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魔族の潜む街
私の存在意義ってなんでしょうか……
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「フランちゃんまで凄いとか、私の存在意義ってなんでしょうか……」
規格外の魔法を見せられたノノは落ち込んでいた。
落ち込ませた張本人のフランは「疲れました」と木陰で休んでいる。
「フランはイレギュラーだからな」
「三分の二がイレギュラーってそれはもう逆に私がイレギュラーじゃないですか?」
それならノノもイレギュラーだぜ。
と言いたいが、そうなるともう訳がわからなくなってしまうので言うのをやめた。
「俺から見たらノノも十分すごいけどな。コミュニケーション能力が高いってコミュ障の俺からしたら羨ましい限りだけどな」
人見知りが初対面の人と普通に話せるような人って、それだけで十分な才能だと俺は思う。
「つまり私はお兄さん達の交渉役のためにいるということですね」
「そうなるな。正直どれだけ戦闘力が高くても人付き合いが苦手過ぎるんだよ」
ぼったくられているのがわかってもそれを指摘するための言葉が出ないほどだし。
正直旅をするなら交渉役は必須な存在だしな。
「フランが強いのはわかったしノノは最後まで俺が守ってやるから、一緒に来てくれよ」
「タクト様、私もまだまだか弱いので守ってください!」
「お、おう、そりゃあ仲間だし危なかったら守るけど」
突然休んでいたフランが勢いよく駆け寄ってきた。
あまりの剣幕に頷いたが、そこまで守るほどフランがか弱いとは思えないけど。
「そうですね。お兄さんとフランちゃんの様子を見ていると私が橋渡ししないとダメそうですね」
呆れた様子のノノが立ち上がり歩き始めたので、道を知らない俺とフランも後をついて行く。
そしてアグリールに向かう途中で珍しいモンスターを発見した。
オクトベア。
八本の手足を自由自在に使いこなす強いモンスターだ。
一度暴れると手が付けられないほどに強く、熟練者でも気を抜けば殺されてしまう程だ。
それほどに強いオクトベアだが、森の中にいることが多いため滅多に出会うことはない。
雑食だが森の中には食料も多く、わざわざ人里付近までは来る必要がない。
どうやらここは森の中でも結構深い位置なのかもしれない。
オクトベアの相手をフランにやらせてみるか? 失敗した時は俺が間に入ればいいし。
そんなことを思っていたが、事情は大きく変わる。
オクトベアは何かを食べている。
そしてそれに気づいた時嫌な臭いを感じた。
「二人とも、俺が良いと言うまで目を瞑っていてくれ」
「なんでですか?」
「フランちゃん、お兄さんの言う通りにしましょう」
フランは疑問に思っていたが、ノノは何かに気が付いたらしくフランと一緒に背を向けしゃがみこんだ。
それを確認して俺は剣を抜きオクトベアに近づく。
俺に気が付いたオクトベアは吠え威嚇する。
威嚇するオクトベアの口元は真っ赤に染まっており、その足元には人間と思しき死体が転がっている。
威嚇をしてもなお近づく俺にオクトベアは六本の手で殴りかかってくる。
それを全て避け、オクトベアの懐に入り込み剣を振り縦に両断する。
絶命したオクトベアは黒い霧に変わり魔石が落ちる。
やはり食べられていたのは人間だった。
一度手を合わせてから遺体に触れる。
無惨に食い散らかされている遺体は不思議なことに屈強なハンターのもではなく、細く華奢でそして複数人いた事がわかる。
華奢な男性の腕と小さな手……。
死体は見慣れても、子供がバラバラなのは見ていて辛くなってしまう。
調べるだけ調べ、身分がわかりそうな装飾を外し遺体を埋める。
「もういいよ。アグリールに急ごう」
「そういうことだったんですか……。私も手を合わせていいでしょうか」
フランが手を合わせている間にノノが俺の隣にやってきた。
「何かわかりましたか?」
「ここはアグリールの近くだよな。おそらく十分も歩けば町が見えてくるくらいの距離だ」
とてもハンターには見えない二人分の遺体を見ればそれくらいわかる。
そうなるとオクトベアは何かに町の近くまで追いやられたことになる。
オクトベアが逃げ出すような相手は魔族しかいない。
そうなれば必然と魔族は町とは反対側に居ることになるんだろうし今から向かったほうがいいかもしれないな。
「違いますよ」
ノノは俺の言葉をすぐに否定した。
「ここから町までは休憩なしで移動しても半日はかかります。まあ安全を考慮すれば一日はかかります」
そんな場所に子連れでピクニック? それは流石に危ないだろう。
それに遺体が持っていたこのペンダントもそれなりに高価な品のはず。
そんな親子が護衛もなしにそんなところまで来るのか?
