美形に溺愛されて波乱万丈な人生を送ることになる平凡の話

ゆなな

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俺に塩対応な友達が彼氏になったらめちゃめちゃ甘かったなんて聞いてない

バレンタイン編〜彼氏になった後〜


 彼氏になった後

「いってきまー……あれ?」
 バレンタインの朝。
 玄関の扉を開けると柚希がいた。
「はよ」
「おー、おはよ。ゆず、どうした?」
 付き合うようになってから、朝は待ち合わせして一緒に行こう、と言い出した柚希にびっくりしたが、今朝はなんと家まで迎えに来ていた。
「……別に何でもない……行こ?」
 そう言って俺の手をきゅっと掴んだ。
 柚希はスキンシップが大好きで、どこでもかしこでもバカップルのように手を繋いだり腰を抱いたりしてくるようになった。
 いや、バカップルのようにっていうか、これはもうバカップルそのものだと思う。
 これまでの塩対応から俺は想像がつかなかったせいで、付き合って少しは時間が経った今でもこれまでとのギャップに俺はまだついて行けてない。
 今朝の柚希はなにか考え込んでいるようで、無言でただ手を繋いで俺の家からバス停までの道程。
 バス停に辿り着く前に突然ぴたり、と柚希が立ち止まった。
「あ……あのさ」
「うん? やっぱりなんかあった?」
 何だか只事ではなさそうな様子の柚希は、俺が手に持つ紙袋を指差して言った。
「それ……バレンタインのお菓子だよな? 今年もトモが手作りしたの?」
 思い詰めたように言った柚希。
「そうだけど……あ、もしかしてゆず手作りのお菓子苦手とか? 去年も嫌そうだったもんな」
 思い詰めたような顔の柚希に言うと。
「ちがう! ちがう! 嫌だったんじゃなくて……その……」
「うん?」
 顔を真赤にして必死に伝えようとする柚希。
「ともの作ったお菓子を何にも気にせずパクパク食べられる皆が羨ましくて気に食わなかった……俺、めちゃめちゃ食べたかったのに。だから今年は皆にトモの手作りあげないでほしい……っ」
「へ……?」
 俺の予想しなかったことを言った柚希に激しく動揺した。
 どういうこと?
「だからっ……トモの手作りを他の人に食べさせたくないっつってんの! 俺以外の人がトモが手作りしたの食べるの、やだっ」
 柚希は立ち止まって大声で言った。
「ゆ……ゆず? お……落ち着いて?」
「落ち着いてらんないよ! トモの手作りなんて誰にも食べさせたくなかったのに!」
「去年お前いらないって言うから……」
「いらなくなんてない! 本当はめっちゃ俺が食べたかったから、皆が食べてたトモの手作りお菓子全部取り上げたかったのにっ」
「今年は柚希だけだよ」
こんなにカッコいいくせに、子供がぐずるみたいになっている姿にキュンとするなんて、俺も大概だ。
そう思いながら、柚希に言うと彼はぴたりと静かになった。
「……ほんと?」
「うん。ほんと」
「お姉さんの彼氏にも作ってない?」
「それもだめ?」
「うん。やだ。お姉さんの彼氏が知ったらトモのこと好きになっちゃうだろ」
「んなわけないじゃん」
「そんなわけあるの。お姉さんの彼氏とお姉さんとトモと俺でドロドロの四角関係になるよ」
 柚希はこんなにカッコいいのに、本当に言うことがおかしいときがある。
「俺が姉ちゃんの彼氏に作ってたことがバレたとしてもそんなことにはならないと思うけど……今年は姉ちゃんの彼氏にも作ってないよ。姉ちゃんが頑張ってたから今年は応援しただけ」
 俺が言うと、柚希はそのカッコいいクールな顔をくしゃくしゃにして笑った。
う……不覚にもまたキュンときた。
「じゃあ、その紙袋の中身は全部俺の?」
「そ。ぜーんぶゆずのだよ……っうわ」
 朝の忙しない道端で、突然ぎゅっと抱きしめられて、馬鹿みたいにほっぺにキスを落とされた。
「わ、バカバカ。人が見てるって」
「だって嬉しいんだもん。トモのガトーショコラ。去年食べたいって言えなくてどんなに後悔したか」
 うっとり夢見るような柚希の声。
「あ。ガトーショコラじゃないんだ、今年」
「へ? ガトーショコラじゃないの?」
「うん。今年はフォンダンショコラにしたよ。帰りゆずの家に寄って電子レンジ借りてもいい? レンジでちょっとだけ温めると、とろっとチョコレートが流れてくるんだ。ゆずの部屋で一緒に食べれたらいいなぁと思って……ゆず?」
 柚希が固まったのを見て、俺は少し焦った。
 ガトーショコラの方がよかったのだろうか?
「フォンダンショコラ、温めなければガトーショコラと似てる感じだけど、そうする? それとも家だめだった? 公園で食べるのでもいいけど」
「いや、俺ん家で大丈夫!!とろーっとしてるの食べたい!!」
俺が言い終わる前に柚希が叫ぶように言うと、スマホを取り出して猛烈にタップし始めた。
「柚希? どうした? なんか急用?」
「父さんと母さんに今夜は家に帰ってこないでって連絡してる」
「え? 急に?! なんで?!」
「とろっと蕩けたトモを食べるから?」
「違うって! 食べるの俺じゃないだろ?! お菓子だろ?!」
「違うの?」
「……いや……違くない……かも……しれない?」
美しい瞳に問われて、思わず俺もそう言って首を傾げてしまった。
あれ? なんかおかしい?
「嬉しい……今年はトモのお菓子もトモのことも独り占めできるなんて、俺すげぇ幸せ」
柚希はそれこそとろっと蕩けた表情で言うと。
「大好きでだよ、トモ。今日はめっちゃ甘いバレンタインにしような」
とろとろに甘く蕩けた声を俺の耳の奥に流し込んだ。


ハッピーバレンタイン♡



    
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