強面騎士団長と僕はケンカしてばかりだったのに、いつの間にか溺愛されていました

ゆなな

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2章

放課後の事件2

「偉そうに言うなよ」

 サランは頬を膨らませたが、塔の入り口でアンドレアは立ち止まりサランを待っていた。
 隣に立つとアンドレアは学生でありながら騎士団の団長を務めるだけあり、体格がすごくよく、残念ながら身長があまり伸びなかったサランは彼を見上げるほどだった。

「図書館はさっき行ったけどいなかった。元々予定に入ってなかったらしいんだ。だから、今日最後の授業が終わって高学年棟からシュトレイン塔に真っ直ぐ向かったと思うんだよ。で、シュトレイン塔にまだ着いていないとなると、中庭のどこかにいるような気がするんだけど、先週も変なハイクラスの奴らに絡まれてたみたいだから心配で。あ、変とか言ってごめん」

「構わん。ハイクラスに変な奴が多いのは事実だ。そうか、やはり絡まれていることが多いのか……」

 脚の長いアンドレアがずんずん歩いて行くのに合わせると、とても速く歩かなければならず小走りをしながらサランが言う。
 ユノはいつもサランに心配をかけまいと、危険な目に遭った話は教えてくれないときがあるから、サランはこうやって気をもむことしかできない。今だってもし危機に巻き込まれていても自分で対処するだろうし、傷付いたって表に出さない人だ。
 サランがそっと下唇を噛んだ。
 中庭はかなり広く沢山の植物が育てられているため、見通しが悪いところも多い。
 シュトレイン塔と高学年棟を繋ぐ中庭の小径を辿りながら、見通しが悪いところにユノがいないか確認することにした。
 サランは先ほど図書館に向かう時に中庭を通ってはいるが、図書館と高学年棟を結ぶ道を通っているので、このシュトレイン塔と高学年棟をつなぐ小径は通っていないのだ。
 シュトレイン塔に用事がある生徒は生徒会役員くらいのものなので、図書館に向かう道と比べて大分狭い小径だ。

「この小径は通る人も少ないし、道に沿って薔薇垣もあるから見通しも悪い。言いがかりをつけて絡まれていても目撃されにくいかもしれんな」

「確かに」

 辺りを見渡しながら言ったアンドレアに相槌を打ったときサランは気が付いた。
 先ほどまでは走らなければアンドレアに追いつけなかったが、今はサランの速足の歩調に合わせて歩いてくれているようだった。
 尊大な態度のこの男に改めてその礼を言うのも気恥ずかしさがあり、サランは口にしなかったが、こういう男がユノの傍にいてくれるのはよかったと思えた。
 そう思いながら歩みを進めていた時だった。
 にゃー、と猫の鳴き声が聞こえた。
 アンドレアとサランは、はっと視線を交えたあと駆け出した。
 緩やかなカーブを通過すると、薔薇垣の脇に座り込む生徒の影が見えた。

「ユノ⁉」

「サラン! アンドレア!」

 蹲っているように見えたユノが二人をパッと見た。
 ユノは泣きそうな顔をしていたが、サランと目が合うとほっとしたようだった。

「この子。薔薇垣の中に入りこんじゃったみたいなの。なんとか助け出せたんだけど、薔薇の棘で小さな切り傷がいっぱいだし、目のすぐ横のところにも棘が刺さっちゃったみたいで、目が開かないみたいなんだ」

 ユノの手には小さな猫がいた。
 心配で潤んだ目をしながらサランにそっと子猫を差し出した。

「サランできる……?」

 今にも泣きだしそうなユノにサランは安心させるように笑って言った。

「大丈夫。出来るよ」

「ユノにも難しいこんな小さい猫への治癒魔法が、サランにできるのか?」

 アンドレアがサランの返答を聞いて驚いたように言った。

「サランはものすごく治癒魔法が得意なんだ。まだ職業試験は受けられていないから治癒師じゃないけれど、間違いなく俺が出会った治癒師で一番なんだよ」

 その場に座り込んで膝の上に乗せながら、黒い子猫を診察するサランに代わってユノが答える。

「サランが治癒師……?」

 アンドレアの呆然としたような声が聞こえたが、サランはすでに目の前の子猫に集中していた。
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