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俺と彼氏と彼氏の特別に大切なヒトとその彼氏で遊園地に行った話
Break time
「ねぇ。顔色悪いよ、タスク。乗り物酔いしちゃった?」
もう日が暮れていて、外は暗くなっていたんだけど最初に気付いてくれたのは真琴さんだった。
「ちょっとお店入って座って休もうか? 俺酔ってからでも効く酔い止めの薬持ってきてるよ」
そう言ってくれたのは夏樹先輩だった。
店に入ったけれど少し早めの夕食をとる客で溢れていて、中々空席を探すことができない。
「俺、ちょっと奥の方見て来るから端の方で待ってて」
コータ先輩がそう言って広いフードコートの店内の奥に進んでいった。
「俺は飲み物買ってくるね。酔ってるときって何がいいんだろう? 薬飲むならお水?」
「薬は水無しで飲めるやつだから大丈夫。意外とコーラとか良かったりするからお願い」
乗り物酔いに慣れているらしい夏樹先輩は真琴さんにテキパキ言いながら、バッグの中にある薬をゴソゴソ探してくれている。
幼馴染コンビが店内に散ったところで、夏樹先輩のバッグから薬が出てきた。
「はい。これ。すぐ効くと思うから」
大きなフードコートの店内の壁に凭れる俺に夏樹先輩は薬を差し出してくれる。
後味はあまり良くないそれを少し我慢して、舐め溶かす。
すっと溶けたあとは、ちょっとだけ喉のあたりがすーっとした。
「ありがとうございます……」
情けないなぁと思いながら礼を言う。
こんな格好悪い姿を晒すなんて、ほんと泣きっ面に蜂ってやつじゃん。
「大丈夫だよ。俺もよくなるから気持ちわかる。今日は予め薬飲んでおいたから大丈夫だけど。壁に凭れながら少し目を瞑っていた方がいいよ」
優しい夏樹先輩の声。
「妬かないんですか、夏樹先輩」
体調の悪さと優しい声のせいでポロッと本音が溢れた。
しまった。突然で意味わかんなかったかな。そう思ったけれど。
「妬くこともあるよ。二人お似合いだもんね。昔の話されるの、辛い?」
俺の心配は杞憂で、意味を寸分も取り違えることなく伝わっていた。
「少し……夏樹先輩は辛くないんですか? 今日の夏樹先輩とコータ先輩を見て、コータ先輩は真琴さんを好きなわけじゃないって、夏樹先輩をすごく大好きだって確信はしたんですけど、それでも何かちょっと刺さるものはありますし、そんなこと気になる自分も嫌です」
俺の言葉を真剣な眼差しで聞いたあと、夏樹先輩は静かに口を開いた。
「うーん……全く辛くないって言ったら嘘かなぁ」
そう応えた夏樹先輩の声はとても、優しかった。そして、とても穏やかに続けた。
「でもね。コータの親は忙しくて殆ど家にいないから、お出掛けも何もかも真琴の家が連れて行ってくれたんだって。運動会のお弁当も。コータはすごく真琴と真琴の家族にも感謝してる。だから俺も真琴に感謝してる」
そこまで言うと、夏樹先輩はそっと俺の頭を撫でた。小さい子を慰めるみたいだな、と思ったけど、それはとても心地よい。
「でも……ごめんね」
夏樹先輩はちいさく謝ったので俺はそっと目を開けた。
「多分二人があんな感じなのは、コータの家庭環境のせいだと思う。だから、タスク君には何か申し訳ないなって思う」
小さな動物みたいだった夏樹さんだけど、この話をするときはすごく凛とした顔をしていた。コータ先輩の代わりにごめんねって俺に謝る姿がちょっと羨ましかった。俺も真琴さんとそんな風になりたい。
俺の複雑な表情を見て、夏樹さんはふふ、と笑った。
「過去には妬いちゃうこともあるよね。それは仕方ないよ。だって二人本当に仲良しだしさ。俺もそのとき一緒にいたらよかったのにって思っちゃうときもある」
それから俺の目をまっすぐ見て夏樹先輩は言った。
「でもさ、今の好きな人を作ったのもその過去なんだよね。真琴がさ、仲良くしてくれなかったら今の優しくて明るいコータはないかも、と思う。でさ、これからは俺が彼の一部になれならいいなとは思う」
夏樹先輩のセリフに俺は何も投げ出して寝っ転がりたくなった。人がいっぱいいるからやんないけど。
「あーやだ。俺自分のちっささがもっと嫌になりました」
