百万回転生した勇者

柚木

文字の大きさ
17 / 57
魔族の潜む街

フランちゃんのお引越しです

しおりを挟む
 家に戻ると家の前には家具らしき荷物が大量に置かれていた。
 不法投棄かとも思ったが家の中はバタバタと騒がしい。

「お兄さんお帰りなさい。お話は終わりましたか?」

「終わったけど、この騒ぎは何の騒ぎなんだ? 知らない人が入るのは正直怖いんだけど」

 家の中に入るとノノはリビングで大人しく座っていた。
 そんなノノの前を沢山の荷物を抱えた見知らぬ人達が階段を上り下りしていく。
 知らない人達が闊歩する家は全くと言っていいほど落ち着けない……。

「フランちゃんのお引越しらしいです。この人達はイクシル家の使用人らしくて邪険にもできません」

「引っ越しって……」

 ただ旅に行くだけなのになぜこっちに引っ越しをしないといけないのか……。
 箪笥にベッドに化粧台などの家具が次々と手際よく家の中に運び込まれ引っ越しは一時間ほどで完了した。
 そしてそれぞれが一礼しそのまま帰って行った。

「タクト様お帰りなさい。申し訳ありません騒がしくしてしまい」

「それはいいんだけど、その後ろの人は誰?」

 フランの後ろに背後霊の様に付き従っているメイドが一人。
 身長も高く傍から見れば美人だが、目が怖くじっとこちらをにらみつけている気がする。
 正直苦手なタイプだ。

「私はトーラ・クオルトと申します。フランお嬢様の専属メイドで、皆さんが留守の間ここの管理を担当いたします」

 そう言って丁寧に頭を下げた。
 目つきは怖いけど、しっかりしてそうで有能なのがわかる。

「待ってくださいトーラさん。この家の管理は私がすることになっているんですが」

「当主様よりタクト様、お嬢様そしてノノ様の三人が旅に出るので、その間この家を守る様に仰せつかっていますが」

 ウィルさんの中では俺達三人がワンセットなのだろう。
 そうしてくれると確かに助かるのは事実だ。
 コミュ障二人の旅よりはコミュ力の高いノノが参加してくれるのは助かる。

「俺は三人でもいいぞ。俺とフランだけだとノノを仲間外れにしてるみたいだしな」

「お兄さんがそういうなら私はそれでもいいんですが、フランちゃんは私が一緒でもいいの?」

 ノノはなぜかパーティリーダーの俺ではなくフランに話を振った。
 どうやらノノの中ではリーダーはフランのようだ。

「私はいいよ。ノノさんが一緒の方が楽しいから」

「わかりました。私も準備しますから待っててください」

「出発は明日にするからゆっくりでいいぞ」

 ノノが準備を終えた翌日。
 全員の忘れ物を確認し、改めてイクシル邸の地下に向かう。

 まず旅で最優先するのは地下で実験をしていた魔族の追跡。
 ノノが準備している間にもう一度この収容所を捜索してみたが痕跡は何一つ残っていなかった。
 なので最後の手掛かりはこの収容所で一番最後に壊された道だけだ。
 この道を進んで行けば魔族が隠れているであろう場所の目星をつけられるはずだ。

「地下にこんな場所があったなんて初めて知りました」

 フランは初めて足を踏み入れる地下に感動してはしゃいでいるため、ここが現在何に使われているかは教えていない。
 そのまま地下を進み、崩れた場所に向かう。
 道の塞がり方を見るとどうもここの道は破壊されたのではなく魔法で埋められたらしい。
 天然の岩や土ではなく、魔法で土砂を作り埋められている。

「この道をどうやって開通させるつもりですか? 変に壊したらここがそのまま壊れてしまいそうですけど」

「だろうな。所々に魔法があるみたいだ。これを無理に壊して行ったら崩壊するだろうな」

 魔力を走らせてみると、どうやら魔法を地雷の様に使っているらしく、地雷を崩せば爆発し痕跡を消す算段のようだ。
 ここを使っていた魔族は中々に用意周到だ。

「タクト様、それだとここから進むのはむずかしいんですか?」

「その魔法も一緒に喰わせるから問題ない【グラトニー】」

 魔力を魔法の元まで張り巡らせ【グラトニー】を発動させる範囲を指定し発動させる。
 魔法陣が目の前に現れ、指定した範囲を闇が覆い闇が消えるとそこには何も残ってはいない。

