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百万回目の転生
フランさんはエッチな人みたいですね。
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「初めてあんなに大きい声で叫びました!」
憑き物が落ちたように晴れ晴れとした笑顔のフランは、アドレナリンが出ているのかテンションが高くなっていた。
「今なら魔法で掃除が出来そうです。【サイクロン】」
俺が何かを言うよりも早くフランは魔法を唱えた。
魔法陣が浮かび、その中から突風の様な風が巻き起こりゴミがひとまとまりになる。
本当に魔法が上手いな。ここまでできる子が落ちこぼれ扱いされるなんてな。
そう思った瞬間まとまったゴミを教室の窓から放り捨てた。
「できればこの袋にゴミを入れてくれる? 埃くらいならいいけど大きいゴミは外に捨てちゃダメだから」
まさかゴミをいきなり窓から投げ捨てるとは思わなかった。
後で拾った方がいいだろうか……。
「わかりました。今の私なら何でもできる気がします」
妙なテンションのまま魔法を使っているのに、失敗しないのは素直に凄いと思う。
そのままのテンションのまま最上階の五階までたどりついた。
その間の掃除は全てフランがやってくれた。俺がやったのは魔法では面倒くさい交換作業のみだ。
「お兄さんこんにちは。お弁当の配達に来ました」
掃除が一段落ついたところにタイミングよくノノがやってきた。
「わざわざありがとう。はいお金」
「いえいえ、これもお仕事ですからね。でもいいんですか、こんなところで休んでいて。まだお仕事中じゃないんですか?」
「終わったはずだ。後はこれでいいのか理事長に確認して今日の仕事は終わり」
最終チェックをしようかとも思ったが自分ではしっかりやったはずだし、依頼人の確認が取れれば明日以降も同じようにやればいい。
「それならいいんですが、ところでそちらの方はどちら様でしょうか? 見たところこちらの学生さんの様ですけど」
「えっと、フラン・イクシルです」
突然の訪問に驚いているのか、フランは俺の背中に掴まる様に隠れている。
俺の背中に隠れてくれるくらいには、俺に抵抗は感じなくなっているらしい。
「フランさんですか。私はノーナアルヴェルス・ランスグライスです。気軽にノノと呼んでください、そうだお近づきの印にお弁当食べますか? お代はお兄さんが払ってくれるみたいですので」
「えっ、あの、いいんですか?」
「もちろん。一緒に食べようぜ」
こんなかわいい子に上目遣いで聞かれてしまったら、反射的に頷いてしまう。
それに前貰ったパンをくれたお礼もしていないし、そのお礼と思えば安い物だ。
この仕事で七万も貰えるんだから五百円くらいでは懐は痛まない。
「それじゃあ、私もお弁当食べましょうかね」
フランの分のお弁当を受け取ると、なぜかノノまでお弁当に手をつけ始める。
「ノノそのお弁当ももしかして俺が払うのか?」
「もちろんですよ。こんな美少女二人とランチタイムですよ。これくらい安い出費じゃないですか」
その一言で納得してしまっている自分がいる。
コロコロと笑顔が可愛い女の子と、引っ込み思案の小動物みたいな女の子。
そんな二人と食事することを考えれば、確かに弁当二つくらい安いと思ってしまうのは男として仕方ない。
完全にノノに乗せられている気はするが、別に文句はない。
「冗談ですよ。これはまかないのお弁当です。女将さんがいつもくれるんです」
「ああ、そうなんだ……」
ただの冗談に対して俺はどれだけ本気で考えていたのか……。
「フランさんはこんなところでお兄さんのお手伝いですか?」
「いえ、違います、サボりです」
「見た目によらず不良さんですか。それじゃあ、お兄さんとエッチなことでもしてたんですか? もうお兄さんはエッチだなぁ」
「いきなり矛先がこっちに向いたな」
急激な方向転換だった。
フランに話を振っていたはずなのに、突然俺へのセクハラ疑惑に変わってしまった。
「タクトさんはそんなことしません。とっても優しくていい人です」
「嫌だなぁ、冗談ですよ。お兄さんが優しいのは知ってますよ。私がどんなに抱き付いても手を出しませんから」
そう言うと本当に腕に抱き付かれる。
適度に膨らんだ柔らかい胸が、俺の腕を包み込む。……抱き付かれた感触で気づくのが遅れたが、それってヘタレだと言われていないか?