「えー?そう?小さくはないよ。めちゃめちゃ気持ちわかるもん。俺も真琴にすごく優しくしてもらったくせに、コータの気持ちは分からなかったときめちゃめちゃ嫉妬したから」
そう笑う人はすごい素敵な人だった。
遠くからだと雑草に隠れちゃうけど、近くで見たら健気に咲いてる小さな花みたいだった。
そりゃ俺の真琴さんが世界一だけど、コータさんが自分に隠しながら大切に守りたいと思う気持ちがよくわかる。
「ありがとうございます。薬も、話聞いてくれたのも。お陰で元気になりました」
「ほんと? 元気になったならよかった! 体調悪いとマイナス思考にもなるよね。パレードは見れそう?」
「はい。真琴さんと見たいです」
「うん。キラキラ綺麗だし、好きな人と見たいよね」
そう夏樹先輩が言ったとき。
「おい……ちょっと、距離近くない? タスクとなっちゃん!」
やたらとでかい声がして振り返ると、憮然とした顔のコータ先輩で凄まじい勢いで俺たちの間に入ってきた。
真琴さんも手に飲み物を持って、目を見開いてこっちを見ていた。
「二人が俺たちにいっぱいヤキモチ妬かすから、俺たち同盟組んだんだ」
少しだけいたずらっぽい笑顔を浮かべた夏樹先輩が嫣然と言って、横目でちらりと俺を見た。
「そう!幼馴染のヤキモチ被害者の会、ね。夏樹先輩。今度から辛くなったら夏樹先輩に話聞いてもらうことにしました!」
俺もそう言って笑った。
「ちょ……ちょっと待って? どういうこと?」
焦っているコータ先輩。
「あ。そうだ。タスク君」
そんなコータ先輩を余所に、夏樹先輩は俺だけに聞こえるようにそっと囁いた。
「真琴は妬かれて喜んでるところあるよねぇ。無自覚だろうけど。だからさ、ヤキモチ妬いちゃったときは、思いっきりお仕置きしてあげればいいんだよ」
耳元で囁かれた小悪魔なセリフに俺は驚いて童貞みたいに真っ赤になって固まった。
子犬みたいな彼とのギャップがすごい。
俺にそっと囁いていたずらっぽく笑ってくれた夏樹先輩を見たコータさんは、声にならない悲鳴を上げて光の速さで自分の手元に夏樹先輩を抱き寄せたし、真琴さんは呆然と固まったままだった。
「今日はもうここからは別行動!!」
あんまり大きい声でコータさんが叫ぶから、そのあたりにいた人は一斉に俺たちを見た。
もう日が暮れていて、外は暗くなっていたんだけど最初に気付いてくれたのは真琴さんだった。
「ちょっとお店入って座って休もうか? 俺酔ってからでも効く酔い止めの薬持ってきてるよ」
そう言ってくれたのは夏樹先輩だった。
店に入ったけれど少し早めの夕食をとる客で溢れていて、中々空席を探すことができない。
「俺、ちょっと奥の方見て来るから端の方で待ってて」
コータ先輩がそう言って広いフードコートの店内の奥に進んでいった。
「俺は飲み物買ってくるね。酔ってるときって何がいいんだろう? 薬飲むならお水?」
「薬は水無しで飲めるやつだから大丈夫。意外とコーラとか良かったりするからお願い」
乗り物酔いに慣れているらしい夏樹先輩は真琴さんにテキパキ言いながら、バッグの中にある薬をゴソゴソ探してくれている。
幼馴染コンビが店内に散ったところで、夏樹先輩のバッグから薬が出てきた。
「はい。これ。すぐ効くと思うから」
大きなフードコートの店内の壁に凭れる俺に夏樹先輩は薬を差し出してくれる。
後味はあまり良くないそれを少し我慢して、舐め溶かす。
すっと溶けたあとは、ちょっとだけ喉のあたりがすーっとした。
「ありがとうございます……」
情けないなぁと思いながら礼を言う。
こんな格好悪い姿を晒すなんて、ほんと泣きっ面に蜂ってやつじゃん。
「大丈夫だよ。俺もよくなるから気持ちわかる。今日は予め薬飲んでおいたから大丈夫だけど。壁に凭れながら少し目を瞑っていた方がいいよ」
優しい夏樹先輩の声。
「妬かないんですか、夏樹先輩」
体調の悪さと優しい声のせいでポロッと本音が溢れた。
しまった。突然で意味わかんなかったかな。そう思ったけれど。
「妬くこともあるよ。二人お似合いだもんね。昔の話されるの、辛い?」
俺の心配は杞憂で、意味を寸分も取り違えることなく伝わっていた。
「少し……夏樹先輩は辛くないんですか? 今日の夏樹先輩とコータ先輩を見て、コータ先輩は真琴さんを好きなわけじゃないって、夏樹先輩をすごく大好きだって確信はしたんですけど、それでも何かちょっと刺さるものはありますし、そんなこと気になる自分も嫌です」
