強面騎士団長と僕はケンカしてばかりだったのに、いつの間にか溺愛されていました

ゆなな

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1章

彼への失望1

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 仮面舞踏会で出会った男の怪我を治してやったあと、大広間にユノを探しに戻ったサランだったが、結局ユノを見つけることが出来ずに、食事もそこそこに寮の部屋に帰った。
 サランが戻ったあと、ほどなくしてユノは帰ってきて、無事であったことと助けてもらった男と舞踏会を楽しんだという話を聞いてサランは心からほっとした。

 そして仮面舞踏会の翌日の始業式を終えたサランが、ユノやクラスメイトと共に高学年専用の広い食堂で昼食を摂ろうとしていた、その時だった。

「あいつが平民のくせに生徒会に入ったっていうやつ?」

 平民の生徒しかいないスタンダードクラスから生徒会役員になった者がいるということは、ハイクラスでは相当の話題らしく、そこかしこからユノに視線が飛んでくる。
 サランはそれらから庇うようにユノの傍にいたが、視線からは庇えても、悪意をもった声からは庇えなかった。
 食堂に入ると生徒会に入ったユノに対するいろんな声が耳に飛び込んできた。
 分不相応だの、平民のくせに目立とうとしてみっともないだの。
 ――分不相応? ユノが? 誰よりも努力していることを知りもしないで!
 サランは燃え滾るような怒りを感じた。一体誰がユノより一生懸命生きていると言うんだ。

「言いたいことがあるんなら、堂々と言えよ」

「でもまぁ、これが僕たちハイクラスの総意だと思うけどね」

 サランがよく通る声ではっきり言うと、小さな囁き声は止まったが、代わりにやたらと高い声が聞こえた。
 その声の主は生徒会の副会長であるシュリ・フィザードのものだった。
 誰もがシュリは夢のように美しいだとか、魔女たちよりも可愛いと言うが、サランはちっともそうは思えなかった。性格の悪さが表情に滲んでいるようにサランには見えるのだ。
 彼は同じく生徒会役員で緑色の髪を持つ双子の貴族、ラコレとカイルを従えていた。
 そして彼らから少しだけ離れたところに赤い髪を持つアンドレア・ビスコンティもサランの視界に入った。
 座っているユノを見下ろすように腕組みをして立ったシュリは、細い体躯のくせに威圧感がある。
 同じテーブルについていたクラスメイトたちは皆凍り付いたように動かなくなった。
 特に父親がフィザード家の侍従を務めるというジェイコブの顔色は真っ青であった。
 友人たちを守らなくてはいけないが、ユノを侮辱されて黙っていられるサランではなかった。

「どういう意味?」

「この学校の生徒達はユノ・マキノが生徒会役員になることを歓迎してはいない。一々説明しないと平民はそんなこともわからないのか」

 サランが鋭く返すと、平民が口答えすることが意外であったのかアンドレアが驚いたようにその赤い目を見開いて言った。
 アンドレアはサランの正体に気が付いていないようだったが、仮面舞踏会で足を治療した男は、この男であることにサランは着用していたネクタイから気が付いていた。
 昨晩は事故のようなものだったが、お互い気分よく帰れて印象もよかったと思う。
 そのときは平民の治癒師であるサランに対して、差別的な言動はなかったのに、今のこと発言を聞いてサランは心からがっかりして失望した。

「それはハイクラスの生徒だけなんじゃないの? スタンダードクラスは全員ユノが生徒会役員になることを喜ばしく思っているよ」

 サランは怒りを込めた目で精一杯アンドレアを睨みつけた。
 ――昨日助けなければよかった!
 そんなことを思った患者は今まで一人もいなかったけれども、彼が記念すべき一人目になりそうなほど腹が立つような発言だった。
 そのアンドレアは睨みつけながら言ったサランに一層眉を顰めた。

「そう? それならここで聞こうか。ここにはハイクラスの生徒もスタンダードクラスの生徒も沢山いる」

 アンドレアとサランのやり取りを聞いてシュリは嫣然と微笑んで、そして続けた。

「この場にいる者で、ユノ・マキノが生徒会役員になることに賛成の意を持つ者は挙手を」

 水を打ったように静まり返っていた食堂ではシュリの声は隅々まで響いたが、手を挙げた者はサラン以外にはいなかった。
 本当はもっとたくさんの人がユノを応援しているはずだ。
 だけど貴族の仕返しが怖くて声を上げられないのだ。
 サランは悔しくて唇を噛んだ。

「賛成なのはお前一人だけじゃねぇか」

 アンドレアが馬鹿にしたように言うと、シュリは吹き出すように嗤った。
 そして後ろに控えていたシュリの腰巾着であるカイルとラコレも嗤い、その嗤いは先程陰口を囁いていたハイクラスの者たちにも広がった。
 アンドレアの発言にサランは怒りで自分の顔が赤くなるのがわかるほどだった。
 噛んだ唇からは血が出て、鉄の味が口内に広がった。
 いつも乾燥しないように手入れを欠かさないサランだったが、そんなこと頭から飛んでしまうくらい、腹が立った。

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