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ナイトプールが出会いの場だと知らずに友達に連れてこられた地味な大学生がド派手な美しい男にナンパされて口説かれる話
5話
逃げるようにホテルの部屋を後にして、小さなアパートに舞い戻り頭まで布団を被ってきつく目を閉じた。目を閉じれば浮かんでくる強烈な記憶。できればこのままずっと家に閉じ籠っていたいと思ったけれど、夏休みにも関わらずゼミの教授に呼び出されているし、 バイトにも行かなくちゃならない。
じりじりと暑い中、大学に向かう。途中の駅で見かけたケイのポスターに胸がキリキリと絞られる。見ないように、と視線を下に向けたけれど、すごい吸引で視線を引き上げられ、見てしまったのだ。 女の子達がきゃあきゃあ言いながらポスターを写真におさめていた。そんな彼とこんな地味な海斗が昨夜一夜限りといえ関係を持っただなんて誰も信じないだろうな。
だから彼が否定すればあの一夜は本当になかったことになってしまう。
ナイトプールに再び行くことも、連絡先も知らないので彼が否定するかどうかも確認しようもないけれど。
ぐちゃぐちゃに疲れた心と躯を引きずって大学へ行き、教授との用事を済ませる。
「さっさと帰ろ……」
用事を済ませると帰路に就くために、大学構内を早足で正門に向かった。
昨日までと何ら変わらない日常。その日常が楽しいものなのか、つまらないものなのかこれまで考えたことなんかなかった。
『そういうもの』だと思って平凡な毎日をただ一生懸命勉強するだけで生きてきたから。
それなのに、 強烈に眩しく、刺激的なものを、知ってしまった。
知ってしまったら、それまでの海斗の日常は途端に酷く色褪せて見えた。
溜め息混じりに顔を上げたときだった。
正門の真ん前に一台の車が停まっているのが見えた。
スクエアなフォルムのオフロード車が有名な大学の正門前に停まっていると恐ろしいくらいに目立った。
数千万円はする高級車として有名なその車と大学という場が釣り合わず、 夏期休暇中で普段よりも閑散としている大学だったが、 それにも関わらず道行く人々の耳目を集めていた。海斗も好奇心から思わず車に視線を遣った。
「え…… ?」
運転席のドアが開き、中から一人の男が現れ、海斗は動揺して思わず声を漏らした。
すらりとした長身。夏の日差しの下、眩しいほどのブロンドヘア。 小さな顔を覆うサングラスのせいで顔が隠れているけれど、間違えようもないその男。
信じられなくて、海斗はその場で石になったかのように固まった。
じりじりと照りつける太陽が肌を焦がしてしまうのではないかと思うほど暑かったが、どうしても動けなかった。
「うみ!」
名前を呼ばれて、海斗は弾かれたように顔を上げた。
飼い主を見つけた犬のように駆け寄ってくるケータ。
夜のプールも似合っていたけれど、身を焦がすような真夏の太陽の下でも彼は溜め息が出るほど美しかった。
ぽかん、とその美しさに見とれた後、海斗ははっと息をのむ。
「な……なんで……」
「こっちこそなんでって聞きたいよ! あんな甘くてえっちな夜を過ごした恋人置いてホテルから消えちゃうなんてひどいよ!」
昨日の出会いを彷彿とさせる長く綺麗な指でサングラスを外す仕種。
現れたブルーグレーは一夜で海斗を虜にしたそのもの。眩しい光の下では稀有な宝石のように煌めいていた。
「あっ……え…… 恋人?」
「まさか、忘れてないよね……?」
ケータの言葉に驚いて言葉を漏らすと見上げるほどに大きい彼が悲しそうに瞳を揺らした。
「わ……忘れてないけど……っ」
今日も続くような約束だとは思わなかった、という言葉は煌めくブルーグレーの前では言えず海斗はごくり、とのみ込んだ。
「よかった。電話番号まだ交換してなかったのに帰っちゃうんだもん。もうえっちした翌朝に俺のこと置いていなくなったりしたらだめだよ?」