俺の言葉を真剣な眼差しで聞いたあと、夏樹先輩は静かに口を開いた。
「うーん……全く辛くないって言ったら嘘かなぁ」
そう応えた夏樹先輩の声はとても、優しかった。そして、とても穏やかに続けた。
「でもね。コータの親は忙しくて殆ど家にいないから、お出掛けも何もかも真琴の家が連れて行ってくれたんだって。運動会のお弁当も。コータはすごく真琴と真琴の家族にも感謝してる。だから俺も真琴に感謝してる」
そこまで言うと、夏樹先輩はそっと俺の頭を撫でた。小さい子を慰めるみたいだな、と思ったけど、それはとても心地よい。
「でも……ごめんね」
夏樹先輩はちいさく謝ったので俺はそっと目を開けた。
「多分二人があんな感じなのは、コータの家庭環境のせいだと思う。だから、タスク君には何か申し訳ないなって思う」
小さな動物みたいだった夏樹さんだけど、この話をするときはすごく凛とした顔をしていた。コータ先輩の代わりにごめんねって俺に謝る姿がちょっと羨ましかった。俺も真琴さんとそんな風になりたい。
俺の複雑な表情を見て、夏樹さんはふふ、と笑った。
「過去には妬いちゃうこともあるよね。それは仕方ないよ。だって二人本当に仲良しだしさ。俺もそのとき一緒にいたらよかったのにって思っちゃうときもある」
それから俺の目をまっすぐ見て夏樹先輩は言った。
「でもさ、今の好きな人を作ったのもその過去なんだよね。真琴がさ、仲良くしてくれなかったら今の優しくて明るいコータはないかも、と思う。でさ、これからは俺が彼の一部になれならいいなとは思う」
夏樹先輩のセリフに俺は何も投げ出して寝っ転がりたくなった。人がいっぱいいるからやんないけど。
「あーやだ。俺自分のちっささがもっと嫌になりました」
「えー?そう?小さくはないよ。めちゃめちゃ気持ちわかるもん。俺も真琴にすごく優しくしてもらったくせに、コータの気持ちは分からなかったときめちゃめちゃ嫉妬したから」
そう笑う人はすごい素敵な人だった。
遠くからだと雑草に隠れちゃうけど、近くで見たら健気に咲いてる小さな花みたいだった。
そりゃ俺の真琴さんが世界一だけど、コータさんが自分に隠しながら大切に守りたいと思う気持ちがよくわかる。
「ありがとうございます。薬も、話聞いてくれたのも。お陰で元気になりました」
「ほんと? 元気になったならよかった! 体調悪いとマイナス思考にもなるよね。パレードは見れそう?」
「はい。真琴さんと見たいです」
「うん。キラキラ綺麗だし、好きな人と見たいよね」
そう夏樹先輩が言ったとき。
「おい……ちょっと、距離近くない? タスクとなっちゃん!」
やたらとでかい声がして振り返ると、憮然とした顔のコータ先輩で凄まじい勢いで俺たちの間に入ってきた。
真琴さんも手に飲み物を持って、目を見開いてこっちを見ていた。
「二人が俺たちにいっぱいヤキモチ妬かすから、俺たち同盟組んだんだ」
少しだけいたずらっぽい笑顔を浮かべた夏樹先輩が嫣然と言って、横目でちらりと俺を見た。
「そう!幼馴染のヤキモチ被害者の会、ね。夏樹先輩。今度から辛くなったら夏樹先輩に話聞いてもらうことにしました!」
俺もそう言って笑った。
「ちょ……ちょっと待って? どういうこと?」
焦っているコータ先輩。
「あ。そうだ。タスク君」
そんなコータ先輩を余所に、夏樹先輩は俺だけに聞こえるようにそっと囁いた。
「真琴は妬かれて喜んでるところあるよねぇ。無自覚だろうけど。だからさ、ヤキモチ妬いちゃったときは、思いっきりお仕置きしてあげればいいんだよ」
耳元で囁かれた小悪魔なセリフに俺は驚いて童貞みたいに真っ赤になって固まった。
子犬みたいな彼とのギャップがすごい。
俺にそっと囁いていたずらっぽく笑ってくれた夏樹先輩を見たコータさんは、声にならない悲鳴を上げて光の速さで自分の手元に夏樹先輩を抱き寄せたし、真琴さんは呆然と固まったままだった。
「今日はもうここからは別行動!!」
あんまり大きい声でコータさんが叫ぶから、そのあたりにいた人は一斉に俺たちを見た。
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