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大好きだよ、だからさよならと言ったんだ
24話
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征弥がICEを卒業するというニュースは、世間を駆け抜けた。全てのテレビ局が征弥の引退記者会見を報道し、連日泣き崩れるファンの姿も放送された。卒業コンサートのチケットは一瞬で完売するプラチナチケットになったことも世間を騒がせていた。
大騒ぎの周囲に対し、征弥は淡々と残された仕事をきっちりとこなし、次に進むステージの準備を進めていた。
征弥が抜けることが決まってから、征弥は怒濤のスケジュールを消化していたし、他のメンバーも皆、目が回るように忙しく、スケジュール帳とにらめっこをしながら征弥がICEとして最後の仕事となるリハーサルの予定を組んでいた。
卒業コンサートのリハーサルもメンバーは皆忙しく中々五人揃うことが難しかった。
五人揃うことがあっても、ほんの短い時間にやらなければならないことが多すぎて、話すことさえも儘ならなかった。
そんな日々を過ごしているうちにあっという間に季節は巡って……
卒業コンサートの日がやってきた。
会場の周辺はチケットを取れなかったファンが押し寄せていた。チケットの転売をしにくくなった昨今だが、それでも監視の目を掻い潜りチケットの売買をしている者もいた。転売された額は二十万とも三十万とも噂されていた。事務所が用意した警備員も通常のコンサートの三倍は用意されていた。警察の警備も入り、会場周辺は物々しい雰囲気に包まれていた。
だが、コンサート会場内は征弥の卒業を惜しみつつも、彼の夢を心底応援するファンで満ち溢れ、温かい雰囲気でコンサートは始まった。かねてから、自分の夢を堂々とメディアで語っていた征弥がいつか旅立つことを、本当のファン達はわかっていたのだろう。
五人揃って歌って踊る元気なナンバーに続いて、アルバム曲の中から、征弥が選んだ曲を歌う。
プライベートでも仲が良く、声の相性もとてもいい尚との曲の後に。
征弥が選んだのは結人と二人で歌う曲だった。それは、別れてから三年ほど経った頃のアルバムに収録されているバラード曲。作詞は征弥が手掛けたこの曲を初めて見たときは胸が貫かれるような思いだった。
広い会場には何万人ものファンがいるのに、このしっとりとしたナンバーのために、ファンたちはしん、と鎮まり返って曲が始まるのを待っていた。
征弥と二人。ステージの真ん中に背中合わせに立った。スポットライトが二人に当たる。ピアノとギターの切ない音色が響いて曲が始まる。その度に、合わされた背中が熱くて狂おしくて泣きそうになる。だけど、それも今日で最後。尚のようにハーモニーパートは上手に歌えないから、ただのデュエットのような曲なのに、ファンから支持されて仕方のないこの曲。
最初のフレーズは結人がソロで歌う。
さよなら、好きだよ
今でも愛しくて苦しい
それから征弥がソロで歌う。
さよならに涙も流さない君を
冷たい人だと責めていた
でも、ようやくわかったんだ
あのとき、君は涙を流さずに
泣いていた
そんなこともわからないから
僕は君と一緒にいられなかった
そして、二人で共に歌う。
好きだよ
今でも愛しくて苦しい
好きだよ、大好きだよ
だから、さよなら
自分に向けて書いた曲のように見えて仕方なかったけれど、結人にはどうすることもできなかった。征弥の態度はそれまでと変わることもなかったし、週刊誌に共演の女優やアイドルと次々スキャンダルが流れていたことを考えると自分への曲だなんて、思い上がりもいいように見えて、そう思うことが恥ずかしいようにも思えた。
そのくらい、この曲を書いた後でも征弥の態度はかわらなかった。
この曲は物凄く人気が出て、シングルカットもされた。歌番組に出たりコンサートでも歌ったりするために、振り付けも考えることになった。振り付けは結人が担当した。征弥の顔を見て歌えるはずがなくて、背中合せで歌う振り付けを考えた。間奏の振りも目を合わせずに踊れるものを考えた。
曲の間、何度も背中が当たってしまう。その度に火傷しそうな目眩を感じていた。それを感じるのも今日が最後。
この曲を歌う度に征弥からのメッセージに思えて泣きたくなるのも、今日で最後。
好きだよ
今でも愛しくて苦しい
好きだよ
大好きだよ
だから、さよなら
もう一度最後の繰り返すパートを二人で歌うと、声が震えそうになったのを衣装の胸の辺りをぎゅっと握って耐えた。
さよなら。
本当にさよならだ。
