稚拙図書館

織賀光希

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ねえ、私、きのう、死んだんだ

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うん、そうそう。
私、きのう、死んだんだ。
自分でもまだ、実感湧かないっていうかね。
えっ、そんなわけないじゃん。

えっ、なに?
そうじゃないよ。
死んでるんだけど、ほぼ生きているようなものっていうかね。

えっ、昨日?
昨日は何食べたかな。
あっ、ちょっと待ってね。
私、スマホのメモ帳に、食べたものメモするような人間だから。

えっ、何?
当たり前でしょ!
死んだって、スマホくらい使えるでしょ!
スマホが使えなかったら、どうやって世間のこと知ればいいのよ。
っていうか、今こうして喋ってるのもスマホだからね。

あんたも、気付いてなかった感じ?
あっ、そうなんだ。
やっぱり、気付かなかったんだ。
あんたって超天然!
それでさ、私、どっか旅しようと思ってるんだけど。
一緒に行かない?

あっ、良かった。
行ってくれるんだね。

えっ、どうした?
あっ、そうか。
昨日食べたものの話、してたんだった。
私も天然じゃん。

昨日はね、カキ食べたよ。
あっ、ちがうちがう。
海のじゃなくて山のヤツ。
あれは、山じゃないか。
あの、くだものくだもの。

あっ、じゃあもう時間だから、電話切るね。

それじゃ、またね。
さよなら。。。
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