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「はぁぁクソあちー。なんだってこんなクソ暑い日に火おこしなんてしなきゃなんねぇんだよ。何時代だよ……」
照りつける太陽の下浜辺で肉を焼き、焼きそばを作り、ホイル焼きまで提供しながら葉月はそう呟いた。
「わりーな。葉月、火ぃおこすのも料理も得意だからさぁ。葉月がいてくれるといいBBQになって盛り上がるわ」
そう言った大学の友人は葉月の用意した料理を手に、女の子たちのいるパラソルの下に舞い戻って行った。
葉月以外みんな楽しそうだった。本気で感謝する人なんていないのに、貴重な休みを潰してなにをやってるのだろうかと思いながら首にかけたタオルでつぅ、と垂れた汗を拭ったときだった。
「あの」
顔を上げると、先ほどまで楽しそうに女の子達に囲まれていたイケメンがいた。
確か同じ学部の水月陽太だ。
葉月でさえも知っている大学の有名人。
いつもたくさんの人に囲まれている彼は、葉月とは何もかもが違いすぎて話したこともない人だった。
「水月くん、肉ならそっち焼けてるから持ってっていいよ」
大学一のイケメンとも言われる彼は、普段なら話しかけるのも躊躇うほどの綺麗な顔とスタイルを持っている。だが、暑い中朦朧としながらも機械的に仕事をしていた葉月はぶっきらぼうに言った。
「えーと、そうじゃなくて」
「割り箸? 割り箸とか紙コップなら後ろのテーブルに置いてあるから」
「や。それでもなくて」
「じゃあ何?」
さっさとバーベキューの料理を提供し終え、片付けを始めたかった葉月は手短に聞いた。
この太陽の下でもさらりと揺れるキラキラの髪がまぶしい。それが苛立ちに拍車をかける。だが彼が口にした言葉は意外だった。
「葉月くん一人で大変そうだから、何か手伝えることはないかな」
「へ?」
「あっごめん。自分で様子見て手伝えること探すべきだな。えーとこのタレに漬けてあるお肉焼けばいい?」
いかにも遊んでいそうな派手な陽太がそんな殊勝なことを言うとは思わず間抜けな声を出したのだが、葉月が怒っていると勘違いしたのか陽太は申し訳なさそうに手伝えることを探し出した。
「ご……ごめん!びっくりしただけで怒ってないよ。じゃあ水月くんはこのバットに漬けてあるお肉を焼いてもらってもいいかな?」
「うん。わかった。でも料理普段しないから、間違ったことしてたら遠慮なく指示して。あとよかったら俺のことは『陽太』って下の名前で呼んでよ」
陽太は照り付ける太陽の下で目もくらむほど美しく微笑んで、葉月に言った。
自分の名前を呼び捨てで読んでほしいと自ら提案してくるなんて、やっぱり彼は陽キャだなぁとは思ったけれど、陽太は葉月の隣で話しながら肉を焼くのを一生懸命手伝ってくれた。ポツポツと和やかに話しながら作業していると、さっきよりもずっとずっと楽しかった。
だが。
「陽太くん! 私お手伝いしますぅ」
ほどなくして参加者の中でも特に可愛い女の子が目ざとく彼を見つけてやってきた。
「私も料理は得意なんです!」
さらに数人の女の子たちも来た。
こうなると葉月はもう用済みだろう。
さっさと帰れるように早めの片づけをしておこうと思い、葉月は静かに動き始めた。
陽太との時間が終わることは残念だけれど、元より葉月には縁のない人だ。
「わぁ。ありがとう。それなら後は任せても大丈夫そうだね。俺たちは休憩させてもらうわ。あっちで休も?」
そう言うと陽太は大きめの紙皿に料理を手早くのせ葉月の腕を引いた。
「えっじゃあ私も陽太くんと一緒に休憩……っ」
「はぁ? 手伝うんじゃなかったの? もう散々呑んで食ってたじゃねぇか。少しは動けよ」
陽太の声はこの暑い浜辺を一気に凍りつかせるのではないかと思えるほどに冷たく、女の子たちは一斉に固まった。
「じゃあ行こ。あっちの方静かだったから二人でゆっくり出来そう」
陽太はそう言うと、葉月を見てうっとりするほど眩しく笑った。
「でもっまだ途中だし……片付けも」
「だぁれも手伝わなかったんだから気遣う必要なんてないよ。俺もなかなか気付かなくて手伝いに来るの遅くてごめんね」
そう言って陽太は後ろを振り返った。
女の子に釣られるようにして男達も周りに集まっていたのだ。
「片付けまでやっとけよ。葉月の持ってきたものも洗ってまとめとけ」
