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2章
変わっていく関係2
「面白がるな、イヴァン。ユノ、君のショコラテリーヌを僕にひと口くれないか?」
「いいですけど、キリヤが昼食を食べ終わったらイヴァンの侍従さんはキリヤにもデザート持ってきてくれるつもりなんじゃ……」
キリヤは冷ややかにイヴァンに釘を刺したあと、ユノの方を見て言った。
「君のを貰いたいんだ。美味しそうだから」
「どれも同じ味だと思いますけど、いいですよ。どうぞ」
ユノが綺麗な所作でナイフとフォークを操り切り分けると、皿ごとキリヤに差し出した。
「君が食べさせてくれ」
「え……?」
「はぁ……?」
「ぷくく……っ」
キリヤの言動に色んな感情の籠った声が重なり合った。
「こ……これでいい?」
若干の動揺が隠しきれないまま、ユノは自身のフォークの先に艶やかな濃茶の菓子をのせると、キリヤの口元におずおずと運んだ。
「ん。美味しい。ありがとう」
キリヤは嬉しそうにぱくりとそれを食べた。
サランと同じようにユノに片思いしているであろうアンドレアは、キリヤの隠そうともしない愛情をどう思っているのだろうかと気になりそっと横目で窺がうと、アンドレアは俯いているようで表情はよく分からなかった。
――そりゃそうだよな……僕にとってキリヤ会長はユノを奪おうとするただの恋敵だけれど、アンドレアにとっては敬愛して仕える主人でもある上に恋敵なんだもんな。主人の想い人であるのがわかっている以上奪えないし、僕よりも辛いのかもしれない。
彼らしくなく俯くアンドレアを見てサランは何だか可哀想で可愛く思えてきた。
「あのさ、元気ないなら僕のプディングまだ残っているから食べる? アンドレア甘いもの好きだろ?」
「えっ?」
サランが慰めるように言うと、アンドレアは相当驚いたのか、弾かれたように顔を上げた。
「あ……僕の食べかけなんて、嫌だよな。変なこと言ってごめん。忘れて」
「いや、俺甘いもの好きだから貰う」
サランの言葉に被せるようにアンドレアは返答した。
「そうだよね。甘いものは嫌なことを忘れさせてくれる存在だよな。ショコラテリーヌも最高だけれど、プディングからしか得られない栄養ってあるよ!」
うんうん、とサランは頷くと、プディングの残りが入っている可愛らしいグラスをアンドレアに差し出した。
「え……えーと……あの……その……」
「あ、ごめん。スプーン無いと食べられないよな。はいどうぞ」
「あ……ありが……と……う」
アンドレアは何か気がかりなことがあるような顔をしたものの、サランからスプーンを受け取った。
「おい、サラン。そのスプーン、ユノがプディング食べたスプーンじゃないだろうな?」
「僕とユノが使ったやつだけど? なんか問題でも? 僕もユノも風邪なんて引いてないよ?」
「アンドレア、そのスプーンは使うな。これを使え」
キリヤは短く言うと軽く指を振って魔法を使い、自身のコーヒーカップのソーサーに添えられていた銀のスプーンをアンドレアのもとに飛ばした。
「ぶはははは!! もうだめ、我慢できない……っ」
その様子を見ていたイヴァンがテーブルをバンバン叩いて笑いだした。
「イヴァン、面白がるなと言っただろう。余計なことも言うなよ」
「わかってるよ、キリヤ……でもこんな可愛い糸の絡まり方してたら笑わないなんて無理っ……」
キリヤが冷たく睨んだが、イヴァンの笑いは止まらなかった。
「なんだかよく分からないけれど、イヴァンが笑うと気持ちが明るくなるね。イヴァンは術師で人の気持ちに敏いから、何か明るくて面白いものを感じとったのかな」
イヴァンの笑顔を見て、ユノも顔を綻ばせた。
戴冠式から少しばかりユノは元気がなかったので、サランはユノが笑ってくれたことにほっとした。
