百万回転生した勇者

柚木

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魔族信仰 ハバリトス

なんでこの状況で寝れるんだろう……

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「ノノちゃんお帰り」

 変な二人に絡まれたせいで遅くなりもうすでに寝ているかと思っていたけど、フランちゃんは起きて私を迎えてくれた。

「もう寝てると思ってたけどまだ起きてたんだ」

「なんか色々考えてたら眠れなくなっちゃって」

 あの人のことを考えてるのかな?
 好きな人の事だから心配だよね。

「それなら少しお話しようか」

 フランちゃんの隣に座る。
 お風呂には入ったらしく石鹸の良い匂いがした。

「フランちゃんいい匂いがするね」

「うん。っていうかこの匂いはノノちゃんの匂いだよ?」

「私だとそんなにいい匂いしないけどな」

 自分の服を嗅いでみるが石鹸の匂いなどしていない。
 それどころか少し埃っぽい。

「私もお風呂入っておこうかな」

 明日でいいかと思っていたが、フランちゃんの匂いを嗅いだ後だと自分が汚く感じてしまう。

「入ってきたらいいよ。そういえばタクト様ってお風呂には入れるの?」

「入れないよ。フランちゃんとは待遇が違うから」

 精々水をかけられるくらいで体を綺麗にしているはずはない。
 あの人の場合は防汚くらいはできそうな気はするけど、キックスでは普通にお風呂入ってたしどっちなんだろう。

「フランちゃんに聞きたいことがあるんだ。晩ご飯の前に言ってた不自由じゃないってことは自由ってことじゃない。ってどういう意味?」

 さっきは怒りのあまり聞けなかったけど、頭に残ってしまい聞かないと今夜は眠れそうにない。

「貴族ってね無理してるんだよ。地位を誇示するために高級に物で身の回りを固めて、教養を見せるために知りたくもない知識を学ぶんだよ。不自由じゃないって見せるために自由を捨ててるの」

 意味伝わったかな?
 そう言って笑うフランちゃんは嘘を吐いていない。
 それでも何もできない不自由さよりはマシに思えた。

「私にはそれでも貴族が羨ましいよ」

 貴族のそれは贅沢な悩みだなと思う。
 そんな悩みが羨ましいなとさえ思ってしまう。

「やっぱり私じゃダメみたい」

 残念そうに笑うフランちゃんはベッドに横になる。
 そのままというわけにもいかず、私のパジャマを渡し着替えさせる。

「ノノちゃんのパジャマ大きいね」

「フランちゃんが小さいんだよ」

 二人では少し小さく感じるベッドに入ると、フランちゃんは私の手を握る。
 えへへとふやけた笑顔を浮かべながら私との距離を更に近づける。

「私は貴族で豪華な暮らしをするよりも三人で旅してたのが楽しかったよ」

「私を説得しても残念ながら二人を助けてあげられないよ?」

「うん知ってる。私とタクト様は助けて貰うなんて考えてないよ」

 アグリールでも見た強い顔だ。
 宿屋で生き残る時に見せたあの顔。

「それなら二人で逃げればいいでしょ?」

「ノノちゃんがいないと三人じゃないから」

 本当に意味がわからなかった。
 フランちゃんが何を言っているのか理解が追いつかない。
 自分達を裏切って、好きな人は牢屋に居て、自分自身もこの部屋に閉じ込められているのに私とまた旅がしたい?
 どれだけお花畑なんだろう。
 優しくしてるのも自分のためで、逃がさないのも自分のためなのに、この子はそれを私が仕方なくやっていると思っているんだ……。

「っ……」

 一瞬全てを言いそうになる。
 私はあんた達が死ぬのを見ているつもりだと口から言葉が漏れそうになった。

「たぶん私とタクト様はこのままだと殺されちゃんだよね?」

 フランちゃんは知ってた?
 誰かから聞いたのか、それとも自分で気が付いたの?

「私達が殺されるのが先か、ノノちゃんを助けるのが先か勝負だよ」

 本気の言葉に心が揺れる。
 自分達は負けないと絶対的な自信があるのか、フランちゃんの目には強い光が宿っていた。

「自分の命を懸けてまでそんな勝負するのはなんで?」

「私とタクト様には友達少ないから。数少ない友達の為なら命をかけられるよ」

 二人とも馬鹿なんじゃないの?
 呆れて言葉もない。

「もういいよ、気持ちはわかったけど、わかっただけだから。おやすみ」

 フランちゃんの手を離し背中を向けて目を瞑る。
 そんな私にフランちゃんはおやすみと声をかけてくれた。
 本当にこの二人は調子が狂う……。



 翌朝、定時監視のためあの人の元に向かい、牢の中を覗くと馬鹿丸出しの顔でいびきをかきながら熟睡していた。

「なんでこの状況で寝れるんだろう……」

 これほど神経がずぶといのになぜ人見知りなのか疑問が残る。

「わかりません。それにたたき起こそうと槍で突いたりしてみたんですが……」

 看守の人が申し訳なさそうに目を向けた場所には壊れた槍の残骸が散らばっていた。
 見ると確かに服には穴が開いているのに血が一滴も出ていない。
 呆れるほどの防御力だ。

「仕方ないと思います。この男は異常ですから……」

「ノーナアルヴェルス殿はこの男に用があったのではないですか?」

「そのつもりだったんですが、この調子なので先に司祭様に報告してきます。起きたら何か食べ物を与えてください」

 元気のいい返事をした看守を置いておき、先に司祭様の元に向かう。
 教会の近くにある、広い屋敷に入り応接室に入る。

「ノーナアルヴェルスか、あの勇者はどうなった?」

「いびきをかいて寝ています」

「看守は起こさないのか?」

「責めないで上げてください。看守も槍で突いたりしたらしいですが一向に目を覚まさないらしいので」

 その言葉に司祭様も呆れた顔をしていた。
 信じられない気持ちもわかるけど、事実は事実だ。
 おそらく魔族の一撃でもない限りダメージは与えられないだろう。

「それなら仕方がないな。それよりもその力がこれからハバリトスの戦力になることを喜ぼう」

 その辺は流石司祭にまで上り詰めただけのことはあるらしく、いい方向に思考を切り替えた。

「その戦力を土産にすれば私は大司祭、お前は司祭になれることだろう」

「ありがとうございます」

「それと伝えておこう、魔族の方がお越しになるのは明日の昼になるらしい。それまで決して人質を逃がすなよ」

「はい。心得ております」

 私は改めてあの男の元に向かう。
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