冷ややかな声で彼は言ったが、次の瞬間にはまた蕩けそうに優しい目で葉月を見た。
「行こ?」
照りつける太陽の下浜辺で肉を焼き、焼きそばを作り、ホイル焼きまで提供しながら葉月はそう呟いた。
「わりーな。葉月、火ぃおこすのも料理も得意だからさぁ。葉月がいてくれるといいBBQになって盛り上がるわ」
そう言った大学の友人は葉月の用意した料理を手に、女の子たちのいるパラソルの下に舞い戻って行った。
葉月以外みんな楽しそうだった。本気で感謝する人なんていないのに、貴重な休みを潰してなにをやってるのだろうかと思いながら首にかけたタオルでつぅ、と垂れた汗を拭ったときだった。
「あの」
顔を上げると、先ほどまで楽しそうに女の子達に囲まれていたイケメンがいた。
確か同じ学部の水月陽太だ。
葉月でさえも知っている大学の有名人。
いつもたくさんの人に囲まれている彼は、葉月とは何もかもが違いすぎて話したこともない人だった。
「水月くん、肉ならそっち焼けてるから持ってっていいよ」
大学一のイケメンとも言われる彼は、普段なら話しかけるのも躊躇うほどの綺麗な顔とスタイルを持っている。だが、暑い中朦朧としながらも機械的に仕事をしていた葉月はぶっきらぼうに言った。
「えーと、そうじゃなくて」
「割り箸? 割り箸とか紙コップなら後ろのテーブルに置いてあるから」
「や。それでもなくて」
「じゃあ何?」
さっさとバーベキューの料理を提供し終え、片付けを始めたかった葉月は手短に聞いた。
この太陽の下でもさらりと揺れるキラキラの髪がまぶしい。それが苛立ちに拍車をかける。だが彼が口にした言葉は意外だった。
「葉月くん一人で大変そうだから、何か手伝えることはないかな」
「へ?」
「あっごめん。自分で様子見て手伝えること探すべきだな。えーとこのタレに漬けてあるお肉焼けばいい?」
いかにも遊んでいそうな派手な陽太がそんな殊勝なことを言うとは思わず間抜けな声を出したのだが、葉月が怒っていると勘違いしたのか陽太は申し訳なさそうに手伝えることを探し出した。
「ご……ごめん!びっくりしただけで怒ってないよ。じゃあ水月くんはこのバットに漬けてあるお肉を焼いてもらってもいいかな?」
「うん。わかった。でも料理普段しないから、間違ったことしてたら遠慮なく指示して。あとよかったら俺のことは『陽太』って下の名前で呼んでよ」
陽太は照り付ける太陽の下で目もくらむほど美しく微笑んで、葉月に言った。
自分の名前を呼び捨てで読んでほしいと自ら提案してくるなんて、やっぱり彼は陽キャだなぁとは思ったけれど、陽太は葉月の隣で話しながら肉を焼くのを一生懸命手伝ってくれた。ポツポツと和やかに話しながら作業していると、さっきよりもずっとずっと楽しかった。
だが。
「陽太くん! 私お手伝いしますぅ」
ほどなくして参加者の中でも特に可愛い女の子が目ざとく彼を見つけてやってきた。
「私も料理は得意なんです!」
さらに数人の女の子たちも来た。
こうなると葉月はもう用済みだろう。
さっさと帰れるように早めの片づけをしておこうと思い、葉月は静かに動き始めた。
陽太との時間が終わることは残念だけれど、元より葉月には縁のない人だ。
「わぁ。ありがとう。それなら後は任せても大丈夫そうだね。俺たちは休憩させてもらうわ。あっちで休も?」
そう言うと陽太は大きめの紙皿に料理を手早くのせ葉月の腕を引いた。
「えっじゃあ私も陽太くんと一緒に休憩……っ」
「はぁ? 手伝うんじゃなかったの? もう散々呑んで食ってたじゃねぇか。少しは動けよ」
陽太の声はこの暑い浜辺を一気に凍りつかせるのではないかと思えるほどに冷たく、女の子たちは一斉に固まった。
「じゃあ行こ。あっちの方静かだったから二人でゆっくり出来そう」
陽太はそう言うと、葉月を見てうっとりするほど眩しく笑った。
「でもっまだ途中だし……片付けも」
「だぁれも手伝わなかったんだから気遣う必要なんてないよ。俺もなかなか気付かなくて手伝いに来るの遅くてごめんね」
そう言って陽太は後ろを振り返った。
女の子に釣られるようにして男達も周りに集まっていたのだ。
「片付けまでやっとけよ。葉月の持ってきたものも洗ってまとめとけ」
冷ややかな声で彼は言ったが、次の瞬間にはまた蕩けそうに優しい目で葉月を見た。
「行こ?」
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