44 / 57
囚われの町トクレス
編み物とはまた女子だな。
しおりを挟む
「そんなに深刻になる必要はないんじゃないですか?」
落ち込んでいる私達にノノちゃんがそう言いました。
「まだ抜け出せる手はありますよ。ね、フランちゃん」
みんなが視線を送る中ノノちゃんは堂々と私を呼び、視線が一斉にこちらを向きます。
タクト様とノノちゃんの視線には慣れましたが、アインツィヒさんの視線に慣れずうつむいてしまいます。
「どういうことなのかな?」
「フランちゃんならあれどうにかできるよね? 洗脳の魔法も解けるんだし」
顔を上げることができず聞き返すと、そう返ってきました。
あれよりは確かに簡単ですが、あの強さとなると流石に一日では終わらせることはできません。
「フランちゃんなら時間を気にする必要ないし」
「そう言えばそうだな。フランには魔道具の催眠も効かないから期限も無い」
そう言われればそうでした。
私に今回かけられた魔法は効いていませんでした。
一人だけ人払いの魔法が効かず、剣さんの催眠も効いていない。
言われれば言われるほど、私が適任です。
そんなわけで私は門の前にいます。
正直見ていて嫌になるほどに魔法が重なっています。
アインツィヒさんは一体どれくらいの期間ここで過ごして来たのでしょうか……。
「剣さんはこの魔法のせいで嫌悪感とかはないんですか?」
「人避けの魔法なんだから、魔道具の私は対象外だ」
そういうものなんでしょうか?
でもモンスター避けとかを使っても人は寄ってきますし、そういうものなのかもしれません。
私は門に近づき、表層にある魔法に意識を向けます。
おそらく今日行使された魔法は比較的わかりやすく、簡単に解くことが出来ました。
そして二つ目、三つ目と解いていき、十に届くくらいになると簡単にはいかずいくつかの魔法が絡まり始めています。
一つずつ解いて行かないと。
一番表に出ている魔法の造りを認識、二番目や三番目の魔法と一度乖離させて、一つだけの魔法に分離させる。
そして残った一番手前の魔法を解く。
「小娘、中々上手だな。ここまで魔法の分解が得意なのでは【半醒半睡】に脳が侵される前に打ち消すのは簡単だろう。それはどこで習ったんだ?」
「習ってません。でもわかるんです。この魔法はこういう魔法だから、こういう風に解けばいいって」
「お前から言わせれば魔法は打ち消すではなく解くなのか」
「何か変でしょうか?」
剣さんと会話を続けながら絡まり合った魔法を解き終えます。
今度はいくつだろう、五、いや七ですね。
「私が知る限り魔法は打ち消すものだ。火に水をぶつけるようにな。それなのにお前は解くと言っているのでな、どう見えているのか気になっただけだ」
「私に見えているのは編み物みたいなものです。解き方を知っていれば糸に戻せますから、それと同じものですよ」
だから完成された魔法の方が解きやすい。
どう解けばいいのかがわかりやすいですからね。
逆に下手な人が使う魔法の方が乱雑で解きにくい。
アインツィヒさんの魔法は綺麗で解きやすいはずなんですが、流石に重なりすぎて解きにくいです。
下手な解き方をしてしまえば逆に硬くなってしまう。
「編み物とはまた女子だな。でもそうかなるほどな。だからお前は解くというのか」
流石に七も絡まっていると色々と解きにくいです。
「ねえねえ、お嬢ちゃんはこんなところで何してるの?」
見ればわかる――、見てもわからないですよね……。
私は今壁に手を突いている人でした……。
不審者じゃないと弁解しようと振り返ると、そこにはいかにも女遊びが派手そうな男性が二人。
「やりっ、大当たりじゃん。めっちゃ可愛い」
「そんな所にいないで俺達と遊ばな――」
私に伸ばされた手を剣さんが抑えてくれました。
「お前どこから、なんだお姉さんも美人だね。一緒に遊ぼうよ……、えっ……?」
たぶんナンパしようとしていた男性は手を引いたんだと思います。
それでも剣さんは一歩も動かなかったように見えました。
「悪いなガキども、今こいつはお前等と違って働いてんだ。だから日が暮れるまで公園で遊んでろ」
神経を逆なでするようなことを言いました。
もう少し丁寧に断ってくれないと、余計な問題が増えてしまいます。
「少し顔が良いから下手に出てやればなんだその態度はよぉ!」
「あっはっは、実に面白いな。お前達は最初から下なんだから下手も何もないだろ?」
今何かが切れた音がしました。
剣さんはどうも人を怒らせるのが好きらしいです。
「おい、小娘。いつまで私を見ているんだ? お前は早く自分の仕事をしろ」
「わかりました」
そう返事はしましたが、向こうも気になります。
壁に向きなおりながら横目で行く末を確認すると、一人すでに消えていました。
「ジョージ?」
消えたのはジョージさんらしいですね。
「さて最後はお前だ。遊んでやるから来な」
「てめ――」
「なんだ、一撃で終わりとは遊び甲斐の無い奴らだ」
「えっと、殺してないですよね?」
あまりにも唐突に声が聞こえなくなってしまったので恐る恐る聞きました。
足音も聞こえていないので、催眠をかけたわけでもなさそうです。
「吹っ飛んだからわからん。頭の打ちどころが悪くなければ平気だろう」
名前も知らない誰かは言葉の途中で飛んで行ったらしいです。
ご愁傷様です。
「あの人達はなんでここに近づけたんでしょうか? この魔法で近づけないはずですよね?」
あんなにあっさり飛んで行ってしまいましたが、実は結構名のある人物なのでしょうか?