これは急いだ方が良さそうだな。
「フラン、ノノ俺に掴まってくれ。ちょっと急がないといけない」
「いきなりなんですか!?」
「タクト様大胆です。いきなりは心の準備が
ノノを背中に背負いフランを抱きかかえると、二人が何かを言っているが聞いている暇はない。
「しっかり掴まってないと振り落とされるぞ【アーリー】【プロテクト】」
加速の魔法と防御の魔法をかけ、地面を蹴る。
一歩ごとに加速を繰り返し。風が壁に感じるくらいまで加速をし一気に森を駆け抜ける。
触れたモンスターや木を破壊しながら駆けること一時間、ようやく町の入り口が見えてきた。
町の手前で止まり、二人を下ろすとフランは鼻血を出し幸せそうな顔でぐったりとしていた。
「フラン、大丈夫か?」
「お兄さんフランちゃんを下ろしてください。私が看護しますので」
ノノにそう言われ、呼吸を整えないといけないため小休止を取った。
「それで、何であそこまで急いでいたんですか? 尋常じゃなさそうでしたけど」
「これを見てくれ」
ノノに遺体から身分証として持ってきたペンダントを渡す。
「貴族の物ですね。爵位はなさそうですが、裕福なのは確かみたいですが」
「それはさっきのオクトベアに襲われていた遺体が身に着けていたものだ」
ここまで話すとノノはすぐに理解をしてくれた。
「アグリールに魔族がいるってことですね。でも、ここから見ても騒ぎはなさそうですね」
まだ町まで遠いせいか声は聞こえてはいないが、番兵もいるし異常はなさそうだ。
「たぶんまだ魔族は潜伏しているんだと思う。何日かあの町に滞在して魔族の痕跡を探す」
「わかりました」
方針が決まった俺達はフランが目を覚ましてから町の入り口に向かった。
規格外の魔法を見せられたノノは落ち込んでいた。
落ち込ませた張本人のフランは「疲れました」と木陰で休んでいる。
「フランはイレギュラーだからな」
「三分の二がイレギュラーってそれはもう逆に私がイレギュラーじゃないですか?」
それならノノもイレギュラーだぜ。
と言いたいが、そうなるともう訳がわからなくなってしまうので言うのをやめた。
「俺から見たらノノも十分すごいけどな。コミュニケーション能力が高いってコミュ障の俺からしたら羨ましい限りだけどな」
人見知りが初対面の人と普通に話せるような人って、それだけで十分な才能だと俺は思う。
「つまり私はお兄さん達の交渉役のためにいるということですね」
「そうなるな。正直どれだけ戦闘力が高くても人付き合いが苦手過ぎるんだよ」
ぼったくられているのがわかってもそれを指摘するための言葉が出ないほどだし。
正直旅をするなら交渉役は必須な存在だしな。
「フランが強いのはわかったしノノは最後まで俺が守ってやるから、一緒に来てくれよ」
「タクト様、私もまだまだか弱いので守ってください!」
「お、おう、そりゃあ仲間だし危なかったら守るけど」
突然休んでいたフランが勢いよく駆け寄ってきた。
あまりの剣幕に頷いたが、そこまで守るほどフランがか弱いとは思えないけど。
「そうですね。お兄さんとフランちゃんの様子を見ていると私が橋渡ししないとダメそうですね」
呆れた様子のノノが立ち上がり歩き始めたので、道を知らない俺とフランも後をついて行く。
そしてアグリールに向かう途中で珍しいモンスターを発見した。
オクトベア。
八本の手足を自由自在に使いこなす強いモンスターだ。
一度暴れると手が付けられないほどに強く、熟練者でも気を抜けば殺されてしまう程だ。
それほどに強いオクトベアだが、森の中にいることが多いため滅多に出会うことはない。
雑食だが森の中には食料も多く、わざわざ人里付近までは来る必要がない。
どうやらここは森の中でも結構深い位置なのかもしれない。
オクトベアの相手をフランにやらせてみるか? 失敗した時は俺が間に入ればいいし。
そんなことを思っていたが、事情は大きく変わる。
オクトベアは何かを食べている。
そしてそれに気づいた時嫌な臭いを感じた。
