百万回転生した勇者

柚木

文字の大きさ
36 / 57
魔族信仰 ハバリトス

随分なイメチェンですね……

しおりを挟む
「どうだ? 驚いてくれたなら作戦は成功だ」

「タクト様、ノノちゃん泣いてますけど」

 フランに言われノノを見ると声を押し殺して泣いていた。

「ノノごめん、本当にごめん。そんなに怖かったとは思わなかったんだよ」

 涙が止まらない様子のノノに謝るが、一向に顔を上げてくれない。
 どうやらサプライズのつもりだったが大失敗だったらしい。

「なんで、なんで生きてるんですか……!」

「えー……、そこは喜んでくれてもよくないか?」

 涙でグシャグシャになってしまったノノが顔を上げたと思ったらいきなりの罵倒だった。

「やっぱりこれはやりすぎでしたね……」

「実は操られてませんでした。ってやったらビックリしてくれるかと思ったんだけどな」

 過激な方が面白いとかなり昔にネットで見たんだけど、場合によりけりらしい。
 まさかここまで大泣きされるとは思っていなかった。

「なぜ、お前は操られていない?」

 ヤギ頭の魔族が怒りに震えながら質問してくる。
 ヤギのせいか本当に怒っているのかは定かじゃないけど。

「俺は勇者だからな。低俗な魔族の魔法なんか効かないんじゃないか?」

「低俗だと、ふざけるなよ人間!?」

 怒りに任せた一撃を軽く躱す。
 そして躱されるのは当然わかっていたらしく、その攻撃はフラン達に向けられた。

「お前よりも先にこの人間を――」

 しかし魔族の攻撃は【プロテクト】によって阻まれる。
 低く鈍い音を出しただけで、防御の魔法には傷一つ付いていない。

「その辺は学習済み。その二人を殺したいならまず俺を倒すことだな」

「魔法が得意のようだな、ならこれはどうだ?【ストレージ】」

 収納の魔法から取り出したのは、日本の巨大な戦斧。
 そしてその巨大な戦斧を取り出したはずなのに収納の魔法は消えていない。
 まだ何かあるのかと身構えると、ヤギ頭は持っている戦斧を俺めがけて投げつけてきた。

 俺が避けると戦斧は背後に居たハバリトスの信者がいる場所に打ち込まれる。
 爆発の様な音を立て戦斧が地面にクレーターを作った。

「よそ見している余裕があるのか?」

 更に戦斧が投げるが、手持ちが無くなることはない。
 投げた分はすぐに収納先から補充され、次々と投げつけてくる。
 大量の戦斧を投げ続け、俺との距離を縮めてくる。

「これで終わりだ、勇者!」

 そして俺が間合いに入ると投げる時と同じモーションで、二本の戦斧を力の限り振り下ろす。
 地面を揺らす二本の戦斧は俺を避けるように地面を切り裂いている。
 そして俺はその戦斧二本を両手で押さえつける。

