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第29話:ダンジョン・ファクトリー ~古代遺跡の産業革命~
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王立学園の全校集会。 講堂の演壇に立った私は、ざわめく生徒たちを見下ろし、マイクのスイッチを入れた。
「えー、これより『特別課外授業』の実施を発表します」
私は一枚のプリントを掲げた。
「場所は、本校の地下に発見された『古代遺跡(ダンジョン)』。目的は『資源回収』および『実地訓練』です」 「「「ダンジョン!?」」」
生徒たちが色めき立つ。冒険への憧れ、未知への恐怖。 だが、私は冷徹に続けた。
「本授業に参加した生徒には、特別単位(クレジット)を与えます。さらに、回収した魔石や遺物の量に応じ、成果報酬(ボーナス)を現金で支給します。……奮って参加するように」
――現金支給。 その言葉が、貴族も平民も関係なく、生徒たちの目の色を変えた。 私の食堂改革で「美味いものは金がかかる」と知ってしまった彼らは、今や貪欲な労働者と化していたのだ。
***
地下ダンジョン、第一層。 そこはもう、冒険の場ではなく「巨大な作業現場」と化していた。
「魔法科(サイエンス)班、照明確保! 壁面の魔石含有率を分析しろ!」 「騎士科(スポーツ)班、モンスター発生! スライムだ、焼却処分しろ!」 「普通科(アーツ)班、地図作成(マッピング)急げ! 搬送ルートを確保するんだ!」
生徒たちが専攻ごとに分かれ、組織的に動いている。 その周囲を警護するのは、用務員服を着た『特務部(元・暗殺者)』たちだ。彼らが影から危険な罠や強力な魔物を排除しているため、生徒たちは安全に「作業」に没頭できる。
「会長! また魔石の鉱脈を見つけました!」 「よし、採掘開始。ドワーフ留学生チーム、発破準備!」
ドカーン! 爆音と共に壁が崩れ、きらめく魔石がザクザクと溢れ出す。 私はそれをチェックシートに記入していく。
「……含有率よし。品質よし。これで学園の暖房費と実験機材費は十年分賄えるわね」
ダンジョンとは、要するに「資源の宝庫」だ。 放置すれば魔物が溢れる厄介な場所だが、管理(マネジメント)さえできれば、これほど効率的な資産はない。
***
順調に階層を下り、ついに最深部の第十層に到達した時だった。 巨大な広間の奥に、地響きと共に「それ」は現れた。
全長十メートルを超える、岩と金属の塊。 古代の守護者、『ミスリル・ゴーレム』だ。
「グオオオオオオ……!!」
咆哮だけで空気が震える。 生徒たちが悲鳴を上げて後退る。
「くっ、出たなボスキャラ! ここは僕たちが!」 「俺の剣のサビにしてくれる! いくぞジークフリート!」
ジークフリートとガイウスが武器を構え、勇ましく飛び出そうとした。 だが、私は扇子で二人の頭を叩いた。
「待ちなさい。壊す気?」 「えっ? いや、倒さないと進めないだろう?」 「よく見て。あの素材、純度九九パーセントのミスリルと、オリハルコンの関節よ。破壊したら資産価値が暴落するじゃない」
私はゴーレムを見上げた。 圧倒的な質量。無限の動力。疲れを知らない強靭なボディ。 私にはそれが、敵ではなく「理想的な重機」に見えた。
「……彼(?)を、採用します」
私はドワーフの留学生たちに指示を出した。
「ゴーレムの動力回路を解析して。破壊するのではなく、命令系統を『書き換え(リライト)』るのよ」 「ええっ!? そんな無茶な!」 「できるわ。古代語翻訳チーム、マニュアルを解読して。『侵入者を排除せよ』という命令を、『岩を運べ』に変更するだけよ」
生徒たちが総力を挙げて解析に当たる。 ジークフリートとガイウスが囮になってゴーレムの注意を引きつけている間に、魔法科の精鋭たちが背後の制御紋章にアクセスする。
「解析完了! コマンド入力……承認されました!」
ズウン……。 ゴーレムの赤い目が、青色に変わった。 暴れていた巨体が、おとなしく停止する。
私はゴーレムの前に立ち、拡声器で命令した。
「業務命令。そこにある魔石の山を、入り口まで運びなさい。休憩なし、二十四時間稼働で」
ゴーレムは「了解(ガガガ……)」と低い音を立て、巨大な手で岩をすくい上げ、黙々と運び始めた。 そのパワーは凄まじい。人間が百人がかりで運ぶ量を、一度で運んでしまう。
「……すごい。最強の採掘マシーンだ」
さらに私は、ダンジョンの通路に「あるもの」を設置させた。 ドワーフたちが鉄とゴムで作った、動く道。 ――『ベルトコンベア』だ。
ゴーレムが掘り出した鉱石をコンベアに乗せ、それが自動的に地上まで運ばれる。 地上では、生徒たちがそれを分別し、即座に換金する。
完全なる「自動化工場(オートメーション・ファクトリー)」の完成だ。
***
一週間後。 学園の地下ダンジョンは、もはや魔窟の面影はなかった。 通路は舗装され、魔石灯で明るく照らされ、コンベアが駆動音を立てて走り続けている。
最深部では、ゴーレム(愛称:ゴロウ丸)が、今日も元気に岩を砕いている。 たまに湧くモンスターは、コンベアの途中に設置された「自動迎撃トラップ(スライム処理機)」によって処理され、素材となって流れてくる。
生徒会室にて。 私は積み上がった金貨の塔と、希少金属の山を見て、満足げに頷いた。
「今月の収支、黒字幅が過去最高を更新したわ。これで全教室にエアコンとウォシュレットを導入できる」
ジークフリートとガイウスが、遠い目で窓の外を見ていた。 校庭では、裕福になった生徒たちが、新品の装備や実験道具を手に、生き生きと活動している。
「……リリエラ。君にかかれば、古代の脅威さえも『優秀な社員』になるんだな」 「帝国のダンジョンも、こんな風に開発してほしいものだ……」
私は紅茶をすすりながら答えた。
「恐怖の対象にするから問題なのよ。管理して、利益を生むシステムに組み込めば、それは『資源』になる。……単純な話でしょう?」
こうして、王立学園は「世界で最も裕福な学校」となり、最先端の研究設備と、実戦経験豊富な生徒たちを擁する、巨大な機関へと成長した。
だが、この成功はあまりに目立ちすぎた。 地下から産出される「ミスリル」や「古代遺物」の噂は、海を越えて広がり、ついに「魔族」たちの耳にも届いてしまったのだ。
――次なる訪問者は、人間ではない。 魔界からの使者。 学園祭の準備に追われる私の元へ、招かれざる「超VIP」がやってくることになる。
「えー、これより『特別課外授業』の実施を発表します」
私は一枚のプリントを掲げた。
「場所は、本校の地下に発見された『古代遺跡(ダンジョン)』。目的は『資源回収』および『実地訓練』です」 「「「ダンジョン!?」」」
生徒たちが色めき立つ。冒険への憧れ、未知への恐怖。 だが、私は冷徹に続けた。
「本授業に参加した生徒には、特別単位(クレジット)を与えます。さらに、回収した魔石や遺物の量に応じ、成果報酬(ボーナス)を現金で支給します。……奮って参加するように」
――現金支給。 その言葉が、貴族も平民も関係なく、生徒たちの目の色を変えた。 私の食堂改革で「美味いものは金がかかる」と知ってしまった彼らは、今や貪欲な労働者と化していたのだ。
***
地下ダンジョン、第一層。 そこはもう、冒険の場ではなく「巨大な作業現場」と化していた。
「魔法科(サイエンス)班、照明確保! 壁面の魔石含有率を分析しろ!」 「騎士科(スポーツ)班、モンスター発生! スライムだ、焼却処分しろ!」 「普通科(アーツ)班、地図作成(マッピング)急げ! 搬送ルートを確保するんだ!」
生徒たちが専攻ごとに分かれ、組織的に動いている。 その周囲を警護するのは、用務員服を着た『特務部(元・暗殺者)』たちだ。彼らが影から危険な罠や強力な魔物を排除しているため、生徒たちは安全に「作業」に没頭できる。
「会長! また魔石の鉱脈を見つけました!」 「よし、採掘開始。ドワーフ留学生チーム、発破準備!」
ドカーン! 爆音と共に壁が崩れ、きらめく魔石がザクザクと溢れ出す。 私はそれをチェックシートに記入していく。
「……含有率よし。品質よし。これで学園の暖房費と実験機材費は十年分賄えるわね」
ダンジョンとは、要するに「資源の宝庫」だ。 放置すれば魔物が溢れる厄介な場所だが、管理(マネジメント)さえできれば、これほど効率的な資産はない。
***
順調に階層を下り、ついに最深部の第十層に到達した時だった。 巨大な広間の奥に、地響きと共に「それ」は現れた。
全長十メートルを超える、岩と金属の塊。 古代の守護者、『ミスリル・ゴーレム』だ。
「グオオオオオオ……!!」
咆哮だけで空気が震える。 生徒たちが悲鳴を上げて後退る。
「くっ、出たなボスキャラ! ここは僕たちが!」 「俺の剣のサビにしてくれる! いくぞジークフリート!」
ジークフリートとガイウスが武器を構え、勇ましく飛び出そうとした。 だが、私は扇子で二人の頭を叩いた。
「待ちなさい。壊す気?」 「えっ? いや、倒さないと進めないだろう?」 「よく見て。あの素材、純度九九パーセントのミスリルと、オリハルコンの関節よ。破壊したら資産価値が暴落するじゃない」
私はゴーレムを見上げた。 圧倒的な質量。無限の動力。疲れを知らない強靭なボディ。 私にはそれが、敵ではなく「理想的な重機」に見えた。
「……彼(?)を、採用します」
私はドワーフの留学生たちに指示を出した。
「ゴーレムの動力回路を解析して。破壊するのではなく、命令系統を『書き換え(リライト)』るのよ」 「ええっ!? そんな無茶な!」 「できるわ。古代語翻訳チーム、マニュアルを解読して。『侵入者を排除せよ』という命令を、『岩を運べ』に変更するだけよ」
生徒たちが総力を挙げて解析に当たる。 ジークフリートとガイウスが囮になってゴーレムの注意を引きつけている間に、魔法科の精鋭たちが背後の制御紋章にアクセスする。
「解析完了! コマンド入力……承認されました!」
ズウン……。 ゴーレムの赤い目が、青色に変わった。 暴れていた巨体が、おとなしく停止する。
私はゴーレムの前に立ち、拡声器で命令した。
「業務命令。そこにある魔石の山を、入り口まで運びなさい。休憩なし、二十四時間稼働で」
ゴーレムは「了解(ガガガ……)」と低い音を立て、巨大な手で岩をすくい上げ、黙々と運び始めた。 そのパワーは凄まじい。人間が百人がかりで運ぶ量を、一度で運んでしまう。
「……すごい。最強の採掘マシーンだ」
さらに私は、ダンジョンの通路に「あるもの」を設置させた。 ドワーフたちが鉄とゴムで作った、動く道。 ――『ベルトコンベア』だ。
ゴーレムが掘り出した鉱石をコンベアに乗せ、それが自動的に地上まで運ばれる。 地上では、生徒たちがそれを分別し、即座に換金する。
完全なる「自動化工場(オートメーション・ファクトリー)」の完成だ。
***
一週間後。 学園の地下ダンジョンは、もはや魔窟の面影はなかった。 通路は舗装され、魔石灯で明るく照らされ、コンベアが駆動音を立てて走り続けている。
最深部では、ゴーレム(愛称:ゴロウ丸)が、今日も元気に岩を砕いている。 たまに湧くモンスターは、コンベアの途中に設置された「自動迎撃トラップ(スライム処理機)」によって処理され、素材となって流れてくる。
生徒会室にて。 私は積み上がった金貨の塔と、希少金属の山を見て、満足げに頷いた。
「今月の収支、黒字幅が過去最高を更新したわ。これで全教室にエアコンとウォシュレットを導入できる」
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「……リリエラ。君にかかれば、古代の脅威さえも『優秀な社員』になるんだな」 「帝国のダンジョンも、こんな風に開発してほしいものだ……」
私は紅茶をすすりながら答えた。
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こうして、王立学園は「世界で最も裕福な学校」となり、最先端の研究設備と、実戦経験豊富な生徒たちを擁する、巨大な機関へと成長した。
だが、この成功はあまりに目立ちすぎた。 地下から産出される「ミスリル」や「古代遺物」の噂は、海を越えて広がり、ついに「魔族」たちの耳にも届いてしまったのだ。
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