よかった、と言って笑うくせに、その美しい瞳の奥に昨夜垣間見せた獰猛な雄の色を混ぜて見せた。
その瞳に海斗の躯につ……と汗が伝った。
「ここ暑いから俺の車で交換しよ」
そう言って大きな掌にぐいっと腕を引かれて彼の車に乗せられた。
彼の大きな掌に掴まれると、何だか自分の腕がとても細い気がしてしまう。
「ラインはもう交換済みだけど、電話番号も教えておきたいから、今からうみのケータイに掛けるよ。登録してね」
運転席に座ったケータがにこにこ笑って言う。
「え……?」
海斗が慌ててポケットからスマートフォンを取り出してアプリを開くとそこには見覚えのない『K』という見覚えのないアカウントが登録されていた。
「い……いつの間に……?」
驚いて呆然と呟くと
「あー、昨日うみ、俺より先に寝ちゃったじゃん? そのときちょーっとだけ、うみの人差し指、借りちゃった♡」
勝手に借りてごめんね、とケータは自らの人差し指を掲げて、スマートフォンの指紋センサーに当てる素振りをして、ぱちりと綺麗にウィンクしてみせた。
そこは指を借りたことより、人のスマートフォンを勝手に弄ったことを謝るべきじゃないかという疑問が浮かばなくなるほど悪びれないケータ。
「それにしてもさー、うみって本名じゃないじゃん。ちょっとショックだったなー。俺は本名教えたのに。本名海斗って言うんだね」
まぁ可愛いからこれからもうみって呼ぶけどさ、とむしろ海斗の方がひどいことをしたと言うようにケータは唇を尖らせた。
それから、ほら見てケータは本名でしょ、と海斗の目の前に彼の運転免許証を差し出す。
「鳴島慶太、先祖代々日本人。職業はモデル。港区在住。好きな食べ物は焼き肉とビール。他は何知りたい? 知りたいことあったら何でも聞いて。彼氏なんだからさ」
「は?その顔でホントに名前ケータなの? ミドルネームないの? え?!つーか年下?!」
目を白黒させる海斗を愛おしそうな甘ったるい瞳でじぃっと見たかと思うと
「ふふ。酔ってなくても可愛いね、うみ」
ふわりと昨夜中毒になるほどかがされた彼の甘い香りが強くなって。
ちゅ
蕩けそうに美しい彼の唇が重なった。
そして、唇の先を触れ合わせたまま
「海斗、絶対逃がさねぇよ、覚悟して」
と酷く危険で、 獰猛で、でもとびきり甘い声で囁いた。
じりじりと暑い中、大学に向かう。途中の駅で見かけたケイのポスターに胸がキリキリと絞られる。見ないように、と視線を下に向けたけれど、すごい吸引で視線を引き上げられ、見てしまったのだ。 女の子達がきゃあきゃあ言いながらポスターを写真におさめていた。そんな彼とこんな地味な海斗が昨夜一夜限りといえ関係を持っただなんて誰も信じないだろうな。
だから彼が否定すればあの一夜は本当になかったことになってしまう。
ナイトプールに再び行くことも、連絡先も知らないので彼が否定するかどうかも確認しようもないけれど。
ぐちゃぐちゃに疲れた心と躯を引きずって大学へ行き、教授との用事を済ませる。
「さっさと帰ろ……」
用事を済ませると帰路に就くために、大学構内を早足で正門に向かった。
昨日までと何ら変わらない日常。その日常が楽しいものなのか、つまらないものなのかこれまで考えたことなんかなかった。
『そういうもの』だと思って平凡な毎日をただ一生懸命勉強するだけで生きてきたから。
それなのに、 強烈に眩しく、刺激的なものを、知ってしまった。
知ってしまったら、それまでの海斗の日常は途端に酷く色褪せて見えた。
溜め息混じりに顔を上げたときだった。
正門の真ん前に一台の車が停まっているのが見えた。
スクエアなフォルムのオフロード車が有名な大学の正門前に停まっていると恐ろしいくらいに目立った。
数千万円はする高級車として有名なその車と大学という場が釣り合わず、 夏期休暇中で普段よりも閑散としている大学だったが、 それにも関わらず道行く人々の耳目を集めていた。海斗も好奇心から思わず車に視線を遣った。
「え…… ?」
運転席のドアが開き、中から一人の男が現れ、海斗は動揺して思わず声を漏らした。
すらりとした長身。夏の日差しの下、眩しいほどのブロンドヘア。 小さな顔を覆うサングラスのせいで顔が隠れているけれど、間違えようもないその男。
信じられなくて、海斗はその場で石になったかのように固まった。
じりじりと照りつける太陽が肌を焦がしてしまうのではないかと思うほど暑かったが、どうしても動けなかった。
「うみ!」
名前を呼ばれて、海斗は弾かれたように顔を上げた。
飼い主を見つけた犬のように駆け寄ってくるケータ。
夜のプールも似合っていたけれど、身を焦がすような真夏の太陽の下でも彼は溜め息が出るほど美しかった。
ぽかん、とその美しさに見とれた後、海斗ははっと息をのむ。
「な……なんで……」
「こっちこそなんでって聞きたいよ! あんな甘くてえっちな夜を過ごした恋人置いてホテルから消えちゃうなんてひどいよ!」
昨日の出会いを彷彿とさせる長く綺麗な指でサングラスを外す仕種。
現れたブルーグレーは一夜で海斗を虜にしたそのもの。眩しい光の下では稀有な宝石のように煌めいていた。
「あっ……え…… 恋人?」
「まさか、忘れてないよね……?」
ケータの言葉に驚いて言葉を漏らすと見上げるほどに大きい彼が悲しそうに瞳を揺らした。
「わ……忘れてないけど……っ」
今日も続くような約束だとは思わなかった、という言葉は煌めくブルーグレーの前では言えず海斗はごくり、とのみ込んだ。
「よかった。電話番号まだ交換してなかったのに帰っちゃうんだもん。もうえっちした翌朝に俺のこと置いていなくなったりしたらだめだよ?」
よかった、と言って笑うくせに、その美しい瞳の奥に昨夜垣間見せた獰猛な雄の色を混ぜて見せた。
その瞳に海斗の躯につ……と汗が伝った。
「ここ暑いから俺の車で交換しよ」
そう言って大きな掌にぐいっと腕を引かれて彼の車に乗せられた。
彼の大きな掌に掴まれると、何だか自分の腕がとても細い気がしてしまう。
「ラインはもう交換済みだけど、電話番号も教えておきたいから、今からうみのケータイに掛けるよ。登録してね」
運転席に座ったケータがにこにこ笑って言う。
「え……?」
海斗が慌ててポケットからスマートフォンを取り出してアプリを開くとそこには見覚えのない『K』という見覚えのないアカウントが登録されていた。
「い……いつの間に……?」
驚いて呆然と呟くと
「あー、昨日うみ、俺より先に寝ちゃったじゃん? そのときちょーっとだけ、うみの人差し指、借りちゃった♡」
勝手に借りてごめんね、とケータは自らの人差し指を掲げて、スマートフォンの指紋センサーに当てる素振りをして、ぱちりと綺麗にウィンクしてみせた。
そこは指を借りたことより、人のスマートフォンを勝手に弄ったことを謝るべきじゃないかという疑問が浮かばなくなるほど悪びれないケータ。
「それにしてもさー、うみって本名じゃないじゃん。ちょっとショックだったなー。俺は本名教えたのに。本名海斗って言うんだね」
まぁ可愛いからこれからもうみって呼ぶけどさ、とむしろ海斗の方がひどいことをしたと言うようにケータは唇を尖らせた。
それから、ほら見てケータは本名でしょ、と海斗の目の前に彼の運転免許証を差し出す。
「鳴島慶太、先祖代々日本人。職業はモデル。港区在住。好きな食べ物は焼き肉とビール。他は何知りたい? 知りたいことあったら何でも聞いて。彼氏なんだからさ」
「は?その顔でホントに名前ケータなの? ミドルネームないの? え?!つーか年下?!」
目を白黒させる海斗を愛おしそうな甘ったるい瞳でじぃっと見たかと思うと
「ふふ。酔ってなくても可愛いね、うみ」
ふわりと昨夜中毒になるほどかがされた彼の甘い香りが強くなって。
ちゅ
蕩けそうに美しい彼の唇が重なった。
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