「二人とも、俺が良いと言うまで目を瞑っていてくれ」
「なんでですか?」
「フランちゃん、お兄さんの言う通りにしましょう」
フランは疑問に思っていたが、ノノは何かに気が付いたらしくフランと一緒に背を向けしゃがみこんだ。
それを確認して俺は剣を抜きオクトベアに近づく。
俺に気が付いたオクトベアは吠え威嚇する。
威嚇するオクトベアの口元は真っ赤に染まっており、その足元には人間と思しき死体が転がっている。
威嚇をしてもなお近づく俺にオクトベアは六本の手で殴りかかってくる。
それを全て避け、オクトベアの懐に入り込み剣を振り縦に両断する。
絶命したオクトベアは黒い霧に変わり魔石が落ちる。
やはり食べられていたのは人間だった。
一度手を合わせてから遺体に触れる。
無惨に食い散らかされている遺体は不思議なことに屈強なハンターのもではなく、細く華奢でそして複数人いた事がわかる。
華奢な男性の腕と小さな手……。
死体は見慣れても、子供がバラバラなのは見ていて辛くなってしまう。
調べるだけ調べ、身分がわかりそうな装飾を外し遺体を埋める。
「もういいよ。アグリールに急ごう」
「そういうことだったんですか……。私も手を合わせていいでしょうか」
フランが手を合わせている間にノノが俺の隣にやってきた。
「何かわかりましたか?」
「ここはアグリールの近くだよな。おそらく十分も歩けば町が見えてくるくらいの距離だ」
とてもハンターには見えない二人分の遺体を見ればそれくらいわかる。
そうなるとオクトベアは何かに町の近くまで追いやられたことになる。
オクトベアが逃げ出すような相手は魔族しかいない。
そうなれば必然と魔族は町とは反対側に居ることになるんだろうし今から向かったほうがいいかもしれないな。
「違いますよ」
ノノは俺の言葉をすぐに否定した。
「ここから町までは休憩なしで移動しても半日はかかります。まあ安全を考慮すれば一日はかかります」
そんな場所に子連れでピクニック? それは流石に危ないだろう。
それに遺体が持っていたこのペンダントもそれなりに高価な品のはず。
そんな親子が護衛もなしにそんなところまで来るのか?
これは急いだ方が良さそうだな。
「フラン、ノノ俺に掴まってくれ。ちょっと急がないといけない」
「いきなりなんですか!?」
「タクト様大胆です。いきなりは心の準備が
ノノを背中に背負いフランを抱きかかえると、二人が何かを言っているが聞いている暇はない。
「しっかり掴まってないと振り落とされるぞ【アーリー】【プロテクト】」
加速の魔法と防御の魔法をかけ、地面を蹴る。
一歩ごとに加速を繰り返し。風が壁に感じるくらいまで加速をし一気に森を駆け抜ける。
触れたモンスターや木を破壊しながら駆けること一時間、ようやく町の入り口が見えてきた。
町の手前で止まり、二人を下ろすとフランは鼻血を出し幸せそうな顔でぐったりとしていた。
「フラン、大丈夫か?」
「お兄さんフランちゃんを下ろしてください。私が看護しますので」
ノノにそう言われ、呼吸を整えないといけないため小休止を取った。
「それで、何であそこまで急いでいたんですか? 尋常じゃなさそうでしたけど」
「これを見てくれ」
ノノに遺体から身分証として持ってきたペンダントを渡す。
「貴族の物ですね。爵位はなさそうですが、裕福なのは確かみたいですが」
「それはさっきのオクトベアに襲われていた遺体が身に着けていたものだ」
ここまで話すとノノはすぐに理解をしてくれた。
「アグリールに魔族がいるってことですね。でも、ここから見ても騒ぎはなさそうですね」
まだ町まで遠いせいか声は聞こえてはいないが、番兵もいるし異常はなさそうだ。
「たぶんまだ魔族は潜伏しているんだと思う。何日かあの町に滞在して魔族の痕跡を探す」
「わかりました」
方針が決まった俺達はフランが目を覚ましてから町の入り口に向かった。
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