もう二度と二人一緒に歌うこともないのだろう。
スポットライトが消えて、大きな歓声と拍手に包まれた一瞬。
征弥の香りが強く香って何か柔らかいものが頬に触れた気がしたけれど、暗闇に目が慣れず、何かわからぬままに離れた。すぐに次の曲のスタンバイの位置に結人は移動しなければならなかった。
大騒ぎの周囲に対し、征弥は淡々と残された仕事をきっちりとこなし、次に進むステージの準備を進めていた。
征弥が抜けることが決まってから、征弥は怒濤のスケジュールを消化していたし、他のメンバーも皆、目が回るように忙しく、スケジュール帳とにらめっこをしながら征弥がICEとして最後の仕事となるリハーサルの予定を組んでいた。
卒業コンサートのリハーサルもメンバーは皆忙しく中々五人揃うことが難しかった。
五人揃うことがあっても、ほんの短い時間にやらなければならないことが多すぎて、話すことさえも儘ならなかった。
そんな日々を過ごしているうちにあっという間に季節は巡って……
卒業コンサートの日がやってきた。
会場の周辺はチケットを取れなかったファンが押し寄せていた。チケットの転売をしにくくなった昨今だが、それでも監視の目を掻い潜りチケットの売買をしている者もいた。転売された額は二十万とも三十万とも噂されていた。事務所が用意した警備員も通常のコンサートの三倍は用意されていた。警察の警備も入り、会場周辺は物々しい雰囲気に包まれていた。
だが、コンサート会場内は征弥の卒業を惜しみつつも、彼の夢を心底応援するファンで満ち溢れ、温かい雰囲気でコンサートは始まった。かねてから、自分の夢を堂々とメディアで語っていた征弥がいつか旅立つことを、本当のファン達はわかっていたのだろう。
五人揃って歌って踊る元気なナンバーに続いて、アルバム曲の中から、征弥が選んだ曲を歌う。
プライベートでも仲が良く、声の相性もとてもいい尚との曲の後に。
征弥が選んだのは結人と二人で歌う曲だった。それは、別れてから三年ほど経った頃のアルバムに収録されているバラード曲。作詞は征弥が手掛けたこの曲を初めて見たときは胸が貫かれるような思いだった。
広い会場には何万人ものファンがいるのに、このしっとりとしたナンバーのために、ファンたちはしん、と鎮まり返って曲が始まるのを待っていた。
征弥と二人。ステージの真ん中に背中合わせに立った。スポットライトが二人に当たる。ピアノとギターの切ない音色が響いて曲が始まる。その度に、合わされた背中が熱くて狂おしくて泣きそうになる。だけど、それも今日で最後。尚のようにハーモニーパートは上手に歌えないから、ただのデュエットのような曲なのに、ファンから支持されて仕方のないこの曲。
最初のフレーズは結人がソロで歌う。
さよなら、好きだよ
今でも愛しくて苦しい
それから征弥がソロで歌う。
さよならに涙も流さない君を
冷たい人だと責めていた
でも、ようやくわかったんだ
あのとき、君は涙を流さずに
泣いていた
そんなこともわからないから
僕は君と一緒にいられなかった
そして、二人で共に歌う。
好きだよ
今でも愛しくて苦しい
好きだよ、大好きだよ
だから、さよなら
自分に向けて書いた曲のように見えて仕方なかったけれど、結人にはどうすることもできなかった。征弥の態度はそれまでと変わることもなかったし、週刊誌に共演の女優やアイドルと次々スキャンダルが流れていたことを考えると自分への曲だなんて、思い上がりもいいように見えて、そう思うことが恥ずかしいようにも思えた。
そのくらい、この曲を書いた後でも征弥の態度はかわらなかった。
この曲は物凄く人気が出て、シングルカットもされた。歌番組に出たりコンサートでも歌ったりするために、振り付けも考えることになった。振り付けは結人が担当した。征弥の顔を見て歌えるはずがなくて、背中合せで歌う振り付けを考えた。間奏の振りも目を合わせずに踊れるものを考えた。
曲の間、何度も背中が当たってしまう。その度に火傷しそうな目眩を感じていた。それを感じるのも今日が最後。
この曲を歌う度に征弥からのメッセージに思えて泣きたくなるのも、今日で最後。
好きだよ
今でも愛しくて苦しい
好きだよ
大好きだよ
だから、さよなら
もう一度最後の繰り返すパートを二人で歌うと、声が震えそうになったのを衣装の胸の辺りをぎゅっと握って耐えた。
さよなら。
本当にさよならだ。
もう二度と二人一緒に歌うこともないのだろう。
スポットライトが消えて、大きな歓声と拍手に包まれた一瞬。
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