百万回転生した勇者

柚木

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囚われの町トクレス

編み物とはまた女子だな。

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「そんなに深刻になる必要はないんじゃないですか?」

 落ち込んでいる私達にノノちゃんがそう言いました。

「まだ抜け出せる手はありますよ。ね、フランちゃん」

 みんなが視線を送る中ノノちゃんは堂々と私を呼び、視線が一斉にこちらを向きます。
 タクト様とノノちゃんの視線には慣れましたが、アインツィヒさんの視線に慣れずうつむいてしまいます。

「どういうことなのかな?」

「フランちゃんならあれどうにかできるよね? 洗脳の魔法も解けるんだし」

 顔を上げることができず聞き返すと、そう返ってきました。
 あれよりは確かに簡単ですが、あの強さとなると流石に一日では終わらせることはできません。

「フランちゃんなら時間を気にする必要ないし」

「そう言えばそうだな。フランには魔道具の催眠も効かないから期限も無い」

 そう言われればそうでした。
 私に今回かけられた魔法は効いていませんでした。
 一人だけ人払いの魔法が効かず、剣さんの催眠も効いていない。
 言われれば言われるほど、私が適任です。

 そんなわけで私は門の前にいます。
 正直見ていて嫌になるほどに魔法が重なっています。
 アインツィヒさんは一体どれくらいの期間ここで過ごして来たのでしょうか……。

「剣さんはこの魔法のせいで嫌悪感とかはないんですか?」

「人避けの魔法なんだから、魔道具の私は対象外だ」

 そういうものなんでしょうか?
 でもモンスター避けとかを使っても人は寄ってきますし、そういうものなのかもしれません。

 私は門に近づき、表層にある魔法に意識を向けます。
 おそらく今日行使された魔法は比較的わかりやすく、簡単に解くことが出来ました。
 そして二つ目、三つ目と解いていき、十に届くくらいになると簡単にはいかずいくつかの魔法が絡まり始めています。

 一つずつ解いて行かないと。
 一番表に出ている魔法の造りを認識、二番目や三番目の魔法と一度乖離させて、一つだけの魔法に分離させる。
 そして残った一番手前の魔法を解く。

「小娘、中々上手だな。ここまで魔法の分解が得意なのでは【半醒半睡】ヒプノシスに脳が侵される前に打ち消すのは簡単だろう。それはどこで習ったんだ?」

「習ってません。でもわかるんです。この魔法はこういう魔法だから、こういう風に解けばいいって」

「お前から言わせれば魔法は打ち消すではなく解くなのか」

「何か変でしょうか?」

 剣さんと会話を続けながら絡まり合った魔法を解き終えます。
 今度はいくつだろう、五、いや七ですね。

「私が知る限り魔法は打ち消すものだ。火に水をぶつけるようにな。それなのにお前は解くと言っているのでな、どう見えているのか気になっただけだ」

「私に見えているのは編み物みたいなものです。解き方を知っていれば糸に戻せますから、それと同じものですよ」

 だから完成された魔法の方が解きやすい。
 どう解けばいいのかがわかりやすいですからね。
 逆に下手な人が使う魔法の方が乱雑で解きにくい。
 アインツィヒさんの魔法は綺麗で解きやすいはずなんですが、流石に重なりすぎて解きにくいです。
 下手な解き方をしてしまえば逆に硬くなってしまう。

「編み物とはまた女子だな。でもそうかなるほどな。だからお前は解くというのか」

 流石に七も絡まっていると色々と解きにくいです。

「ねえねえ、お嬢ちゃんはこんなところで何してるの?」

 見ればわかる――、見てもわからないですよね……。
 私は今壁に手を突いている人でした……。
 不審者じゃないと弁解しようと振り返ると、そこにはいかにも女遊びが派手そうな男性が二人。

「やりっ、大当たりじゃん。めっちゃ可愛い」

「そんな所にいないで俺達と遊ばな――」

 私に伸ばされた手を剣さんが抑えてくれました。

「お前どこから、なんだお姉さんも美人だね。一緒に遊ぼうよ……、えっ……?」

 たぶんナンパしようとしていた男性は手を引いたんだと思います。
 それでも剣さんは一歩も動かなかったように見えました。

「悪いなガキども、今こいつはお前等と違って働いてんだ。だから日が暮れるまで公園で遊んでろ」

 神経を逆なでするようなことを言いました。
 もう少し丁寧に断ってくれないと、余計な問題が増えてしまいます。

「少し顔が良いから下手に出てやればなんだその態度はよぉ!」

「あっはっは、実に面白いな。お前達は最初から下なんだから下手も何もないだろ?」

 今何かが切れた音がしました。
 剣さんはどうも人を怒らせるのが好きらしいです。

「おい、小娘。いつまで私を見ているんだ? お前は早く自分の仕事をしろ」

「わかりました」

 そう返事はしましたが、向こうも気になります。
 壁に向きなおりながら横目で行く末を確認すると、一人すでに消えていました。

「ジョージ?」

 消えたのはジョージさんらしいですね。

「さて最後はお前だ。遊んでやるから来な」

「てめ――」

「なんだ、一撃で終わりとは遊び甲斐の無い奴らだ」

「えっと、殺してないですよね?」

 あまりにも唐突に声が聞こえなくなってしまったので恐る恐る聞きました。
 足音も聞こえていないので、催眠をかけたわけでもなさそうです。

「吹っ飛んだからわからん。頭の打ちどころが悪くなければ平気だろう」

 名前も知らない誰かは言葉の途中で飛んで行ったらしいです。
 ご愁傷様です。

「あの人達はなんでここに近づけたんでしょうか? この魔法で近づけないはずですよね?」

 あんなにあっさり飛んで行ってしまいましたが、実は結構名のある人物なのでしょうか?

「認識してないの。この町の連中はこの魔法が発動する前からここにいるから、その魔法があることにも気づいてない。知らないから影響されない」

「そんなものなんでしょうか?」

「例えば、ここは昔処刑場だった。そう言われると壁の染みが血に見えたり、恨めしく睨む人の顔に見え始めたりする。そういうのと一緒」

 そう言われれば何となく納得できる気がします。
 人避けの魔法は意識に影響しますし、そう言うこともあるのでしょう。

「まさか本当に処刑場じゃないですよね?」

「どっちがいい? 私はどっちでも構わないよ」

 にやりとからかっている顔をしている剣さんに作り話だと確信を得て、私は途中になっている作業を再開します。
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