昼休みの終わりを告げる鐘が鳴るまで五人は食堂で騒がしくひと時を過ごした。
「いいですけど、キリヤが昼食を食べ終わったらイヴァンの侍従さんはキリヤにもデザート持ってきてくれるつもりなんじゃ……」
キリヤは冷ややかにイヴァンに釘を刺したあと、ユノの方を見て言った。
「君のを貰いたいんだ。美味しそうだから」
「どれも同じ味だと思いますけど、いいですよ。どうぞ」
ユノが綺麗な所作でナイフとフォークを操り切り分けると、皿ごとキリヤに差し出した。
「君が食べさせてくれ」
「え……?」
「はぁ……?」
「ぷくく……っ」
キリヤの言動に色んな感情の籠った声が重なり合った。
「こ……これでいい?」
若干の動揺が隠しきれないまま、ユノは自身のフォークの先に艶やかな濃茶の菓子をのせると、キリヤの口元におずおずと運んだ。
「ん。美味しい。ありがとう」
キリヤは嬉しそうにぱくりとそれを食べた。
サランと同じようにユノに片思いしているであろうアンドレアは、キリヤの隠そうともしない愛情をどう思っているのだろうかと気になりそっと横目で窺がうと、アンドレアは俯いているようで表情はよく分からなかった。
――そりゃそうだよな……僕にとってキリヤ会長はユノを奪おうとするただの恋敵だけれど、アンドレアにとっては敬愛して仕える主人でもある上に恋敵なんだもんな。主人の想い人であるのがわかっている以上奪えないし、僕よりも辛いのかもしれない。
彼らしくなく俯くアンドレアを見てサランは何だか可哀想で可愛く思えてきた。
「あのさ、元気ないなら僕のプディングまだ残っているから食べる? アンドレア甘いもの好きだろ?」
「えっ?」
サランが慰めるように言うと、アンドレアは相当驚いたのか、弾かれたように顔を上げた。
「あ……僕の食べかけなんて、嫌だよな。変なこと言ってごめん。忘れて」
「いや、俺甘いもの好きだから貰う」
サランの言葉に被せるようにアンドレアは返答した。
「そうだよね。甘いものは嫌なことを忘れさせてくれる存在だよな。ショコラテリーヌも最高だけれど、プディングからしか得られない栄養ってあるよ!」
うんうん、とサランは頷くと、プディングの残りが入っている可愛らしいグラスをアンドレアに差し出した。
「え……えーと……あの……その……」
「あ、ごめん。スプーン無いと食べられないよな。はいどうぞ」
「あ……ありが……と……う」
アンドレアは何か気がかりなことがあるような顔をしたものの、サランからスプーンを受け取った。
「おい、サラン。そのスプーン、ユノがプディング食べたスプーンじゃないだろうな?」
「僕とユノが使ったやつだけど? なんか問題でも? 僕もユノも風邪なんて引いてないよ?」
「アンドレア、そのスプーンは使うな。これを使え」
キリヤは短く言うと軽く指を振って魔法を使い、自身のコーヒーカップのソーサーに添えられていた銀のスプーンをアンドレアのもとに飛ばした。
「ぶはははは!! もうだめ、我慢できない……っ」
その様子を見ていたイヴァンがテーブルをバンバン叩いて笑いだした。
「イヴァン、面白がるなと言っただろう。余計なことも言うなよ」
「わかってるよ、キリヤ……でもこんな可愛い糸の絡まり方してたら笑わないなんて無理っ……」
キリヤが冷たく睨んだが、イヴァンの笑いは止まらなかった。
「なんだかよく分からないけれど、イヴァンが笑うと気持ちが明るくなるね。イヴァンは術師で人の気持ちに敏いから、何か明るくて面白いものを感じとったのかな」
イヴァンの笑顔を見て、ユノも顔を綻ばせた。
戴冠式から少しばかりユノは元気がなかったので、サランはユノが笑ってくれたことにほっとした。
昼休みの終わりを告げる鐘が鳴るまで五人は食堂で騒がしくひと時を過ごした。
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