「タクトさんから離れてください!」
ノノを強引に引き離したフランは、頬を膨らませながら威嚇をする。
そしてその姿を見たノノの顔がいやらしい笑顔を浮かべる。
「やっぱりフランさんはエッチな人みたいですね。私もそこまで抱き付いたことはないですよ」
今フランは俺の頭を抱きしめている。というよりも傍から見れば俺の顔を自分の胸に押し付けている様に見えているだろう。
小さいながらも感じる女性特有の柔らかさに、フランから感じる甘い匂い。いつまでもこうして居たい気になる。
「えっ、あっ、そうです。私が誘惑しているんです。だからタクトさんに手を出さないでください」
顔を真っ赤に染めながら何を言っているんだろうかこの子は……。
「あはは、フランちゃん面白いね。そんなことしなくてもお兄さんは取らないから安心していいよ」
大声で笑うノノを見て、自分がからかわれていたことを察したフランは、自分の今の状況を見てもの凄い速さで俺から離れて行く。
急にひんやりと寒くなってしまった。
「ごめんなさい。そんなつもりじゃなくてその、あの、うー……ノノさんなんて嫌いです!」
「フランちゃんに嫌われてしまったので、私はそろそろ退散しますね。お仕事頑張ってくださいね」
いつの間にかフランをちゃん付けで呼び始めたノノは、てきぱきとゴミを片づけて東棟を出て行ってしまった。
ノノが出て行くと東館は静まり返ってしまう。
「フラン、さっきのは気にするな。ノノも悪ふざけだったんだし気にする必要はないぞ」
さっきの告白紛いの事は気のせいだということにしよう。
売り言葉に買い言葉って感じだろうし、仲良くなった知り合いを取られたくはなかったのだろう。
そう思うことにした。
「気にしてください。さっきのは私の本心ですから。それじゃあ、私帰りますから」
俺が引き留める間もなくフランは全力で東館を出て行ってしまった。
「気にしてくださいって、もしかしてあれ本当にそういう意味なの?」
誰もいない東棟には俺の問いを答えてくれる人は誰もいない。
憑き物が落ちたように晴れ晴れとした笑顔のフランは、アドレナリンが出ているのかテンションが高くなっていた。
「今なら魔法で掃除が出来そうです。【サイクロン】」
俺が何かを言うよりも早くフランは魔法を唱えた。
魔法陣が浮かび、その中から突風の様な風が巻き起こりゴミがひとまとまりになる。
本当に魔法が上手いな。ここまでできる子が落ちこぼれ扱いされるなんてな。
そう思った瞬間まとまったゴミを教室の窓から放り捨てた。
「できればこの袋にゴミを入れてくれる? 埃くらいならいいけど大きいゴミは外に捨てちゃダメだから」
まさかゴミをいきなり窓から投げ捨てるとは思わなかった。
後で拾った方がいいだろうか……。
「わかりました。今の私なら何でもできる気がします」
妙なテンションのまま魔法を使っているのに、失敗しないのは素直に凄いと思う。
そのままのテンションのまま最上階の五階までたどりついた。
その間の掃除は全てフランがやってくれた。俺がやったのは魔法では面倒くさい交換作業のみだ。
「お兄さんこんにちは。お弁当の配達に来ました」
掃除が一段落ついたところにタイミングよくノノがやってきた。
「わざわざありがとう。はいお金」
「いえいえ、これもお仕事ですからね。でもいいんですか、こんなところで休んでいて。まだお仕事中じゃないんですか?」
「終わったはずだ。後はこれでいいのか理事長に確認して今日の仕事は終わり」
最終チェックをしようかとも思ったが自分ではしっかりやったはずだし、依頼人の確認が取れれば明日以降も同じようにやればいい。
「それならいいんですが、ところでそちらの方はどちら様でしょうか? 見たところこちらの学生さんの様ですけど」
「えっと、フラン・イクシルです」
突然の訪問に驚いているのか、フランは俺の背中に掴まる様に隠れている。
俺の背中に隠れてくれるくらいには、俺に抵抗は感じなくなっているらしい。
「フランさんですか。私はノーナアルヴェルス・ランスグライスです。気軽にノノと呼んでください、そうだお近づきの印にお弁当食べますか? お代はお兄さんが払ってくれるみたいですので」