「認識してないの。この町の連中はこの魔法が発動する前からここにいるから、その魔法があることにも気づいてない。知らないから影響されない」
「そんなものなんでしょうか?」
「例えば、ここは昔処刑場だった。そう言われると壁の染みが血に見えたり、恨めしく睨む人の顔に見え始めたりする。そういうのと一緒」
そう言われれば何となく納得できる気がします。
人避けの魔法は意識に影響しますし、そう言うこともあるのでしょう。
「まさか本当に処刑場じゃないですよね?」
「どっちがいい? 私はどっちでも構わないよ」
にやりとからかっている顔をしている剣さんに作り話だと確信を得て、私は途中になっている作業を再開します。
落ち込んでいる私達にノノちゃんがそう言いました。
「まだ抜け出せる手はありますよ。ね、フランちゃん」
みんなが視線を送る中ノノちゃんは堂々と私を呼び、視線が一斉にこちらを向きます。
タクト様とノノちゃんの視線には慣れましたが、アインツィヒさんの視線に慣れずうつむいてしまいます。
「どういうことなのかな?」
「フランちゃんならあれどうにかできるよね? 洗脳の魔法も解けるんだし」
顔を上げることができず聞き返すと、そう返ってきました。
あれよりは確かに簡単ですが、あの強さとなると流石に一日では終わらせることはできません。
「フランちゃんなら時間を気にする必要ないし」
「そう言えばそうだな。フランには魔道具の催眠も効かないから期限も無い」
そう言われればそうでした。
私に今回かけられた魔法は効いていませんでした。
一人だけ人払いの魔法が効かず、剣さんの催眠も効いていない。
言われれば言われるほど、私が適任です。
そんなわけで私は門の前にいます。
正直見ていて嫌になるほどに魔法が重なっています。
アインツィヒさんは一体どれくらいの期間ここで過ごして来たのでしょうか……。
「剣さんはこの魔法のせいで嫌悪感とかはないんですか?」
「人避けの魔法なんだから、魔道具の私は対象外だ」
そういうものなんでしょうか?
でもモンスター避けとかを使っても人は寄ってきますし、そういうものなのかもしれません。
私は門に近づき、表層にある魔法に意識を向けます。
おそらく今日行使された魔法は比較的わかりやすく、簡単に解くことが出来ました。
そして二つ目、三つ目と解いていき、十に届くくらいになると簡単にはいかずいくつかの魔法が絡まり始めています。
一つずつ解いて行かないと。
一番表に出ている魔法の造りを認識、二番目や三番目の魔法と一度乖離させて、一つだけの魔法に分離させる。
そして残った一番手前の魔法を解く。
「小娘、中々上手だな。ここまで魔法の分解が得意なのでは【半醒半睡】に脳が侵される前に打ち消すのは簡単だろう。それはどこで習ったんだ?」
「習ってません。でもわかるんです。この魔法はこういう魔法だから、こういう風に解けばいいって」
「お前から言わせれば魔法は打ち消すではなく解くなのか」
「何か変でしょうか?」
剣さんと会話を続けながら絡まり合った魔法を解き終えます。
今度はいくつだろう、五、いや七ですね。
「私が知る限り魔法は打ち消すものだ。火に水をぶつけるようにな。それなのにお前は解くと言っているのでな、どう見えているのか気になっただけだ」
「私に見えているのは編み物みたいなものです。解き方を知っていれば糸に戻せますから、それと同じものですよ」
だから完成された魔法の方が解きやすい。
どう解けばいいのかがわかりやすいですからね。
逆に下手な人が使う魔法の方が乱雑で解きにくい。
アインツィヒさんの魔法は綺麗で解きやすいはずなんですが、流石に重なりすぎて解きにくいです。
下手な解き方をしてしまえば逆に硬くなってしまう。
「編み物とはまた女子だな。でもそうかなるほどな。だからお前は解くというのか」
流石に七も絡まっていると色々と解きにくいです。
「ねえねえ、お嬢ちゃんはこんなところで何してるの?」
見ればわかる――、見てもわからないですよね……。
私は今壁に手を突いている人でした……。
不審者じゃないと弁解しようと振り返ると、そこにはいかにも女遊びが派手そうな男性が二人。
「やりっ、大当たりじゃん。めっちゃ可愛い」