「お兄さんは相変わらずデタラメですね。そんな魔法を平気で使ってますけど」

「私もいつかタクト様みたいな魔法が使えるでしょうか?」

「ここまでの範囲じゃなきゃ使えると思うぞ」

 本来この魔法はここまで大規模に使う魔法ではない。
 手の平サイズで発動し物質を抉り取る魔法だ。
 この規模で使うとなると結構なMPを消費する。
 それから何度か【グラトニー】を使い道を掘り進めていくとやがて階段に行きついた。

「俺は先に地上に出るけど、二人は合図を出すまで待機していてくれ。いきなり敵と戦うことになるかもしれない」

 二人が頷いたのを確認してから階段を上ると、そこは建物の中だった。
 ログハウスの様な小さな小屋で窓はないが、外からは何の気配も感じない。
 窓もないこの小屋からは外の様子も見えない。
 何か魔法がかけられているのかと調べてみても何の反応もなく、この小屋はただ出入りを見られなくするための出入り口のようだ。
 それも封鎖してからは使われていないらしく足跡も無い。

「二人とも上がってきて大丈夫だぞ」

 大丈夫と言っても怖い物は怖いらしく、二人は慎重に階段を上ってくる。

「ここってどこでしょうか? 外に出てみてもいいでしょうか?」

「近くに気配も無いし大丈夫だ」

 ノノとフランはそのまま小屋の外に出たので一緒について行くことにした。
 小屋は森の中にあった。
 小屋の前にある大きな湖は底が見えるほどに澄んでおり、周囲を囲う木々も伸び伸びと育っていて理想の森という感じだ。

 俺は最初に湖の水を掬い口に含む。
 スキル【比濁分析】アナライズを行い汚染されているかを確認するが、汚染どころか飲み水として何の問題もない。
 念のため土も口に入れてみるがこちらも異常なし。畑を作れば良質な野菜が取れそうだ。

「タクト様は何をしているんですか?」

「水が飲めるかと土壌が汚染されているかを確認してた。両方とも問題なかったよ」

「そんなことまでわかるんですね。でもなぜそんなことを気にしてるんですか?」

「魔族が関わっているみたいだしな。どんな罠があるかわからないからな」

 イクシル邸の地下で実験をしていた内容によるが、湖や土壌を汚染すればそれだけ人間の体力を奪うことができる。
 これほどの湖なら近隣の町で水を汲みに来る可能性もある。
 だからこそこういう場所は魔族に狙われやすい。

「タクト様、もしかして追っているのって魔族なんですか?」

「あれ、言ってなかったっけ? 魔族を追ってるからこそこの道を来たんだよ。手がかりを探すためにさ」

「…………あはは――」

 俺の言葉を聞いたフランは乾いた笑いをしたと思った瞬間後ろに倒れ込んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

【1/20本編堂々完結!】自力で帰還した錬金術師の爛れた日常

ちょす氏
ファンタジー
「この先は分からないな」 帰れると言っても、時間まで同じかどうかわからない。 さて。 「とりあえず──妹と家族は救わないと」 あと金持ちになって、ニート三昧だな。 こっちは地球と環境が違いすぎるし。 やりたい事が多いな。 「さ、お別れの時間だ」 これは、異世界で全てを手に入れた男の爛れた日常の物語である。 ※物語に出てくる組織、人物など全てフィクションです。 ※主人公の癖が若干終わっているのは師匠のせいです。 ゆっくり投稿です。

【完結保証】僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ
ファンタジー
 僕は十年程闘病の末、あの世に。  そこで出会った神様に手違いで寿命が縮められたという説明をされ、地球で幸せな転生をする事になった…が何故か異世界転生してしまう。なんでだ?  幸い優しい両親と、兄と姉に囲まれ事なきを得たのだが、兄達が優秀で僕はいずれ家を出てかなきゃいけないみたい。そんな空気を読んだ僕は将来の為努力をしはじめるのだが……。   ※画像はAI作成しました。 ※現在毎日2話投稿。11時と19時にしております。 ※2026年半ば過ぎ完結予定→七月に完結(決定)

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

処理中です...