「えっ、あの、いいんですか?」
「もちろん。一緒に食べようぜ」
こんなかわいい子に上目遣いで聞かれてしまったら、反射的に頷いてしまう。
それに前貰ったパンをくれたお礼もしていないし、そのお礼と思えば安い物だ。
この仕事で七万も貰えるんだから五百円くらいでは懐は痛まない。
「それじゃあ、私もお弁当食べましょうかね」
フランの分のお弁当を受け取ると、なぜかノノまでお弁当に手をつけ始める。
「ノノそのお弁当ももしかして俺が払うのか?」
「もちろんですよ。こんな美少女二人とランチタイムですよ。これくらい安い出費じゃないですか」
その一言で納得してしまっている自分がいる。
コロコロと笑顔が可愛い女の子と、引っ込み思案の小動物みたいな女の子。
そんな二人と食事することを考えれば、確かに弁当二つくらい安いと思ってしまうのは男として仕方ない。
完全にノノに乗せられている気はするが、別に文句はない。
「冗談ですよ。これはまかないのお弁当です。女将さんがいつもくれるんです」
「ああ、そうなんだ……」
ただの冗談に対して俺はどれだけ本気で考えていたのか……。
「フランさんはこんなところでお兄さんのお手伝いですか?」
「いえ、違います、サボりです」
「見た目によらず不良さんですか。それじゃあ、お兄さんとエッチなことでもしてたんですか? もうお兄さんはエッチだなぁ」
「いきなり矛先がこっちに向いたな」
急激な方向転換だった。
フランに話を振っていたはずなのに、突然俺へのセクハラ疑惑に変わってしまった。
「タクトさんはそんなことしません。とっても優しくていい人です」
「嫌だなぁ、冗談ですよ。お兄さんが優しいのは知ってますよ。私がどんなに抱き付いても手を出しませんから」
そう言うと本当に腕に抱き付かれる。
適度に膨らんだ柔らかい胸が、俺の腕を包み込む。……抱き付かれた感触で気づくのが遅れたが、それってヘタレだと言われていないか?
「タクトさんから離れてください!」
ノノを強引に引き離したフランは、頬を膨らませながら威嚇をする。
そしてその姿を見たノノの顔がいやらしい笑顔を浮かべる。
「やっぱりフランさんはエッチな人みたいですね。私もそこまで抱き付いたことはないですよ」
今フランは俺の頭を抱きしめている。というよりも傍から見れば俺の顔を自分の胸に押し付けている様に見えているだろう。
小さいながらも感じる女性特有の柔らかさに、フランから感じる甘い匂い。いつまでもこうして居たい気になる。
「えっ、あっ、そうです。私が誘惑しているんです。だからタクトさんに手を出さないでください」
顔を真っ赤に染めながら何を言っているんだろうかこの子は……。
「あはは、フランちゃん面白いね。そんなことしなくてもお兄さんは取らないから安心していいよ」
大声で笑うノノを見て、自分がからかわれていたことを察したフランは、自分の今の状況を見てもの凄い速さで俺から離れて行く。
急にひんやりと寒くなってしまった。
「ごめんなさい。そんなつもりじゃなくてその、あの、うー……ノノさんなんて嫌いです!」
「フランちゃんに嫌われてしまったので、私はそろそろ退散しますね。お仕事頑張ってくださいね」
いつの間にかフランをちゃん付けで呼び始めたノノは、てきぱきとゴミを片づけて東棟を出て行ってしまった。
ノノが出て行くと東館は静まり返ってしまう。
「フラン、さっきのは気にするな。ノノも悪ふざけだったんだし気にする必要はないぞ」
さっきの告白紛いの事は気のせいだということにしよう。
売り言葉に買い言葉って感じだろうし、仲良くなった知り合いを取られたくはなかったのだろう。
そう思うことにした。
「気にしてください。さっきのは私の本心ですから。それじゃあ、私帰りますから」
俺が引き留める間もなくフランは全力で東館を出て行ってしまった。
「気にしてくださいって、もしかしてあれ本当にそういう意味なの?」
誰もいない東棟には俺の問いを答えてくれる人は誰もいない。
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