「今ので決められないと恥ずかしいよな」

「ならもう一度切り刻むだけだ」

 わざとあざける様に言ってやると、ヤギ頭の両手はプルプルと震え始める。
 おそらく本気なのだろうが、二本の戦斧は地面に刺さったまま抜けやしない。

「どうしたんだ? 早くもう一度切り刻んでみろよ」

 なぜか抜けないと思っているヤギ頭はすぐに収納から新しい戦斧を取り出し俺に振り下ろす。
 その戦斧を今度は両手で受け止めてやる。

「なっ……、なぜ人間がこの俺の一撃を止められる……?」

「そろそろ質問なんだけど、お前魔王の心臓がどこにあるか知ってるか?」

 自慢の攻撃が防がれ狼狽えている魔族に俺は質問した。
 そして俺の言葉で明らかに同様の色を見せた。

「その反応は知ってるんだろ? 教えてくれよ。ちなみに俺の仲間には嘘を見破れる仲間もいるから。そうだろノノ」

「えっ、あっ、はい。わかります……」

 ぽかんと口を開けているノノは、何が起っているのかわからないまま、俺の言葉に頷いた。

「それで、お前の知っていることを全て話してくれるよな?」

 ご自慢の戦斧を握りつぶして見せると魔族はヤギの鳴き声で大きく叫び、収納から複数の召喚結晶しょうかんけっしょうを取り出した。

「数で訴えるつもりなら無駄だ。大人しく教えてくれよ」

「それはできないな。俺が話したと知られれば俺は魔王様に殺されてしまう」

「それは今も変わらないだろ」

「あのお方はお前の想像を絶しているのだ。お前がいくら強かろうとあの人の残忍さに勝てはしない」

 カタカタとヤギ頭の体が震える。
 残忍さか、他の世界の魔王にもいたが、ここまで恐れられてはいなかったけどな。
 俺が過去の魔王から情報を思い出そうとすると、ヤギ頭は召喚結晶しょうかんけっしょうを飲み込んだ。

 自殺? 召喚結晶なんて飲み込んでも、体内でアイドウロンが召喚されるだけじゃないのか?
 しかしヤギ頭に起こったのは、死ではなかった。
 体の肥大化が始まり、皮膚の色は浅黒く、白い毛は赤く染まる。
 やがて肥大化した肉体を二本の足では耐え切れなくなり、獣の様な四足に切り替わった。

「随分なイメチェンですね……」

「メェェエエェェ!!」

 俺の言葉に返事をしたのかヤギの雄たけびを上げ、ヤギ頭は俺に向かって突進をしてくる。
 どれくらい変化したのを確かめるべく真正面から受けて立つ。
 さっきと比べ物にならない程の力ではあるが、受け止められない程ではない。
 そう思った瞬間触れた個所から衝撃が追い打ちを仕掛けてきた。

 掴んだ角から最初の衝突と同じくらいの力が突然生まれ、俺は後方に飛ばされてしまう。
 大したダメージではないが、今のは流石に驚いた。

「メェェエエェェ!!」

 立て直した瞬間を狙っていたのか、二度目の突進。
 その突進は触れることなく躱す。

「【アーリー】」

 言葉を失ったかと思ったが、加速の魔法を使い、速度を上げてきた。
 今度は受け止めるのではなく真っ向勝負。
 俺はヤギ頭を全力で殴りつける。
 しかしヤギ頭に届くはずの拳は見えない何かを殴りつけ、力がそがれヤギ頭をぶち抜くことはできなかった。

「これはちょっと初めての経験だな。その攻撃は魔法か? スキルか? どうなってやがるんだ?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

【1/20本編堂々完結!】自力で帰還した錬金術師の爛れた日常

ちょす氏
ファンタジー
「この先は分からないな」 帰れると言っても、時間まで同じかどうかわからない。 さて。 「とりあえず──妹と家族は救わないと」 あと金持ちになって、ニート三昧だな。 こっちは地球と環境が違いすぎるし。 やりたい事が多いな。 「さ、お別れの時間だ」 これは、異世界で全てを手に入れた男の爛れた日常の物語である。 ※物語に出てくる組織、人物など全てフィクションです。 ※主人公の癖が若干終わっているのは師匠のせいです。 ゆっくり投稿です。

【完結保証】僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ
ファンタジー
 僕は十年程闘病の末、あの世に。  そこで出会った神様に手違いで寿命が縮められたという説明をされ、地球で幸せな転生をする事になった…が何故か異世界転生してしまう。なんでだ?  幸い優しい両親と、兄と姉に囲まれ事なきを得たのだが、兄達が優秀で僕はいずれ家を出てかなきゃいけないみたい。そんな空気を読んだ僕は将来の為努力をしはじめるのだが……。   ※画像はAI作成しました。 ※現在毎日2話投稿。11時と19時にしております。 ※2026年半ば過ぎ完結予定→七月に完結(決定)

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

処理中です...