし達を舐めてるのか?」
焔さんが話しかけても誰も言葉を返そうとしない。
全員がヴァクダの命令で動いてるってことか。
「五対二でも全然かまわないぞ。どうせ全員倒すからな。……口も塞がれてるってわけか、わかったよ。それならこっちから行くぞ」
すでに炎王を纏う焔さんは近くにいた敵に切りかかる。
でも、その攻撃は敵に届く直前で何かに阻まれた。
「門番を抑え込め」
レイラさん以外の四人が一斉に焔さん達に襲い掛かり、二人の身動きを封じ込める。
二人に気を取られている間に、レイラさんの隣に一人の男が立っていた。
どこにでも売っている様なスーツを着た金髪碧眼の男性。
こいつは誰だ? 十纏、いや、三毒か?
「門番の二人はそのまま大人しくしてもらおうか、これから始めるショーの邪魔はしてほしくないのでね」
ショーか、この状況だと僕とレイラさんが戦うってところかな。
「陳腐でありきたりだが、思い人を殺させるってのは一度やってみたかったんだ」
「一つ教えてやる。そんなのは成功しないってのが相場だよ」
「だから、邪魔が入らないようにしてんだよ。やれ」
トンと地面をける音が聞こえた。
それを合図に上体を反らすと、体の合った部分にレイラさんの拳が通り過ぎる。
そこから上半身を捻じれば、連続で来る振り下ろしの攻撃は避けられる。
そのままニ三歩下がり、距離を取る。
前にレイラさんから教わった通り、今の動きで攻撃は避けきれた。
やっぱり戦闘を強制されているだけで、戦い方の癖は変わっていない。
頑張って隙を探れ、レイラさんを取り戻すチャンスは必ず来る。
今度はドンと爆発するような音だ。
その時は目一杯脇に跳ぶ。
その後はまた爆発音と共に横に跳ぶ。
そして、同じ場所が足場になるように移動すれば、攻撃の時に使う足場はなくなるから、そこで攻撃は終わる。
「中々やるな。こうなる前にこいつの戦い方を教えてもらったってところか。だが、息が上がってるぞ。まだ始まったばかりだぞ」
最初と同じトンの足音。
さっきみたいに上体を反らしてすぐに動け。
「一対一ならそれでよかったけどな」
「ぐっ……」
あいつが飛ばしたらしいナイフが僕の体に刺さり、バランスを崩した。
そこからレイラさんの追撃に耐えきれるはずも無く、レイラさんの拳が僕の胸を叩いた。
「がはっ……!」
ダメだ、意識を飛ばすな……!
ここで意識が飛んだら僕の負けだ……!
強烈な衝撃に全身が軋み、肺から全ての空気が漏れる。
それでもレイラさんの体に僕の手が届いた。
「まだ動けるのか人間のくせに頑丈だな」
「お前、卑怯だぞ! 秋良とレイラの一騎打ちじゃないのか!?」
「誰もそんなことは言ってないぞ。思い人を殺すためのショーだと言ったはずだ。レイラ、そいつの頭を砕け。どんな生き物も頭を潰せば死ぬ。あの爺もそうだった」
あの爺? もしかして爺ちゃん?
血が沸騰し、手に力が籠る。
その握撃にレイラさんの一撃が逸れ、僕の頭を殴る直前に倒れ込んだ。
「お前が爺ちゃんを殺したのか?」
「似ていると思っていたが、お前は門番と一緒にいた爺の血縁者か。そうだよ、俺が殺した。一度こっちに勝った男と聞いていたが、頑丈なだけだったな。寄る年波には勝てなかったんだな」
違う、爺ちゃんは鍵を僕に託していたから、鍵の力を使えなかったんだ。
「お前が父さんと母さんと殺したのか!」
「そうだって言ってるだろ。何度も言わせるなよ。お前達の両親を殺したのも俺達三毒だ。だがな、それをとやかく言われる筋合いはねぇよ。お前達も俺の仲間を何人も殺して来ただろ?」
「そうね。お父さんもお母さんも戦いに負けて死んだ。だからあんたを恨むのは間違ってるかもね」
怒りに震える僕達とは違い、氷美湖さんだけは冷静にそう返した。
「だから、あんたは門番として倒すわ。最初からそのつもりだしね」
氷美湖さんの言う通りだ。
目的は何にも変わってない。
三毒も十纏もここで全部倒してやる。
「そいつらをどうにかできたら相手してやるよ。レイラ、いい加減その人間を殺せ」
ドンとレイラさんは地面を踏み抜き、僕の顔目がけて向かってくる。
それを僕は真正面から受け止める。
「受け止めた?」
「レイラさん、僕達の元に戻ってきてください。あなたはそんな洗脳に負けるほど、弱くないですよね?」
鍵に思いを込める。
レイラさんの体に潜むヴァクダの呪縛を壊せと強く思い描く。
「なんで、人間が俺達の攻撃を止められる?」
「理想ってさ、願えば叶うものなんだよ。ね、レイラさん」
ドンと二度レイラさんの踏み込みが聞こえた。
焔さんと氷美湖さんに覆いかぶさっていた四人が吹き飛ぶ。
「でも、恋愛はそうはいかないかな。どんなに願っても秋良は私の物にならないもん」
レイラさんに表情が戻った。
うん、やっぱりレイラさんはこっちの自由な方がいいや。
「お前は何をした? ヴァクダの、いや、俺の洗脳が解けるはずはない!」
「願えば叶うって言っただろ。何度も言わせるなよ」
「糞ガキが、お前だけは俺が直接殺してやるよ。何をしたのかわからないが、洗脳を解けるなら、お前から殺せばいいんだろ」
男は青筋を浮かべながら、僕に殺意を飛ばす。
「秋良と戦いたいならあたしに勝ってからにしな」
「お前も他の奴に勝ってからだ」
パッと焔さんの姿が消えた。
そして気がつくと氷美湖さんもレイラさんもその場から消えていた。
「何をした?」
「俺は何もしてないさ。お前が何もできないように全員をバラバラにさせてもらったがな。さあ、これで一対一だ願えば叶うなら、俺と戦っても勝てるよな?」
そう言って男はいやらしく笑った。
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