17 / 59
2章
放課後の事件2
「偉そうに言うなよ」
サランは頬を膨らませたが、塔の入り口でアンドレアは立ち止まりサランを待っていた。
隣に立つとアンドレアは学生でありながら騎士団の団長を務めるだけあり、体格がすごくよく、残念ながら身長があまり伸びなかったサランは彼を見上げるほどだった。
「図書館はさっき行ったけどいなかった。元々予定に入ってなかったらしいんだ。だから、今日最後の授業が終わって高学年棟からシュトレイン塔に真っ直ぐ向かったと思うんだよ。で、シュトレイン塔にまだ着いていないとなると、中庭のどこかにいるような気がするんだけど、先週も変なハイクラスの奴らに絡まれてたみたいだから心配で。あ、変とか言ってごめん」
「構わん。ハイクラスに変な奴が多いのは事実だ。そうか、やはり絡まれていることが多いのか……」
脚の長いアンドレアがずんずん歩いて行くのに合わせると、とても速く歩かなければならず小走りをしながらサランが言う。
ユノはいつもサランに心配をかけまいと、危険な目に遭った話は教えてくれないときがあるから、サランはこうやって気をもむことしかできない。今だってもし危機に巻き込まれていても自分で対処するだろうし、傷付いたって表に出さない人だ。
サランがそっと下唇を噛んだ。
中庭はかなり広く沢山の植物が育てられているため、見通しが悪いところも多い。
シュトレイン塔と高学年棟を繋ぐ中庭の小径を辿りながら、見通しが悪いところにユノがいないか確認することにした。
サランは先ほど図書館に向かう時に中庭を通ってはいるが、図書館と高学年棟を結ぶ道を通っているので、このシュトレイン塔と高学年棟をつなぐ小径は通っていないのだ。
シュトレイン塔に用事がある生徒は生徒会役員くらいのものなので、図書館に向かう道と比べて大分狭い小径だ。
「この小径は通る人も少ないし、道に沿って薔薇垣もあるから見通しも悪い。言いがかりをつけて絡まれていても目撃されにくいかもしれんな」
「確かに」
辺りを見渡しながら言ったアンドレアに相槌を打ったときサランは気が付いた。
先ほどまでは走らなければアンドレアに追いつけなかったが、今はサランの速足の歩調に合わせて歩いてくれているようだった。
尊大な態度のこの男に改めてその礼を言うのも気恥ずかしさがあり、サランは口にしなかったが、こういう男がユノの傍にいてくれるのはよかったと思えた。
そう思いながら歩みを進めていた時だった。
にゃー、と猫の鳴き声が聞こえた。
アンドレアとサランは、はっと視線を交えたあと駆け出した。
緩やかなカーブを通過すると、薔薇垣の脇に座り込む生徒の影が見えた。
「ユノ⁉」
「サラン! アンドレア!」
蹲っているように見えたユノが二人をパッと見た。
ユノは泣きそうな顔をしていたが、サランと目が合うとほっとしたようだった。
「この子。薔薇垣の中に入りこんじゃったみたいなの。なんとか助け出せたんだけど、薔薇の棘で小さな切り傷がいっぱいだし、目のすぐ横のところにも棘が刺さっちゃったみたいで、目が開かないみたいなんだ」
ユノの手には小さな猫がいた。
心配で潤んだ目をしながらサランにそっと子猫を差し出した。
「サランできる……?」
今にも泣きだしそうなユノにサランは安心させるように笑って言った。
「大丈夫。出来るよ」
「ユノにも難しいこんな小さい猫への治癒魔法が、サランにできるのか?」
アンドレアがサランの返答を聞いて驚いたように言った。
「サランはものすごく治癒魔法が得意なんだ。まだ職業試験は受けられていないから治癒師じゃないけれど、間違いなく俺が出会った治癒師で一番なんだよ」
その場に座り込んで膝の上に乗せながら、黒い子猫を診察するサランに代わってユノが答える。
「サランが治癒師……?」
アンドレアの呆然としたような声が聞こえたが、サランはすでに目の前の子猫に集中していた。
サランは頬を膨らませたが、塔の入り口でアンドレアは立ち止まりサランを待っていた。
隣に立つとアンドレアは学生でありながら騎士団の団長を務めるだけあり、体格がすごくよく、残念ながら身長があまり伸びなかったサランは彼を見上げるほどだった。
「図書館はさっき行ったけどいなかった。元々予定に入ってなかったらしいんだ。だから、今日最後の授業が終わって高学年棟からシュトレイン塔に真っ直ぐ向かったと思うんだよ。で、シュトレイン塔にまだ着いていないとなると、中庭のどこかにいるような気がするんだけど、先週も変なハイクラスの奴らに絡まれてたみたいだから心配で。あ、変とか言ってごめん」
「構わん。ハイクラスに変な奴が多いのは事実だ。そうか、やはり絡まれていることが多いのか……」
脚の長いアンドレアがずんずん歩いて行くのに合わせると、とても速く歩かなければならず小走りをしながらサランが言う。
ユノはいつもサランに心配をかけまいと、危険な目に遭った話は教えてくれないときがあるから、サランはこうやって気をもむことしかできない。今だってもし危機に巻き込まれていても自分で対処するだろうし、傷付いたって表に出さない人だ。
サランがそっと下唇を噛んだ。
中庭はかなり広く沢山の植物が育てられているため、見通しが悪いところも多い。
シュトレイン塔と高学年棟を繋ぐ中庭の小径を辿りながら、見通しが悪いところにユノがいないか確認することにした。
サランは先ほど図書館に向かう時に中庭を通ってはいるが、図書館と高学年棟を結ぶ道を通っているので、このシュトレイン塔と高学年棟をつなぐ小径は通っていないのだ。
シュトレイン塔に用事がある生徒は生徒会役員くらいのものなので、図書館に向かう道と比べて大分狭い小径だ。
「この小径は通る人も少ないし、道に沿って薔薇垣もあるから見通しも悪い。言いがかりをつけて絡まれていても目撃されにくいかもしれんな」
「確かに」
辺りを見渡しながら言ったアンドレアに相槌を打ったときサランは気が付いた。
先ほどまでは走らなければアンドレアに追いつけなかったが、今はサランの速足の歩調に合わせて歩いてくれているようだった。
尊大な態度のこの男に改めてその礼を言うのも気恥ずかしさがあり、サランは口にしなかったが、こういう男がユノの傍にいてくれるのはよかったと思えた。
そう思いながら歩みを進めていた時だった。
にゃー、と猫の鳴き声が聞こえた。
アンドレアとサランは、はっと視線を交えたあと駆け出した。
緩やかなカーブを通過すると、薔薇垣の脇に座り込む生徒の影が見えた。