「そんな所にいないで俺達と遊ばな――」
私に伸ばされた手を剣さんが抑えてくれました。
「お前どこから、なんだお姉さんも美人だね。一緒に遊ぼうよ……、えっ……?」
たぶんナンパしようとしていた男性は手を引いたんだと思います。
それでも剣さんは一歩も動かなかったように見えました。
「悪いなガキども、今こいつはお前等と違って働いてんだ。だから日が暮れるまで公園で遊んでろ」
神経を逆なでするようなことを言いました。
もう少し丁寧に断ってくれないと、余計な問題が増えてしまいます。
「少し顔が良いから下手に出てやればなんだその態度はよぉ!」
「あっはっは、実に面白いな。お前達は最初から下なんだから下手も何もないだろ?」
今何かが切れた音がしました。
剣さんはどうも人を怒らせるのが好きらしいです。
「おい、小娘。いつまで私を見ているんだ? お前は早く自分の仕事をしろ」
「わかりました」
そう返事はしましたが、向こうも気になります。
壁に向きなおりながら横目で行く末を確認すると、一人すでに消えていました。
「ジョージ?」
消えたのはジョージさんらしいですね。
「さて最後はお前だ。遊んでやるから来な」
「てめ――」
「なんだ、一撃で終わりとは遊び甲斐の無い奴らだ」
「えっと、殺してないですよね?」
あまりにも唐突に声が聞こえなくなってしまったので恐る恐る聞きました。
足音も聞こえていないので、催眠をかけたわけでもなさそうです。
「吹っ飛んだからわからん。頭の打ちどころが悪くなければ平気だろう」
名前も知らない誰かは言葉の途中で飛んで行ったらしいです。
ご愁傷様です。
「あの人達はなんでここに近づけたんでしょうか? この魔法で近づけないはずですよね?」
あんなにあっさり飛んで行ってしまいましたが、実は結構名のある人物なのでしょうか?
「認識してないの。この町の連中はこの魔法が発動する前からここにいるから、その魔法があることにも気づいてない。知らないから影響されない」
「そんなものなんでしょうか?」
「例えば、ここは昔処刑場だった。そう言われると壁の染みが血に見えたり、恨めしく睨む人の顔に見え始めたりする。そういうのと一緒」
そう言われれば何となく納得できる気がします。
人避けの魔法は意識に影響しますし、そう言うこともあるのでしょう。
「まさか本当に処刑場じゃないですよね?」
「どっちがいい? 私はどっちでも構わないよ」
にやりとからかっている顔をしている剣さんに作り話だと確信を得て、私は途中になっている作業を再開します。
0
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
【1/20本編堂々完結!】自力で帰還した錬金術師の爛れた日常
ちょす氏
ファンタジー
「この先は分からないな」
帰れると言っても、時間まで同じかどうかわからない。
さて。
「とりあえず──妹と家族は救わないと」
あと金持ちになって、ニート三昧だな。
こっちは地球と環境が違いすぎるし。
やりたい事が多いな。
「さ、お別れの時間だ」
これは、異世界で全てを手に入れた男の爛れた日常の物語である。
※物語に出てくる組織、人物など全てフィクションです。
※主人公の癖が若干終わっているのは師匠のせいです。
ゆっくり投稿です。
【完結保証】僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜
リョウ
ファンタジー
僕は十年程闘病の末、あの世に。
そこで出会った神様に手違いで寿命が縮められたという説明をされ、地球で幸せな転生をする事になった…が何故か異世界転生してしまう。なんでだ?
幸い優しい両親と、兄と姉に囲まれ事なきを得たのだが、兄達が優秀で僕はいずれ家を出てかなきゃいけないみたい。そんな空気を読んだ僕は将来の為努力をしはじめるのだが……。
※画像はAI作成しました。
※現在毎日2話投稿。11時と19時にしております。
※2026年半ば過ぎ完結予定→七月に完結(決定)
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる