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俺の彼氏には特別に大切なヒトがいる〜B面〜
B面6
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そして、俺達は付き合い始めた。
「なっちゃん。帰りスタバで宿題して帰ろ」
よく誘ってくれるコータと付き合うことは、俺の妄想の何倍も何倍も幸せだった。
学校の帰りの寄り道だけじゃなくて、部活が休みの土日は俺の好きなテーマパークにも遊びに行ったし、映画を観に行ったりもよくする。
コータはすごくすごく優しくて、夢みたいな時間だった。
もしかしたら、真琴じゃなくて俺のことを好きなんじゃないかと勘違いしてしまいそうになるときもあるくらい。
「いいけど、俺今日掃除当番だよ?」
俺がそう言うと、大好きな大きな手で俺の頭をくしゃくしゃ撫でた。
「んじゃ先行って席取っとくね。夕方混むじゃん」
なっちゃんの好きなあの端っこの席取れるように頑張る!と言って満面の笑みを浮かべると、ひらひらと手を振って教室を出て行った。
思わずニヤけてしまいそうなのを、一緒に掃除をしているクラスメイトに見られないように、一生懸命箒を動かした。
箒で教室の床を端から順に掃いていると、窓際まで辿り着いた。
この窓からは生徒が登下校の際に必ず通る正門が見える。
先程教室を出たコータが見えるかな、と窓の外を覗いたときだった。
あ……いた!
コータのキラキラが見えた。
振り返らないかな……
そう思ったときだった。
俺の心の声が届いたのかと思うタイミングで、コータがくるりと振り返った。
「……っ」
でも振り返ったコータと目が合うことはなかった。
三階の教室にいる俺を振り返ったわけじゃなかったから。
コータが振り返って視線を投げかけた方を見ると、綺麗な黒髪が見えた。
心底嬉しいといったような、笑み。
二人は幼馴染なんだから、そのくらい普通だろ、とも思うのに。
二人は少し連れ立って歩いたのち、校門のそばまで行くと立ち止まって、談笑していた。
何かを言ったコータの肩のあたりを、真琴がふざけてパンチしたみたいだった。
中々強い勢いに見えたのに、肩パン食らって大きな口をあけてゲラゲラ笑うコータ。
心臓が抉られるみたいに痛くなって、俺は急いで窓際から離れた。
いつも俺に優しいコータと真琴。
二人だけで話すとき、それが少し乱暴な口調になる。
遠慮がなくなるっていうのかな。そんな感じ。
俺にはあんな乱暴なことはしない。
それがすごくすごく羨ましい、なんて言ったら罰当たるかな。
二人で話すときは遠慮がなくて、それでいて真琴がいないときに真琴のことを話すコータはとっても優しい顔をしている。
俺のことを誰かに話すとき、コータはあんな顔してくれてる?
あれ以上の顔なんてきっとないから、それは無理かな……
一心不乱に床を掃除すると、いつの間にか教室はとってもきれいになっていたけれど、俺の気持ちは曇ったままだった。
揺れた気持ちのままで、それでもコータと会わない選択肢を選べない俺は約束の場所に向かった。
もしかしたら、正門のとこで合流していたし、今日は真琴もいるかもしれない。
真琴がいたとしたら、俺はとんでもなくお邪魔虫なのに。
約束の店内に着いて見渡すと、コータはいつもの席にいた。
真琴はいなくて、コータだけだった。
「真琴は来なかったの?」
荷物をコータの席の向かい側に置きながら訊ねる。
「え? なんでまこちゃん?」
教室の窓から二人が話していたのを見ていたなんて気持ち悪すぎると思ったけれど、誤魔化し方がわからない。
「あーー……掃除してるとき窓から見えて……」
正直に言うと、コータは静かに笑った。
「あぁ、見えてたんだ。正門のとこでまこちゃんと会ったけど、まこちゃんタスクと待ち合わせだったから」
「そうだったんだ」
同じテニス部の後輩、タスクは真琴とすごく仲がいい。
この前真琴には恋人がいると言っていたけれど、彼のことなんじゃないかな?と俺は思っている。
でも真琴もコータも俺に話さないから、踏み込みすぎている気がして聞けずにいる。
俺は静かに瞬きした。
何だかコータがいつもより元気がないように見えた。
真琴とタスクが会ってるからかな。
「飲み物買ってくるね」
そう言ってカウンターに向かおうとしたときだった。
「なっちゃん……!」
突然コータが俺の手首をぎゅっと掴んだ。
「ん?」
「宿題……なっちゃん待ってる間に俺終わったから」
「そうなの? 早いね。じゃあ俺も急いでやるね」
「なっちゃん……そうじゃなくて……」
俺の返答に彼は意図が伝わらなくてじれったいと言うように続けた。
「俺の宿題写していいからさ……ね……ここはもう出て、二人っきりになれるとこ、行きたい」
彼の突然の誘い。
真琴が別の人とデートして寂しいのかな。
俺たちの始まりはそこからだったもんね。
俺が静かに頷くと、コータは空になった彼のカップを手に立ち上がった。
制服のままだったから、ホテルには行けないし、コータの家よりも俺のアパートの方が近かった。
そんな理由で俺の部屋のベッドの上。
母さんは仕事で帰って来るのは遅いから、全然大丈夫。
でもコータが帰ったあと、思い出してしまうから俺のベッドでセックスするのはすごく嫌なんだ。
いつかお別れしたあとはこのベッドに寝れなくなってしまうかもしれない。
でもコータにお願いされたら断れない俺。
コータのセックスは優しい。
初めてのときからずっと優しい。
他に比べる人なんていないけど、絶対絶対すごく優しいと思う。
全身を溶かすように優しく触って、舐めて、俺がぐずぐずに溶けてから、そうっと挿入する。
俺はいつもみっともなく彼の腰に脚を絡めてもっと、とねだってしまう。
「なっちゃん……だめだよ。痛くなっちゃうでしょ? ゆっくり気持ちよくなろーね」
優しく諭される。
コータが誘ったくせに、すごく余裕で嫌だ。
ゆっくりと、優しくぐずぐずの内壁を擦る。
「あ……あ……ふぁぁ……」
彼に腕も脚もぎゅっと回して、こんなんじゃ俺がコータのことをめちゃくちゃ好きだってバレちゃうけど、気持ちを隠せる余裕なんか俺にあるわけない。
「なっちゃん……可愛い……気持ちいいの?……」
優しく頭を撫でられて、気がおかしくなりそう。
あんまり優しくしないで。
優しいところが大好きなのに。
優しくされるの、すごく嫌だよ。
「なっちゃん、大丈夫?」
目を覚ますと、紫色だった空がすっかり暗くなっていた。
ベッドの傍らで心配そうに俺を覗き込む。
大丈夫だよ。そんなにやわじゃないよ。
「うん」
心配かけないように、笑って見せる。
「よかった……あのさ、琴美さん……っと、まこちゃんのお母さんがさ夕飯俺の分も作ってくれてるから、俺帰るね。沢山作っちゃったんだって」
大きな手が俺の頬をそっと撫でる。
優しく撫でてくれるのに、優しく抱いてもらったあとなのに、胸の奥が痛い。
「うん……」
「あのさ、それで晩ごはん麻婆豆腐らしいんだけど……いっぱい作ったって言ってたから、なっちゃんも一緒に行かない?」
近くで見ると、うんと長いまつげ。本当に綺麗な顔。そして、とっても優しい。
「……ううん。もうちょっと寝たいから、俺はいいや」
「わかった。起こしてごめんね。ゆっくり寝てね……あとでちゃんとご飯も食べて。宿題のノート、置いていくね」
「ん……でも宿題は後で自分でやるから大丈夫だよ」
「じゃあ見なくてもいいけど、このあとやっぱり体がしんどかったら見れるように置いていく」
「……ありがと。じゃあノートは明日の朝渡すね」
俺がそう返事をすると、じゃあまた明日、とキスを一つ落としてコータは俺の部屋を出ていった。
枕に顔を埋めると、シトラスの香りが仄かに香った。
コータはうんと優しかったのに、優しかったから、ちょっとだけ泣いた。
「なっちゃん。帰りスタバで宿題して帰ろ」
よく誘ってくれるコータと付き合うことは、俺の妄想の何倍も何倍も幸せだった。
学校の帰りの寄り道だけじゃなくて、部活が休みの土日は俺の好きなテーマパークにも遊びに行ったし、映画を観に行ったりもよくする。
コータはすごくすごく優しくて、夢みたいな時間だった。
もしかしたら、真琴じゃなくて俺のことを好きなんじゃないかと勘違いしてしまいそうになるときもあるくらい。
「いいけど、俺今日掃除当番だよ?」
俺がそう言うと、大好きな大きな手で俺の頭をくしゃくしゃ撫でた。
「んじゃ先行って席取っとくね。夕方混むじゃん」
なっちゃんの好きなあの端っこの席取れるように頑張る!と言って満面の笑みを浮かべると、ひらひらと手を振って教室を出て行った。
思わずニヤけてしまいそうなのを、一緒に掃除をしているクラスメイトに見られないように、一生懸命箒を動かした。
箒で教室の床を端から順に掃いていると、窓際まで辿り着いた。
この窓からは生徒が登下校の際に必ず通る正門が見える。
先程教室を出たコータが見えるかな、と窓の外を覗いたときだった。
あ……いた!
コータのキラキラが見えた。
振り返らないかな……
そう思ったときだった。
俺の心の声が届いたのかと思うタイミングで、コータがくるりと振り返った。
「……っ」
でも振り返ったコータと目が合うことはなかった。
三階の教室にいる俺を振り返ったわけじゃなかったから。
コータが振り返って視線を投げかけた方を見ると、綺麗な黒髪が見えた。
心底嬉しいといったような、笑み。
二人は幼馴染なんだから、そのくらい普通だろ、とも思うのに。
二人は少し連れ立って歩いたのち、校門のそばまで行くと立ち止まって、談笑していた。
何かを言ったコータの肩のあたりを、真琴がふざけてパンチしたみたいだった。
中々強い勢いに見えたのに、肩パン食らって大きな口をあけてゲラゲラ笑うコータ。
心臓が抉られるみたいに痛くなって、俺は急いで窓際から離れた。
いつも俺に優しいコータと真琴。
二人だけで話すとき、それが少し乱暴な口調になる。
遠慮がなくなるっていうのかな。そんな感じ。
俺にはあんな乱暴なことはしない。
それがすごくすごく羨ましい、なんて言ったら罰当たるかな。
二人で話すときは遠慮がなくて、それでいて真琴がいないときに真琴のことを話すコータはとっても優しい顔をしている。
俺のことを誰かに話すとき、コータはあんな顔してくれてる?
あれ以上の顔なんてきっとないから、それは無理かな……
一心不乱に床を掃除すると、いつの間にか教室はとってもきれいになっていたけれど、俺の気持ちは曇ったままだった。
揺れた気持ちのままで、それでもコータと会わない選択肢を選べない俺は約束の場所に向かった。
もしかしたら、正門のとこで合流していたし、今日は真琴もいるかもしれない。
真琴がいたとしたら、俺はとんでもなくお邪魔虫なのに。
約束の店内に着いて見渡すと、コータはいつもの席にいた。
真琴はいなくて、コータだけだった。
「真琴は来なかったの?」
荷物をコータの席の向かい側に置きながら訊ねる。
「え? なんでまこちゃん?」
教室の窓から二人が話していたのを見ていたなんて気持ち悪すぎると思ったけれど、誤魔化し方がわからない。
「あーー……掃除してるとき窓から見えて……」
正直に言うと、コータは静かに笑った。
「あぁ、見えてたんだ。正門のとこでまこちゃんと会ったけど、まこちゃんタスクと待ち合わせだったから」
「そうだったんだ」
同じテニス部の後輩、タスクは真琴とすごく仲がいい。
この前真琴には恋人がいると言っていたけれど、彼のことなんじゃないかな?と俺は思っている。
でも真琴もコータも俺に話さないから、踏み込みすぎている気がして聞けずにいる。
俺は静かに瞬きした。
何だかコータがいつもより元気がないように見えた。
真琴とタスクが会ってるからかな。
「飲み物買ってくるね」
そう言ってカウンターに向かおうとしたときだった。
「なっちゃん……!」
突然コータが俺の手首をぎゅっと掴んだ。
「ん?」
「宿題……なっちゃん待ってる間に俺終わったから」
「そうなの? 早いね。じゃあ俺も急いでやるね」
「なっちゃん……そうじゃなくて……」
俺の返答に彼は意図が伝わらなくてじれったいと言うように続けた。
「俺の宿題写していいからさ……ね……ここはもう出て、二人っきりになれるとこ、行きたい」
彼の突然の誘い。
真琴が別の人とデートして寂しいのかな。
俺たちの始まりはそこからだったもんね。
俺が静かに頷くと、コータは空になった彼のカップを手に立ち上がった。
制服のままだったから、ホテルには行けないし、コータの家よりも俺のアパートの方が近かった。
そんな理由で俺の部屋のベッドの上。
母さんは仕事で帰って来るのは遅いから、全然大丈夫。
でもコータが帰ったあと、思い出してしまうから俺のベッドでセックスするのはすごく嫌なんだ。
いつかお別れしたあとはこのベッドに寝れなくなってしまうかもしれない。
でもコータにお願いされたら断れない俺。
コータのセックスは優しい。
初めてのときからずっと優しい。
他に比べる人なんていないけど、絶対絶対すごく優しいと思う。
全身を溶かすように優しく触って、舐めて、俺がぐずぐずに溶けてから、そうっと挿入する。
俺はいつもみっともなく彼の腰に脚を絡めてもっと、とねだってしまう。
「なっちゃん……だめだよ。痛くなっちゃうでしょ? ゆっくり気持ちよくなろーね」
優しく諭される。
コータが誘ったくせに、すごく余裕で嫌だ。
ゆっくりと、優しくぐずぐずの内壁を擦る。
「あ……あ……ふぁぁ……」
彼に腕も脚もぎゅっと回して、こんなんじゃ俺がコータのことをめちゃくちゃ好きだってバレちゃうけど、気持ちを隠せる余裕なんか俺にあるわけない。
「なっちゃん……可愛い……気持ちいいの?……」
優しく頭を撫でられて、気がおかしくなりそう。
あんまり優しくしないで。
優しいところが大好きなのに。
優しくされるの、すごく嫌だよ。
「なっちゃん、大丈夫?」
目を覚ますと、紫色だった空がすっかり暗くなっていた。
ベッドの傍らで心配そうに俺を覗き込む。
大丈夫だよ。そんなにやわじゃないよ。
「うん」
心配かけないように、笑って見せる。
「よかった……あのさ、琴美さん……っと、まこちゃんのお母さんがさ夕飯俺の分も作ってくれてるから、俺帰るね。沢山作っちゃったんだって」
大きな手が俺の頬をそっと撫でる。
優しく撫でてくれるのに、優しく抱いてもらったあとなのに、胸の奥が痛い。
「うん……」
「あのさ、それで晩ごはん麻婆豆腐らしいんだけど……いっぱい作ったって言ってたから、なっちゃんも一緒に行かない?」
近くで見ると、うんと長いまつげ。本当に綺麗な顔。そして、とっても優しい。
「……ううん。もうちょっと寝たいから、俺はいいや」
「わかった。起こしてごめんね。ゆっくり寝てね……あとでちゃんとご飯も食べて。宿題のノート、置いていくね」
「ん……でも宿題は後で自分でやるから大丈夫だよ」
「じゃあ見なくてもいいけど、このあとやっぱり体がしんどかったら見れるように置いていく」
「……ありがと。じゃあノートは明日の朝渡すね」
俺がそう返事をすると、じゃあまた明日、とキスを一つ落としてコータは俺の部屋を出ていった。
枕に顔を埋めると、シトラスの香りが仄かに香った。
コータはうんと優しかったのに、優しかったから、ちょっとだけ泣いた。
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