「ユノ⁉」
「サラン! アンドレア!」
蹲っているように見えたユノが二人をパッと見た。
ユノは泣きそうな顔をしていたが、サランと目が合うとほっとしたようだった。
「この子。薔薇垣の中に入りこんじゃったみたいなの。なんとか助け出せたんだけど、薔薇の棘で小さな切り傷がいっぱいだし、目のすぐ横のところにも棘が刺さっちゃったみたいで、目が開かないみたいなんだ」
ユノの手には小さな猫がいた。
心配で潤んだ目をしながらサランにそっと子猫を差し出した。
「サランできる……?」
今にも泣きだしそうなユノにサランは安心させるように笑って言った。
「大丈夫。出来るよ」
「ユノにも難しいこんな小さい猫への治癒魔法が、サランにできるのか?」
アンドレアがサランの返答を聞いて驚いたように言った。
「サランはものすごく治癒魔法が得意なんだ。まだ職業試験は受けられていないから治癒師じゃないけれど、間違いなく俺が出会った治癒師で一番なんだよ」
その場に座り込んで膝の上に乗せながら、黒い子猫を診察するサランに代わってユノが答える。
「サランが治癒師……?」
アンドレアの呆然としたような声が聞こえたが、サランはすでに目の前の子猫に集中していた。
あなたにおすすめの小説
(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
騎士×妖精
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
悪役令息上等です。悪の華は可憐に咲き誇る
竜鳴躍
BL
異性間でも子どもが産まれにくくなった世界。
子どもは魔法の力を借りて同性間でも産めるようになったため、性別に関係なく結婚するようになった世界。
ファーマ王国のアレン=ファーメット公爵令息は、白銀に近い髪に真っ赤な瞳、真っ白な肌を持つ。
神秘的で美しい姿に王子に見初められた彼は公爵家の長男でありながら唯一の王子の婚約者に選ばれてしまった。どこに行くにも欠かせない大きな日傘。日に焼けると爛れてしまいかねない皮膚。
公爵家は両親とも黒髪黒目であるが、彼一人が色が違う。
それは彼が全てアルビノだったからなのに、成長した教養のない王子は、アレンを魔女扱いした上、聖女らしき男爵令嬢に現を抜かして婚約破棄の上スラム街に追放してしまう。
だが、王子は知らない。
アレンにも王位継承権があることを。
従者を一人連れてスラムに行ったアレンは、イケメンでスパダリな従者に溺愛されながらスラムを改革していって……!?
*誤字報告ありがとうございます!
*カエサル=プレート 修正しました。
悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放
大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。
嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。
だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。
嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。
混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。
琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う――
「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」
知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。
耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。
人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます
七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。
歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。
世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。
気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。
俺は夜、社長の猫になる
衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。
ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。
言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。
タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。
けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
宰相閣下の執愛は、平民の俺だけに向いている
飛鷹
BL
旧題:平民のはずの俺が、規格外の獣人に絡め取られて番になるまでの話
アホな貴族の両親から生まれた『俺』。色々あって、俺の身分は平民だけど、まぁそんな人生も悪くない。
無事に成長して、仕事に就くこともできたのに。
ここ最近、夢に魘されている。もう一ヶ月もの間、毎晩毎晩………。
朝起きたときには忘れてしまっている夢に疲弊している平民『レイ』と、彼を手に入れたくてウズウズしている獣人のお話。
連載の形にしていますが、攻め視点もUPするためなので、多分全2〜3話で完結予定です。
※6/20追記。
少しレイの過去と気持ちを追加したくて、『連載中』に戻しました。
今迄のお話で完結はしています。なので以降はレイの心情深堀の形となりますので、章を分けて表示します。
1話目はちょっと暗めですが………。
宜しかったらお付き合い下さいませ。
多分、10話前後で終わる予定。軽く読めるように、私としては1話ずつを短めにしております。
ストックが切れるまで、毎日更新予定です。